【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.36)
「昔に戻れるなら、何歳に戻りたい?」という話になることがありますが、私だったら大学生に戻って、変わった学部で学びたいところです。変わった学部といえば、京都精華大学に2006年に設置されたマンガ学部。カートゥーンコース、ストーリーマンガコース、さらにはギャグマンガコースもあります。“現代版トキワ荘”みたいで興味が湧きますが、仮に朝の1限目からギャグを考えるのは大変そうです。また、埼玉と千葉にキャンパスをもつ明海大学には、不動産学部なるのもがあります。なんと、成績優秀者は、“不動産学の本場”イギリスにあるケンブリッジ大学に留学して、イギリスの都市環境、不動産事情を学ぶ機会が得られます。イギリスが“不動産の本場”と分かっただけでも、一つ賢くなった気がします。
ギャグマンガコースはギャグマンガ家を目指す人、不動産学部は実家が不動産関係の仕事をしている人、もしくは不動産の仕事を目指している人…という風に、志望する学生の動機は想像できますが、なかには「なぜこの分野に興味を持ったのだろう」と動機が気になるような分野もあります。そんな分野のひとつ、インド哲学を学んだのが、前回のコラムで紹介した女優の杏さんと一緒に、J-WAVEのラジオ番組「BOOK BAR」(土曜 22時)に出演している大倉眞一郎さんです。
大倉さんが、インド哲学に興味をもった理由については、以前放送された「BOOK BAR」で、大倉さんが「私の人生を方向付けた本」として、横尾忠則の画集『千年王国への旅』(講談社)を紹介した時にその答えが出てきました。
『千年王国への旅』は、インドをモチーフに瞑想的なコラージュや絵画作品を掲載したもので、大倉さんは高校生の時に広告で画集の存在を知り、その美しい体裁に、“雷に打たれたような衝撃”を受けたそうです。ところが、大倉さん曰く“家はケチ”で、自転車は人に譲ってもらったボロボロの自転車を使い、本も買ってもらえない家だったため、楽器などの欲しいものはバイトで貯めて買っていたとか。ところがこの画集は限定品で2万円もしたため、バイトをしている間になくなってしまってはいけないとのことで、人生で初めて両親におねだりをして買ってもらったそうです。その4年後に、大倉さんは初めてインドを訪れました。「あの時にこの画集を買っていなかったら、今の自分はなかったかもしれない」とまで仰っていました。ちなみに、横尾さんは画集を発売した時点では、インドに行ったことはなかったそうです。
余談ですが、私が尊敬する高田純次さんも横尾さんを崇拝している一人です。高田さんはイラストの専門学校でデザインの勉強していたこともあり、『Y字路』が大のお気に入り。過去に横尾さんと対談をしたこともあります。その時の高田さんは、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ)で清川虹子さんの指輪を食べようした“芸能人”の高田さんではなく、完全に“いちファン”としての高田さんと化していました。
話を元に戻しますが、大倉さんは興味の幅が広いだけあって、時代小説、食文化に関する本、ルポルタージュ、写真集から、「マンガ大賞」を受賞したマンガまで、いろいろなジャンルの本を番組で紹介しています。麺類も好きで、杏さんが、変わった本を紹介した『ベスト珍書 - このヘンな本がすごい!』(中央公論新社)を紹介した時は、その中の1冊『背脂番付』に注目していました。文字通り、背脂の美味しいラーメン屋に注目したニッチなグルメ本です。麺が好きな大倉さんならではのチョイス。ただし、歳を重ねるにつれて体が背脂を受け付けなくなってきたそうで「昔は好きで“背脂チャッチャ系”を食べていたのに、今は“背脂チャ”ぐらいでいいかな…」と少しションボリとした様子で話していました。
そんな大倉さんが紹介している本のなかでも、私が気になったのは、恋愛に関する本です。最近の放送では、「東京ラブストーリー」「Mother」「カルテット」など、あらゆる世代に人気の脚本家、坂元裕二さんの最新刊『往復書簡 初恋と不倫』(リトル・モア)、34歳の女性と58歳の男性とのプラトニックな恋を描いた川上美映子さん著による小説『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)、はたまた、中島弘象さんによる『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮社)までさまざまです。『フィリピンパブ嬢の社会学』を恋愛モノの本に入れていいかどうかはさておき、興味深いところです。こちらは、真面目に国際政治学の勉強をしていた著者が、先輩に連れられてフィリピンパブに足を踏み入れたことがきっかけで人生が一変。修士論文のテーマの調査対象だったホステスと恋に落ち、不当な雇用、偽装結婚など、社会の裏側をまとめた1冊です。
ちなみに、大倉さんが『すべて真夜中の恋人たち』を手に取った理由は、ふと「恋愛って、どんなんだっけ?」と思ったからだそうです。思わず、「大倉さん、急にどうしたんでしょう?」と思ってしまいましたが、人間は楽しかった体験を振り返るだけでも若返るそうなので、本を片手に“背脂チャッチャ系”のラーメンを、20代に負けないくらいの勢いで食べてみるのはどうでしょう。私も“あの頃”を思い出すために食べようかな。
BOOK BAR http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/
「昔に戻れるなら、何歳に戻りたい?」という話になることがありますが、私だったら大学生に戻って、変わった学部で学びたいところです。変わった学部といえば、京都精華大学に2006年に設置されたマンガ学部。カートゥーンコース、ストーリーマンガコース、さらにはギャグマンガコースもあります。“現代版トキワ荘”みたいで興味が湧きますが、仮に朝の1限目からギャグを考えるのは大変そうです。また、埼玉と千葉にキャンパスをもつ明海大学には、不動産学部なるのもがあります。なんと、成績優秀者は、“不動産学の本場”イギリスにあるケンブリッジ大学に留学して、イギリスの都市環境、不動産事情を学ぶ機会が得られます。イギリスが“不動産の本場”と分かっただけでも、一つ賢くなった気がします。
ギャグマンガコースはギャグマンガ家を目指す人、不動産学部は実家が不動産関係の仕事をしている人、もしくは不動産の仕事を目指している人…という風に、志望する学生の動機は想像できますが、なかには「なぜこの分野に興味を持ったのだろう」と動機が気になるような分野もあります。そんな分野のひとつ、インド哲学を学んだのが、前回のコラムで紹介した女優の杏さんと一緒に、J-WAVEのラジオ番組「BOOK BAR」(土曜 22時)に出演している大倉眞一郎さんです。
大倉さんが、インド哲学に興味をもった理由については、以前放送された「BOOK BAR」で、大倉さんが「私の人生を方向付けた本」として、横尾忠則の画集『千年王国への旅』(講談社)を紹介した時にその答えが出てきました。
『千年王国への旅』は、インドをモチーフに瞑想的なコラージュや絵画作品を掲載したもので、大倉さんは高校生の時に広告で画集の存在を知り、その美しい体裁に、“雷に打たれたような衝撃”を受けたそうです。ところが、大倉さん曰く“家はケチ”で、自転車は人に譲ってもらったボロボロの自転車を使い、本も買ってもらえない家だったため、楽器などの欲しいものはバイトで貯めて買っていたとか。ところがこの画集は限定品で2万円もしたため、バイトをしている間になくなってしまってはいけないとのことで、人生で初めて両親におねだりをして買ってもらったそうです。その4年後に、大倉さんは初めてインドを訪れました。「あの時にこの画集を買っていなかったら、今の自分はなかったかもしれない」とまで仰っていました。ちなみに、横尾さんは画集を発売した時点では、インドに行ったことはなかったそうです。
余談ですが、私が尊敬する高田純次さんも横尾さんを崇拝している一人です。高田さんはイラストの専門学校でデザインの勉強していたこともあり、『Y字路』が大のお気に入り。過去に横尾さんと対談をしたこともあります。その時の高田さんは、「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ)で清川虹子さんの指輪を食べようした“芸能人”の高田さんではなく、完全に“いちファン”としての高田さんと化していました。
話を元に戻しますが、大倉さんは興味の幅が広いだけあって、時代小説、食文化に関する本、ルポルタージュ、写真集から、「マンガ大賞」を受賞したマンガまで、いろいろなジャンルの本を番組で紹介しています。麺類も好きで、杏さんが、変わった本を紹介した『ベスト珍書 - このヘンな本がすごい!』(中央公論新社)を紹介した時は、その中の1冊『背脂番付』に注目していました。文字通り、背脂の美味しいラーメン屋に注目したニッチなグルメ本です。麺が好きな大倉さんならではのチョイス。ただし、歳を重ねるにつれて体が背脂を受け付けなくなってきたそうで「昔は好きで“背脂チャッチャ系”を食べていたのに、今は“背脂チャ”ぐらいでいいかな…」と少しションボリとした様子で話していました。
そんな大倉さんが紹介している本のなかでも、私が気になったのは、恋愛に関する本です。最近の放送では、「東京ラブストーリー」「Mother」「カルテット」など、あらゆる世代に人気の脚本家、坂元裕二さんの最新刊『往復書簡 初恋と不倫』(リトル・モア)、34歳の女性と58歳の男性とのプラトニックな恋を描いた川上美映子さん著による小説『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)、はたまた、中島弘象さんによる『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮社)までさまざまです。『フィリピンパブ嬢の社会学』を恋愛モノの本に入れていいかどうかはさておき、興味深いところです。こちらは、真面目に国際政治学の勉強をしていた著者が、先輩に連れられてフィリピンパブに足を踏み入れたことがきっかけで人生が一変。修士論文のテーマの調査対象だったホステスと恋に落ち、不当な雇用、偽装結婚など、社会の裏側をまとめた1冊です。
ちなみに、大倉さんが『すべて真夜中の恋人たち』を手に取った理由は、ふと「恋愛って、どんなんだっけ?」と思ったからだそうです。思わず、「大倉さん、急にどうしたんでしょう?」と思ってしまいましたが、人間は楽しかった体験を振り返るだけでも若返るそうなので、本を片手に“背脂チャッチャ系”のラーメンを、20代に負けないくらいの勢いで食べてみるのはどうでしょう。私も“あの頃”を思い出すために食べようかな。
BOOK BAR http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/