ギタリストのIchika Nitoが、角野隼斗と対談。1stアルバム『The Moon’s Elbow』の制作エピソードや、次回作の展望を語った。
Ichikaが登場したのは、3月1日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」。ピアニスト・角野隼斗が、音楽を通じたさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けするコーナーだ。
【関連記事】角野隼斗×Ichika Nito対談。ピアノとギター、互いの羨ましさを語る「1音の情報量が…」
今回はまず角野が、Ichikaが1月30日にリリースした1stアルバム『The Moon’s Elbow』の感想を伝えた。
角野:これが1stアルバムなんだ、と思った。何作も出してるイメージがありました。
Ichika:自分は「昨日の自分より、今日の自分のほうがいい音楽を作れている」と思いたいタイプなので、アルバムのように長い時間をかけて作品をまとめる形式が、正直あまり向いてない感覚があって。だから、これまでアルバムとしては出してこなかったんだけど、やっぱりアルバムっていう形で作品を出すってことはやっておいたほうがいいなって思ったから、このタイミングで(笑)。
角野:聴かせていただきました。かっこよかった。
Ichika:ありがとう!
角野:円環構造というか、ひとつの物語が円となって閉じていくような、すごくコンセプチュアルな作品だなと感じた。
Ichika:まさにそこはイメージした。『Where I Begin』という曲から始まって、月をモチーフにしながら円環構造で締めていく、みたいなイメージで作ってます。ライブのゲストでかてぃん(角野)に「弾いてよ」ってお願いしたことがあったけど、今回のアルバムではギタリストがけっこう参加してくれてて。Marcinとは接点あるよね?
角野:うん。同じレーベルだし、一度コラボしたこともあるよ。
Ichika:あいつはいい奴だよね。
今後の活動について話がおよぶと、Ichikaは年内に2ndアルバムのリリースを考えていることを明かす。1stアルバムで「ギタリストとしての自分」にひと区切りをつけたことから、次作ではギタリストという枠にとらわれず、自身が一緒に作品を作りたいと感じた人物をゲストとして迎える構想だという。
Ichika:2ndもフィーチャリングが多めのアルバムになる予定なんだけど、そこでピアノ弾いてください!
角野:おお~弾きます!
Ichika:今回、こうしてゲストに呼んでいただけたのも、すごくいいタイミングだなと思って。
角野:いいですね。1stアルバムの話をしてたと思ったら、もう2ndの話(笑)。
Ichika:時間が過ぎるのは早いからね。自分たちは出会ったのが20代だったのに、気づけば30代ですからね。40代も見えてきてるし、怖くない(笑)?
角野:急に怖いことを言いますね(笑)。そうなのよ。
Ichika:40歳までにアルバム5枚は出したいって思ってる。
角野:壮大な計画ですね。
制作中は、頭のなかにあるイメージと実際の演奏が噛み合わなくなる瞬間があり、表現したいことが多いほど、もどかしさが募るという。そうしたフラストレーションを感じると、夜に散歩をし、星空や、なかでも月を眺めることが多かったと振り返る。
月は日々わずかに形を変え、同じ満月であっても見るタイミングや自身の心身の状態によって印象が大きく異なる。Ichikaは、同じ軌道を巡り続けているようで、月そのものは変わっていない一方、年単位で見れば、自分自身は確実に変化していると語り、その「変わらないもの」と「変わっていく自分」とのあいだに生じるズレの感覚を、アルバム全体の世界観として落とし込みたいと考えたのだという。
Ichika:1stアルバムを長年出してこなかったこともあって、これはギタリスト・Ichika Nitoとしての人生を円環構造の比喩してみよう、と思ったのがきっかけかな。
角野:その話を聞いて、僕が最初に作った『Human Universe』を思い出した。宇宙のなかにいる人間。そして人間のなかにある宇宙、っていう両方を想像しながら作った作品で。宇宙という壮大な存在から見れば、人間は時間的にも空間的にも本当に小さい。それでも、その人間がこの世界に対して何ができるのか、あるいは壮大なものから自分がどう影響を受けたいのか、そんなことを考えてた気がするな。そう考えると、月の満ち欠けと円環構造って、ちょうど対応してるわけか。
Ichika:そうそう。かてぃんが『Human Universe』を作るにあたって、最終的な結論をどう落とし込んだのかはわからないけど、自分の場合は終わりのない円環構造っていうのは、ずっと回り続けるものだなと思っていて。相対的な話になるんだけど、宇宙から見れば変わっていないようなスピードでも、自分自身は確実に変わり続けている。でも、その「回っている」という運動自体は事実として存在している、っていうのを自分のなかで解釈した。だから、同じようなことを1stアルバムに落とし込んでたね。
番組では、アルバムの表題曲『The Moon’s Elbow』をオンエアした。
ひとりで制作するときは判断も責任もすべて自分で引き受ける感覚が強い一方、バンド活動では個人で背負い込むというよりも、流れに身をまかせながら音楽が進んでいくような感覚があると語った。
Ichika:Diosのメンバーのたなかとササノマリイはコントロールできる範囲ではない。他人だから当たり前なんだけど、こっちが出したアイデアがいろんな方向に飛んでいくんだよね。音楽的にも、やりたいこと的にも、偶然と偶然が重なって、予想もしない場所に着地する。それがめっちゃ面白いって感じ。
角野:予測不可能なコラボを楽しんでるんだね。その感覚、俺にもあるかも。自分がいなくても音楽が進んでいく感じって、ソロには絶対ないからね。バンドだと、自分が引っ張らなくても、流れに身をまかせて進んでいける。
Ichika:感覚の話だけど、音楽って時間芸術じゃん? ひとりで弾くときは、自分が時間を作って、回収していく感覚がある。でもバンドとかにのっかるときは、流れる時間にのっかる感じ。ベルトコンベアにのって運ばれていくようなイメージってない?
角野:あるある。ドラムやベースがいて、ピアノは基本その上にのるわけだから、その感覚はより強くなるね。
Ichika:インドのリズムの考え方って、「空間を刻む」らしくて。空間を分割してリズムを作る、みたいな概念らしい。
角野:コナッコル(南インドの伝統的なボイスパーカッション)みたいな?
Ichika:そうそう。
角野:コナッコル、大好き。変拍子とか、複雑なリズムが好きで、YouTubeでよく観てる。
Ichika:国ごとにリズムの概念って違うじゃん。そういうのを調べるのが好き。自分が「いい音楽」だと思う定義のなかに、同じノスタルジーでも、国や文化、教育背景が違う人が聴くと、感じ方がまったく違う、という点が含まれていて。日本だと泣ける音楽が、別の国では楽しい音楽として受け取られる。極端な言い方だけど、それくらい音楽の伝わり方は違うなと思ってる。
角野:昔、論文で読んだことがあるんだけど、西洋音楽をまったく聴いたことのないアフリカの部族に西洋音楽を聴かせると、まったく違う感情を抱く、みたいな。
Ichika:そんななかで、どの文化で育っても共通して「これはこうだ」と感じられるくらい、強度のある音楽を一度作ってみたいと思っていて。音楽的というより、むしろ科学的、実験的な発想かもしれない。
角野:それって文化のあり方にも依存する話だね。
Ichika:まさにそうで。だからこそ文化ごとの違いと同時に、共通点も見つけられるんじゃないかと思って。それを音楽として抽出できないか、という考え方だね。
Ichika Nitoの最新情報は公式サイトまで。
対談記事の前編はこちらから。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」では、角野隼斗が音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに選曲と語りをお届けする。オンエアは毎週日曜11時30分ごろから。
Ichikaが登場したのは、3月1日(日)放送のJ-WAVE『ACROSS THE SKY』(ナビゲーター:小川紗良)の「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」。ピアニスト・角野隼斗が、音楽を通じたさまざまな“出会い”をもとに、楽曲とトークをお届けするコーナーだ。
1stアルバムで意識したのは「円環構造」
前週に引き続き、Ichika Nitoがゲストとして登場。前回、2月22日(日)の放送時には、交流が始まったきっかけや、ピアノとギターの魅力などについて語り合い、スタジオライブを披露した。【関連記事】角野隼斗×Ichika Nito対談。ピアノとギター、互いの羨ましさを語る「1音の情報量が…」
今回はまず角野が、Ichikaが1月30日にリリースした1stアルバム『The Moon’s Elbow』の感想を伝えた。
角野:これが1stアルバムなんだ、と思った。何作も出してるイメージがありました。
Ichika:自分は「昨日の自分より、今日の自分のほうがいい音楽を作れている」と思いたいタイプなので、アルバムのように長い時間をかけて作品をまとめる形式が、正直あまり向いてない感覚があって。だから、これまでアルバムとしては出してこなかったんだけど、やっぱりアルバムっていう形で作品を出すってことはやっておいたほうがいいなって思ったから、このタイミングで(笑)。
角野:聴かせていただきました。かっこよかった。
Ichika:ありがとう!
角野:円環構造というか、ひとつの物語が円となって閉じていくような、すごくコンセプチュアルな作品だなと感じた。
Ichika:まさにそこはイメージした。『Where I Begin』という曲から始まって、月をモチーフにしながら円環構造で締めていく、みたいなイメージで作ってます。ライブのゲストでかてぃん(角野)に「弾いてよ」ってお願いしたことがあったけど、今回のアルバムではギタリストがけっこう参加してくれてて。Marcinとは接点あるよね?
Ichika Nito - Where I Begin (official visualizer)
Ichika:あいつはいい奴だよね。
今後の活動について話がおよぶと、Ichikaは年内に2ndアルバムのリリースを考えていることを明かす。1stアルバムで「ギタリストとしての自分」にひと区切りをつけたことから、次作ではギタリストという枠にとらわれず、自身が一緒に作品を作りたいと感じた人物をゲストとして迎える構想だという。
Ichika:2ndもフィーチャリングが多めのアルバムになる予定なんだけど、そこでピアノ弾いてください!
角野:おお~弾きます!
Ichika:今回、こうしてゲストに呼んでいただけたのも、すごくいいタイミングだなと思って。
角野:いいですね。1stアルバムの話をしてたと思ったら、もう2ndの話(笑)。
Ichika:時間が過ぎるのは早いからね。自分たちは出会ったのが20代だったのに、気づけば30代ですからね。40代も見えてきてるし、怖くない(笑)?
角野:急に怖いことを言いますね(笑)。そうなのよ。
Ichika:40歳までにアルバム5枚は出したいって思ってる。
角野:壮大な計画ですね。
月の満ち欠けと自身の変化を照らし合わせた
1stアルバム『The Moon’s Elbow』について、どのような思考のもとで制作したのかを問われると、Ichikaは曲作りの過程で抱えていた感覚から話し始めた。制作中は、頭のなかにあるイメージと実際の演奏が噛み合わなくなる瞬間があり、表現したいことが多いほど、もどかしさが募るという。そうしたフラストレーションを感じると、夜に散歩をし、星空や、なかでも月を眺めることが多かったと振り返る。
月は日々わずかに形を変え、同じ満月であっても見るタイミングや自身の心身の状態によって印象が大きく異なる。Ichikaは、同じ軌道を巡り続けているようで、月そのものは変わっていない一方、年単位で見れば、自分自身は確実に変化していると語り、その「変わらないもの」と「変わっていく自分」とのあいだに生じるズレの感覚を、アルバム全体の世界観として落とし込みたいと考えたのだという。
Ichika:1stアルバムを長年出してこなかったこともあって、これはギタリスト・Ichika Nitoとしての人生を円環構造の比喩してみよう、と思ったのがきっかけかな。
角野:その話を聞いて、僕が最初に作った『Human Universe』を思い出した。宇宙のなかにいる人間。そして人間のなかにある宇宙、っていう両方を想像しながら作った作品で。宇宙という壮大な存在から見れば、人間は時間的にも空間的にも本当に小さい。それでも、その人間がこの世界に対して何ができるのか、あるいは壮大なものから自分がどう影響を受けたいのか、そんなことを考えてた気がするな。そう考えると、月の満ち欠けと円環構造って、ちょうど対応してるわけか。
Ichika:そうそう。かてぃんが『Human Universe』を作るにあたって、最終的な結論をどう落とし込んだのかはわからないけど、自分の場合は終わりのない円環構造っていうのは、ずっと回り続けるものだなと思っていて。相対的な話になるんだけど、宇宙から見れば変わっていないようなスピードでも、自分自身は確実に変わり続けている。でも、その「回っている」という運動自体は事実として存在している、っていうのを自分のなかで解釈した。だから、同じようなことを1stアルバムに落とし込んでたね。
番組では、アルバムの表題曲『The Moon’s Elbow』をオンエアした。
Ichika Nito - The Moon's Elbow (official visualizer)
ソロは「時間を作る」、バンドは「流れにのる」
ソロ活動に加え、コラボレーションやバンド・Diosとしての活動にも取り組んでいるIchika。ソロとバンドでは、音楽に向き合う際の気持ちの切り替えも大きく異なるという。ひとりで制作するときは判断も責任もすべて自分で引き受ける感覚が強い一方、バンド活動では個人で背負い込むというよりも、流れに身をまかせながら音楽が進んでいくような感覚があると語った。
Ichika:Diosのメンバーのたなかとササノマリイはコントロールできる範囲ではない。他人だから当たり前なんだけど、こっちが出したアイデアがいろんな方向に飛んでいくんだよね。音楽的にも、やりたいこと的にも、偶然と偶然が重なって、予想もしない場所に着地する。それがめっちゃ面白いって感じ。
角野:予測不可能なコラボを楽しんでるんだね。その感覚、俺にもあるかも。自分がいなくても音楽が進んでいく感じって、ソロには絶対ないからね。バンドだと、自分が引っ張らなくても、流れに身をまかせて進んでいける。
Ichika:感覚の話だけど、音楽って時間芸術じゃん? ひとりで弾くときは、自分が時間を作って、回収していく感覚がある。でもバンドとかにのっかるときは、流れる時間にのっかる感じ。ベルトコンベアにのって運ばれていくようなイメージってない?
角野:あるある。ドラムやベースがいて、ピアノは基本その上にのるわけだから、その感覚はより強くなるね。
Ichika:インドのリズムの考え方って、「空間を刻む」らしくて。空間を分割してリズムを作る、みたいな概念らしい。
角野:コナッコル(南インドの伝統的なボイスパーカッション)みたいな?
Ichika:そうそう。
角野:コナッコル、大好き。変拍子とか、複雑なリズムが好きで、YouTubeでよく観てる。
Ichika:国ごとにリズムの概念って違うじゃん。そういうのを調べるのが好き。自分が「いい音楽」だと思う定義のなかに、同じノスタルジーでも、国や文化、教育背景が違う人が聴くと、感じ方がまったく違う、という点が含まれていて。日本だと泣ける音楽が、別の国では楽しい音楽として受け取られる。極端な言い方だけど、それくらい音楽の伝わり方は違うなと思ってる。
角野:昔、論文で読んだことがあるんだけど、西洋音楽をまったく聴いたことのないアフリカの部族に西洋音楽を聴かせると、まったく違う感情を抱く、みたいな。
Ichika:そんななかで、どの文化で育っても共通して「これはこうだ」と感じられるくらい、強度のある音楽を一度作ってみたいと思っていて。音楽的というより、むしろ科学的、実験的な発想かもしれない。
角野:それって文化のあり方にも依存する話だね。
Ichika:まさにそうで。だからこそ文化ごとの違いと同時に、共通点も見つけられるんじゃないかと思って。それを音楽として抽出できないか、という考え方だね。
Ichika Nitoの最新情報は公式サイトまで。
対談記事の前編はこちらから。
『ACROSS THE SKY』のコーナー「TOKYO TATEMONO MUSIC OF THE SPHERES」では、角野隼斗が音楽を通したさまざまな“出会い”をもとに選曲と語りをお届けする。オンエアは毎週日曜11時30分ごろから。
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