J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:藤田琢己)。4月26日(木)のオンエアでは、いきものがかり・水野良樹とのコンビでお届けしました。 「FEATURE TOPICS」のコーナーでは、デビュー20周年でベストアルバム『SUPERCAR 20th Anniversary Best「PERMAFROST」』をリリースした、SUPERCARを特集しました。
■歌詞が「広く深い」SUPERCAR
中村弘二さん(Vo, G)、古川美季(現・フルカワミキ)さん(B, Vo)、石渡淳治(現・いしわたり淳治)さん(G)、田沢公大さん(Dr)による4ピースバンドのSUPERCARは、1990年代後半から2000年代前半にかけて、およそ8年という短い活動期間で、のちの音楽シーンに大きな影響を与えました。今回のオンエアでは、歌詞からSUPERCARの魅力を掘り下げました。
SUPERCARは、卓越した音楽性もさることながら、いしわたりさんが書き上げる歌詞の世界観も、バンドの武器として大きな魅力です。
藤田:初期を代表する『Lucky』と、後期にあたる『Strobolights』では、歌詞の書き方がだいぶ変わりましたね。『Lucky』から紐解くと、ちょっと切ない乙女心みたいなところもありますが。
水野:歌詞って、どうしても狭く捉えてしまいがちなことがあると思うんですよね。歌詞を書くときって、自分から出てくるものであったり、「書き手の物語みたいなものが、強く反映されていないといけない」というか、「シンガーソングライターが絶対的にいい」みたいな風潮がどうしてもあって。そういう中で、いしわたりさんの歌詞って、『Strobolights』みたいに音として機能的なところがあったり、一方で『Lucky』みたいな、いしわたりさん本人だけの話じゃなくて、もう少し俯瞰で物語を見ていて、設定があって、その上でそれがちゃんと音楽としても成立している。だから歌詞の可能性がちゃんと広がって存在しているのが、すごいと思いますね。
藤田:古川さんも女性としてボーカルも取るし、ナカコーさん(中村さん)も歌う。ふたりに“歌わせる”……と言うと語弊があるかもしれませんけど、自分と違う人間が自分の書いた歌詞を歌う、そこに作家性という部分があって。「俺の歌を聴け」「俺の心の叫びを聴け」じゃないところに、ライターとしてのスキルを磨かなきゃいけない状況が、SUPERCARに内在していた。
水野:歌詞が広がらない一番の大きな理由は、主観が邪魔するんですよ。そこをどのようなやり方で壊すか、広げていくかというのが難しい。バンドの構成自体が、そういう主観が壊れる経験をしていたと言えるんじゃないでしょうか。
■作詞家として「すごく理詰めだった」
いしわたりさんは現在、音楽バラエティでの解説者としても知られています。また、4人組ロックバンド・9mm Parabellum Bulletのデビュー当時から「Words produce担当」として関わっており、「Words Produce」という言葉は、いしわたりさんのオリジナルで、昔から「音のプロデューサーがいるなら、歌詞のプロデューサーが存在してもいい」という考えから、自分が歌詞に手を加えた作品は「Words Produce」とクレジットするようになったのだそうです。
他にも、GLIM SPANKYやAwesome City Clubなど、数多くのアーティストをプロデュースしており、Superfly『愛をこめて花束を』も、いしわたりさんの歌詞が大きな役割を果たしています。
水野は、いしわたりさんと歌詞について対談したときのことを以下のように振り返ります。
水野:感性と感覚もすごく大事にしていると思うけど、そこにたどり着くまでのものは、すごく理詰めだったという印象でした。本人に聞いたら「そうじゃないよ」と言うかもしれませんが。
■職業作詞家だけが越えられる壁
藤田と水野は、いしわたりさんの書く歌詞について、初期と後期での共通点や、作詞家としての本質などについて語りました。
藤田:サウンド面も、初期のUK色のあるギターロックとか、シューゲイザーっぽいのとか、変わっていったんですけど、それに合わせて、歌詞そのものの書き方も変わっている感じがするんです。『Lucky』は会話調なんです。ナカコーさんと古川さんが男子側・女子側みたいなやりとりになっていて。「今はどうしても言葉につまるからーヒキョウなだけでしょう? それで、大人になれるならつらいだけだよ…。傷つけ合う前にうちあけられるかな――」と、恋心とか伝わらない思いみたいな部分があります。『Strobolights』も愛についてなんですよね、リフレインされている部分が。根っこにあるものが共通していて、伝えたい胸の内の恋心や愛の部分は一貫しているような、このふたつを勝手につなげていますけど。
水野:すごく幅が広い人だけど、結局その人の個性みたいなものが出てくるということなのかな。それが不思議なんだよなぁ。
藤田:いしわたりさんは、過去のインタビューで「職業作詞家の方のスペシャリティってあるじゃないですか。そこを無視してバンドの音楽だけを聴いて、そのノウハウだけで歌詞を書くとどうしても似てきちゃう、越えられない壁というのがいくつかあるんです。それを超えられる方々が職業作詞家のみなさんだと気づいて、阿久悠さん、松本隆さん、その他にも当時の歌謡曲をまとめている本もいっぱいあるので、手当たり次第当たって、詞の比較と研究をしました」と明かしています。自分の中から出てくるいろいろな思いや言葉、イマジネーションだけじゃなくて、先人たちが何を書いていたんだと比較して、何が違うのかを研究したんですね。
この話を聞いた水野も「歌の先に他者がいるという視点をいつも持っているから、そのような分析ができたり、作品も広く深いものになるのかなと思います」と、いしわたりさんの書く歌詞の魅力について語りました。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名:『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 21時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/
■歌詞が「広く深い」SUPERCAR
中村弘二さん(Vo, G)、古川美季(現・フルカワミキ)さん(B, Vo)、石渡淳治(現・いしわたり淳治)さん(G)、田沢公大さん(Dr)による4ピースバンドのSUPERCARは、1990年代後半から2000年代前半にかけて、およそ8年という短い活動期間で、のちの音楽シーンに大きな影響を与えました。今回のオンエアでは、歌詞からSUPERCARの魅力を掘り下げました。
SUPERCARは、卓越した音楽性もさることながら、いしわたりさんが書き上げる歌詞の世界観も、バンドの武器として大きな魅力です。
藤田:初期を代表する『Lucky』と、後期にあたる『Strobolights』では、歌詞の書き方がだいぶ変わりましたね。『Lucky』から紐解くと、ちょっと切ない乙女心みたいなところもありますが。
水野:歌詞って、どうしても狭く捉えてしまいがちなことがあると思うんですよね。歌詞を書くときって、自分から出てくるものであったり、「書き手の物語みたいなものが、強く反映されていないといけない」というか、「シンガーソングライターが絶対的にいい」みたいな風潮がどうしてもあって。そういう中で、いしわたりさんの歌詞って、『Strobolights』みたいに音として機能的なところがあったり、一方で『Lucky』みたいな、いしわたりさん本人だけの話じゃなくて、もう少し俯瞰で物語を見ていて、設定があって、その上でそれがちゃんと音楽としても成立している。だから歌詞の可能性がちゃんと広がって存在しているのが、すごいと思いますね。
藤田:古川さんも女性としてボーカルも取るし、ナカコーさん(中村さん)も歌う。ふたりに“歌わせる”……と言うと語弊があるかもしれませんけど、自分と違う人間が自分の書いた歌詞を歌う、そこに作家性という部分があって。「俺の歌を聴け」「俺の心の叫びを聴け」じゃないところに、ライターとしてのスキルを磨かなきゃいけない状況が、SUPERCARに内在していた。
水野:歌詞が広がらない一番の大きな理由は、主観が邪魔するんですよ。そこをどのようなやり方で壊すか、広げていくかというのが難しい。バンドの構成自体が、そういう主観が壊れる経験をしていたと言えるんじゃないでしょうか。
■作詞家として「すごく理詰めだった」
いしわたりさんは現在、音楽バラエティでの解説者としても知られています。また、4人組ロックバンド・9mm Parabellum Bulletのデビュー当時から「Words produce担当」として関わっており、「Words Produce」という言葉は、いしわたりさんのオリジナルで、昔から「音のプロデューサーがいるなら、歌詞のプロデューサーが存在してもいい」という考えから、自分が歌詞に手を加えた作品は「Words Produce」とクレジットするようになったのだそうです。
他にも、GLIM SPANKYやAwesome City Clubなど、数多くのアーティストをプロデュースしており、Superfly『愛をこめて花束を』も、いしわたりさんの歌詞が大きな役割を果たしています。
水野は、いしわたりさんと歌詞について対談したときのことを以下のように振り返ります。
水野:感性と感覚もすごく大事にしていると思うけど、そこにたどり着くまでのものは、すごく理詰めだったという印象でした。本人に聞いたら「そうじゃないよ」と言うかもしれませんが。
■職業作詞家だけが越えられる壁
藤田と水野は、いしわたりさんの書く歌詞について、初期と後期での共通点や、作詞家としての本質などについて語りました。
藤田:サウンド面も、初期のUK色のあるギターロックとか、シューゲイザーっぽいのとか、変わっていったんですけど、それに合わせて、歌詞そのものの書き方も変わっている感じがするんです。『Lucky』は会話調なんです。ナカコーさんと古川さんが男子側・女子側みたいなやりとりになっていて。「今はどうしても言葉につまるからーヒキョウなだけでしょう? それで、大人になれるならつらいだけだよ…。傷つけ合う前にうちあけられるかな――」と、恋心とか伝わらない思いみたいな部分があります。『Strobolights』も愛についてなんですよね、リフレインされている部分が。根っこにあるものが共通していて、伝えたい胸の内の恋心や愛の部分は一貫しているような、このふたつを勝手につなげていますけど。
水野:すごく幅が広い人だけど、結局その人の個性みたいなものが出てくるということなのかな。それが不思議なんだよなぁ。
藤田:いしわたりさんは、過去のインタビューで「職業作詞家の方のスペシャリティってあるじゃないですか。そこを無視してバンドの音楽だけを聴いて、そのノウハウだけで歌詞を書くとどうしても似てきちゃう、越えられない壁というのがいくつかあるんです。それを超えられる方々が職業作詞家のみなさんだと気づいて、阿久悠さん、松本隆さん、その他にも当時の歌謡曲をまとめている本もいっぱいあるので、手当たり次第当たって、詞の比較と研究をしました」と明かしています。自分の中から出てくるいろいろな思いや言葉、イマジネーションだけじゃなくて、先人たちが何を書いていたんだと比較して、何が違うのかを研究したんですね。
この話を聞いた水野も「歌の先に他者がいるという視点をいつも持っているから、そのような分析ができたり、作品も広く深いものになるのかなと思います」と、いしわたりさんの書く歌詞の魅力について語りました。
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番組名:『SONAR MUSIC』
放送日時:月・火・水・木曜 21時-24時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/
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