J-WAVEで放送中の番組「RADIO DONUTS」(ナビゲーター:渡辺 祐・山田玲奈)のワンコーナー「TOKYO GAS LIFE IS A GIFT」。3月24日(土)のオンエアでは、第90回アカデミー賞授賞式で、日本人初「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」を受賞した現代美術家・辻 一弘さんが登場。映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で、主演のゲイリー・オールドマンさんを変身させた、そのスキルに到達するまでの道のりを伺いました。
■特殊メイクの巨匠ディック・スミスに魅せられて…
京都出身の辻さんは、ハリウッドで25年以上特殊メイクアップアーティストとして活躍し、過去に2度オスカーにノミネートされました。2012年以降は彫刻芸術に専念し、ロサンゼルスを拠点に現代美術家として活動しています。そんな辻さんに、特殊メイクとの出会いについて伺いました。
辻:『スター・ウォーズ』を観て、特殊効果に興味を持ちました。学校が大嫌いで、ひとりで籠って何かを作るのが好きで。高校3年のときに京都の洋書店で、『ファンゴリア』というアメリカのホラー雑誌を見つけて。ディック・スミスさんというメイクアップアーティストの記事があって、リンカーンのメイクをするプロセスの写真を見て、「もうこれしかない」と思って。次の日から図書館で資料を集めて、自分の顔型にリンカーンの彫刻をして。満足するまで繰り返しました。
特殊メイクを自己流で研究し、巨匠であるディック・スミスさんに「将来、特殊メイクをしたいけれど、どうやって勉強したらいいのか」と手紙で質問したところ、返事が返ってきたそう。その後も写真を送っては評価してもらうという文通を続け、1987年10月に東京で行われたハロウィン・コンテストで特別審査員として来日したディックさんと面会します。翌年、ディックさんが監修した日本映画『スウィートホーム』にスタッフとして参加するため、高校卒業後すぐに東京に移り住みました。
■「自分の人生を裏切るのではないか」という苦悩
その後、多くのハリウッド作品に関わった辻さんですが、映画の世界が嫌になり、現代美術の世界に身を置きます。それなのになぜ、映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で、再び特殊メイクを手がけたのでしょうか。
辻:ゲイリー(・オールドマン)さんが、2002年にディックさんの誕生日のために作った僕の彫刻を見て感動して、「いつか一緒に仕事をしたい」と思っていたそうです。2016年にメールが届いて「ウィンストン・チャーチルの映画を撮るんだけど、もし僕(辻さん)がメイクをやるのであれば映画をつくるけど、できないのであれば作らない。どうする?」と訊かれて。2012年に映画の世界が嫌になって芸術の世界に進んで、ずっと映画の仕事は取ってなかったんです。それなのに突然映画の仕事を取ったら、自分の人生を裏切っているように思えて、しばらく悩みました。その結果、「今まで一番やりたかった仕事なのでやっておくべきだな」と決めたんです。
辻さんは、ゲイリーさんを丸顔のチャーチルに似せるため、素材の柔らかいものを使用し、かつらをカットするなどの工夫を重ね、「特殊メイクである」とわからないほど自然な仕上がりになるよう心掛けました。その甲斐あって、ゲイリーさんが「絶対条件」としてこだわった辻さんの特殊メイクが完成しました。
■「人の顔」にこだわり続ける理由
辻さんは現在、現代美術家として人の顔をした大きな彫刻を作り続けています。辻さんはなぜ「人の顔」にこだわるのでしょうか?
辻:子どものときに人間不信になって、人の顔を見て「この人は何を考えてるのか」ということをよく考えてたんです。その経験から自然に興味を持つようになったんです。人の顔を見るといろんな考えが湧くんです。僕の題材は、子どものときに悪い体験をした人や身体障がいを持った人が、大人になる段階で人生を開拓し、素晴らしい人になった、そんな人たちをポートレートとして表現しています。僕はもうすぐ50歳で、作り続けて30年になるので、目標としては数年後に日本で個展を開きたい。それに向けて準備をしています。
「人の顔」にこだわり、創作活動を続ける辻さん。映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、3月30日(金)に全国で公開されます。作品を観る際には、辻さんの特殊メイク技術にも注目してみてください!
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【番組情報】
番組名:「RADIO DONUTS」
放送日時:土曜 8時-12時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/radiodonuts/
■特殊メイクの巨匠ディック・スミスに魅せられて…
京都出身の辻さんは、ハリウッドで25年以上特殊メイクアップアーティストとして活躍し、過去に2度オスカーにノミネートされました。2012年以降は彫刻芸術に専念し、ロサンゼルスを拠点に現代美術家として活動しています。そんな辻さんに、特殊メイクとの出会いについて伺いました。
辻:『スター・ウォーズ』を観て、特殊効果に興味を持ちました。学校が大嫌いで、ひとりで籠って何かを作るのが好きで。高校3年のときに京都の洋書店で、『ファンゴリア』というアメリカのホラー雑誌を見つけて。ディック・スミスさんというメイクアップアーティストの記事があって、リンカーンのメイクをするプロセスの写真を見て、「もうこれしかない」と思って。次の日から図書館で資料を集めて、自分の顔型にリンカーンの彫刻をして。満足するまで繰り返しました。
特殊メイクを自己流で研究し、巨匠であるディック・スミスさんに「将来、特殊メイクをしたいけれど、どうやって勉強したらいいのか」と手紙で質問したところ、返事が返ってきたそう。その後も写真を送っては評価してもらうという文通を続け、1987年10月に東京で行われたハロウィン・コンテストで特別審査員として来日したディックさんと面会します。翌年、ディックさんが監修した日本映画『スウィートホーム』にスタッフとして参加するため、高校卒業後すぐに東京に移り住みました。
■「自分の人生を裏切るのではないか」という苦悩
その後、多くのハリウッド作品に関わった辻さんですが、映画の世界が嫌になり、現代美術の世界に身を置きます。それなのになぜ、映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』で、再び特殊メイクを手がけたのでしょうか。
辻:ゲイリー(・オールドマン)さんが、2002年にディックさんの誕生日のために作った僕の彫刻を見て感動して、「いつか一緒に仕事をしたい」と思っていたそうです。2016年にメールが届いて「ウィンストン・チャーチルの映画を撮るんだけど、もし僕(辻さん)がメイクをやるのであれば映画をつくるけど、できないのであれば作らない。どうする?」と訊かれて。2012年に映画の世界が嫌になって芸術の世界に進んで、ずっと映画の仕事は取ってなかったんです。それなのに突然映画の仕事を取ったら、自分の人生を裏切っているように思えて、しばらく悩みました。その結果、「今まで一番やりたかった仕事なのでやっておくべきだな」と決めたんです。
辻さんは、ゲイリーさんを丸顔のチャーチルに似せるため、素材の柔らかいものを使用し、かつらをカットするなどの工夫を重ね、「特殊メイクである」とわからないほど自然な仕上がりになるよう心掛けました。その甲斐あって、ゲイリーさんが「絶対条件」としてこだわった辻さんの特殊メイクが完成しました。
■「人の顔」にこだわり続ける理由
辻さんは現在、現代美術家として人の顔をした大きな彫刻を作り続けています。辻さんはなぜ「人の顔」にこだわるのでしょうか?
辻:子どものときに人間不信になって、人の顔を見て「この人は何を考えてるのか」ということをよく考えてたんです。その経験から自然に興味を持つようになったんです。人の顔を見るといろんな考えが湧くんです。僕の題材は、子どものときに悪い体験をした人や身体障がいを持った人が、大人になる段階で人生を開拓し、素晴らしい人になった、そんな人たちをポートレートとして表現しています。僕はもうすぐ50歳で、作り続けて30年になるので、目標としては数年後に日本で個展を開きたい。それに向けて準備をしています。
「人の顔」にこだわり、創作活動を続ける辻さん。映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』は、3月30日(金)に全国で公開されます。作品を観る際には、辻さんの特殊メイク技術にも注目してみてください!
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番組名:「RADIO DONUTS」
放送日時:土曜 8時-12時
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