J-WAVEで放送中の番組「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」（ナビゲーター：別所哲也）のワンコーナー「ZOJIRUSHI MORNING INSIGHT」。4月5日（木）のオンエアでは「遺伝」の世界に注目。慶應義塾大学文学部教授の安藤寿康さんに、行動遺伝学の観点からお話を訊きました。
安藤さんは、著書『遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である』や『日本人の9割が知らない遺伝の真実』を持つ、行動遺伝学の第一人者です。「遺伝学」のメカニズムは一般にも浸透していますが「行動遺伝学」は、またイメージが違うものなのだとか。
安藤：私が主にやっているのは、一卵性双生児と二卵性双生児の双子の“行動”について心理検査や行動検査を使って、類似性を比較する方法です。同じ遺伝子の一卵性のほうが、半分同じ二卵性よりも似ていますが、環境は同じなので、性格や行動なども比較することができます。双子の研究法の強みです。
オンエアでは「遺伝」の気になるあれこれについて安藤さんに詳しく説明してもらいました。
■生まれつきの才能は実際にある？
安藤：「生まれつき」と言うと一生変わらないイメージがありますが、双子の研究で同じ人を何年も追いかけて、遺伝の影響を見ると、“遺伝そのもの”が変わっていきます。発達とともに今までなかった遺伝的影響が出てくるんです。特に子どもの頃は変わります。
■知能は遺伝するもの？
安藤：遺伝的ではありますが、必ずしも遺伝するとは言えません。「カエルの子はカエル」というのは親の持っている特徴が、そのまま伝わるという意味です。「頭のいい親だと、子どもが頭がいい」「アスリートの子どももアスリート」など。でもこれは遺伝ではなく「表現型」という表（おもて）に現われた特色が親と子で似ているということです。伝わっているものは表に出ているものではなく「遺伝子」で、父親と母親が半分ずつランダムに合わさって、全く違う組み合わせが子どもでできる。父母のどちらとも違うんです。それぞれの影響があるので似ている部分は出てきますが、むしろ新しいものが影響して、能力や才能に影響を及ぼしていると考えられます。
■遺伝で優劣が決められているとしたら、勉強しても無駄？
安藤：とんでもありません。遺伝があるからこそ勉強をしなければならない。知識を学ばなければならない。基本的にどんな能力も、何も訓練しないでその能力を発揮されることはないですよね。私たちは、長い歴史に積み重ねられたさまざまな知識に生かされているわけで、学び、使い、人のために役立てていくことをしないと生きていけない。その人ひとりひとり、違った組み合わせの遺伝子を持っている人たちが、お互いに分けながら、お互いに活かし合う形になっているので、絶対に学習は必要です。
■「遺伝子検査」では何を知ることができる？
安藤：今は、非常に限られた4つくらいの遺伝子の影響が病気や体質に効いてくるのかを予測することができます。「太りやすい」や「乳がんになりやすい」など。ただ、これは占いみたいなもの。明日雨が降る確率が20％か25％か、くらいの情報です。
■収入は遺伝する？
安藤：大学卒業後はそんなことはありませんが、40～45歳ぐらいのときに遺伝の影響がたしか40％ぐらいになってきます。しかし、考えてみれば、どんな能力を仕事のなかで発揮するか、知能やパーソナリティだけでなく、あらゆる能力の側面に、遺伝の影響が50％ぐらいかかわってくるので、儲けられるところに入っていくことができればいいですが、そうではないところで苦労されている方もいらっしゃいます。
最後に未来の「遺伝を受け入れた社会」について安藤さんは以下のように語りました。
安藤：遺伝は生物全てをつくっている全ての素なので受け入れざるを得ません。それを前提に、能力に差があったら、それをゲノム編集で変えることより先に、今ある自然のバリエーションを活かして、みんなが幸せに生きていく社会つくることに頭を働かせていくべきでしょう。
【この記事の放送回をradikoで聴く】
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【番組情報】
番組名：「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」
放送日時：月・火・水・木曜 6時－9時
オフィシャルサイト：https://www.j-wave.co.jp/original/tmr/
安藤さんは、著書『遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である』や『日本人の9割が知らない遺伝の真実』を持つ、行動遺伝学の第一人者です。「遺伝学」のメカニズムは一般にも浸透していますが「行動遺伝学」は、またイメージが違うものなのだとか。
安藤：私が主にやっているのは、一卵性双生児と二卵性双生児の双子の“行動”について心理検査や行動検査を使って、類似性を比較する方法です。同じ遺伝子の一卵性のほうが、半分同じ二卵性よりも似ていますが、環境は同じなので、性格や行動なども比較することができます。双子の研究法の強みです。
オンエアでは「遺伝」の気になるあれこれについて安藤さんに詳しく説明してもらいました。
■生まれつきの才能は実際にある？
安藤：「生まれつき」と言うと一生変わらないイメージがありますが、双子の研究で同じ人を何年も追いかけて、遺伝の影響を見ると、“遺伝そのもの”が変わっていきます。発達とともに今までなかった遺伝的影響が出てくるんです。特に子どもの頃は変わります。
■知能は遺伝するもの？
安藤：遺伝的ではありますが、必ずしも遺伝するとは言えません。「カエルの子はカエル」というのは親の持っている特徴が、そのまま伝わるという意味です。「頭のいい親だと、子どもが頭がいい」「アスリートの子どももアスリート」など。でもこれは遺伝ではなく「表現型」という表（おもて）に現われた特色が親と子で似ているということです。伝わっているものは表に出ているものではなく「遺伝子」で、父親と母親が半分ずつランダムに合わさって、全く違う組み合わせが子どもでできる。父母のどちらとも違うんです。それぞれの影響があるので似ている部分は出てきますが、むしろ新しいものが影響して、能力や才能に影響を及ぼしていると考えられます。
■遺伝で優劣が決められているとしたら、勉強しても無駄？
安藤：とんでもありません。遺伝があるからこそ勉強をしなければならない。知識を学ばなければならない。基本的にどんな能力も、何も訓練しないでその能力を発揮されることはないですよね。私たちは、長い歴史に積み重ねられたさまざまな知識に生かされているわけで、学び、使い、人のために役立てていくことをしないと生きていけない。その人ひとりひとり、違った組み合わせの遺伝子を持っている人たちが、お互いに分けながら、お互いに活かし合う形になっているので、絶対に学習は必要です。
■「遺伝子検査」では何を知ることができる？
安藤：今は、非常に限られた4つくらいの遺伝子の影響が病気や体質に効いてくるのかを予測することができます。「太りやすい」や「乳がんになりやすい」など。ただ、これは占いみたいなもの。明日雨が降る確率が20％か25％か、くらいの情報です。
■収入は遺伝する？
安藤：大学卒業後はそんなことはありませんが、40～45歳ぐらいのときに遺伝の影響がたしか40％ぐらいになってきます。しかし、考えてみれば、どんな能力を仕事のなかで発揮するか、知能やパーソナリティだけでなく、あらゆる能力の側面に、遺伝の影響が50％ぐらいかかわってくるので、儲けられるところに入っていくことができればいいですが、そうではないところで苦労されている方もいらっしゃいます。
最後に未来の「遺伝を受け入れた社会」について安藤さんは以下のように語りました。
安藤：遺伝は生物全てをつくっている全ての素なので受け入れざるを得ません。それを前提に、能力に差があったら、それをゲノム編集で変えることより先に、今ある自然のバリエーションを活かして、みんなが幸せに生きていく社会つくることに頭を働かせていくべきでしょう。
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