「本当に生きる喜びを感じた」THE BAWDIES・ROYの愛にあふれるソウルミュージック解説

THE BAWDIESのROY(Vo/Ba)が、自身やバンドに大きな影響を与えた、ソウルを生んだ「四天王」を解説した。

ROYが登場したのは、5月3日(日・祝)放送のJ-WAVE『AS YOU LIKE IT』(ナビゲーター:蔦谷好位置、アユニ・D)。「好きなだけでいい。」をコンセプトに、毎回さまざまなジャンルのゲストを交えて音楽やエンターテイメントの“好き”を語るプログラムだ。

俺らがこの生々しいロックンロールを伝えたい

THE BAWDIESは2004年に結成、2009年にデビューした。まずは、その成り立ちから話を訊く。

THE BAWDIES「HERE ARE THE BAWDIES」Official Audio

蔦谷:THE BAWDIESといえば、昔のソウルだったりロックだったりを感じさせますが、そういう音楽をみんな子どものころから聴いていたんですか?

ROY:僕らはバスケ部だったので、高校を卒業するまで音楽よりもバスケをずっとやってたんです。バスケを引退して、入ったレコードショップで60年代のロックンロールが流れていて。「すげえかっこいい、新しい音楽じゃん」と思って興味を持ちました。そのときはギターのJIMと僕がいて、衝撃を受けてそのレコードを買って。次の日に「こんなの見つけたよ!」ってメンバーにも聴かせて、みんな「やばいね!」と。

蔦谷:誰のレコード?

ROY:The Sonicsっていう60年代のガレージ・パンク・バンドと言われているバンドの音源なんですけど、彼らになりたいと。

Shot Down

ROY:彼らの音源にたまたま僕らが出会っただけで、世界中の若者は絶対知らないから、これは知らせたほうがいいんじゃないかと。

蔦谷:使命感が生まれたわけですね。

ROY:でも、そこから1、2週間して「無理じゃねえか」って。で、調べたら40年も前の人たちだって気づいて、「俺らがこれになって、この生々しいロックンロールを伝えたほうがいいんじゃないか」ってことでバンドやろうと。「The Sonicsになりたい」と思ったときに、彼らが何を聴いてきたかわからないと、それには近づけないってことで、彼らのルーツを辿っていったらリズム・アンド・ブルースとかソウルとかブラックミュージックが出てきて、そこからのめり込んだんですね。

ソウルの源流はブラック・アメリカンのワーク・ソング

さらに、THE BAWDIESの音楽性にも多大な影響を与えたソウルの歴史についてROYが解説していく。

ROY:1600年代にアフリカから連れてこられたブラック・アメリカンたちがいるわけですね。厳しい労働をさせられたりして、音楽とかも禁止されるわけです。労働しながら自分たちを鼓舞し合いながら仕事をするときに、ワーク・ソングが生まれたんです。そして、自分たちが仕える家族は基本的にキリスト教だったりするので、教会に行って賛美歌を歌うんです。それを聴いていて、自分たちも神様に救いを求めたいということでブラック・アメリカンだけのコミュニティを作って、教会を作って歌い始めたのが「ゴスペル」。神様への歌なので、自分のことは歌っちゃいけない。じゃあ、自分のぼやきとかはどこで歌うと思いますか?

蔦谷:酒場?

ROY:そう、酒場に行くわけです。酒場でギターをつまみながら、「彼女に捨てられたんだよ」ってぼやきながら歌うというので生まれたのが「ブルース」。そして、酒場でブルースが親しまれるようになると、大衆音楽としてブルースが広がっていくわけです。ブルースが広がって、ライブに行くと踊りたくなりませんか?

アユニ・D:踊りたい。

ROY:「じゃあ、もっとリズムを強調してくれよ」と生まれたのが「リズム・アンド・ブルース」なんです。「R&B」という呼び方もあるんですけど、それとリズム・アンド・ブルースを僕はちょっと区別していて。90年代以降にブラックミュージック全般をR&Bと呼ばないと、いろいろ分散化しすぎてまとまらないからR&Bと呼ぼうぜと言ってからの呼び方なので、ここで僕が言うR&Bというのはリズム・アンド・ブルースだということです。そして、リズム・アンド・ブルースが生まれると、みなさんが踊るじゃないですか。もっと速く、もっと踊りたいっていうのはどんな人ですか?

アユニ・D:鬱憤を晴らしたい人。

ROY:若者だね。若者が踊りたくなっちゃう。もっとテンポを速く、もっと激しくって生まれたのが、リズム・アンド・ブルースのなかの「ロックンロール」。だから、ロックンロールはリズム・アンド・ブルースのなかのひとつなんですね。そのリズム・アンド・ブルースのなかから、60年代になるかならないかぐらいで、音楽が少し自由度を増して、またゴスペルに近づくんです。エネルギーを発散させるような音楽。魂の音楽と呼ばれ、それが「ソウル」という音楽なんです。

「神様」を「きみ」や「あなた」に変えて歌い始めた

ROYは、ソウルを生んだ「四天王」として、サム・クック、ジャッキー・ウィルソン、レイ・チャールズ、ジェームス・ブラウンの4人を挙げ、彼らこそがソウルミュージックを生み出した存在ではないかと語る。

まずは、ROYがいちばん影響を受け、The Sonicsもカバーをしていたレイ・チャールズの『What'd I Say』をオンエアした。

What'd I Say, Pt. 1 & 2 (2005 Stereo Remaster)

ROY:なぜ、レイ・チャールズがソウルを生んだと言われているかというと、リズム・アンド・ブルースは大衆音楽として酒場で親しまれるようになっていったわけですよ。その一方で、ゴスペルミュージックというのはずっとあった。先ほど言ったように、ゴスペルミュージックは神様の歌で、これを大衆音楽、世俗の音楽に移し替えることはタブーとされていたので、ゴスペルはリズム・アンド・ブルースとして認められないわけなんです。ですが、このリズムとこのメロディの付け方って、まさにゴスペルそのもの。レイ・チャールズはゴスペルソングの歌詞を「神様」ではなくて、「きみ」とか「あなた」に変えて歌い始めたんです。ゴスペルをリズム・アンド・ブルースにしてしまったんですよ。

蔦谷:けっこうタブーを冒したところがあるんですね。

ROY:なぜこういう動きがあったかというと、四天王の4人は、リズム・アンド・ブルースの世界でいうと、50年代の中期から後期にかけて出てきた新世代なんです。目の前でリズム・アンド・ブルースがポップスとしてお金になる、商売になるっていうことを見てきた。そして、ゴスペルで育った世代なんです。それまでの世代はそれぞれを分けて考えていたので、ゴスペルとリズム・アンド・ブルースを一緒にすることなんて誰もしなかった。

蔦谷:この4人はビジネス的才覚もあったんですね。

モータウン・サウンドにいちばん影響を与えた

続いてROYは、ジャッキー・ウィルソンを紹介した。

ROY:60年代に入るとリズム・アンド・ブルースがソウルと呼ばれるようになり、その快進撃を担ったのが「モータウン」というレーベルなんですね。アメリカ全土で一世風靡した。それに対抗できたのは、The Beatlesとかイギリスのロックバンドぐらいと言われていて。モータウンは60年代に入って、黒人のためのソウルミュージックではなくて、白人、黒人、人種の壁を越えて全若者を踊らせるためのダンスミュージックを作ると言って始まったんです。その地域はデトロイト北部でした。南部は田舎で、当時、差別が強かったりするんですけど、北部は都会で、モータウンの楽曲ってすごく洗練されてるんですね。その洗練されたモータウン・サウンドにいちばん影響を与えたのがジャッキー・ウィルソンと言われています。

蔦谷:そうなんですね。

ROY:だから、レイ・チャールズとかと比べると、歌い方がすごく洗練されていて。ゴスペルマナーなシンガーってちょっと暑苦しいんですけど、ジャッキー・ウィルソンの洗練されているところは、モータウンのアーティストもたくさん影響を受けたのかなと。

(Your Love Keeps Lifting Me) Higher & Higher

ブラック・アメリカンのためだけの音楽をやり続けた

3人目に紹介するのは、通称「JB」ことジェームス・ブラウンだ。

ROY:JBは逆に時代の流れをずっと無視し続けた方です。この時代は、モータウンもそうなんですけど、白人層に受け入れられないとスターになれない時代だったんです。だから、ジャッキー・ウィルソンもサム・クックもレイ・チャールズも器用に歌える。でも、JBだけは一切それをせずに、ブラック・アメリカンのためだけの音楽をやり続ける。リズムに言葉を置いていくみたいな。それこそ、ラップの源流と言われてもいます。

蔦谷:ダンスもすごいですよね。

ROY:それもマイケル・ジャクソンの元となったとも言われているくらいなんです。JBは、ずっとファンキーなリズム・アンド・ブルースを温め続けて、ロックンロールが流行ったときもロックンロールをやらずに、ずっとそれだけをやっていって。先ほども話したように、60年代前半から中期まではモータウンの洗練された時代なんです。中期から後期にかけては洗練されたものにみんなが飽きてきて、逆に「泥臭いほうがかっこよくねえか?」という時代になる。南部の田舎臭い、ゴスペル臭いソウルにみんな夢中になっていくんですね。そういった南部のサウンドに影響を与えたのが、レイ・チャールズの泥臭さと、そしてジェームス・ブラウンのファンキーさだと言われていて。なので、後期のサザンソウル、ディープソウルの時代がソウルの時代にあるんですけど、そこからファンキーソウルの時代に移る。60年代の中期から後期のソウルミュージックへの影響を与えたのが、ジェームス・ブラウンです。

James Brown - I Got You (I Feel Good) (Visualizer)

ソウルミュージックのすべてに影響を与えた

最後に、ROYはサム・クックを紹介した。

ROY:モータウンのような都会的なサウンドも南部の泥臭いソウルにも、すべてのソウルに影響を与えた人です。サム・クックはもともとゴスペル界の神童と言われて、大スターだったんですよ。すごく頭のいい人で、商業的にも自分が成功するためにはポップスの世界に転向したほうがいいということを考えて、それで、ゴスペル界の王子がいなくなり、それは大事件でした。「ゴスペルに絶対戻ってくるな!」みたいな、厳しいなかでポップスに転向した。彼は白人層にも受け入れられる器用な歌い方もできるので、音源だけを聴いているとゴスペル界ですごい人だったってわからないんです。でも、1枚だけ『ハーレム・スクエアー・クラブ 1963』という、観客にブラック・アメリカンしかいないなかで歌ったライブ音源があるんですね。それを発売しようとしたんですけど、おそらくレコード会社が「サム・クックのイメージじゃない」ということでお蔵入りにして、サム・クックはその翌年の64年に亡くなってしまうんですね。

日の目を浴びることがなかった『ハーレム・スクエアー・クラブ 1963』だが、1983年に発売されることに。

ROY:当時、山下達郎さんが「これはすごいぞ」ということで、ご自身のラジオ番組で1日中このアルバムをかけ続けたっていう伝説があるくらい、ゴスペル時代のサム・クックそのものなんですよね。それを聴いたときに僕は、本当に生きる喜びも感じたというか。「音楽って最高だな」ってなったのは、このアルバムを聴いてからなんです。

蔦谷:まさに魂を震わせてくれたんですね。

Bring It on Home to Me (Live at the Harlem Square Club, Miami, FL - January 1963)

THE BAWDIESは3月にメジャー10枚目となるオリジナルアルバム『THIS IS THE PARTY』をリリース。現在、ニューアルバムを引っ提げて全国ワンマンツアー「THIS IS THE PARTY TOUR 2026」を開催中だ。そのほか、最新情報は公式サイトまで。

THE BAWDIES 「PARTY PARTY」Music Video

『M bit Project AS YOU LIKE IT』では「好きなだけでいい。」をコンセプトに、毎回さまざまなジャンルのゲストを交えて音楽やエンターテイメントの“好き”を語るプログラム。放送は毎週日曜21時から。
番組情報
M bit Project AS YOU LIKE IT
毎週日曜
21:00-21:54

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