車上生活を続ける31歳のラッパー「今はもうマイク1本で」深夜の高円寺で“人間観測”

タカノシンヤが深夜の高円寺を歩き、車上生活をしながらラップ配信と路上ライブで生計を立てている31歳の男性に、表現を続ける理由や幸せを感じる瞬間を聞いた。

この内容をお届けしたのは、10月2日(金)放送のJ-WAVEの新番組『GALAXY SEBASTIAN』(ナビゲーター:タカノシンヤ)。ラジオとポッドキャストが連動し、タカノが深夜の街へ出て、人々の内面に広がる宇宙を観測する人間観測ドキュメンタリーだ。

人間の心の内側にフォーカスしていきたい

10月2日(金)に初回放送を迎えた『GALAXY SEBASTIAN』は、ジングルもBGMもない、暗いスタジオからスタート。ひとりでマイクに向かったタカノが、そっと口を開く。

タカノ:スタジオにひとりでいると、心の輪郭がぼやけていくといいますか。心細さみたいなものもあるけど、穏やかさみたいなものもあって、そんな不思議な夜ですね。4年間、J-WAVEの『GRAND MARQUEE』という番組をやっていまして、それが2日前に終了しました。『GRAND MARQUEE』をやっていた4年間は、生活のすべてというか、人生のすべてを捧げてきた感じがあったので、やり切ったなっていうところはあるんですけど。最後に死に様を見せられたのはよかったかなっていう感じはしていますね。

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前番組を終え、今度は何もないところからの出発となった。

タカノ:心は裸の状態。ゼロから裸一貫でスタートっていう、そんな気持ちですかね。夜中の時間帯って、ひとりで孤独を抱えている人も多いんじゃないかなと思うので、そういう人にとっての居場所になるようなものが作れたらいいかなと思うんですけど。きっとこの時間って、人間のなかにある深い部分がさらけ出されている状態の人が多いんじゃないかな。今日から、そういった人間の心のなかにある風景を見つける旅に出たいなと思ってます。

続いてタカノは、番組名に込めた意味を明かした。

タカノ:『GALAXY SEBASTIAN』、略して「ギャラセバ」です。「GALAXY」、これは銀河、宇宙。そして「SEBASTIAN」、これは個人名、つまり人。夜中にどこかでこの放送を聴いてくれているみなさん一人ひとりの集合体を俯瞰で見ると、銀河の星々のように見えてくるんじゃないかなと思ってます。この番組は人間心理を深く掘り下げていく純文学的な番組にもしたいと思っているので、人間の心の内側にぐっとフォーカスして、顕微鏡、いや内視鏡、いや望遠鏡をのぞいていくと、そこには天の川銀河のような美しくて壮大な光景が眠っているんじゃないかなと思いまして。そういった意味で『GALAXY SEBASTIAN』。セバスチャンはときとしてナビゲーターであり、リスナーのあなたでもあります。今お聴きのあなたも、ひとりのセバスチャンです。

深夜は人間の肩書きがはがれ、むき出しになる

『GALAXY SEBASTIAN』では、終電後から始発までの街にいる人々と出会い、その声や思いを届けていく。最初のフィールドワークに選んだ場所は東京・高円寺。24時59分、タカノは番組スタッフと街へ出た。

タカノ:夜ってどんな時間かって考えていたんですよ。昼間に成立していたさまざまなものの効力が失われていく時間っていう気がしていて。電車は止まり、オフィスも店も閉まる。それって、つまり会社員じゃなくなる、客じゃなくなる、取引先じゃなくなる。肩書きがはがれて、人間そのものがむき出しになっている状態……そんな人が多いんじゃないかなと思うんですよね。

タカノは高円寺駅北口にたどり着く。

タカノ:駅のシャッターが閉まって、今、夜中の1時18分。意外と人が多い。東京に40年以上住んでいるけど、東京の夜中ってこんなに元気なのっていう驚きもありますね。

番組スタッフとやり取りしながら、街の雰囲気を伝えていく。

タカノ:街頭インタビューって、ガンガン断られたりするわけでしょ。すでに陽気な感じのおじさんに話しかけてみたら、陽気な感じで「取材すんじゃねえ」とお断りされまして。面白そうだったんだけどな。

家を失い、車中泊をしながらラップを配信

なかなかインタビューできないタカノ。そんななか、車内で配信していた男性に取材交渉をし、活動内容を尋ねた。

タカノ:車のなかで、女優ライトみたいなものを照らしながらラップみたいなのをされていて、「あの人、何やってるんだろう」と思って近づいてきたんですけど。どんな活動をされていたんですか?

男性:主にはフリースタイルというジャンルで、YouTubeでビートをランダムに流して、そのビートのなかで即興で言葉を入れてラップをするTikTokライブをやっています。

タカノ:今、夜中の2時の高円寺ですよ。なぜこの場所で?

男性:たまたま女性の方とデートをしていて(笑)。日中、配信ができなかったので、ここに車を停めて女性とバイバイしてから帰るまで時間があったので。帰るというか、もうむしろ車のなかが家なんですけど。

タカノ:え、どういうことですか?

男性:2025年の12月に家を強制退去になってしまって。

タカノ:なんで?

男性:家賃滞納です(笑)。

知人のつてで車を購入した男性は、生活を立て直すために三重県の車工場で働き、今年1月から車中泊を始めたという。その後、大阪を経て、MCバトルの大会を手伝うため出身地の東京へ戻ってきたという。現在は大会主催者の実家に泊めてもらうこともありながら、車中泊を続けている。男性は31歳で、ラップを始めたのは27歳ごろだという。

タカノ:なんでラップをやり始めたんですか?

男性:もともと歌うことが好きで、カラオケも大好きで。歌のうまさへの憧れはあったんですけど、僕のなかでは壁が高すぎて。そこで出会ったのがヒップホップで、リズムソングだったら他の人とは違う個性を出せるなと思ったのがきっかけです。フリースタイルをやっていくうちに、リズムにはめて歌うことにハマっちゃって。即興も得意だったので。

タカノ:変な話、TikTokライブってもうかりますか?

男性:その兆しが見えています。配信の仕方にもよるんですけど、運がよければ、1日に2、3万円程度稼げたりとか。だいたい2時間以上配信すると、2,000円とか3,000円程度にはなります。まだまだ僕もこれからなので、積み重ねだと思っています。

タカノ:今はもう配信1本でっていう感じ?

男性:配信と路上ライブですね。このふたつで生計を立てています。

お金がないイコール、力がない

車中泊生活を送る男性に、「31年間でもっともつらかったこと」をタカノが尋ねた。

男性:表現者の道を目指していて、お金が稼げないがために、行動ができなかったことですね。お金がないイコール力がないのと一緒なので、ここっていうときに、その場所に行けなかったり、お金がないばっかりに人に迷惑をかけてしまったり、親の世話になったり。そこが情けない部分なので、いちばんつらかったのはそこですかね。

タカノ:でも、ここから成り上がるみたいな。

男性:それを覚悟して、この生活をしているので。仕事と並行して表現者の仕事をしていても、なかなか集中しきれず、どっちつかずになっちゃうし。確実に毎月、固定給が入る仕事を選んだ結果、やっぱり表現者をやりたいなと思ってしまい、それによって生活がどんどん崩れてしまうところも苦しかったので、今はもうマイク1本で。

タカノ:幸せを感じる瞬間って、どんな瞬間ですか?

男性:僕のことを「好きだよ」って言ってくれる瞬間ですかね。ファンの方だったり、周りで「応援してるよ」って言ってくれる声だったり。そういう気持ちをストレートに伝えていただいたときが、いちばん幸せな瞬間だなと思います。

タカノのお願いで、男性はその場でアカペラのラップを披露した。そしてスタジオに戻り、生活の安定を脇へ置いてでも表現を続ける男性の姿を振り返った。

タカノ:生活というのは基盤であって、普通だったらまずは安定した生活の上で、いろいろなクリエイティブなことができる。でもこの男性は、いったん生活を隅っこに押しやって表現活動をやっている。大変な思いをしながらもラップを続けている。きっといろんな葛藤があるだろう。しかし、マイク1本、身ひとつで表現にぶつかっていく姿勢には、すさまじいほどの魅力が宿っていた。安定を隅に追いやってでもやりたいという強烈な衝動。そこに人間の内側に眠る輝きのようなものがあるのかもしれない。社会からズレる、歪みから生み出された創作物。きっと何か一般的な基準値からは外れたような力が宿っているはず。たぶん、半径5メートル圏内にある生活とかよりも、もっともっと遠くにある風景を見ることなんだと思う。この番組もやりたいことをやっていく番組として始まった。それは目先のものよりも、もっともっと奥にある大きな輝きをつかみに行くということなのかもしれない。

『GALAXY SEBASTIAN』はポッドキャストでも配信している。ポッドキャストの第1回もラジオ放送と同時に配信しており、タカノは「このあとポッドキャストで“追いギャラセバ”をお願いします」と呼びかけた。

番組と連動するポッドキャスト『ギャラセバ ~しんやのにんげんかんそく~』では、ラジオより長い取材音声に加え、ミャンマー出身で実家が図書館だというコンビニ店員へのインタビューも配信している。

・ポッドキャストページ


ナビゲーターのタカノシンヤがマイクを持って深夜の街へ飛び出す『GALAXY SEBASTIAN』。J-WAVEで毎週金曜27時よりオンエア。
radikoで聴く
2026年10月9日28時59分まで

PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

番組情報
GALAXY SEBASTIAN
毎週金曜
27:00-28:00

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