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いきものがかり水野×川村元気 相手を困らせて創る

いきものがかり水野×川村元気 相手を困らせて創る

J-WAVEでオンエア中の「SONAR MUSIC」(ナビゲーター:藤田琢己)。4月13日(木)のオンエアでは、いきものがかりの水野良樹がお会いしたかったという、映画プロデューサーの川村元気さんとの対談の模様をお届けしました。こちらでは、対談の完全版をお届けします。

川村さんは昨年大ヒットした映画『君の名は。』をはじめ、数々の映画のプロデュースを手がけるほか、最新作の『四月になれば彼女は』や映画化された小説『世界から猫が消えたなら』等の作品でおなじみの作家でもあります。

水野:川村さんは「今、一番、時代を読める男」って言われたりしますが、いかがですか?
川村:嫌ですよ(笑)。時代なんて分かるはずがないんです(笑)。僕は日常を自分が生きて行く中で、こういうものをもっと見たいとか、こういう感情になりたいとか、なぜこういうものがないんだろう…というものを形にして、同じように思ってくれる人が、自分のほかにも10万人、100万人いるかっていうことを繰り返しているだけなので。

対談にあたって「作品を何を目的に作っているのか、ということを一番に聞きたい」という水野。この問いに川村さんは、ご自身が手がけた映画『告白』を例に、「なーんてね」というセリフで終わったことで、人から見せられた物語だったものが自分のものとなって心に深く残る。だから作品は、完璧に出来上がっているものを見せるよりは、見た人の心の中で物語を終えなければならないような状況を作りたいと答えてくれました。

そしてもう一つ、川村さんは映画を作ったり、小説を書いたりする上で、人間は何をすれば幸せと感じるのかということに興味があるそうです。

川村:幸福を見つける「表現」は多様だと思うんです。悲惨な物語だったら自分の方がマシだと思うかもしれないし、幸せなお話だったら、自分はもっとこうなりたいと思うかもしれないし…やっぱり見た人が物語を自分自身に近づけるんです。
水野:創作時、言語化できないにしても、川村さんには「こんな幸せ」っていう前提はあるんですか?
川村:これはよく使う言葉なんですが、「集合的無意識」っていうのが僕の絶対的なテーマであるんです。簡単に言うと「みんながそうであれば良いと思ってるけど、まだ言葉や形にされていないもの」、そういうものが世の中に飛び出した時に、自分が求めていたものだと口々に言い出す、みたいなことが理想だと思ってます。
水野:作品が誰かの心に残ると、その人の無意識や価値観に変化を与える可能性がありますが、変化を与えたいという欲望は?
川村:変化はあった方が良いと思っています。実は作品を作る過程でも起きていて…『君の名は。』の場合は、新海誠という才能がいて、インディーな、とんがった才能だったんです。でも、この人が持っているものが「集合的無意識」に刺さって、もしみんなが観たいものが作れたらすごく面白いと思ったんです。前作の『言の葉の庭』が10万人くらいの動員だったのが、『君の名は。』で1900万人以上…ということが起こるのがこの世界の面白さです。作品だけでなく、僕自身にとっても同じことが言えて。小説を書くことで、自分が無意識のなかで欲していたものや、隠していた感情が噴出してくる瞬間を待っているようなところがあります。そしてそれが「集合的無意識」だったりするんです。『四月になれば彼女は』で言えば、「なんで東京から恋愛が消えちゃったんだろう」と最初に気づくのは僕。でもどうやら僕だけでないらしい、となっていって小説にしたときに共感してもらえるかっていうのは考えています。
水野:集合的無意識っていう言葉をお借りすると、歌はそういうことにすごく結びつきやすいと思ってます。僕は、集合的無意識そのものを変えたいという気持ちがあるからポップソングを作ってて…これは川村さんがされていることとも、どこか共通点があるんでしょうか?
川村:僕は、人間の能動性に期待しているので、気づくことが大きいと思ってます。誰かから言われてやることというのは弱くて、気づいて自分から変わらざるを得ないという状況の方が決定的なものになるんじゃないかと。僕の作品にはある種の「オチ」のようなものがないんですが、「こうしろ」というような内容がないのは、子どもの頃から「こうしろ」というと反抗してきたし、方向付けまでやってしまうと、冷めてしまう人が出てくるからなんです。だから、寸止めしてるところはあると思います。
水野:なるほど!

川村さんは、プロデュースする作品に坂本龍一、小林武史、中田ヤスタカ、RADWIMPS、サカナクション、米津玄師といった、さまざまなアーティストを起用しています。

水野:聞いただけでブルブル震えるような豪華な皆さんですね。
川村:その個性が、作品を僕らのイメージからズラしてくれると期待してるんです、良い方向に。『何者』の場合だと、密室で行われる会話劇の映画で使う音楽を、中田ヤスタカさんに「極力打ち込みなしで、ピアノでお願いしたい」ってオーダーしたんです。すると、中田さんは「何で俺なの?」ってビックリするんですけど、そこから出てくるものがあって、彼自身も「自分にこういう引き出しがあったんだ」って思った時に面白くなるんです。
水野:常にそういうカードの切り方をしてるんですか?
川村:欲望がすごくて、人が追い込まれてどうにもならなくなった時に新しいものが出てくる瞬間が見たくてしょうがないんです(笑)。
水野:それでも出してくる人ばかりですもんね。
川村:皆さん、ポテンシャルがあるから絶対に出てくると思ってて。例えば『ラストエンペラー』で坂本龍一さんは、たったの数週間でデモ音源を出せって言われて、それでオスカーを受賞してるんで、そういうものなんじゃないかと思ってて(笑)。だから僕自身も含め、みんなで苦しめばいいやって思ってます。
水野:川村さんご自身にとっては、絶対に必要なものって何ですか? 例えば音楽で、影響を受けた音楽とか。
川村:音楽は好きで、My Bloody Valentineは大事なバンドですね。自分の気持ちの根幹はこういう音だよなって思ったんです。特に『Loveless』っていうアルバムを聴いた時は、初めてなのに懐かしいと思ったのと、自分が生きている温度感って、だいたいこれぐらいのぬるさだなって思って。ぬるくて、歪んでて、悲しくて(笑)。
水野:ピッタリ合ったんですね(笑)。
川村:曲を聴いて自分の気持ちの座標を音で確認しているところがすごくあると思います。音楽から映像とか文章とか思い浮びますし、僕の小説『四月になれば彼女は』ではアイスランドのバンドSigur Rósが出てくるでんすけど、この人たちから、なぜこういう音が出てくるんだろうと思って、アイスランドに行ったら「なるほど」って分かったとか。
水野:アイスランドに行っちゃう訳ですね(笑)。
川村:行っちゃいます(笑)。最近ではD.A.Nが面白いですね。言葉が楽器の一部になっている感じがして、踊れるような、踊れないような、まるで水の中で泳いでいるような感じの気分になるというか。気持ち良いバンドなので、よく聴いています。
水野:そうなんですか。
川村:あとは、この前、ミュージックビデオを作った、ぼくのりりっくのぼうよみとかDAOKOはまだ二十歳前後で、彼らはこういう言葉を書くのかと思いました。本人は飄々とした少年少女だけど、自分が倍ぐらい年齢が違う子がどういう言葉を紡いでいて、それが自分と一緒なのか、違うのかといった確認作業ができるので面白いと思います。

さらに、川村さんにとって、映画音楽をプロデュースする醍醐味の話になりました。

川村:中田ヤスタカさんと米津玄師さんを組み合わせて『何者』の主題歌を作ってもらったのですが、それぞれが別々に仕事をしていたら生まれてこなかった曲だと思うんです。『前前前世』も『君の名は。』という映画があるから生まれたと思います。そうやって映像をベースに音楽を作っていくような気もしますし。夏に公開される『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、『モテキ』を監督した大根仁さんが脚本、『魔法少女まどか☆マギカ』の新房昭之さんが総監督を務めます。そちらの音楽も楽しみにしていてください。
水野:リスナーの皆さんも楽しみにしていると思います。これからも驚かせてください。
川村:そうですね。既に、かなりカードを切ってしまいましたが…坂本龍一さんに、中田ヤスタカさん、サカナクションに、米津玄師さんとか…。
水野:これから先も、どんどん出てくるんじゃないですか。
川村:あ、目の前にいましたね。ちょうど、曲が作れる状態じゃないですか。
水野:ええ!?
川村:無理難題を頼みたいです。「それですか!?」って水野さんが困りそうな感じじゃないと嫌なんです。何かが「カチッ」とはまった時に一緒にできたら面白そう。
水野:ここで視線を落とした俺はダメですね(笑)。

【番組情報】
番組名:「SONAR MUSIC」
放送日時:月・火・水・木曜 23時30分-25時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/sonarmusic/

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