J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)。12月27日(木)のオンエアでは、映画解説者の中井 圭さんが登場。2018年の傑作映画を選んでいただきました。
BIGLOBEの映画ポータルサイト「シネマスクランブル」の編集長を経て、現在解説者としてWOWOW『映画工房』、ニコニコ生放送「シネマのミカタ」などで活躍中の中井さん。実家が電気屋さんだったこともあり、小さい頃から店番中にビデオやWOWOWで映画を観続けるという生活をしていました。
まずは、「映画解説者」という肩書について訊きました。
中井:僕が考える映画解説者は、できるだけ多くの人に映画を観てもらうために丁寧に解説する、紐解いていく仕事かなと思っています。映画評論家は、映画自体に歴史的な価値を付与する、掘り起こしをする機能があり、コメンテーターはもっとポップな感じで、僕はその中間くらいに位置していると思います。できるだけ多くの方々に映画館に行って映画を観ていただきたい、という思いがとても強いです。
■今年の傑作映画3本
・『君の名前で僕を呼んで』
中井:1980年代のイタリアを舞台にした、17歳の少年と24歳の青年のラブストーリーです。僕がこの映画が素晴らしいと思っているのは、LGBTを扱っていますが特別視していない姿勢です。極めて美しいラブストーリーに仕上げているところが特徴だったのかなと思います。これまでLGBTを扱うと特別なものになりがちでしたが、その考え方は時代遅れというのを象徴する作品だったというのが、この作品の素晴らしさだと思います。続編があるそうですが、素晴らしい終わり方でしたし続編を作る必要はないと思います。
・『スリー・ビルボード』
中井:アカデミー賞にノミネートされていて「作品賞を獲るんじゃないか」と言われていましたが『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を獲りました。でも、僕の中での「ナカデミー賞」作品賞は『スリー・ビルボード』にあげたいなというほど好きな作品です。娘を暴行され殺されたシングルマザーが、近所の大きな3枚の看板に「(動いてくれない)警察は何をやっているの?」という広告を出し、小さな街がザワザワします。この作品の最大のポイントは「許し」だと僕は思います。娘を殺されたお母さんは本当に怒っていて、誰に対しても厳しく当たってとんでもない事件を起こしていきます。彼女に対しても警察がひどいことをするなど、さまざまな憎しみが憎しみを生む状態が進んでいきますが「許し」というキーワードが浮かびあがってくるのが、終盤のシーンですね。今年一番素晴らしいエンディングを迎えたのが『スリー・ビルボード』だと思います。
・『判決、ふたつの希望』
中井:レバノンの映画で、キリスト教系のレバノン人の男性とパレスチナ難民の男性が些細なことで口論した結果、裁判ざたになってそれが全国的な規模で大モメになっていくという話です。レバノン内戦など歴史的な対立があり、それが個人の思いに投影されていくわけです。実際このふたりは宗教も違いますが、この映画は「そんなに違うのですか?」ということを描いています。具体的に言うと裁判をやるのですが、証言をしていくなかで仕事に対する向き合い方に関するものがあって、全く意見が合わないふたりが「あれ? この人と自分って仕事に対する姿勢って同じじゃん」とわかるわけです。実は違いがあるかもしれないけど「それをちゃんと見つめていますか?」「受け入れる部分ってあるんじゃないですか?」と見つめなおす映画なんです。これは隠れた名作だと思います。
最後に、中井さんにその他の今年の映画を総括していただきました。
中井:音楽映画がすごく多かったのかなと思います。『ボヘミアン・ラプソディ』『グレイテスト・ショーマン』もありますが、『アリー/ スター誕生』もありますし。大きなスクリーンで大きな音を聴くということでハードルを下げていると思います。映画が好きじゃなくても音楽が好きな人はたくさんいますから。映画のヒットは認知度が大事なんです。加えて、日本のインディペンデント映画が躍進しました。『カメラを止めるな!』が注目された裏で、もう一つ『カランコエの花』という素晴らしい映画のロングランが続いています。あと『万引き家族』のようなパルムドールを獲る作品もありましたね。
その中でも中井さんのイチオシは『アリー/ スター誕生』。「レディー・ガガが注目されていますが、ブラッドリー・クーパーの才能がずば抜けています。彼の受けの芝居の表現の幅によって作品が深まっていて、彼は監督としてクリント・イーストウッドの後継者なんじゃないかと注目されています」とも話しました。
番組では、中井さんにセレクトしていただいたスフィアン・スティーヴンスの『Mystery of Love』をオンエア。この曲は『君の名前で僕を呼んで』の主題歌で、第90回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされました。
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【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
BIGLOBEの映画ポータルサイト「シネマスクランブル」の編集長を経て、現在解説者としてWOWOW『映画工房』、ニコニコ生放送「シネマのミカタ」などで活躍中の中井さん。実家が電気屋さんだったこともあり、小さい頃から店番中にビデオやWOWOWで映画を観続けるという生活をしていました。
まずは、「映画解説者」という肩書について訊きました。
中井:僕が考える映画解説者は、できるだけ多くの人に映画を観てもらうために丁寧に解説する、紐解いていく仕事かなと思っています。映画評論家は、映画自体に歴史的な価値を付与する、掘り起こしをする機能があり、コメンテーターはもっとポップな感じで、僕はその中間くらいに位置していると思います。できるだけ多くの方々に映画館に行って映画を観ていただきたい、という思いがとても強いです。
■今年の傑作映画3本
・『君の名前で僕を呼んで』
中井:1980年代のイタリアを舞台にした、17歳の少年と24歳の青年のラブストーリーです。僕がこの映画が素晴らしいと思っているのは、LGBTを扱っていますが特別視していない姿勢です。極めて美しいラブストーリーに仕上げているところが特徴だったのかなと思います。これまでLGBTを扱うと特別なものになりがちでしたが、その考え方は時代遅れというのを象徴する作品だったというのが、この作品の素晴らしさだと思います。続編があるそうですが、素晴らしい終わり方でしたし続編を作る必要はないと思います。
・『スリー・ビルボード』
中井:アカデミー賞にノミネートされていて「作品賞を獲るんじゃないか」と言われていましたが『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞を獲りました。でも、僕の中での「ナカデミー賞」作品賞は『スリー・ビルボード』にあげたいなというほど好きな作品です。娘を暴行され殺されたシングルマザーが、近所の大きな3枚の看板に「(動いてくれない)警察は何をやっているの?」という広告を出し、小さな街がザワザワします。この作品の最大のポイントは「許し」だと僕は思います。娘を殺されたお母さんは本当に怒っていて、誰に対しても厳しく当たってとんでもない事件を起こしていきます。彼女に対しても警察がひどいことをするなど、さまざまな憎しみが憎しみを生む状態が進んでいきますが「許し」というキーワードが浮かびあがってくるのが、終盤のシーンですね。今年一番素晴らしいエンディングを迎えたのが『スリー・ビルボード』だと思います。
・『判決、ふたつの希望』
中井:レバノンの映画で、キリスト教系のレバノン人の男性とパレスチナ難民の男性が些細なことで口論した結果、裁判ざたになってそれが全国的な規模で大モメになっていくという話です。レバノン内戦など歴史的な対立があり、それが個人の思いに投影されていくわけです。実際このふたりは宗教も違いますが、この映画は「そんなに違うのですか?」ということを描いています。具体的に言うと裁判をやるのですが、証言をしていくなかで仕事に対する向き合い方に関するものがあって、全く意見が合わないふたりが「あれ? この人と自分って仕事に対する姿勢って同じじゃん」とわかるわけです。実は違いがあるかもしれないけど「それをちゃんと見つめていますか?」「受け入れる部分ってあるんじゃないですか?」と見つめなおす映画なんです。これは隠れた名作だと思います。
最後に、中井さんにその他の今年の映画を総括していただきました。
中井:音楽映画がすごく多かったのかなと思います。『ボヘミアン・ラプソディ』『グレイテスト・ショーマン』もありますが、『アリー/ スター誕生』もありますし。大きなスクリーンで大きな音を聴くということでハードルを下げていると思います。映画が好きじゃなくても音楽が好きな人はたくさんいますから。映画のヒットは認知度が大事なんです。加えて、日本のインディペンデント映画が躍進しました。『カメラを止めるな!』が注目された裏で、もう一つ『カランコエの花』という素晴らしい映画のロングランが続いています。あと『万引き家族』のようなパルムドールを獲る作品もありましたね。
その中でも中井さんのイチオシは『アリー/ スター誕生』。「レディー・ガガが注目されていますが、ブラッドリー・クーパーの才能がずば抜けています。彼の受けの芝居の表現の幅によって作品が深まっていて、彼は監督としてクリント・イーストウッドの後継者なんじゃないかと注目されています」とも話しました。
番組では、中井さんにセレクトしていただいたスフィアン・スティーヴンスの『Mystery of Love』をオンエア。この曲は『君の名前で僕を呼んで』の主題歌で、第90回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされました。
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※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。
【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/