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いきものがかり・水野良樹が語る『じょいふる』を平仮名にした理由

いきものがかり・水野良樹が語る『じょいふる』を平仮名にした理由

J-WAVEがいま注目するさまざまなトピックをお届けする日曜夜の番組『J-WAVE SELECTION』。12月9日(日)のオンエアは、作詞家としても活動する岡田マリアと、いきものがかりや、その他多くの楽曲の作詞・作曲を担当する水野良樹をナビゲーターに、前向きなキモチになれる音楽を、歌詞の視点から注目するプログラム『MY FAVORITE LYRICS -METRO SONGS SPECIAL-』をお届けしました。

今回は10月に続き、2回目の放送でした。水野は前回の放送時は放牧中でしたが、放牧宣言からおよそ2年が経ち、結成記念日となる11月3日に集牧宣言。水野は「集牧宣言のニュースが出てから、いろいろな方に『おめでとう』って言っていただけて、すごく励みになってる気がします」とコメント。そこで一曲目は、明るくて、歌詞に面白さのある『じょいふる』をオンエアしました。

水野は、楽曲のタイトルを平仮名にした理由について、「いろいろな意味にとれたほうがいいなと思って。英語の語感とか、英語の言葉がもたらすイメージとかが、英語が母国語ではないので分からなくて。むしろひらがなにして、広く捉えてもらいたいと思いました。あと、この曲は音との兼ね合いがすごく大事な気がしていて。歌詞って音楽にのるからこそ魅力を生むところもあるので、その辺りがうまくできた曲なのかな」と語りました。


■作詞をする時のルール

水野も岡田も曲作りをしていることもあり、作詞をする時の“自分なりのルール”の話になりました。

水野:いろいろな方がいらっしゃるじゃないですか。おりてくるタイプの方もいらっしゃるけど、僕はちゃんと書こうと思わないと書けないタイプなので、鍵盤の前に座って歌いながら歌詞を書いています。
岡田:曲ありきで歌詞を考えることが多いですか?
水野:そうですね。どうされてますか?
岡田:曲をかけながらAメロ・Bメロ・サビっていう感じでだいたいの曲ができていくじゃないですか。私は絶対にAから考えるんです。
水野:そうなんですか! 僕はサビからが多いんですよ。
岡田:だからサビがキャッチーなのが多いんですね!
水野:人によって絶対に頭から物語を筋として通していかないと、という方もいらっしゃいますよね。
岡田:「この曲はサビをキャッチーにしたい」というオーダーがあった時に「サビから考えたほうがいいのかな」と思うこともあるんですけど、曲の始まりから綴っていきたくなるんです。
水野:シンガーソングライターの中には歌を歌っていて、1つでもメロディーと言葉がハマって出てきた時に、Aメロ、Bメロに関わらず、その1ワードから広げていく方も、けっこういらっしゃるみたいですよ。だから千差万別なのかもしれないです。
岡田:言葉はメロディーに乗って浮かびますか? 文章をメロディーにあてていく感じですか?
水野:なかなか説明しづらいんですけど、僕は映像から考えるんです。自分の中でミュージックビデオを勝手に作るようなイメージで、登場人物がいたら“どっちが泣いてるかな”とか、“そこは寒い場所かな”とか、そういうことを頭で想像して、そこを言葉に落としこんでいく方法ですね。説明すると、ちょっと難しいんですけど。
岡田:面白いですね。映像が見えるんですね。私の場合は、音楽を聴いていると、フラッシュのように言葉の候補がいろいろ出てくるんです。自分の頭の中に秘書がいるような感じで「これ、どう?」って、プレゼンをしてくるんです。最初の候補がいいなと思ってバッと書くこともあれば、「これはない」って却下しても、2秒に1回くらい、次の候補が出てくるんです。
水野:その機能、ほしいですね(笑)。
岡田:もしかしたらこの機能は、ラジオをやっていて得たことなのかもしれないです。
水野:ずっと喋ってないといけないですもんね。
岡田:ちなみに、制作する場所はどこですか?
水野:僕は自分の作業場が多いですね。歌詞を書く時は、ほかの音があると集中ができなくてダメなんですよ。
岡田:分かります。私も自分の家の“アトリエ”と呼んでいる場所で、ドアも閉めてパソコンと向き合います。


■手書きか、フォントか?

岡田:歌詞を書く時は手書きなんですけど、水野さんはどうですか?
水野:最近は、手書きにしましたね。途中から変わったんですよ。時期によっても違うんですけど、ある時期は全く同じテキストソフトで、同じフォントでどの曲も書いてました。
岡田:分かります! フォントにこだわりますよね。
水野:そうしないと、自分の中で基準ができないんです。いつも同じ基準で書いて、この曲の色合いはどんな感じかっていうのを、肌で感じながら書くことをいつも大事してました。
岡田:そこでバランスをみてるんですね。最近は手書きでもやっているんですか?
水野:何年か前に、阿久悠さんを追いかける企画をやったことがあって、阿久さんが残している歌詞は全部手書きの原稿なんです。それを見た時に、やっぱり手書きの原稿が与えるイメージを馬鹿にできないと思いました。自分も手書きで書いてみようと思って、変えたりもしました。
岡田:それで、出てくる言葉とか、スピード感は変わりましたか?
水野:言葉の筆圧とかに差が出てくるじゃないですか。自分が考えてもみなかったイメージがそこに乗っかっていて、それを文字にすると出てきたります。その時に思っているイメージが、パソコンやワープロの無機質なフォントになった時に、どれぐらい残るか、もしくはより際立つとか、気付くことがあったりします。でもその生々しさを、どうやって皆さんに一般的なものとして聴いてもらうかも大事で、いろいろなやり方があると思います。


■“グッとくる歌詞”の楽曲

さらに、水野と岡田が選んだ、グッとくる楽曲を紹介しました。

・ハンバート ハンバート『がんばれ兄ちゃん』(岡田チョイス)

岡田:ご夫婦で、二人とも癒し声です。ほのぼのしたイメージだと思いますが、尖った部分があって、その影が心地いいんです。この曲は温かい気持ちになれる曲です。
水野:愛がありますよね。短所も長所も含めて愛してるっていうのが、一番素晴らしい愛ですね。素敵なところだけを見て褒めるんじゃなくて、お兄ちゃんの弱いところ、ダメなところ、全部愛していて、それでいて格好いいっていう。こんなに強い愛の言葉はないですね。
岡田:私は“職業作詞家”なので、いろいろな人に共感してもらうことを意識して歌詞を書くことが多いんですけど、主役をここまで特定しているのに、ここまで身近に感じて、好きになったり、応援したくなるのはすごいって思うんです。
水野:こういう関係性に、みんな憧れるのかもしれないですね。
岡田:特に最後のほうでは、お兄ちゃんはそのままでいいんだよって肯定していて、優しいし、いじらしいし、たまらないですよね。

・椎名林檎『ありあまる富』(水野チョイス)

水野:林檎さんはいろいろな言葉遣いがあったりとか、すごく攻撃的なことがたくさんあったりして、さまざまな歌詞の印象を持っていると思います。生きているだけでそれはかけがえのないもので、その人固有のもので、誰からも奪うことができない、そういうことをすごく強く押し出す曲です。生きてることを肯定してくれてるような、生きていくことを励まされるような、素晴らしい曲だと思います。

なお、J-WAVEとキュレーションアプリ「antenna*」では“毎日の通勤通学、移動の際の電車空間を、音楽の力でもっと豊かに”をコンセプトに「ENRICH YOUR LIFE WITH METRO SONGS」キャンペーンを行っています。東京メトロ全線の中吊りに、J-WAVEがチョイスしたグッとくる歌詞が16日(日)まで登場します。

そこで、今回コラボレートした6組のアーティストと、ピックアップした楽曲を紹介しました。

・安室奈美恵『I WILL』

2002年に発表した21枚目のシングル曲。本人作詞による楽曲。“ファンがいるからこそ自分がいる”、安室奈美恵を安室奈美恵たらしめたのはファンの存在そのもの。引退しても彼女の思いは永遠に残ります。

水野:ファンの皆さんとの関係性の中で出てきた安室さんの言葉が、引退したあとにどんどん普遍性を持っていて、同じように何かを頑張る人とか、何か応援する人の気持ちにつながっていく歌詞になっています。

・コブクロ『YELL~エール~』

2001年にリリースしたメジャーデビュー曲。12月5日に発売されたベストアルバム『ALL TIME BEST 1998-2018』にも収録されています。夢への一歩を踏み出す全ての人に勇気を与えてくれる応援歌です。この歌詞のメッセージは、音楽業界のスタート地点に立った彼ら自身に重なります。

水野:サビのフレーズが印象的です。商品とかCMとかとタイアップすることももちろん素晴らしいことだけど、人生のある場面とタイアップするのが最も人の心に残るのかなと思います。門出ってどんな人にもあるじゃないですか。だから、この曲はいろいろな人の門出とタイアップして、そこと結びついて深く刺さっていくんだなと思います。

・斉藤和義『カラー』

有村架純と國村隼のW主演映画『かぞくいろ―RAILWAYS わたしたちの出発―』の主題歌として書き下ろされました。映画の撮影地となった、鹿児島の肥薩おれんじ鉄道を実際に訪れて書いたそうで、車窓に流れていく風景に、自分たちの色を塗っていく、そんな感じがよく伝わってきます。“家族の再出発”がテーマになったこの映画に寄り添う、とても前向きにさせてくれる曲です。

水野:幸せって、意外とステレオタイプなものがたくさんあって、それを得ないとダメなんじゃないかと思いがちです。ステレオタイプなものを、自分たちの価値で作っていって、自分たちの幸せを作っていくという、肯定の曲なのかなと思います。

・SKY-HI 『New Verse』

AAAの日高光啓のソロ・ワーク、SKY-HIの最新アルバム『JAPRISON』収録曲。『New Verse』は新しいフレーズという意味なのか、SKY-HIにしか紡ぎ出せないリリックが展開されます。人生はいいことばかりじゃない。まぶたを腫らすことも、逃げ腰になることもある。でも、いいことも悪いことも、全て肯定して飲み込んでしまう力強さがこの曲にはある。小さなことは気にしないで笑い飛ばせばいい。人をポジティブにさせてくれる一曲です。

水野:さまざまなサウンドメイクが話題を呼んでいます。歌詞というのは音楽の中でどう響くかっていうのが大事なんです。もちろん、リリックの意味合いはすごく大事なんだけど、そのサウンドの中で言葉がどうあるべきか、ということもすごく工夫されてると思います。

・ナオト・インティライミ『Amor y sol with 桜井和寿』

最新アルバム『7』に収録された、Mr.Childrenの桜井和寿との初コラボレーション楽曲。タイトルの意味はスペイン語で“愛と太陽”。お祭り男らしい陽気な楽曲かと思いきや、人生の苦悩や葛藤が歌われています。しばらくの活動休止を経て深みを増した、ナオトのライフタイムソング。

水野:太陽が照っている場所には、必ず陰ができてるんです。陰を書かないと、光を書いたことになりません。人間の感情は絶対に陰があるからこそ、輝きがあるような気がするので、そこをちゃんと救っている曲なのかもしれないです。

・RADWIMPS『そっけない』

最新アルバム『ANTI ANTI GENERATION』に収録。大好きな彼女に迫れば迫るほど、そっけなくされてしまう。恋の核心に迫れば迫るほど掴みきれないという、恋愛の難しさを歌った共感ポイントがたくさん詰まっているラブソング。楽曲のラストで、野田洋次郎のヴォーカルが力強くなっていくところがたまらなくいいです。

水野:ラブソングは「この人が言うからこそ」という歌詞になったりして、それだけ愛に近いところにある曲なのかもしれません。

なお、「ENRICH YOUR LIFE WITH METRO SONGS」キャンペーンでは、J-WAVEリスナーから「前向きになれる楽曲名+アーティスト名」をSNSで募集する「MUSIC SHARE(リクエスト)キャンペーン」も実施中。11月30日(金)から16日(日)までの期間「#メトロソングス」を付けてSNS投稿していただいた方の中から抽選で、東京メトロ全線に掲出した中づりをプレゼントします。

次回16日(日)のこの時間は『J-WAVE SELECTION Hitachi Systems HEART TO HEART』。をお送りします。作家の重松清さんが、大阪北部地震と台風21号との被災地、大阪で現地の方がどのように災害報道を考え、報道によってどんな影響があったのかを取材した模様をお届けします。どうぞ、お聴き逃しなく。

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※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE SELECTION』
放送日時:毎週日曜 22時-22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jwaveplus/

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