J-WAVE月曜-木曜の朝6時からの番組「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」(ナビゲーター:別所哲也)のワンコーナー「MORNING INSIGHT」。8月2日(火)のオンエアは「台風」に注目し、お届けしました。
今年の台風1号の発生は統計がある1951年以降で過去2番目に遅い7月3日でした。日本では夏から秋にかけてのイメージがありますが、熱帯地方では早い時には1月、通常でも春ころには台風が発生するそうです。なぜ今年はこんなに遅いのか…その分、これから秋にかけてたくさん発生するのか…。気象庁気象研究所・台風研究部の山口宗彦さんにお聞きしました。
山口さんのいらっしゃる台風研究部は、気象庁が台風に関する研究を行っている部署で、気象庁が発表する台風予報を立てたり、それをさらに高精度計算したりする、いわば台風のスペシャリストです。
さっそく「今年、台風1号の発生が遅かった理由」を聞いてみました。
「キーワードとしては“ポストエルニーニョ”で、去年、強いエルニーニョ現象が発生したんですけど、その翌年はポストエルニーニョ年になるんです」
エルニーニョ現象とは、東太平洋のペルー沖の海面水温が上がる現象のことで、エルニーニョが終わると今度はインド洋の海面水温が上がります。そうなると、台風の発生する西太平洋からインド洋に向かって風が吹き込み、台風が多く発生するフィリピン沖周辺が高気圧になり“台風のたまご”となる積乱雲が発生しづらい状況になるのだそうです。例えば1998年、2010年もポストエルニーニョ年だったのですが、やはりその年も台風1号の発生は遅く、発生数も少しでした。
気になるのは、台風1号の発生が遅い分“これから台風の数が増えるのではないか”という心配ですが、多い年もあるし少ない年もあるそうで、現状での予測はなかなか難しいとのこと。
その大きさによっては、地域に甚大な被害をもたらす可能性もある台風ですが、水不足の問題を考えるとデメリットばかりではないのだそうです。
「高知県に早明浦ダムというダムがあるんですけど、2005年8月までまとまった雨が降らなくて、貯水率が0%になっちゃったんです。そこへいつもは嫌われ役の台風がやってきて、わずか1日で貯水率が100%に戻ったんです」
さらには、「(台風は)海の中をかき混ぜるんですね。海の深いところに栄養源があってそれが海の上の方に上がってきて、そこで植物プランクトンが増えるということもあって、生態系にも影響を与えたりしているんです」と山口さん。
台風は災害をもたらす一方で、我々の生活に欠かせない大切な水資源でもあり、生態系にも大きな役割があるのですね。
そして今年、台風予報で去年と変わったことがあるそうです。それは、天気予報の気象予報図で見られる“台風の予報円”が小さくなったこと。
「去年と比べると、だいたい20%~40%くらい半径を小さくしました」
予報円の定義は“台風の中心が入る確率が70%の円”なのだそうですが、去年の台風進路予報を検証したところ、80%から90%の確率で円内に入っていることが判明。そこで円を小さくできようになったそうです。つまり、それだけ現在の予報技術の精度が上がったということなのですね。
ちなみに、現在の気象予報は「数値予測モデル」というスーパーコンピューターで作られており、現在の大気の状態を入力値として与えると、将来の大気の状態が分かるのだそうです。
「スーパーコンピューターの中に仮想地球、仮想大気があって、その中で台風が物理法則に従って動いたり、発達したりしますから、それを見て予報を発表しています」
ただ…予報が外れることもしばしばありますよね。これは例えば“台風が強さに応じてどれだけ海からエネルギーをもらっているのか”など、まだよく分かっていないことがいくつかあるため、それが誤差の原因の1つになっているとのこと。最新技術をもってしても、まだまだ分からないことがあるのですね、
近年、地球の温暖化問題が深刻化していると言われていますが、温暖化が大風に与える影響にはどんなものがあるのでしょうか?
「いろんなシミュレーション結果があるんですけど、ざっくり言うと1年間で地球全体で起きる台風の数がだいたい80個。それが温暖化によって30%くらい減るという予測結果が出ています」と山口さん。さらに「減るんだけど“強い台風の数は増える”というシミュレーション結果が出ています」とも。
今年は、現時点の台風の発生数は4個。これは例年の半分ほどの数。水不足の問題もありますが、災害も恐ろしい…。非常に難しい問題ですね。
【関連サイト】
「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」オフィシャルサイト
http://www.j-wave.co.jp/original/tmr/index.html
今年の台風1号の発生は統計がある1951年以降で過去2番目に遅い7月3日でした。日本では夏から秋にかけてのイメージがありますが、熱帯地方では早い時には1月、通常でも春ころには台風が発生するそうです。なぜ今年はこんなに遅いのか…その分、これから秋にかけてたくさん発生するのか…。気象庁気象研究所・台風研究部の山口宗彦さんにお聞きしました。
山口さんのいらっしゃる台風研究部は、気象庁が台風に関する研究を行っている部署で、気象庁が発表する台風予報を立てたり、それをさらに高精度計算したりする、いわば台風のスペシャリストです。
さっそく「今年、台風1号の発生が遅かった理由」を聞いてみました。
「キーワードとしては“ポストエルニーニョ”で、去年、強いエルニーニョ現象が発生したんですけど、その翌年はポストエルニーニョ年になるんです」
エルニーニョ現象とは、東太平洋のペルー沖の海面水温が上がる現象のことで、エルニーニョが終わると今度はインド洋の海面水温が上がります。そうなると、台風の発生する西太平洋からインド洋に向かって風が吹き込み、台風が多く発生するフィリピン沖周辺が高気圧になり“台風のたまご”となる積乱雲が発生しづらい状況になるのだそうです。例えば1998年、2010年もポストエルニーニョ年だったのですが、やはりその年も台風1号の発生は遅く、発生数も少しでした。
気になるのは、台風1号の発生が遅い分“これから台風の数が増えるのではないか”という心配ですが、多い年もあるし少ない年もあるそうで、現状での予測はなかなか難しいとのこと。
その大きさによっては、地域に甚大な被害をもたらす可能性もある台風ですが、水不足の問題を考えるとデメリットばかりではないのだそうです。
「高知県に早明浦ダムというダムがあるんですけど、2005年8月までまとまった雨が降らなくて、貯水率が0%になっちゃったんです。そこへいつもは嫌われ役の台風がやってきて、わずか1日で貯水率が100%に戻ったんです」
さらには、「(台風は)海の中をかき混ぜるんですね。海の深いところに栄養源があってそれが海の上の方に上がってきて、そこで植物プランクトンが増えるということもあって、生態系にも影響を与えたりしているんです」と山口さん。
台風は災害をもたらす一方で、我々の生活に欠かせない大切な水資源でもあり、生態系にも大きな役割があるのですね。
そして今年、台風予報で去年と変わったことがあるそうです。それは、天気予報の気象予報図で見られる“台風の予報円”が小さくなったこと。
「去年と比べると、だいたい20%~40%くらい半径を小さくしました」
予報円の定義は“台風の中心が入る確率が70%の円”なのだそうですが、去年の台風進路予報を検証したところ、80%から90%の確率で円内に入っていることが判明。そこで円を小さくできようになったそうです。つまり、それだけ現在の予報技術の精度が上がったということなのですね。
ちなみに、現在の気象予報は「数値予測モデル」というスーパーコンピューターで作られており、現在の大気の状態を入力値として与えると、将来の大気の状態が分かるのだそうです。
「スーパーコンピューターの中に仮想地球、仮想大気があって、その中で台風が物理法則に従って動いたり、発達したりしますから、それを見て予報を発表しています」
ただ…予報が外れることもしばしばありますよね。これは例えば“台風が強さに応じてどれだけ海からエネルギーをもらっているのか”など、まだよく分かっていないことがいくつかあるため、それが誤差の原因の1つになっているとのこと。最新技術をもってしても、まだまだ分からないことがあるのですね、
近年、地球の温暖化問題が深刻化していると言われていますが、温暖化が大風に与える影響にはどんなものがあるのでしょうか?
「いろんなシミュレーション結果があるんですけど、ざっくり言うと1年間で地球全体で起きる台風の数がだいたい80個。それが温暖化によって30%くらい減るという予測結果が出ています」と山口さん。さらに「減るんだけど“強い台風の数は増える”というシミュレーション結果が出ています」とも。
今年は、現時点の台風の発生数は4個。これは例年の半分ほどの数。水不足の問題もありますが、災害も恐ろしい…。非常に難しい問題ですね。
【関連サイト】
「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」オフィシャルサイト
http://www.j-wave.co.jp/original/tmr/index.html