J-WAVEで放送中の番組『SEASONS』(ナビゲーター:マリエ)のワンコーナー「MITSUI FUDOSAN COME ACROSS TOKYO」。11月24日(土)のオンエアでは、世田谷美術館で開催中の展覧会「ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男」を紹介しました。
■「役に立たない機械」に込められた思い
「ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男」は、20世紀のイタリアを生きたアーティストで、絵画を描き、デザインの仕事をしたブルーノ・ムナーリの生涯を振り返る大回顧展です。
展示数はおよそ300点。イタリアのコレクションが160点ほど、日本にあるコレクションが140点ほど展示されています。ムナーリの作品は、紙、鉛筆、水彩、アクリル、布、プラスチック、ゴム、コピー機など、さまざまな素材や道具が使われており、子どものような発想力とアイデアで作られた不思議なプロダクトが多くあります。
そんなムナーリは、日本での人気が高く、さまざまな場所で展示が行われていました。しかし、ここまで多くの作品を集めた展覧会は稀です。展覧会で最初に登場する代表作について、世田谷美術館の学芸員・野田尚稔さんに伺いました。
野田:世田谷美術館の展示室は特殊な形をしていて、最初の部屋は扇型です。奥が広く、天井がせりあがっています。そこにムナーリの第二次世界大戦前の作品で、代表作の『役に立たない機械』をぶら下げています。広い空間で、空調のかすかな風で動く姿を見ていただきます。ただボーッと眺める、それに適した空間を作りました。『役に立たない機械』は、糸で吊るしてクルクル動くだけなので、ふざけて作ったかのように思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。今は近代化が進み、一日のほとんどを役に立つ機械に囲まれて過ごしています。ようやく家に帰ったときは暗くなっていて、小川のせせらぎを聞くことや、雲の動きを見ることもありません。そんなときに、「役に立たない機械」を見て癒されてほしいという思いが、ムナーリの作品に込められています。
■「美術とは何か」
さらに、ムナーリが伝えたかった思いを感じる、子どもと遊べる体験スペースについても説明しました。
野田:展示室の最後のパートに「アートとあそぼう」というコーナーがあります。それは、ムナーリが開発し、実際にイタリアで発売していた遊具を、お客様が手にとって遊べるスペースです。そのひとつに「プラス・マイナス」というカードゲームがあります。透明のプラスティックシートに、草や太陽など、さまざまなものが書かれています。そういうカードを重ね合わせて、ライトボックスの上に乗せると、自分で思った絵を作ることができるカードです。子どもでも大人でも簡単に絵が作れるというのが、この遊びの大事な点です。美術や芸術は訓練を積んだ人だけが作り、ほかの人は見るだけではありません。ムナーリは、多くの人が自分で考えて作って楽しむ、美術の役割ってそういうもんだよね、ということを強く考え、多くの人に伝える方法としてこの遊具を開発したと思います。ムナーリと親しかったイタリア人と話をすると、ムナーリにとって非常に重要なキーワードは、「アイロニー(皮肉)」だといいます。意味を聞いたところ、シリアスとユーモアが混ざった状態とのこと。ムナーリの作品は、「美術とは何か」「デザインとは何か」「絵本とは何か」ということを真剣に考え、そのエッセンスを凝縮しています。そうしてできたものは、とてもユーモアに溢れていて、シリアスとの融合を、ムナーリが表現しているのではないかと思います。
「ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男」は、2019年1月27日(日)まで開催しています。ぜひ、足を運んでみてください。
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【番組情報】
番組名:『SEASONS』
放送日時:毎週土曜 12時-15時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/seasons/
■「役に立たない機械」に込められた思い
「ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男」は、20世紀のイタリアを生きたアーティストで、絵画を描き、デザインの仕事をしたブルーノ・ムナーリの生涯を振り返る大回顧展です。
展示数はおよそ300点。イタリアのコレクションが160点ほど、日本にあるコレクションが140点ほど展示されています。ムナーリの作品は、紙、鉛筆、水彩、アクリル、布、プラスチック、ゴム、コピー機など、さまざまな素材や道具が使われており、子どものような発想力とアイデアで作られた不思議なプロダクトが多くあります。
そんなムナーリは、日本での人気が高く、さまざまな場所で展示が行われていました。しかし、ここまで多くの作品を集めた展覧会は稀です。展覧会で最初に登場する代表作について、世田谷美術館の学芸員・野田尚稔さんに伺いました。
野田:世田谷美術館の展示室は特殊な形をしていて、最初の部屋は扇型です。奥が広く、天井がせりあがっています。そこにムナーリの第二次世界大戦前の作品で、代表作の『役に立たない機械』をぶら下げています。広い空間で、空調のかすかな風で動く姿を見ていただきます。ただボーッと眺める、それに適した空間を作りました。『役に立たない機械』は、糸で吊るしてクルクル動くだけなので、ふざけて作ったかのように思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。今は近代化が進み、一日のほとんどを役に立つ機械に囲まれて過ごしています。ようやく家に帰ったときは暗くなっていて、小川のせせらぎを聞くことや、雲の動きを見ることもありません。そんなときに、「役に立たない機械」を見て癒されてほしいという思いが、ムナーリの作品に込められています。
■「美術とは何か」
さらに、ムナーリが伝えたかった思いを感じる、子どもと遊べる体験スペースについても説明しました。
野田:展示室の最後のパートに「アートとあそぼう」というコーナーがあります。それは、ムナーリが開発し、実際にイタリアで発売していた遊具を、お客様が手にとって遊べるスペースです。そのひとつに「プラス・マイナス」というカードゲームがあります。透明のプラスティックシートに、草や太陽など、さまざまなものが書かれています。そういうカードを重ね合わせて、ライトボックスの上に乗せると、自分で思った絵を作ることができるカードです。子どもでも大人でも簡単に絵が作れるというのが、この遊びの大事な点です。美術や芸術は訓練を積んだ人だけが作り、ほかの人は見るだけではありません。ムナーリは、多くの人が自分で考えて作って楽しむ、美術の役割ってそういうもんだよね、ということを強く考え、多くの人に伝える方法としてこの遊具を開発したと思います。ムナーリと親しかったイタリア人と話をすると、ムナーリにとって非常に重要なキーワードは、「アイロニー(皮肉)」だといいます。意味を聞いたところ、シリアスとユーモアが混ざった状態とのこと。ムナーリの作品は、「美術とは何か」「デザインとは何か」「絵本とは何か」ということを真剣に考え、そのエッセンスを凝縮しています。そうしてできたものは、とてもユーモアに溢れていて、シリアスとの融合を、ムナーリが表現しているのではないかと思います。
「ブルーノ・ムナーリ ― 役に立たない機械をつくった男」は、2019年1月27日(日)まで開催しています。ぜひ、足を運んでみてください。
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番組名:『SEASONS』
放送日時:毎週土曜 12時-15時
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/seasons/