平野紗季子、ほとばしる“フライドポテト愛”を説く!「芋が油に人生を預けた覚悟を楽しむ」

フードエッセイストの平野紗季子が、「平野の好きな食べ物BEST3」をテーマに「フライドポテトの魅力」を存分に語った。

この内容をお届けしたのは、平野紗季子がさまざまなテーマやゲストと食べものの話をお届けするポッドキャスト番組『味な副音声 ~voice of food~』の、9月7日(月)に配信を開始したエピソードだ。

・ポッドキャストページ

平野が大好きな食べ物と、その魅力

配信7年目に突入した『味な副音声 ~voice of food~』。この日は、今まであまりやっていない企画ということで、平野の「好きな食べ物3選」をテーマに進行していくはずだったが、平野が愛してやまない“フライドポテト”の魅力を語る回となった。

平野:やっぱりフライドポテトは永久欠番といいますか、パーマネントコレクションですね。押しも押されもせぬナンバーワンなのかなと思います。年齢を重ねて「揚げ物からは卒業」があるかもしれないからわからないけれど、とにかく今のところはフライドポテトが好きで、今日は「なんでなんだろう」とあらためて考えてきました。私が、食べ物が作り出せる力のなかで「ここがすごくいいな」と思っているのが、“夢中になれる力”なのね。ほかのことを考えさせないというか、味に没入できるというか。これって周りの空気とか、誰と食べるかとか、「ひとりがいい」とか環境的な話もありますが、食べ物軸で言うと、食べ物がクエスチョンを与えてくるものだとちょっと没入しきれないわけです。

平野は「食べ物がクエスチョンを与えてくるもの」の例として、ビリヤニを挙げる。

平野:たとえば先ほどのビリヤニで言うと、セブン-イレブンの商品(編註:人気インド料理店「エリックサウス」監修の品のことで、このトークの前に話題に上がっていた)には「ホールスパイスが入っている可能性があります」と書いてありました。それを食べたときに、「これはなんだ?」「あ、カルダモンか。嚙んじゃった」ということもあって、ビリヤニでカルダモンが当たること自体はハッピーなので「やったー!」という感じだけど、「これは何だろう?」と1回クエスチョンが来るのは、味に没入している状態からするとノイズなんです(笑)。でもそれって、ありとあらゆる食べ物のなかで起きる。「ちょっとしょっぱいかも?」「これって何だろう?」「なんでこれを入れたんだろう?」みたいなことを思ってしまうことはどんな料理にも発生するんですが、フライドポテトはまずない。フライドポテトに対して、なんの疑問もない(笑)。もちろん、「疑問=好奇心」でもあるから、謎解きが面白いのも食の魅力だし、だからこそ『味な副音声』はコンテンツとして成立しているんだけどね。

平野はフライドポテトの魅力のひとつである「手づかみで食べられること」は、夢中になって食べられるものに共通していると語る。

平野:平野調べだと、これまで食べていて記憶が飛んでゾーンに入っちゃった系の食べ物は、たとえばピザ。正直、「手づかみで食べたときのがおいしくない?」と思っていて、そのほうがゾーンに入りやすいというのはあると思います。それで私、気づいちゃったんですが、料理を食べるうえでカトラリーはノイズなんです。だから、極論を言ってしまうと、たぶん食べ物は手で食べたほうがおいしい。フライドポテトはそれを合法的にというか、習慣的に許されている食べ物のひとつだと思います。

“フライドポテト”は細長ければいけないわけではない

続いて、フライドポテトの“太さ”について言及。平野にとって究極のフライドポテトは、細めのものなのだそう。

平野:太いポテトは基本的に芋の味を主張してきて、これが“情報”の部分ですね。甘くて芋の香りがするのも大好きなんですが、「究極のポテト」は夢中になれることが大切なので、「甘いな~」とかは寄り道になります。「ヤバい、止まらない!」というスピード感を求めているので、甘さや香りは別の芋料理で存分に楽しませてほしいと思っています。だから、究極のフライドポテトは細くて、スピード感があって、きれいな油で揚げてあってちゃんとカリっとして、にわかにほくっとして、後味でほんのり芋の香りや甘さが出る。わがままですみません。それがきれいに消えて、また次の1本を求めちゃう、というのがベストですね。ただ、芋の香りや甘さがあるフライドポテトは、冷めてからがおいしい。フライドポテトも温度でどんどん変わってきて、冷めてから次の楽しさがやってくるので、この楽しさも忘れたらいけないと思います。

平野の好みにしっくりくるフライドポテトには、どのようなお店で出会えるのだろうか。

平野:本当に難しくて、おしゃれなビストロや居酒屋さんだと、芋にこだわっちゃったり、手で割いてくれたりしちゃうから、あれも大好きだけど究極ではないんです。ただし、最近おしゃれなビストロでも、あえて冷凍フライドポテトを使っているお店も出てきております。これは、平野的にはかなりポイントが高いです。冷凍のフライドポテトって、実は国産のものも外国産のものもけっこういっぱいあるんですが、店主がそのなかからこだわって選んで、こだわりを持って揚げてくれているお店があるんですよ。「ここで出会いました」というお店もあるんですけど、冷凍を使っていることを公表しているかがわからないから言いづらいし、店主的にも言ってほしくないかもしれないから控えます(笑)。ただ、私が今まで食べて「おいしいな」と思った冷凍ポテトは2種類あって、ひとつはメトロシェフの「ベルギー産 フレンチフライ(細)(6mm x 6mm)」。もうひとつがワールディッシュの「フライドポテト ヨーロッパ産シューストリングカット」です。業務用のオンライン系サイトで買うと大量の段ボールで届いたりするので気をつけてほしいですが、気になる方はぜひ食べてみてほしいなと思います。

以前、番組ではバーガーチェーンのフライドポテトの食べ比べを実施。当時、平野が1位の評価をつけたのは「ロッテリア」のポテトだった。しかし、バーガーチェーンのポテトに順位をつけるのは、簡単なことではないと言う。

平野:やっぱりバーガーチェーンはオペレーションの問題があるので、揚げたてではない可能性がある。冷めたものを出すバーガーチェーンはないものの、揚げたてのすごくおいしいときと、少し時間が経ったときのおいしさには若干のズレがあるので、全幅で乗りに行きづらい部分はありますね。そのなかで、「マクドナルドのポテトはどうなの?」と言うと、マックのポテトはマックのポテトであって、フライドポテトではないと思っています。つまり、あれはマックの味がする。たしか、油に牛脂か何かを使っていらっしゃって、それがより独特の味わいでやみつきになって最高なんですが、「フライドポテト」というニュートラルな視点からいうと、私は頂上とは言わない(笑)。だから、バーガーチェーンのなかから私のややこしい思考に答えてくれるフライドポテトを探すのは、難しいなと思っております。

揚げた芋はもれなく“フライドポテト”

フライドポテトを提供するのは、バーガーチェーンだけではない。平野はファミリーレストランのポテト事情についても、熱く語る。

平野:ロイヤルホストでもポテトはよく食べていて、大好きです。最近は「黒胡椒&パルミジャーノ・レッジャーノのフライドポテト」という商品が出ておりまして、フライドポテトが載せられたお皿の真ん中にガーリックマヨネーズが添えられておりまして、その上から削られたパルミジャーノ・レッジャーノチーズと黒コショウをかけたお品物です。あれは料理として最高においしいと思って頼んでしまうけど、フライドポテトという軸でいうとちょっと違います(笑)。ロイヤルホストのポテトは私の理想よりちょっと太いんですよね。だから、最高とは言いがたいなというところですが、それで言うとデニーズもちょい太め。ファミリーレストランは“ちょい太”という傾向を見出しているところです。では、チェーン系の究極のポテトはどこにあるのかと考えると、回転寿司かなと。私がそれに目覚めたのは「Aburi TORA」という回転寿司で、そこに行ったときに出てきたフライドポテトがおいしすぎて、フライドポテトを食べるあいだに寿司をつまむみたいなレベルで捉えております。回転寿司チェーン全体の傾向としては、ファミレスよりも相対的に細い気がする。シューストリングカットと言われる、細めのポテトに出会えることが多い気がします。そのなかで「ポテトがアツいぜ」と思うのは、はま寿司ですね。あそこのポテトは本当に細いですから、「細いポテトが食べたければ、はま寿司に行け」と、声を大にして言いたいなと思っています。

大好きなフライドポテトの魅力を存分に語った平野は、最後に“フライドポテト”という言葉の概念についても触れた。

平野:そもそも、私は“フライドポテト”という言葉のなかには、いわゆるスナッキーな揚げポテトだけではなくて、「揚げた芋全般を愛す」というメッセージを込めているわけです。つまり、ポテトチップス、フライドポテトでございます。さつまいもの天ぷら、里芋の唐揚げ、ハッシュドポテト、長いもの磯部揚げ、全部フライドポテトです。じゃがいものコロッケも、フライドポテト。じゃがいものガレット、揚げ焼きしている場合はフライドポテトです。海老芋の唐揚げ、高級フライドポテトです。大学芋、フライドポテトです。ということで、芋の揚げ物は古今東西、無数に存在していますが、細長くないとフライドポテトとして認めてもらえないような、窮屈な芋社会はいやですね。芋が油を見て「行ってきます」と飛び込んだ時点で、それはフライドポテトなので(笑)! フライドポテトは芋が油に人生を預けたその覚悟なんだと思っています。私たちはその覚悟をいただいているので、そこは楽しんでいきたいですね。

『味な副音声 ~voice of food~』は、平野紗季子が毎週さまざまなテーマやゲストと食べ物の話をお届けする。新着エピソードは、毎週月曜日にSpotifyなどの主要なリスニングサービスからポッドキャストを配信。

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