【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.35)
ラジオやテレビから「いやぁ、すっかり秋になりましたね。秋といえば、読書の秋ですね」という声が聞こえてくる季節になりました。私としては、この言葉は耳が痛いものがあります。以前にも少し触れましたが、私はどうしようもないくらいに、本を読むのが遅いのです。10ページを読むのに1時間もかかることがあります。その理由は、文章中に出てくる単語にいちいち反応してしまうから。例えば、“山田さん”という登場人物が出てくると、「そういえば、中学の時に山田っていう同級生がいたな。元気かな。5人兄弟だったよな」といった感じで、脇道に逸れてしまい、本文に戻る頃にはそれまでの内容を忘れてしまう…という始末なのです。そのわりに、気になった本が売り切れるのが嫌で、とりあえず買っておくため、私の部屋には読んでいない本が200冊以上も鎮座しています。私が本に生まれていたら「読んでくれないんだったら、印刷された意味がない!(プンスカ、プンスカ)」とスネているかもしれません。
そんな私が、このところキッチリと読んでいるのが『十歳までに読んだ本』(ポプラ社)です。女優の吉岡里帆さん、ジャーナリストの安田菜津紀さん、モデルの市川紗椰さん、小説家の西加奈子さんら、総勢70名が子どもの頃に読んだ本の考察や、当時のエピソードについて書いたエッセイです。私が好きな人が何人も登場していて、1人につき4〜5ページほどの短さです。これなら読めます!
例えば、穂村弘さんは『ちいさいモモちゃん』を例に、幸福論について解説しています。新日本プロレス所属の棚橋弘至さんに至っては、『泣いた赤おに』から読みとれる自己犠牲の大切さを、2012年に行われた鈴木みのる選手との試合後のコメントと照らし合わせて紹介しています。この本を読んで、紹介されている本をもう一度読み返すと、少し成長したような気持ちになれます。
J-WAVEで本の魅力を紹介しているラジオ番組「BOOK BAR」(土曜 22時)で、大倉眞一郎さんと共にナビゲーターを務める杏さんも、この本の中で執筆しています。小学生時代は、学校の図書館に通い詰めていたという杏さんは、『ハイジ』のシリーズを推薦しました。文字が小さくて上下巻に分かれていたため、読破することに「大人の証」を感じたそうです。
“大人”といえば、杏さんは字も綺麗です。先日の放送で、杏さんは話題の本『字が汚い!』(文藝春秋)を紹介していて、放送中に字を書いていました。特に「お」「と」「わ」が綺麗です。同書の著者・新保信長さんによると「お」は丸い部分を小さく書いた方が大人の字に見えるそうで、そのことがよく分かります(実際に書かれたものは、番組のサイトで公開されています)。縦書きで書いた割には、書くのが早くて達筆だったため、大倉さんは感動していました。
また、杏さんが紹介する本のジャンルがバラエティに富んでいる点にも注目です。最近紹介した本をざっと挙げてみると、穂村弘さんのエッセイ集『蚊がいる』(KADOKAWA)、武者小路実篤による妄想の恋の物語『お目出たき人』(新潮社)、さらには『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』(ナショナルジオグラフィック)、『江戸の躾と子育て』(祥伝社)、『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』(インターシフト)などなど…。
いろいろな本を読んでいて、歴史にも詳しくて、字も上手で非の打ち所がありません。おまけに、放送で本を紹介する時も丁寧な語り口であるため頭に入ってきやすく、相槌も心地が良いため、大倉さんのトークの邪魔をしません。大倉さんが気持ち良く話しているのが、ラジオを通じて伝わってきます。
杏さんはエッセイも人気です。楽しい文章のルーツは日記にあるようで、杏さんが通っていた小学校では、6年を通じて日記を毎日書かないといけない決まりがあったそうです。卒業時には68冊にもなったとか。子どもの頃の思い出が蘇るのは、日記の賜物です。
常にしっかりとしているイメージの杏さんですが、そんな小学生の低学年頃から、人を観察する能力にも長けていたようです。この頃は、中学生や小学6年生でも大人に見えますが、大人に見せかけて、大人とまではいえないような“セミ大人”な人も多いです。その違いを杏さんは傘の持ち方で見分けていたとか。普通に斜めの角度に傾けるのは“セミ大人”。迫り来る風雨の威力にも負けず、勇敢にも(盾のように)縦にして持つ人は大人…と判断していたそうです。確かに、よほど風雨が強く、風が前方から吹いている時には、斜めに傾けただけでは埒ががあきません。ちなみに、私は大人になってからある程度の年数が経ちましたが、未だに傘の持ち方に自信がありません。濡れないように持ったつもりが、下半身がズブ濡れになっていたりします。もしも『出しい傘の持ち方』という本が発売されたら、すぐに買います。「BOOK BAR」で紹介された暁には、杏さんは“大人の傘の持ち方”について語ることでしょう。
BOOK BAR http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/
ラジオやテレビから「いやぁ、すっかり秋になりましたね。秋といえば、読書の秋ですね」という声が聞こえてくる季節になりました。私としては、この言葉は耳が痛いものがあります。以前にも少し触れましたが、私はどうしようもないくらいに、本を読むのが遅いのです。10ページを読むのに1時間もかかることがあります。その理由は、文章中に出てくる単語にいちいち反応してしまうから。例えば、“山田さん”という登場人物が出てくると、「そういえば、中学の時に山田っていう同級生がいたな。元気かな。5人兄弟だったよな」といった感じで、脇道に逸れてしまい、本文に戻る頃にはそれまでの内容を忘れてしまう…という始末なのです。そのわりに、気になった本が売り切れるのが嫌で、とりあえず買っておくため、私の部屋には読んでいない本が200冊以上も鎮座しています。私が本に生まれていたら「読んでくれないんだったら、印刷された意味がない!(プンスカ、プンスカ)」とスネているかもしれません。
そんな私が、このところキッチリと読んでいるのが『十歳までに読んだ本』(ポプラ社)です。女優の吉岡里帆さん、ジャーナリストの安田菜津紀さん、モデルの市川紗椰さん、小説家の西加奈子さんら、総勢70名が子どもの頃に読んだ本の考察や、当時のエピソードについて書いたエッセイです。私が好きな人が何人も登場していて、1人につき4〜5ページほどの短さです。これなら読めます!
例えば、穂村弘さんは『ちいさいモモちゃん』を例に、幸福論について解説しています。新日本プロレス所属の棚橋弘至さんに至っては、『泣いた赤おに』から読みとれる自己犠牲の大切さを、2012年に行われた鈴木みのる選手との試合後のコメントと照らし合わせて紹介しています。この本を読んで、紹介されている本をもう一度読み返すと、少し成長したような気持ちになれます。
J-WAVEで本の魅力を紹介しているラジオ番組「BOOK BAR」(土曜 22時)で、大倉眞一郎さんと共にナビゲーターを務める杏さんも、この本の中で執筆しています。小学生時代は、学校の図書館に通い詰めていたという杏さんは、『ハイジ』のシリーズを推薦しました。文字が小さくて上下巻に分かれていたため、読破することに「大人の証」を感じたそうです。
“大人”といえば、杏さんは字も綺麗です。先日の放送で、杏さんは話題の本『字が汚い!』(文藝春秋)を紹介していて、放送中に字を書いていました。特に「お」「と」「わ」が綺麗です。同書の著者・新保信長さんによると「お」は丸い部分を小さく書いた方が大人の字に見えるそうで、そのことがよく分かります(実際に書かれたものは、番組のサイトで公開されています)。縦書きで書いた割には、書くのが早くて達筆だったため、大倉さんは感動していました。
また、杏さんが紹介する本のジャンルがバラエティに富んでいる点にも注目です。最近紹介した本をざっと挙げてみると、穂村弘さんのエッセイ集『蚊がいる』(KADOKAWA)、武者小路実篤による妄想の恋の物語『お目出たき人』(新潮社)、さらには『100年前の写真で見る 世界の民族衣装』(ナショナルジオグラフィック)、『江戸の躾と子育て』(祥伝社)、『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』(インターシフト)などなど…。
いろいろな本を読んでいて、歴史にも詳しくて、字も上手で非の打ち所がありません。おまけに、放送で本を紹介する時も丁寧な語り口であるため頭に入ってきやすく、相槌も心地が良いため、大倉さんのトークの邪魔をしません。大倉さんが気持ち良く話しているのが、ラジオを通じて伝わってきます。
杏さんはエッセイも人気です。楽しい文章のルーツは日記にあるようで、杏さんが通っていた小学校では、6年を通じて日記を毎日書かないといけない決まりがあったそうです。卒業時には68冊にもなったとか。子どもの頃の思い出が蘇るのは、日記の賜物です。
常にしっかりとしているイメージの杏さんですが、そんな小学生の低学年頃から、人を観察する能力にも長けていたようです。この頃は、中学生や小学6年生でも大人に見えますが、大人に見せかけて、大人とまではいえないような“セミ大人”な人も多いです。その違いを杏さんは傘の持ち方で見分けていたとか。普通に斜めの角度に傾けるのは“セミ大人”。迫り来る風雨の威力にも負けず、勇敢にも(盾のように)縦にして持つ人は大人…と判断していたそうです。確かに、よほど風雨が強く、風が前方から吹いている時には、斜めに傾けただけでは埒ががあきません。ちなみに、私は大人になってからある程度の年数が経ちましたが、未だに傘の持ち方に自信がありません。濡れないように持ったつもりが、下半身がズブ濡れになっていたりします。もしも『出しい傘の持ち方』という本が発売されたら、すぐに買います。「BOOK BAR」で紹介された暁には、杏さんは“大人の傘の持ち方”について語ることでしょう。
BOOK BAR http://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/