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「10歳の壁」に根拠なし? 早期教育は本当に必要か

4月7日に放送されたJ-WAVE平日夜の番組「JAM THE WORLD」(木曜ナビゲーター:萱野稔人)のワンコーナー「BREAKTHROUGH!」では、早期教育の必要性について法政大学文学部心理学科教授、渡辺弥生さんをお招きしてお話を伺いました。

進学、進級のこの時期には、教育関連の本や雑誌で「この時期までに勉強や運動をさせておかないと手遅れになる」といった早期教育に対する記事が目立ちます。早期教育の時期的ポイントを「10歳」として、不安を煽るような記事も目にしますが、本当に早期教育は必要なのでしょうか? 

■早期の英語教育は本当に良い?
音楽や語学などは、早い段階で学ぶことにより培われ、可能性が広がることもあります。そういった事実から、英語を早い段階で教えようとする親が増えていますが、やりすぎると楽しめなくなり、挫折するリスクもあると渡辺さんは苦言を呈しています。

「楽しければいいですけど、早くからそういうことをやりすぎて、つまんなくなっちゃうとかありますよね。ある習い事をすれば、その習い事は毎日やるわけですから、トレーニング効果は上がると思うんですけど。私は遊びの時間が一番学びの場だと思っているので、そういう時間が激減するというのがリスクかなと思います」(渡辺さん、以下同)。

早い時期から英語を教えることは良いことですが、そればかりになってしまうと、人とのコミュニケーションの中で培われるものが激減してしまうそう。真っ暗になるまで遊んだり、落とし穴を掘ったら岩盤があって掘れなかったり、小さい子を思いやりながら歩幅を合わせて帰ったり、習い事にはない学びの総合力が身につくのは、遊びの特色なのかもしれません。

■ゴールばかり高く設定すると……
一方、親が子どもにやってほしいと思うことを押し付けている事実もあります。子ども側の視点だけでなく、親の見方も見直す必要があるのかもしれません。

「例えば、実力が10のうち6の子どもに、10ばかり目指させても挫折しますよね。だから6.5とか6.7くらいを目指して応援すれば、すごいねってことになりますよね? そういう意味で、こういう子にしなきゃいけないみたいな、目の前の子をあまり見ないでゴールばっかり高くするのではなくて、自分の子どもを宝物としてみてあげることが、大切だと思います」

また、まじめな親ほど、先に親のやりたいことをしてしまう傾向にあるそう。そうすると親は子どもに期待してしまい、空回りしてケンカになってしまうとか。

■育てる側に心の余裕を
子どもは欲求の固まり。なぜその子がそれを好きなのか、今何を求めているのか、向き合ってやりたいことに応えることが大切。

「子どもが何をしたいかをよく見て、それに応えてあげる方が、親もわざわざ先行投与する必要がないので楽ですし。子どももお腹すいた時に、おにぎり1個あげるだけで『ありがとう』ってことになるわけですから、その方がリラックスしたほんわかしたコミュニケーションになるんですよね」

子どもを一人の人間として認めて、子どもの発達を楽しむ。そのためには、育てる側の心の余裕が大切になってくるようです。

■「ハッピー」を感じる心を育てる
本当に生きた学びをするためには、自分の気持ちをマネジメントできるスキルを小学校低学年までに身につけておくことが大切だそう。自分の感情を他者との関係の中で表現できることの方が、詰め込む教育よりも将来的に知的に伸びしろが生まれると、科学的にも実証されているそうです。

「今の子どもたちって、短い時間にたくさんのことをするようなマルチタスクの部分が多くて、それよりも一つひとつの感覚をきちんと感じ取ることが大事です」

豊かな感受性が育つことで、「ハッピー」と感じる心を持つことができます。早期に教育をすることが悪いわけではないですが、それよりも「幸福を感じられる心を養うことの方が大切」だと渡辺さん。

早期教育を考えている親御さんは、今本当に必要かどうかじっくりと検討することが大切ではなのかもしれません。

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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