J-WAVEで放送中の番組「GOOD NEIGHBORS」(ナビゲーター:クリス智子)。4月2日(月)のオンエアには、 小説家の石田衣良さんが登場。石田さんが原作の映画『娼年』についてお話を伺いました。
■見終わったあと、しっとりできる映画
映画『娼年』は4月6日(金)公開。ストーリーは、冴えない日々を送っていた大学生の主人公・リョウが娼夫になり、さまざまな女性と体を寄り添わせるようになるというもの。主演は松坂桃李さんで、濃厚なラブシーンが話題になっています。
原作は17年ほど前に発表。映画化の話はたくさんあったものの、題材が難しいため実現しませんでした。
クリス:原作は、デビュー作『池袋ウエストゲートパーク』のあとくらいに執筆されたんですよね。
石田:当時、ベットシーンを書くのが楽しくて。腕が冴えるというか。全編ベッドシーンだけでできる長編をと思って書いたのが、この作品なんです。
クリス:主人公が娼夫ということで、「この話を映画にするとどうなるんだろう?」と思わせる描写の多い小説です。
石田:主人公のリョウは、娼夫としてデビューしたときは1時間1万円で、だんだんプロになっていきます。小説はスルッと読めるんですけど、映画ってリアルだし、俳優さんの肉体があるから、ズシっときますよね。
クリス:一足先に拝見しましたが、肉体同士のコミュニケーションは大事だな、と感じられるような。
石田:カップルでも、セックスレスになってしまうと、相手が何を考えているのかわからなくなるじゃないですか。今の日本って、みんなカサカサしてるし、この映画は見終わったあとしっとりできると思うんで、ぜひカップルで行ってほしいですね(笑)。あるいは女の子同士で行くか、って感じかなあ。
クリス:性行為のシーンに妥協せず映画化されたと思いますが、それ以外にも大事なことが伝わってくる作品でした。感情をどうやって伝えたらいいのかとか、自分がどう生きてきたかとか、考えさせられました。
石田:なるほど、そう受け取りますか。僕は映画を観たあとで、ふたりでああだこうだと話しながらラブホテルに寄ってくれたら最高だと思います(笑)。
■ラブシーンで「主人公の成長を見せる」難しさ
映画の脚本・監督は三浦大輔さん。2016年に舞台化し、そのときの主演も松坂桃李さんでした。
石田:舞台版を観たときの衝撃が凄かったので、このまま映画に落とし込んでくれたら大丈夫、という絶対的な信頼感がありました。舞台、すごかったんですよ。終わったあと、ハーフマラソンを走ったかのようにぐったりするほど見応えがあって。
クリス:観たかったなあ。映画でも一糸まとわずなので、気持ちが映画に入っていけるっていう感じはありましたね。
石田:松坂桃李くんの背中とお尻の形がきれいだったのもよかったですね(笑)。今回は台詞というより、いろんなシチュエーションのベッドシーンを通して主人公の成長を描く話なので、体だけ、性行為だけでそれを見せるのは、すごく難しかったと思います。
クリス:監督の三浦さんもおっしゃってましたが、舞台だと観る側も好きな方向を見るわけですけど、映画は見せるシーンもかなり気を遣いながら、ストーリーを紡いだと思います。
石田:その点でいえば、小説は楽ですね。自分のイメージだけでつくれるから。しかも、僕が書くといやらしいシーンも透明感があってピシッと締まるので、そういう意味では楽しい仕事でしたね。
■セックス=表に出してはいけないもの、ではない
石田さんによると、『娼年』は小説、舞台、映画でそれぞれ全く異なるそうです。
石田:小説と映画や舞台は、鶏と魚ぐらい違うんです。刺身はおいしいですよね。フライドチキンもおいしいけど、フライドチキンと刺身のおいしさは比べられないじゃないですか。僕は圧倒的に刺身の小説を書いているので、脂っこいところは映像のほうにいくんだろうな、っていう気がします。映像は、演出や監督のものですからね。脚本とかは読ませてもらいますが、たいして手を入れたりはしません。
石田さんは、最近の映画は明るくポップな作品が多いので、『娼年』のように大人の女性がしっとりできるような映画が年に1、2本あっていいのでは、と語ります。
石田:今の時代って、セックス自体をクローゼットの中に押し込んで、表に出してはいけないものだという思い込みがあると思うんです。ぜんぜんそんなことないのに。
クリス:映画の雰囲気は、香港映画やアジアの艶っぽさがありますよね。照明もちょっと暗くて、日本映画でこういうのがたくさんあるといいなって思いました。
石田:アジア系の人の体のスレンダーな美しさだったり、湿り気のようなものが醸し出されていましたよね。
クリス:隠してる“隠”の部分も、内面的なことも含めて、炙り出されてくるってことですよね。
石田:外国の人が見たらすごく面白いと思うんですよ。今の東京はこういう感じなんだと。日本人の性に、こんな多彩な在り方があるんだとびっくりすると思います。
映画『娼年』は現在公開中。石田さんによると、主人公のリョウは『池袋ウエストゲートパーク』に登場するタカシに並ぶ人気キャラで、「1時間1万円で買えるなら私が買う、とよく言われます。僕も買いたいですよ!(笑)」とのこと。そんなリョウの魅力が映画ではどのように描かれているか、気になる方はスクリーンへ!
また、石田さんの小説も、『娼年』『逝年』に続く最終章『爽年』が発売されたばかりです。
クリス:映画公開にタイミングを合わせてきましたね!
石田:きつかった、スケジュールが……(笑)。『娼年』では、大学生がいろいろな性の世界を味わいながら成長していきます。2作目ではその幅が広がり、心の病のような問題を描きました。『爽年』が出るまでは7年くらい離れていますが、だんだんと性を描くのが難しくなりました。小説って現実よりちょっと尖らないといけないんで、今の日本の性の不可能性みたいなものが前面に出てきてしまったなと、自分でも意外でした。物語は、すごい虐待があったり、無性愛の人が出てきたり、性の辺境のほうに旅をする話になりました。
『爽年』もぜひチェックしてみてください。
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【番組情報】
番組名:「GOOD NEIGHBORS」
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/
■見終わったあと、しっとりできる映画
映画『娼年』は4月6日(金)公開。ストーリーは、冴えない日々を送っていた大学生の主人公・リョウが娼夫になり、さまざまな女性と体を寄り添わせるようになるというもの。主演は松坂桃李さんで、濃厚なラブシーンが話題になっています。
原作は17年ほど前に発表。映画化の話はたくさんあったものの、題材が難しいため実現しませんでした。
クリス:原作は、デビュー作『池袋ウエストゲートパーク』のあとくらいに執筆されたんですよね。
石田:当時、ベットシーンを書くのが楽しくて。腕が冴えるというか。全編ベッドシーンだけでできる長編をと思って書いたのが、この作品なんです。
クリス:主人公が娼夫ということで、「この話を映画にするとどうなるんだろう?」と思わせる描写の多い小説です。
石田:主人公のリョウは、娼夫としてデビューしたときは1時間1万円で、だんだんプロになっていきます。小説はスルッと読めるんですけど、映画ってリアルだし、俳優さんの肉体があるから、ズシっときますよね。
クリス:一足先に拝見しましたが、肉体同士のコミュニケーションは大事だな、と感じられるような。
石田:カップルでも、セックスレスになってしまうと、相手が何を考えているのかわからなくなるじゃないですか。今の日本って、みんなカサカサしてるし、この映画は見終わったあとしっとりできると思うんで、ぜひカップルで行ってほしいですね(笑)。あるいは女の子同士で行くか、って感じかなあ。
クリス:性行為のシーンに妥協せず映画化されたと思いますが、それ以外にも大事なことが伝わってくる作品でした。感情をどうやって伝えたらいいのかとか、自分がどう生きてきたかとか、考えさせられました。
石田:なるほど、そう受け取りますか。僕は映画を観たあとで、ふたりでああだこうだと話しながらラブホテルに寄ってくれたら最高だと思います(笑)。
■ラブシーンで「主人公の成長を見せる」難しさ
映画の脚本・監督は三浦大輔さん。2016年に舞台化し、そのときの主演も松坂桃李さんでした。
石田:舞台版を観たときの衝撃が凄かったので、このまま映画に落とし込んでくれたら大丈夫、という絶対的な信頼感がありました。舞台、すごかったんですよ。終わったあと、ハーフマラソンを走ったかのようにぐったりするほど見応えがあって。
クリス:観たかったなあ。映画でも一糸まとわずなので、気持ちが映画に入っていけるっていう感じはありましたね。
石田:松坂桃李くんの背中とお尻の形がきれいだったのもよかったですね(笑)。今回は台詞というより、いろんなシチュエーションのベッドシーンを通して主人公の成長を描く話なので、体だけ、性行為だけでそれを見せるのは、すごく難しかったと思います。
クリス:監督の三浦さんもおっしゃってましたが、舞台だと観る側も好きな方向を見るわけですけど、映画は見せるシーンもかなり気を遣いながら、ストーリーを紡いだと思います。
石田:その点でいえば、小説は楽ですね。自分のイメージだけでつくれるから。しかも、僕が書くといやらしいシーンも透明感があってピシッと締まるので、そういう意味では楽しい仕事でしたね。
■セックス=表に出してはいけないもの、ではない
石田さんによると、『娼年』は小説、舞台、映画でそれぞれ全く異なるそうです。
石田:小説と映画や舞台は、鶏と魚ぐらい違うんです。刺身はおいしいですよね。フライドチキンもおいしいけど、フライドチキンと刺身のおいしさは比べられないじゃないですか。僕は圧倒的に刺身の小説を書いているので、脂っこいところは映像のほうにいくんだろうな、っていう気がします。映像は、演出や監督のものですからね。脚本とかは読ませてもらいますが、たいして手を入れたりはしません。
石田さんは、最近の映画は明るくポップな作品が多いので、『娼年』のように大人の女性がしっとりできるような映画が年に1、2本あっていいのでは、と語ります。
石田:今の時代って、セックス自体をクローゼットの中に押し込んで、表に出してはいけないものだという思い込みがあると思うんです。ぜんぜんそんなことないのに。
クリス:映画の雰囲気は、香港映画やアジアの艶っぽさがありますよね。照明もちょっと暗くて、日本映画でこういうのがたくさんあるといいなって思いました。
石田:アジア系の人の体のスレンダーな美しさだったり、湿り気のようなものが醸し出されていましたよね。
クリス:隠してる“隠”の部分も、内面的なことも含めて、炙り出されてくるってことですよね。
石田:外国の人が見たらすごく面白いと思うんですよ。今の東京はこういう感じなんだと。日本人の性に、こんな多彩な在り方があるんだとびっくりすると思います。
映画『娼年』は現在公開中。石田さんによると、主人公のリョウは『池袋ウエストゲートパーク』に登場するタカシに並ぶ人気キャラで、「1時間1万円で買えるなら私が買う、とよく言われます。僕も買いたいですよ!(笑)」とのこと。そんなリョウの魅力が映画ではどのように描かれているか、気になる方はスクリーンへ!
また、石田さんの小説も、『娼年』『逝年』に続く最終章『爽年』が発売されたばかりです。
クリス:映画公開にタイミングを合わせてきましたね!
石田:きつかった、スケジュールが……(笑)。『娼年』では、大学生がいろいろな性の世界を味わいながら成長していきます。2作目ではその幅が広がり、心の病のような問題を描きました。『爽年』が出るまでは7年くらい離れていますが、だんだんと性を描くのが難しくなりました。小説って現実よりちょっと尖らないといけないんで、今の日本の性の不可能性みたいなものが前面に出てきてしまったなと、自分でも意外でした。物語は、すごい虐待があったり、無性愛の人が出てきたり、性の辺境のほうに旅をする話になりました。
『爽年』もぜひチェックしてみてください。
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【番組情報】
番組名:「GOOD NEIGHBORS」
放送日時:月・火・水・木曜 13時-16時30分
オフィシャルサイト:http://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/