人気写真家・奥山由之がポン酢をこぼされたらどうするか

【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.26)

「親しみやすそうに見えるけど、ものすごい人」って、いませんか? 例えば、元フィギュアスケート選手の織田信成さんや、CMにも出演して、キュートな笑顔で人気急上昇中の女性騎手・藤田菜七子さん。 写真家の奥山由之さんも、見た目は普通の26歳のヒョロッとした男性で、田舎のお母さんが見たら「ちゃんと、野菜食べてる?」と心配して段ボールいっぱいに入ったジャガイモを送ってきそうな雰囲気なのですが、実は近年の写真界を牽引する気鋭の若手写真家として注目されているすごい人なのです。私は何度かトークショーに行きましたが、いつもニコニコしていらっしゃいます。

奥山さんは、写真界の登竜門である第34回写真新世紀で、弱冠20歳で優秀賞を受賞。広告や「GINZA」などのファッション誌、サカナクションやnever young beachのミュージックビデオの映像制作、他にも多方面に渡って活躍しています。

J-WAVEで現在放送中の「ZOO ZOO ZOO」(金曜 25時30分)では、奥山さんとnever young beachの安部勇磨さんの二人で、楽しいトークを繰り広げています。二人はお互いの家を行き来するほどの仲の良さで、安部さんが奥山さんの家に行った時には、床に寝転びながら曲を考えたこともあるとか。

また、年明けには安部さんの家でカニ鍋をしながら放送したこともありました。最中に安部さんがカニ鍋のポン酢が入っていた皿をひっくり返すというハプニングも。聴いているとゆるいトークをしているように感じますが、随所に「はっ!」と気付かされる発言が散りばめられているため、油断ができません。

ゴールデンウイークには表参道ヒルズにて、奥山由之写真展 『君の住む街』が開催されました。広瀬すずさん、中条あやみさん、二階堂ふみさん、飯豊まりえさん、吉岡里帆さん、 小芝風花さんといった、今を代表する35人の人気女優をポラロイドで撮影した写真を展示。いずれの女優の表情も、まるで恋人の前でしか見せないような“彼女顔”と化していました。

私は2回行きましたが、見に来ている人は18〜22歳ぐらいの若い人たちばかりで、しかも、半分以上はカップルでした。

彼女:いいなぁ。こういう写真、私も撮られたい!
大学の写真学科に通う彼氏:じゃあ、近くの公園で撮ろうか

…彼氏はスマートフォン、もしくは手持ちのカメラで撮ろうとします。ところが、良い撮影場所が見つからないわ、いざ撮影しても彼女の表情が良く撮れないわ、何枚撮っても、ありきたりの写真しか撮れないわ…。奥山さんが撮影するような、味のある写真は簡単には撮れないことに気付かされることでしょう。「撮れそうで撮れない」それが奥山さんが撮影する、ポラロイド写真なのです。恐るべし、奥山由之クオリティ! 彼女に「◯◯くん、写真学科だから、もう少しセンスがあると思ってたのに! あ〜ぁ、私も奥山さんに撮られたいなぁ〜」とスネられないためにも、安易にまねをしないほうが良いかもしれません…。

それでは、どのようにしたら奥山さんがポラロイドで撮影するよう写真が撮れるのか、これまでの「ZOO ZOO ZOO」を聞き直したところ、まさに写真展の公開収録の時の放送で、ヒントになるような発言が出てきました。

●相手のカメラに対する意識が100だったものが、バスケをやることで70になるかもしれない。そういった感じで0に持っていく。
●例えば、相手がタバコを吸う場合、吸っている時…というよりも、吸う直前や、煙を吐く直前などにも注目する。

ということでした。

また、あるドキュメンタリー番組では、とにかく準備が大事で、「自然な感じで撮りましょう」という撮影ほど難しいとおっしゃっていました。ある種の檻のようなものを決めておいて、ボールをどこに投げても壁があるようにしておく…という心づもりなのだそうです。そのため、ロケハンに時間をかけるとか。とはいえ、「本当はカメラは好きではない」ということもカミングアウトしていました。いいなと思った瞬間にシャッターを切っても、シャッターが押されたときにはもう次の時間に移行しているから…とのこと。「目がカメラになっていて、まばたきでシャッターが切れたら最高なのに」とポツリと言っていました。ちなみに、冒頭で、奥山さんと安部さんがカニ鍋をして、安部さんがカニ鍋のポン酢が入っていた皿をひっくり返したという話に触れましたが、この時は、奥山さんの服にポン酢がかかってしまったそうです。奥山さんの目がカメラだったら、慌てるどころか、こぼれた瞬間にすかさずシャッターを切っていたに違いありません…。

ZOO ZOO ZOO http://www.j-wave.co.jp/original/dc2/

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