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いきものがかり結成のきっかけは? バンドで「モテたい」じゃ目立てない、と…

いきものがかり結成のきっかけは? バンドで「モテたい」じゃ目立てない、と…

J-WAVEでは10月8日(月・祝)に特別番組『J-WAVE SPECIAL LEXUS SOUND MUSEUM』(ナビゲーター:別所哲也)をオンエアしました。ここでは番組内で放送された、いきものがかりの水野良樹さんと岡田マリアさんとの対談の模様をお届けします。


■全てのピースが揃った曲

水野さんは1982年生まれ。まずは音楽の洗礼についてお訊きしました。

水野:僕、アラスカに親戚がいて、幼稚園くらいの頃、マイケル・ジャクソンのミュージックビデオをよく送ってきてくれたんです。英語だから分からないんですけど、踊りを真似たり、格好いいなと思ったことが印象に残っています。だからマイケル・ジャクソンが最初かもしれません。
岡田:なるほど! 影響を受けたアーティストは?
水野:90年代初頭のDREAMS COME TRUEは本当にすごいと思っていて、吉田美和さんってとんでもいないヴォーカリストじゃないですか。だけど、あの吉田さんの素晴らしい歌を聞いた時に、皆が自分のことに置き換えて聞いたアーティストであり、今でもそうであるところに憧れるし、すごい形を作った方々だと思います。あとは、同じような意味で槇原敬之さんの『世界に一つだけの花』は、歌が持つメッセージが社会の価値基盤を変えていくというか、それも強い感じで「こうだろ!」というんじゃなくて、みんなが「そうだよね」って頷くような感じで1つの価値観が広がっていくっていう意味では、ポップソングとしてすごく影響力を持った曲だなって思います。しかも、あの時代の価値観にぴったりとフィットして、それをSMAPというスーパーアイドルが歌って、それをスーパーソングライターが書いて……みたいな、全部のピースが揃ったような曲で、すごく憧れますね。
岡田:では最近、発見があった音楽は?
水野:僕が出演しているJ-WAVEの番組『SONAR MUSIC』には、10代後半から20前半くらいの若いアーティストの皆さんがよくスタジオライブに来てくれて、その中で出会ったRyu Matsuyamaというグループです。最近、僕は鍵盤で曲を作ることが多くて、Ryu Matsuyamaも鍵盤を基調とした3ピースバンドです。自分の今のセンスとも合っていて、格好いいんです。しかも、ヴォーカルはイタリアにいて、日本の音楽が逆輸入するかのように入ってきて、いろいろなものが入り混じっていて、ちょうど新しいものになってるんじゃないかって思います。


■いきものがかり結成のきっかけ

岡田:水野さんが自分の音楽を生み出し始めたのはいつ頃からなんでしょう?
水野:きちんとやり始めたのは、高校生ぐらいですかね。ウチの高校は変な学校で、文化祭のテーマソングを全校投票で決めるシステムがあったんです。お弁当の時間に全校放送で曲を流して、校内のオリジナルバンド20組ぐらいの曲が流れて、1位になると中庭のステージで文化祭のテーマソングを歌えたんです。学内ではスターですよ。あれは人生を変えた経験で、校内で僕の曲が流れたら「あの曲を作ったのは誰!?」と一瞬、校内で話題になるんです。今まで僕に見向きもしてくれかった友達から「あれを作ったのは、水野くんだよね?」って言われて世界が変わるというか。曲を聞いてもらって楽しんでもらって、これが自分の武器になるかもしれないっていう、16、17歳の僕にとってはすごく大きな変化でした。
岡田:それだけ光るものがあったんでしょうね。ちなみに、なんという曲だったんですか?
水野:『燃える花』っていうタイトルです。すごく恥ずかしいな(笑)。幸運だったのは、山下(穂尊)っていう相方がいて、自分が曲を作り始めた時から目の前にライバルがいる状況だったので、それは成長する上ですごくよかったです。彼が曲を作ってくると、「お前、そんなバラードを作ってきたのか。じゃあ、俺はアップテンポだ」みたいな、そういうボールの投げあいをしていたのがすごく幸運だったなと思います。
岡田:この頃って、ゆずがすごく流行ってましたよね。二人でやろうとは思わなかったですか?
水野:最初は二人だったんです。山下がゆずにハマって「ゆずっていうグループがいるらしいよ。路上でライブをやってるらしいよ」と。で、路上ライブをやろうという話になって、女子校がある駅に行って、駅前でやっていたんです。同じ駅には、ゆずさんをコピーしている「モテたい」を前面に出した男の子グループがたくさんいて、これだとちょっと目立ってないってことになって、真ん中にもっと歌の上手い女の子入れて、三人組でやろうってなったのが、いきものがかり結成のきっかけでした。
岡田:なるほど! 女子を入れたらモテなくなっちゃいました?
水野:もとからモテてなかったですけど(笑)。ただ、女子校の生徒さんたちは一瞬、「この子誰?」みたいな感じになってました。楽しかったですね。


■一歩進むことができた曲

岡田:これまでの音楽制作で、壁にぶち当たった時に生まれた曲ってまた特別なものを持ってると思うんですが、そういう時にできた曲はありますか?
水野:『風が吹いている』は、デビューして8年ぐらい経って、多くの方に名前を知っていただいて、多くの方に聞いていただいているという状況が生まれている中で、さらに大きな曲を書かなきゃという気持ちが強くのった曲です。自分のキャパシティが曲に反映されるんじゃなくて、メッセージもそうで、個人の考えだけがのってしまうと曲が狭くなると思っていて、そこに場があって、皆さんがそこに感情を入れて、怒り、悲しみ、希望、なんでもいいんですけど、皆がこの歌にその感情を入れられるような“広場”みたいな曲を書きたいと思って書いた曲です。そういう意味では一歩前に進めたかな、という曲です。


■童謡の強さ

岡田:現在、いきものがかりは放牧中です。2017年の1月からもうすぐ2年になろうとしています。2017年2月には第一子が誕生しましたよね。
水野:言葉を覚えたりして、人が何かを獲得していく姿は面白いですね。今までは“ゾウさん”しか言えなかったのが、キリンを覚えたりライオンを覚えたり、どんどん変わっていくんだなと学ばされる機会がすごく多いですね。
岡田:曲を弾いてあげたり、歌ってあげたりしますか?
水野:そうですね、今よりもっと小さい頃はベビーベッドに寝かして、顔を近付けて自分の曲を歌ったんです。覚えてほしいから(笑)。でも、全然反応しないんです(笑)。でも「カエルのうた」には反応するんです。それもミュージシャンとしては悔しくて。童謡とかずっと歌われている歌って強いんですよね。子どもって、まだ文脈を理解していないというか、自分の中にある記憶や知識で音を聞いてないから、単純に楽しいかどうかじゃないですか。そこでつかめるかどうかは、音楽としてすごく差があると思うんです。かなり負けてると思って(笑)。動揺は勉強になりますね。


■音楽に興味がない人にも届けたい

岡田:これからを担う未来の子どもたちに、「こんなふうに音楽が聴かれたらいいな」というのはありますか?
水野:僕が青春時代を過ごして音楽を好きになった頃って、何が違ったかというと、音楽が好きじゃない人も音楽を聴いていたところがあったと思うんです。音楽って、お金を払って自分が好きなものを集める“趣味の文化”っていうのが基本としてあると思うんです。でも、僕らが青春時代に好きになった時って趣味をこえていて、みんなが話題にしたりとか、「あの人の新曲、聴いた?」とか、音楽に興味がなくても、それを知ってないと皆の話題についていけないカルチャーになっていたと思うんです。そこに僕は憧れているので、今は多様な音楽がストリーミングやラジオで聴けて音楽好きの人にとってはすごく幸せな世界で、自分の好きなものをどんどん掘っていけるし、もちろんそれはそれで大事で尊いものだけど、普通に街を歩いている時に聞こえてきて、それが皆さんの生活に寄り添って、音楽が好きじゃない人にも届くような文化であってほしいし、そういうふうに楽しんでもらえるものであり続けてほしいというのはすごく思いますね。


■その年齢だから書ける曲を

岡田:最後に、これからの30年はどうなると思いますか?
水野:先輩のアーティストがみんな元気で、還暦を越えても第一線で活躍されている方ばかりだし、そういった意味では僕らも希望が持てるというか、30代では30代でしか書けない曲だろうし、40代では40代でしか書けない曲があると思うので、そういうのを逃さず、丁寧に作っていけたらいいなって思います。

最後まで音楽の話は尽きませんでした。

【番組情報】
番組名:『J-WAVE SPECIAL LEXUS SOUND MUSEUM』
放送日時:10月8日(月・祝)18時-20時55分
オフィシャルサイト: https://www.j-wave.co.jp/holiday/20181008_sp/

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