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「もがき苦しみながらも、楽しく映画を作っていた」元ピクサーの堤大介が得た大きな気付きとは

「もがき苦しみながらも、楽しく映画を作っていた」元ピクサーの堤大介が得た大きな気付きとは

J-WAVEで放送中の番組『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』。1月17日(木)は、お休み中の別所哲也に代わり、山中タイキがナビゲーターを務めました。「ZOJIRUSHI MORNING INSIGHT」のコーナーでは、アニメーションアーティストでイラストレーターの堤 大介さんを迎え、ピクサー時代に感じたことや、現在進行しているプロジェクトなどについて伺いました。


■アニメーション世界の土台を作ったピクサー

堤さんはニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツを卒業後、ルーカス・ラーニングやブルースカイ・スタジオに勤務。その後、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下「ピクサー」)のアートディレクターを務め、現在はアメリカのスタジオ「トンコハウス」を拠点に活動をしています。

堤さんがアニメーションの仕事を志したきかっけを伺うと、意外な答えが返ってきました。

:大学時代は油絵を専攻していたので、アニメーションの世界に入るとは思っていませんでした。しかし、ビザの問題など、いろいろな巡り合わせでアニメーションの世界に入りました。これがハマりました。

大学卒業当時はアニメーションの世界をピクサーが変えた時代で、堤さんは、その影響からアニメに魅了されました。「今でもアニメーションの世界に携われてよかったと思っています」と明かします。

山中:堤さんはピクサー時代に『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』などの作品に携わりましたが、ピクサーではアートディレクターとしてどのような仕事をされていましたか?
:アニメーションはゼロから作るものなので、僕はできるだけ監督のビジョンに近い絵を最初に型取ります。その後、いろいろな人がその絵をもとにする「コンセプトアート」という作業を、最後まで責任を持って指示を出すのが、アートディレクターの仕事です。
山中:完成となるアニメーションのベースとなる絵作りをするわけですか?
:特に、僕は光をデザインする人間だったので、照明を使ってどうやってストーリーを伝えられるかとかですね。
山中:大学時代に油絵を専攻していた影響があるのではないでしょうか?
:そうかもしれませんね。光を捉える西洋絵画は、僕のなかで大きな影響だったと思います。

ピクサーで光を専門にするアートディレクターは、堤さんが初めてでした。「光を重要視してくれたのが『トイ・ストーリー3』のリー・アンクリッチ監督だった」と当時を振り返ります。

山中:ピクサーではどのように物事が進行していくのですか?
:僕がピクサーに入社した時代は、素晴らしい作品を出すたびにヒットしていた、全盛期の時代でした。入社する前は「なぜこんなにすごい作品を毎回作れるのか」と、その秘密を知りたかったんです。いざ入ると秘密なんかなくて、結局みんなもがき苦しんでいるんです。でも、すごく楽しそうにやっている。みんな映画を作ることが大好きなんです。自分も情熱を持ち熱くなりやすく、「お前やりすぎだよ」と言われてしまう性格だったんですけど、ピクサーに入って初めて「これでいいんだ」「やりすぎるってことがないくらいやっていいんだ」と思わされた場所でした。

離れた今だからこそ見えるピクサーの姿について、堤さんは以下のように話します。

:ピクサーはアメリカのアニメーションを変えた存在であり、ピクサーを作った人たちがアニメーションの世界の土台を作ってくれたんです。そう考えると、「ピクサーの次に何があるのか」と僕たちの世代が考えなくてはいけないと思いました。
山中:堤さんはトンコハウスで今のアニメーションを変えているということですか?
:そのきっかけになるような動きをする人が、僕たちだけではなく、たくさん増えていかないといけないと思います。上の人たちが作ったものに乗っかるだけではなく、「自分たちは何ができるか」と考えている人たちはたくさんいます。そういう人たちが勇気を出して、自分たちのスタジオをやることは必然的な流れだと思います。


■『ダム・キーパー』の長編も制作中?

スタートして4年半が経つトンコハウス。デビュー作となった『ダム・キーパー』はアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされました。

この作品は、豚の少年が登場するファンタジー作品。豚の少年がダムを使い、闇から街を守るという設定で、堤さんは「『心の中の光と闇』がテーマとなっていて、『心の中のダムを自分がどうやって守っていけるか』という話です」と教えてくれました。

『ダム・キーパー』予告編

アメリカでは、『ダム・キーパー』から5年後の設定のグラフィックノベルが展開されていて、第3巻を夏に発表する予定です。さらに、全て新しい絵で描き下ろした『ダム・キーパー』の絵本が3月末に日本で発売されます。

現在トンコハウスは、日本のアニメーションスタジオ「ドワーフ」と一緒に、堤さんが監督を務めるコマ撮りアニメを日本で制作中です。ゴールデンウィーク頃から一ヶ月ほど開催される「トンコハウス展」で発表予定で、「題材も日本をテーマにした作品」だと教えてくれました。

山中:アメリカでも制作が進んでいるものはありますか?
:『ダム・キーパー』の長編も作ろうとしています。トンコハウスも二人で始めたスタジオでしたが、少しずつ人数も増えてきまして。他にも4つ、5つほどのプロジェクトが動いています。

最後に、「堤さんにとっての絵とはなにか」と質問したところ、「絵を描くことは素敵じゃないですか。自分が描くのも楽しいし、それを表現して伝えるのも素敵」と明かしました。

番組では、堤さんがセレクトした大橋トリオさんの『りんごの木』をオンエア。「初めて大橋さんとコラボさせていただいた(ジャケットを堤さんが担当)、思い入れの強い作品です」と紹介しました。

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【番組情報】
番組名:『J-WAVE TOKYO MORNING RADIO』
放送日時:月・火・水・木曜 6時-9時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/

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