提供:ノバルティス ファーマ
・本編に症状についての言及がありますが、あくまでも患者さん個人の意見になります。
・自身の症状で気になる方は、必ず専門の医療施設を受診し、医師の診断に基づき適切な治療を行うようにしてください。
疲れや目・口の渇き、だるさなど、「なんとなくの不調」が症状として現れるシェーグレン病。国の指定難病(53番)に認定されるこの疾患は、40~60代の女性に発症しやすく、日本国内における患者数は推計約7万人に達するとされる。最近では、「シェーグレン症候群」から「シェーグレン病」へと名称変更が行われた。しかしながら、広く一般的には知られていない疾患であり、かつ、症状が身近な体の異変であることが多いため「気のせいかな」「疲れているだけ」と疾患のサインに気づかず、結果として診断に辿り着いていない潜在的な患者も少なくないと言われている。
そこで今回、J-WAVEではPodcast番組「ノバルティス ファーマ presents なんとなくな不調とシェーグレン病」を配信。臨床心理士・公認心理師で「NPO法人 膠原病・リウマチ・血管炎サポートネットワーク」(以下、膠サポ)代表理事の大河内範子さんと、シェーグレン病当事者・凛子さん(仮名)へのインタビューを通し、シェーグレン病との向き合い方を深掘りした。聞き手は、J-WAVEナビゲーターの山田玲奈が務めた。
山田:シェーグレン病というと「乾燥の症状」というイメージを持つ方も多いと思うのですが、実際のところ、どのような症状が現れるのでしょうか。
大河内:私たちの体には、細菌やウイルスから自分を守る「免疫」という働きがあります。シェーグレン病は、その免疫が何らかの理由で自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。主に涙腺や唾液腺が障害されることで、目や口の乾燥が起こります。さらには全身に炎症が現れることもあり、だるさや関節の痛み、ときには肺や腎臓といった臓器に影響が出ることもあります。
山田:病院に行っても、なかなかシェーグレン病と診断されないこともあるのでしょうか?
大河内:はい。シェーグレン病の症状は、倦怠感や乾燥感など様々で、他の病気と重なりやすいと言われています。症状が多岐にわたる分、最初にかかる内科や眼科の先生方もシェーグレン病と診断しにくい面があります。また、診断までに時間がかかると、その間に症状が進行することがあるのも、この病気の難しさの一つです。気になる症状があれば、まずはかかりつけ医に相談しつつ症状の経過を踏まえ、必要に応じてリウマチ医など専門の先生とも繋がることが、症状をコントロールする上で重要になります。
凛子:あるときから何となく「疲れやすい」と感じるようになりました。特に夕食直後、食事を消化するのがしんどくて、疲れ果てて眠ってしまうことがよくありました。このときは大きな原因があるとは思わなかったのですが、そこからしばらく経った夏の暑さが残る頃、いつの間にか手の内側の第2・第3関節の皮膚が真っ赤になっていたんです。私は度々霜焼けになるのですが、よく考えたら「夏に霜焼けになるはずがない」となり、すぐに皮膚科へ行きました。そこで先生に念入りに検査してもらった結果、シェーグレン病と診断されました。
山田:見た目の大きな変化がない分、周りの人には伝わりにくいということもあるのでしょうか。
凛子:はい。まず伝わりません。体の内側で起こっていることなので誰にも見えないし、血液検査と自分の体感でしかわからないんです。病名を聞いたことがないという人も多く、私自身も罹患してから初めて知りました。そのため体調の悪さが周囲に伝わりにくく、しんどい思いもたくさんしました。
凛子さんは皮膚に症状が現れやすいタイプのシェーグレン病で、ドライアイやのどの渇きなどにも悩まされているという。また、病状が悪化した際には肝臓の数値が上昇し、リンパが腫れ上がるなどの症状も見られたそうだ。
山田:どんな症状が最も大変だったか聞かせてください。
凛子:私の場合は食後の倦怠感です。おそらく胃が病気で弱っていたのかもしれません。食事の直後に眠るってまるで怠けているようで……。でも、食事の直後はとてもしんどくて、やることがあっても何もできず、2時間ほど横になると回復し、ようやく動けるようになる……という感じでした。かといって胃薬を飲んで治るわけでもなく、つらさが周囲に理解してもらえることもなく、仕方がないことと諦めて毎日生活していました。
山田:大河内さん、こうした“目に見えない症状”はシェーグレン病の特徴なのでしょうか。
大河内:そうですね。シェーグレン病の症状には、「乾く」「だるい」など、誰にでも一度は経験があるようなものが多く、また、数値で示せるものでもありません。だからこそ、ご本人も「このくらいで相談していいのかな」と迷ってしまうことがありますし、周りの方からも軽く受け止められてしまうことが少なくありません。
山田:凛子さん、現在日常生活で感じる影響について教えてください。
凛子:以前よりも疲れやすくなりましたし、冬の寒さや台風で気圧が変わる時期などは、自分でもコントロールできないくらい体調が崩れることがあります。今は会社で事務職として働いているのですが、仕事が忙しいと、どっと疲れます。
山田: そうなんですね。
凛子:はい。たとえば、体力を使う仕事が発生した場合、すぐに疲れて体調を崩してしまいます。また、私は唾液は出るのですが、喉がすごく乾きやすいので、いつも飲み物を持ち歩いているんです。そのため就ける職種は限られていて、今は、すぐに水分が摂れる事務職を選んでいます。さらに主治医から「紫外線には気をつけるように」とも言われているので、できるだけ長袖を着る、日傘を所持するなどの対策をして出勤しています。
シェーグレン病は、情報が広く一般に知られておらず、加えて、身近に同じ悩みを抱える人を見つけにくいことから、当事者が孤独に陥りやすい。こうした理由から大河内さんは「患者さんは『自分だけではない』という繋がりを持つことが大切」と述べ、繋がるための場所として、患者会や交流会、オンラインコミュニティ、病院の相談窓口、難病相談支援センターなどを挙げる。その上で「可能であれば複数の情報を見比べたり、主治医や医療者に確認したりしながら、自分に合った情報を選んでいくことが大切です」と説いた。
山田:凛子さんは実際にどうやって情報を集めたり、繋がりを作ったりしましたか?
凛子:発症当初は混乱しており、自分の身に起きたことを頭の中で整理するのもなかなか大変でした。同じ病気になった人たちのブログなどを読み漁りました。またSNSでの発信は、友人から過度に心配されたり、周りにショックを与えてしまったこともあったりして、すぐにやめました。もちろんこれは人によると思います。だからこそ、同じ病気を持つ仲間と出会いたいと思ってネット上で探していたのですが、それもダメで……。そんなときに、主治医の先生が「膠サポ」のチラシをくれて、やっと地元でリアルな場所に出会える、ピンポイントの病気を扱ってもらえる、と嬉しかったのを覚えています。
山田:一方で、様々な情報をインプットすればするほど、逆に不安になることもありそうですが。
凛子:症状がつらい時期は、ネットで病気のことをひたすら調べていました。主治医からはきちんと説明していただいていたのですが、「これからどうなるんだろう」と、もっと知りたくなって。でも検索すると、難しい医療用語や怖い情報ばかりが目に入り「こんな症状が私にも起きるの?」と不安になることもありました。
山田:症状は人それぞれなのに、全部自分に当てはまるように感じてしまうんですよね。
凛子:そうなんです。でも主治医に「ネットで調べています」と話したら、「信頼できる大きなサイトや、きちんとしたソースのある情報を選んでね」と言われました。それからは、「100人いれば100通りの症状がある」ということを少しずつ受け入れられるようになりました。今は、直接私を診てくれている主治医の先生と血液検査の結果、自分の感覚を一番の拠り所にしています。
山田:大河内先生に伺いたいのですが、お仕事をされている方の場合、シェーグレン病について職場にはどのように伝えるべきなのでしょうか?
大河内:凛子さんのように入社時に伝える方法もありますし、既に働いている方であれば、上司や産業医に相談するのも一つの手です。あとは、学会や医療機関などが出している資料を使って説明するのも、理解してもらいやすくする方法と言えます。
山田:その他、シェーグレン病の患者さんにおすすめすることがあれば教えて欲しいです。
大河内:やはり、我慢しすぎないことだと思います。「これくらい大丈夫」と無理を重ねてしまう方も多いですが、知らぬ間に我慢していることに気付き、体の症状だけでなく、傷ついたり、不安になったりしている自分の心にも少し目を向けてあげてほしいです。たとえば、これまでの研究では自分の体と気持ちに気づくマインドフルネスや、つらさをなくすことだけを目標にするのではなく、大切にしたいことに少しずつ近づいていく「ACT」という心理療法の考え方も、病気との付き合い方に役立つとされています。
山田: そういった心理的なサポートは、どこで受けられるのでしょう?
大河内:実は、心理的なケアは国際的にも研究が進んでいて、難病を抱える方に向けたアプローチが病院の心理士によって行われています。しかし、自分に使える心理療法があること自体を知らない患者さんは、とても多いんです。心のケアは特別なことではなく、治療と同じくらい大切なものなので、ぜひ遠慮なく使っていただきたいですね。
山田: 心のケアの面でも、シェーグレン病の研究は進んできているのですね。
大河内:そうなんです。「膠サポ」では、言葉にしにくい気持ちを、絵や音楽、ものづくりなどを通して表現する芸術療法のような取り組みも大切にしています。うまく話せなくても、自分に合う形で心を休ませる時間を持ってほしいですし、つらいときに「今日はしんどい」と言える相手や場所があるだけで、気持ちが楽になることもあります。頑張ることも大切ですが、休むことや助けを求めることも、病気と付き合っていく上で重要だと思います。
凛子さんは現在、月に1回のペースで膠原病内科に通っている。主治医に自身の現状を正確に伝えられるよう事前にまとめたメモを持参しているほか、イベントが控えている場合はそのことも報せ、気をつけるべきことはあるか確認しているという。大河内さんはこうした凛子さんの工夫を肯定しつつ、「大切なのは、患者さん自身が『自分が自分の体を一番よく知っている専門家』であると意識することです。気になることは我慢せず少しずつ言葉にし、医師と一緒に考えていける関係を築いていけたらいいですね」と話した。
山田:では最後にお二人から、シェーグレン病で不安を抱えている方に向けてメッセージをお願いします。
大河内:まずお伝えしたいのは、つらさを一人で抱え込まないで欲しいということです。まだ診断を受けていない方や、「もしかしたら」と気になる症状がある方は、一度、リウマチ科や膠原病内科など専門の先生に相談してみてください。体調が悪いときには、病院を探すことさえ大きな負担になることもあるので、ご家族や周りの方には、専門医探しや受診までのサポートにもぜひ協力していただきたいです。分かってもらえない経験が続くと、心も少しずつ疲れてしまいます。心理専門家としてお伝えしたいのは、不安になることも傷つくことも弱音を吐くことも、決して悪いことではないということです。情報に触れるときは「信頼できるものかどうか」という視点を大切にしつつ、医療者や患者会も活用してください。「膠サポ」も一人で抱え込まないための場所でありたいと思っています。どうか必要なときには繋がってください。
凛子:今でこそ明るく話せますが、先生に泣きながら話を聞いてもらった時期もありました。そんな過去を経て今、落ち込んでいる方や未来を悲観している方にお伝えしたいメッセージがあって、今回収録に参加しました。「病気だから」と色々なことを諦めてしまうのはもったいないことです。私自身、やりたいことに取り組むと自然とエネルギーが沸き、不思議と体が付いてくる実感があります。なので皆さんも、やりたいことをやりましょう!
山田:大河内さんと凛子さんのお話を聞き、病気について正しく理解した上で前向きに向き合うことの大切さを改めて感じました。お二人とも本日はありがとうございました!
(取材・文=小島浩平、撮影=竹内洋平)
・本編に症状についての言及がありますが、あくまでも患者さん個人の意見になります。
・自身の症状で気になる方は、必ず専門の医療施設を受診し、医師の診断に基づき適切な治療を行うようにしてください。
疲れや目・口の渇き、だるさなど、「なんとなくの不調」が症状として現れるシェーグレン病。国の指定難病(53番)に認定されるこの疾患は、40~60代の女性に発症しやすく、日本国内における患者数は推計約7万人に達するとされる。最近では、「シェーグレン症候群」から「シェーグレン病」へと名称変更が行われた。しかしながら、広く一般的には知られていない疾患であり、かつ、症状が身近な体の異変であることが多いため「気のせいかな」「疲れているだけ」と疾患のサインに気づかず、結果として診断に辿り着いていない潜在的な患者も少なくないと言われている。
そこで今回、J-WAVEではPodcast番組「ノバルティス ファーマ presents なんとなくな不調とシェーグレン病」を配信。臨床心理士・公認心理師で「NPO法人 膠原病・リウマチ・血管炎サポートネットワーク」(以下、膠サポ)代表理事の大河内範子さんと、シェーグレン病当事者・凛子さん(仮名)へのインタビューを通し、シェーグレン病との向き合い方を深掘りした。聞き手は、J-WAVEナビゲーターの山田玲奈が務めた。
診断の難しさが治療のハードルに
そもそも「シェーグレン病」とはどのような疾患なのか。まずは「膠サポ」の代表理事として、シェーグレン病患者の交流会開催や情報発信などを行っている大河内さんに話を訊いた。山田:シェーグレン病というと「乾燥の症状」というイメージを持つ方も多いと思うのですが、実際のところ、どのような症状が現れるのでしょうか。
大河内:私たちの体には、細菌やウイルスから自分を守る「免疫」という働きがあります。シェーグレン病は、その免疫が何らかの理由で自分自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。主に涙腺や唾液腺が障害されることで、目や口の乾燥が起こります。さらには全身に炎症が現れることもあり、だるさや関節の痛み、ときには肺や腎臓といった臓器に影響が出ることもあります。
山田:病院に行っても、なかなかシェーグレン病と診断されないこともあるのでしょうか?
大河内:はい。シェーグレン病の症状は、倦怠感や乾燥感など様々で、他の病気と重なりやすいと言われています。症状が多岐にわたる分、最初にかかる内科や眼科の先生方もシェーグレン病と診断しにくい面があります。また、診断までに時間がかかると、その間に症状が進行することがあるのも、この病気の難しさの一つです。気になる症状があれば、まずはかかりつけ医に相談しつつ症状の経過を踏まえ、必要に応じてリウマチ医など専門の先生とも繋がることが、症状をコントロールする上で重要になります。

「NPO法人 膠原病・リウマチ・血管炎サポートネットワーク」代表理事の大河内範子さん 自身も子どもの頃に膠原病を発症した患者の一人だという大河内さん。「病気を抱えながら日々生活を続けている人たちが病気のことも気持ちのことも安心して話せる場所を作りたい」という思いから、心理療法の仕事に従事する傍ら2013年より活動を開始し、現在は「膠サポ」代表理事として、患者同士の交流や情報発信のほか、患者たちの声を医療・社会に届ける活動を展開している。
凛子さんの体に起きた最初の異変
シェーグレン病当事者として、疾患と向き合いながら生活しているのが凛子さんだ。シェーグレン病と診断されたのは、2020年9月のこと。当初、体にはどのような症状が現れたのだろうか。凛子:あるときから何となく「疲れやすい」と感じるようになりました。特に夕食直後、食事を消化するのがしんどくて、疲れ果てて眠ってしまうことがよくありました。このときは大きな原因があるとは思わなかったのですが、そこからしばらく経った夏の暑さが残る頃、いつの間にか手の内側の第2・第3関節の皮膚が真っ赤になっていたんです。私は度々霜焼けになるのですが、よく考えたら「夏に霜焼けになるはずがない」となり、すぐに皮膚科へ行きました。そこで先生に念入りに検査してもらった結果、シェーグレン病と診断されました。
山田:見た目の大きな変化がない分、周りの人には伝わりにくいということもあるのでしょうか。
凛子:はい。まず伝わりません。体の内側で起こっていることなので誰にも見えないし、血液検査と自分の体感でしかわからないんです。病名を聞いたことがないという人も多く、私自身も罹患してから初めて知りました。そのため体調の悪さが周囲に伝わりにくく、しんどい思いもたくさんしました。
凛子さんは皮膚に症状が現れやすいタイプのシェーグレン病で、ドライアイやのどの渇きなどにも悩まされているという。また、病状が悪化した際には肝臓の数値が上昇し、リンパが腫れ上がるなどの症状も見られたそうだ。
山田:どんな症状が最も大変だったか聞かせてください。
凛子:私の場合は食後の倦怠感です。おそらく胃が病気で弱っていたのかもしれません。食事の直後に眠るってまるで怠けているようで……。でも、食事の直後はとてもしんどくて、やることがあっても何もできず、2時間ほど横になると回復し、ようやく動けるようになる……という感じでした。かといって胃薬を飲んで治るわけでもなく、つらさが周囲に理解してもらえることもなく、仕方がないことと諦めて毎日生活していました。
山田:大河内さん、こうした“目に見えない症状”はシェーグレン病の特徴なのでしょうか。
大河内:そうですね。シェーグレン病の症状には、「乾く」「だるい」など、誰にでも一度は経験があるようなものが多く、また、数値で示せるものでもありません。だからこそ、ご本人も「このくらいで相談していいのかな」と迷ってしまうことがありますし、周りの方からも軽く受け止められてしまうことが少なくありません。

山田玲奈
「繋がり」が育む「自分だけではない」という安心感
最初にかかった皮膚科医の勧めで受けた検査によりシェーグレン病と診断され、直後に膠原病内科の専門医を紹介してもらったことで、幸いにも早くから適切な治療を受けられたという凛子さん。とはいえ、長く付き合っていかなければいけない疾患であるがゆえに、現在も日常生活の中で大変な思いをすることはあるようだ。山田:凛子さん、現在日常生活で感じる影響について教えてください。
凛子:以前よりも疲れやすくなりましたし、冬の寒さや台風で気圧が変わる時期などは、自分でもコントロールできないくらい体調が崩れることがあります。今は会社で事務職として働いているのですが、仕事が忙しいと、どっと疲れます。
山田: そうなんですね。
凛子:はい。たとえば、体力を使う仕事が発生した場合、すぐに疲れて体調を崩してしまいます。また、私は唾液は出るのですが、喉がすごく乾きやすいので、いつも飲み物を持ち歩いているんです。そのため就ける職種は限られていて、今は、すぐに水分が摂れる事務職を選んでいます。さらに主治医から「紫外線には気をつけるように」とも言われているので、できるだけ長袖を着る、日傘を所持するなどの対策をして出勤しています。

シェーグレン病に伴う疲れのために仕事や家事が思うようにできず、約束をキャンセルしてしまうことが続き、自己嫌悪に陥った経験があるという凛子さん。シェーグレン病について「疲れの質が違う」とし、「『疲れた』という言葉は誰でも気軽に使えますし、私もそうでした。しかし、シェーグレン病の疲れは、寝ても回復しなかったり、放っておくと悪化してしまったりする。根本がまったく違う疲れだと実感しています。そのことをより多くの方に知ってもらいたいです」と語る。
山田:凛子さんは実際にどうやって情報を集めたり、繋がりを作ったりしましたか?
凛子:発症当初は混乱しており、自分の身に起きたことを頭の中で整理するのもなかなか大変でした。同じ病気になった人たちのブログなどを読み漁りました。またSNSでの発信は、友人から過度に心配されたり、周りにショックを与えてしまったこともあったりして、すぐにやめました。もちろんこれは人によると思います。だからこそ、同じ病気を持つ仲間と出会いたいと思ってネット上で探していたのですが、それもダメで……。そんなときに、主治医の先生が「膠サポ」のチラシをくれて、やっと地元でリアルな場所に出会える、ピンポイントの病気を扱ってもらえる、と嬉しかったのを覚えています。
山田:一方で、様々な情報をインプットすればするほど、逆に不安になることもありそうですが。
凛子:症状がつらい時期は、ネットで病気のことをひたすら調べていました。主治医からはきちんと説明していただいていたのですが、「これからどうなるんだろう」と、もっと知りたくなって。でも検索すると、難しい医療用語や怖い情報ばかりが目に入り「こんな症状が私にも起きるの?」と不安になることもありました。
山田:症状は人それぞれなのに、全部自分に当てはまるように感じてしまうんですよね。
凛子:そうなんです。でも主治医に「ネットで調べています」と話したら、「信頼できる大きなサイトや、きちんとしたソースのある情報を選んでね」と言われました。それからは、「100人いれば100通りの症状がある」ということを少しずつ受け入れられるようになりました。今は、直接私を診てくれている主治医の先生と血液検査の結果、自分の感覚を一番の拠り所にしています。
大切なのは、つらさを一人で抱え込まないこと
凛子さんは、こまめに休息を取る、「いつもと違う」と感じたらすぐに寝床に就くなどの工夫をしながら、日々を過ごしているという。また、今の職場には採用面接の段階で疾患のことやその症状、できること・できないことを包み隠さずに伝えており、「振り返ってみれば、自分を守るために大事なことだったと思います」と語った。山田:大河内先生に伺いたいのですが、お仕事をされている方の場合、シェーグレン病について職場にはどのように伝えるべきなのでしょうか?
大河内:凛子さんのように入社時に伝える方法もありますし、既に働いている方であれば、上司や産業医に相談するのも一つの手です。あとは、学会や医療機関などが出している資料を使って説明するのも、理解してもらいやすくする方法と言えます。
山田:その他、シェーグレン病の患者さんにおすすめすることがあれば教えて欲しいです。
大河内:やはり、我慢しすぎないことだと思います。「これくらい大丈夫」と無理を重ねてしまう方も多いですが、知らぬ間に我慢していることに気付き、体の症状だけでなく、傷ついたり、不安になったりしている自分の心にも少し目を向けてあげてほしいです。たとえば、これまでの研究では自分の体と気持ちに気づくマインドフルネスや、つらさをなくすことだけを目標にするのではなく、大切にしたいことに少しずつ近づいていく「ACT」という心理療法の考え方も、病気との付き合い方に役立つとされています。
山田: そういった心理的なサポートは、どこで受けられるのでしょう?
大河内:実は、心理的なケアは国際的にも研究が進んでいて、難病を抱える方に向けたアプローチが病院の心理士によって行われています。しかし、自分に使える心理療法があること自体を知らない患者さんは、とても多いんです。心のケアは特別なことではなく、治療と同じくらい大切なものなので、ぜひ遠慮なく使っていただきたいですね。
山田: 心のケアの面でも、シェーグレン病の研究は進んできているのですね。
大河内:そうなんです。「膠サポ」では、言葉にしにくい気持ちを、絵や音楽、ものづくりなどを通して表現する芸術療法のような取り組みも大切にしています。うまく話せなくても、自分に合う形で心を休ませる時間を持ってほしいですし、つらいときに「今日はしんどい」と言える相手や場所があるだけで、気持ちが楽になることもあります。頑張ることも大切ですが、休むことや助けを求めることも、病気と付き合っていく上で重要だと思います。

膠サポでは関東や関西、九州、四国など各地で交流会を開催している。大河内さんによれば、地域によっては専門医と繋がるまでに何年も時間を要してしまうシェーグレン病患者もいるとのことで、「だからこそ、専門医ではない先生方にも、シェーグレン病の症状や生活への影響を知っていただき、早く気づいていただくことで、患者さんの生活のしづらさを減らせると思っています」と話す。
山田:では最後にお二人から、シェーグレン病で不安を抱えている方に向けてメッセージをお願いします。
大河内:まずお伝えしたいのは、つらさを一人で抱え込まないで欲しいということです。まだ診断を受けていない方や、「もしかしたら」と気になる症状がある方は、一度、リウマチ科や膠原病内科など専門の先生に相談してみてください。体調が悪いときには、病院を探すことさえ大きな負担になることもあるので、ご家族や周りの方には、専門医探しや受診までのサポートにもぜひ協力していただきたいです。分かってもらえない経験が続くと、心も少しずつ疲れてしまいます。心理専門家としてお伝えしたいのは、不安になることも傷つくことも弱音を吐くことも、決して悪いことではないということです。情報に触れるときは「信頼できるものかどうか」という視点を大切にしつつ、医療者や患者会も活用してください。「膠サポ」も一人で抱え込まないための場所でありたいと思っています。どうか必要なときには繋がってください。
凛子:今でこそ明るく話せますが、先生に泣きながら話を聞いてもらった時期もありました。そんな過去を経て今、落ち込んでいる方や未来を悲観している方にお伝えしたいメッセージがあって、今回収録に参加しました。「病気だから」と色々なことを諦めてしまうのはもったいないことです。私自身、やりたいことに取り組むと自然とエネルギーが沸き、不思議と体が付いてくる実感があります。なので皆さんも、やりたいことをやりましょう!
山田:大河内さんと凛子さんのお話を聞き、病気について正しく理解した上で前向きに向き合うことの大切さを改めて感じました。お二人とも本日はありがとうございました!

この記事の続きを読むには、
以下から登録/ログインをしてください。
