「広告のいろいろな解と考え方を総覧できる」菅野 薫が「虎ノ門広告祭」を開催する理由とは?

クリエイティブディレクターの菅野 薫が、広告業界の変化やテクノロジーとの関係、そして「虎ノ門広告祭 2026」を開催する理由について語った。

菅野が登場したのは、9月25日(金)放送のJ-WAVE『SYNCREATE』(ナビゲーター:川田十夢、中川安奈)の「VOICE OF INNOVATION」。毎週、ひと組のトップクリエイター・イノベーターを迎えて、得意分野での“創発”について考えるコーナーだ。

広告祭を開催する理由

菅野 薫は2022年に電通から独立後、クリエイティブ・ディレクター・コレクティブ(つづく)を設立。経営戦略や事業戦略の立案、広告制作、プロダクト・サービス開発をはじめとしたデザインなど、カルチャーとビジネスの最前線で走り続けている。

菅野は、10月9日(金)〜10月17日(土)にTOKYO NODEで開催する「虎ノ門広告祭 2026」の発起人であり、同イベントにはナビゲーターの川田も10月11日にセッション「興味本位で、仕事する。」に出演。中村勇吾とトークを展開する。


川田:僕がちょっと不思議だったのは、菅野さんは広告の世界のトップの人で。その人がわざわざお祭り、広告祭みたいなことをなぜ自分から? 大変じゃないですか。なぜやっているんだろうと思いました。

菅野:たぶん、僕が根っからの広告の人なんだなと思うのは、自分のためにとか自分の欲望でなにかを動かすというのはあまりなくて。誰かの役に立ちたい、クライアントさんや社会とか、なにかの役に立ちたいとなると、すごく元気になるんですよね。だから、結婚パーティーの幹事とかよくやっているんですけど(笑)。

川田:そんな(笑)。

菅野:それがお金にならないとか、そういうのではなくて。人のために役立っていると、ものすごく気合が入るんですよね。自分は広告業界育ちで、広告のなかではテクノロジー系なので、亜流というか新しいルートだったんです。とはいえ、広告業界にいたおかげで、これだけいろいろなことをさせていただけるようになったという意識が、すごく強くあるので。なので、広告業界やこれからその業界を目指す若い人たちの役に立ちたいと、「そのためになにをしたらいいだろう?」と思ったら、やりすぎちゃったという感じです。

川田:「やらざるを得ない」という、広告業界の変化が今起きているわけですか?

菅野:それは徐々に、ラジオも含めですけど、メディア自体の環境が激変しているじゃないですか。もともとはマスメディアが強くて、そこにみんなの興味が集中していたから、学校に行くとみんな同じテレビ番組だったりとか、話題にしていることが一緒だったりとかがありました。だけど、今はYouTube、TikTok、SNSとか、それぞれ興味が細分化されて、より濃くひとつのファンになったり、つながったりはあるけど、逆に言うとみんなが同じのを観ているという状態ではなくなっていて、目は分散しているじゃないですか。そうすると広告って、人の目が集まるところにものを置く。情報を置いたり、話しかけたりするというものだったりするので、すごく多様化したデジタルメディアを中心としたメディアはどんどん新しくなって。どんどんアルゴリズムが変わる、この時代の変化は急激で。自分たちがどういうスキルで、どういうふうにやっていくと、クライアントや社会の役に立てるかというところで、混乱状態にあります。

川田:SNSとか、普段みんなが触れているメディアが変わりましたよね。YouTubeとかって、いちばんコントロールが効かないというかね。

菅野:まさに。登録しているチャンネルによって観るものが違うんですよ。自分にとっては最新の情報として楽しみにしている番組が、みんなにとってはまったく知らないものであったりする。Netflixとかでも本当に面白いものがたくさんあって、そういう意味では面白いコンテンツの乱立でいうと、いま歴史上で言うともっとも多いんだと思います。逆に言うと細分化されていて、観ない人はまったく観ない。だから、知らないことは知らない。知っている情報と当たり前が共有化されていない時代になっているなかで、誰とどう話しかけるか、どうコンテンツで惹きつけるか、エンターテインメントを作っていくかというのは、かなり悩み深き時代。それが広告は直撃するんですよね。

菅野によると、現在の広告業界は必要なスキルが分散化しているという。

菅野:前は迷いなく飛び込めて。それで入っていったら、コピーを勉強してアートディレクション、デザインを勉強したり、ラジオCMのコンテを描くというのを習うんです。でも今って、YouTubeのなにかをやらないといけない、SNSの言葉を書かなきゃいけないとか、やらないといけないことがめちゃあって。スキルもいろいろなことを広げなきゃいけない。入ってからの迷いも多いし、入る前も「これ、なかなか大変じゃないですか」みたいなことで。昔の先輩たちのほうが1個に集中できたから、15秒のCMの珠玉さでいうとその時代に鍛えられた人は"バカウマ”なんですよ。今、若い子はそのチャンスがないから、テレビCMを作るチャンスがなくてSNSの言葉とかを書いているから、また違うスキルになって、スキルが分散しているんです。

だからこそ、「虎ノ門広告祭」を開催することに価値があるのだという。

菅野:みんな「あれ、これでいいんだっけ? どうしようかな。このスキルでクリエイティブな仕事をしていくのは、どうやるんだろう?」って悩んでいるところなので、こういうフェスティバルがあるとなにかヒントになるんじゃないかと。どれが正しいというわけではなくて、いろいろな生き抜き方と、いろいろな面白いことをやっている人がいます、というのを総覧する。もちろん、広告業界スタートなんですが、広告から飛び出して脚本やったり映画を撮っている人もいるし。川田さんみたいに、広告業界の人ではないんだけど、すごく近しいスタイルでやっていたり。たとえば、お互いに影響があるような方を呼んで「川田さんってどう思ってます?」という話を聞いたら「もしかして自分のヒントになるかも」という、たくさんの答えを……登壇者が550人ぐらいいて、今回168セッションぐらいあるんです。

川田:168セッション⁉ すごいですねえ。

菅野:もう多様で、どっちが正しいとかっていうのではなくて。今は「いろいろな解と考え方があるよ」というのを総覧するという、多様をそのまま置いてみたという感じです。

菅野 薫とAR三兄弟の意外な関係

川田は、自身が主宰するAR三兄弟が広告業界から声をかけられるようになった背景に、菅野やライゾマティクスら先達の存在があったと振り返った。

川田:僕は菅野さんを再発見するんです。AR三兄弟とかをやっていると、急に広告業界に呼ばれたりするときがあって。そのときに、なんでこのデジタルやマニアックな技術が広告の世界に呼ばれるのかなと。たどってみると、菅野さんとかがいるんですよ。だって、リサーチから最初は入っていますよね。

菅野:もともと、僕は研究職的な。電通に入ったんですが、全然クリエイティブというよりは元研究職で。それこそMITメディアラボとかで研究したりする研究員で行っていたという時代もあるぐらいなので。

川田:その理系の感覚が本当に広告におよんで。僕なんかAR三兄弟で、いろいろなところからオファーがあったのは、絶対に菅野さんとかライゾマティクスとかの先達がいたから、たぶんスムーズにいけたなというのはあって。僕、初めて言いますけど、感謝しているんです(笑)。

菅野:いやいや(笑)。たぶん、僕の前に中村勇吾さんといったウェブで1個表現の革命を起こした人たちが、広告にちょっと乱入していて。今回「虎ノ門広告祭」では、中村さんと川田さんの対談というセッションで出ていただくんです。僕らはその時代の1個次なんです。もうちょっと体験やフィジカルなものだったりとか、インタラクションがあるリアルな体験だったりとか、ライブ演出だとかにいったのが僕ら世代という感じですかね。

川田:世代の話でいうと、チームラボってどう思っています? ちょっと訊いてみたくて。

菅野:猪子寿之さんはさっき調べたら、同い年ですね。猪子さんは東大のとき、まさに同じ時期に同じ大学にいたから、駒場寮の前にいつもいたのは知っています。そんなにめちゃくちゃ親しいわけではないですが、18、19歳のときから知ってはいるし、共通の友だちもたくさんいて。という感じなんですが、同じ時代性とテクノロジーを起点に新しい表現でやったという、くくり方をしたら近いんですけど。実際は仕事上、全然交錯していなくて。だいぶ違うところの世界の人かな? というイメージがあります。

若いクリエイターを広告の世界へ

若いクリエイターが広告業界に飛び込むきっかけは、どのように生まれるのか。菅野は、映像作家・クリエイティブディレクターの鈴木健太との出会いを振り返りながら、学生と広告業界をつなぐ取り組みについて語った。鈴木は、J-WAVEで金曜深夜に放送し、ポッドキャスト番組としても配信していた番組『FIRSTTHING』でナビゲーターを務めていた。

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川田:その番組に菅野さんが出てきて。鈴木健太君は今、30代ですかね。

菅野:ちょうど30くらいですね。

川田:めちゃくちゃ才能のある映像作家で、僕が見つけたときは学生だったんです。「こいつすごいな」と思って、でも「あいつ、次の作品いつなのかな」と思ってSNSとか見ていたら「どうやら広告業界に入ったらしいぞ」と。そうしたら、菅野さんがきっかけになっていて。

菅野:それこそ、スズケンが2016年に大学を出たとき、僕はリオ五輪の閉会式を担当して「安倍マリオ」をやって。

川田:この人、すごい人なんですよ。

中川:みんなの記憶に濃く残っています。

菅野:クリエイティブディレクターをやっていたんです。それを観たスズケンが「これを誰がやったんだろう」と調べたら、広告業界のクリエイティブディレクターという人がやっていると。それで、僕をSNSでフォローしたのかな? 僕はそのタイミングでインターンを募集したんです。そして応募してきてくれて。とにかく、いったん僕に会いたいと来てくれて。僕も「この人、すごく面白いな」と惚れ込んだというか、友だちになりたいと思って。入社してもらって、僕のいちばん年下の友人みたいな感じですかね。

川田:本当にセンスがあるし、別におべっかで近づくタイプじゃないんですよね。自分の好きなことがはっきりとあって。でも、まさか広告寄りのお仕事をしているなと思っていたら、菅野さんが入り口になっていたというのが……ラジオで知りました(笑)。

鈴木は「toracoya 虎子屋」という、若い学生向けのワークショップの主宰を務めている。菅野はその内容を解説した。

菅野:クリエイティブの仕事とかに就く前の学生さんにとって、いわゆる広告におけるクリエイティブってそもそもなんのことか、よくわからないじゃないですか。だから、ビジネスとクリエイティビティをつないだらどういうことができるの? というのを実際にやってみようというので、現役の人たちが先生になって、いろいろとワークショップをして「一緒にやってみよう」みたいなことをやるという。だからバイブコーディングみたいなことも、コピーを書いてみようとかデザインしてみようとか、いろいろなことを5日間かけてやっていくというのをやります。

川田:すばらしいですね。学生のときの鈴木健太くんみたいな人も(「虎ノ門広告祭 2026」に)来てほしいなというのはあります。

「虎ノ門広告祭 2026」の詳細は公式サイトまで。

クリエイターの声から新たな時代の価値を創発する『SYNCREATE』のコーナー「VOICE OF INNOVATION」の放送は、毎週金曜20時10分ごろから。
番組情報
SYNCREATE
毎週金曜
20:00-22:00

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