フジロックでヘッドライナーを務めるボブ・ディランの時代を越えた凄さとは?

J-WAVEで放送中の番組『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』(ナビゲーター:グローバー)。7月14日(土)のオンエアでは、7月27日(金)28日(土)29日(日)の日程で開催される「FUJI ROCK FESTIVAL '18」にヘッドライナーとして出演するボブ・ディランを特集。SING LIKE TALKINGの佐藤竹善さん、尾崎裕哉さんをお迎えし、その魅力について語りました。

77歳になった今もなお多くの人々に影響を与え続けているボブ・ディラン。1941年アメリカ・ミネソタ州に誕生した彼は、幼いときにピアノを学び、成長する過程でさまざまな音楽を好きになります。大学を中退すると、グリニッジ・ビレッジ周辺で弾き語りをはじめ、1962年にアルバム『ボブ・ディラン』でデビュー。翌年に詩的なプロテストソングといわれる『Blowin' in the Wind(風に吹かれて)』を収録した2ndアルバムをリリース。その後も次々と歴史的名盤やヒット曲を生み出し、ロックの殿堂入り、グラミー賞、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞主題歌賞など数多くの賞を受賞しました。そして、2016年10月にシンガーとして初となるノーベル文学賞を受賞し、大きな話題を呼びました。


■佐藤竹善さんのボブ・ディランとの出会い

佐藤:はじめてのボブ・ディランは、ボブ・ディランが歌ったものじゃないものばっかりでしたね。ピーター・ポール&マリーの『風に吹かれて』、西岡恭蔵さんのアルバム『ディランにて』で「ディランってなんだろう?」と。楽曲だけに限らず、存在とか、『風に吹かれて』っていうフレーズがあまりにもあちらこちらで使われるじゃないですか。そのルーツがボブ・ディランだって知ったときの不可思議さとか、その影響力とかね。なにしろ僕が生まれたのが1963年で、(ボブ・ディランが)デビューしているのが1年前。出会ったのは遅くて高校を終わるぐらい。ビートルズを中学校に入ってから聴きはじめて、ずっと聴いてるうちにジョン・レノンの詞がどんどん変化していくわけです。そこにボブ・ディランの存在が大きく居るっていうことを後に知っていくんですが、非常に詩的になっていくわけですよ。それで具体的でもあるけれど抽象的、行間もありつつ生裸な言葉が出てくるとか。空間の行ったり来たり感を感じさせる感じ。それまではビートルズも普通のラブソングやイケイケのロックンロールばかりでしたから、ポール・マッカートニー以上にジョンは、何倍もボブのことを語るので、より大きくなっていきましたよね。ただね、歌を聴いてても解らないんですよ。最初は正直言って気持ち悪いぐらい。そしてラジオでライブバージョンとか流れたりすると、元の知ってる曲とは全然違うメロディ歌ったりしやがってですね(笑)。「歌はちゃんとしたメロディをちゃんとした声で歌うもの」っていう既成概念が子供にはできあがってるじゃないですか。そこに登場した彼の存在と詞の世界が、美しいとかまとまってるとかっていうのを何百倍も越えて、ものすごく迫ってくる。そこでだんだん気になってくる。子供の僕にとっては、くさやをはじめて食わされて、だんだんハマり込んでいく、それに近い。ボブ・ディラン聴きながら政治語って「何が繋がってるんだろ?」とかね(笑)。


■最初はショボく聴こえた曲も気になる存在に…

もうすぐ29歳になる尾崎裕哉さんは、まわりにボブ・ディランを聴いてるひとは全くいなかったそうです。

尾崎:ただ存在は知ってたんですよ。僕の父親がディランとかジョン・レノンとかから影響を受けていたという話をなにかで読んだりして、「そういう人が居るんだなあ」ということだけだったんですけど。最初聴いたのもジミ・ヘンドリックスが『All Along The Watchtower』をカバーしてるもので、「あ、これって実はボブ・ディランの曲だったんだ、じゃあオリジナルどんななんだろう?」って聴いてみたら、めっちゃショボいと思ったんです。ロックを求めて聴いたら「あれ? フォークじゃん。ガツンとこないし、ギターソロもないし……」みたいな。でもジョニ・ミッチェルを聴き始めて、そこからジャクソン・ブラウンを聴いて、ようやく落ち着いた音楽を聴けるようになって、そういう耳を持ったから、ボブ・ディランも「改めて聴いてみよう」ってなったんです。ただ1stアルバムとか『Highway 61 Revisited(追憶のハイウェイ61)』を聴いてもAメロだけって曲が多いんですよね。僕らの世代はAメロがあってサビがあるバースコーラス式が多いんですけど、同じフレーズを何回も繰り返す曲、間奏を挟むみたいなのに馴染みがなくて。でもその中でも『Knockin' on Heaven's Door』や『Like a Rolling Stone』とかは解りやすいサビ、リフレインがあって好きでした。たくさん聴いていくと、まず声に慣れていく。慣れていくとやっぱクセになるもんですね(笑)。


■数あるアルバムで敢えて選んだ1枚は?

続いては、おふたりが一番だと思うボブ・ディランのアルバムを挙げました。佐藤さんは『Highway 61 Revisited(追憶のハイウェイ61)』、尾崎さんは『Bringing It All Back Home』をそれぞれ挙げて理由を語ってくれました。

『Highway 61 Revisited(追憶のハイウェイ61)』

佐藤:それまでフォークギターでメインをやっていた彼が、エレキギターに持ち替えてロックンロールにいくときですよね。それは彼が時代を非常にナチュラルに感じていた人って言うんですかね。それまではフォークギターを持ってる人がエレキギターを持つなんていうのはちょっと邪道だとか「エレキ持っちゃうんだ」みたいなね。フォークの神様として奉られていく中で、本人は非常に吟遊詩人としてナチュラルにただ思ったことを表現していて、別に世の中ひっくり返そうとか時代を変えようとかいうより淡々と。そこは吉田拓郎さんとかがスタンスを引き継ぎましたよね。ギターを持ち替えようとした勇気とか自分のスタイルから次にいこうとする感じ、そういう世界観とか意思もジョン・レノンとかも大きな影響受けたんだろうなと思いますよね。ビートルズもギターにディストーションをかけて『Revolution』とかやってなかったかもしれませんね。

『Bringing It All Back Home』

尾崎:エレキを持ちつつあるときです。ザ・バンドが後ろでやり始めた時期、サウンドがガラッと変わるんで聴きやすかったってことなんですけど。このアルバムはロックな曲とひとりでやってる曲と両方入っていて、ボブ・ディランのトランジションがわかりやすいアルバムです。そもそもボブ・ディランは「自分はフォークアーティストじゃない」って思ってたらしいんですが、そのレッテルを壊してしまう、イメージを常に変えつづけるのって勇気がいることなんだけど、自分らしさっていうのをちゃんと持ってるなって。変化しつづける姿勢とか常に新しいものを取り入れるっていうところが、アーティストとしてあるべき姿かなと思って。

最後の質問として、佐藤さんに「ボーカリストとしてのボブ・ディランの魅力」を訊きました。

佐藤:ボブ・ディランから学ぶのは、上手くてもつまらない歌手っていっぱいいるんですよね。音程とかどうでもよくても魅力的な歌手とかもいっぱい居るわけです。歌は味があればいいんだって逃げるやつも大嫌いですけど、音程が良いから、リズムが良いからっていうことを評価の対象にするやつも嫌いなんですよ。その両方を超えた先に歌っていうのはあるわけで、そういうものを大きく伝えるひとつのわかりやすい存在として頂点にあると思いますね。

まだまだ尽きないボブ・ディランにまつわるトーク。SING LIKE TALKINGも大きく影響を受けているそうですが、そんな話題も盛り込みつつも前半は時間切れ。さらに盛り上がりをみせそうな後半は、21日(土)オンエアです。お聴き逃しなく!

この記事の放送回をradikoで聴く
PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『MITSUBISHI JISHO MARUNOUCHI MUSICOLOGY』
放送日時:土曜 17時-17時54分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/musicology/

関連記事