市川染五郎が明かす「襲名の重圧のなかで救われた楽曲」 亀田誠治が訊く

歌舞伎俳優の市川染五郎が亀田誠治とJ-WAVEで対談。染五郎が人生に寄り添ってきた音楽を語った。

染五郎が登場したのは、2月22日(日)放送のJ-WAVE『DEFENDER BLAZE A TRAIL』(ナビゲーター:亀田誠治)。毎回、音楽を愛するゲストを迎え、その人生に寄り添ってきた音楽の話を伺うプログラムだ。

芸術作品を観ているような癒やされる1曲

番組では、ゲストの人生に寄り添ってきた音楽を聴きながら、そこにどのようなエピソードがあるのか、話を訊いていく。2018年に八代目市川染五郎を襲名し、現在20歳の市川はまず1曲目にサカナクションの『怪獣』をセレクトした。

サカナクション / 怪獣 -Music Video-

染五郎:とても背中を押してくれるような、心が軽くなるような歌詞です。ありがたいことに、2025年の1年は歌舞伎でも歌舞伎以外でも色々な経験をさせていただいて、常に役で自分以外の人物の人生のことを考えてきた1年でした。

亀田:何人分もの自分がいるみたいな状態で。

染五郎:心を整理したいなっていう感覚になっていたときにこの曲を聴いて、スッと軽くなったというか。

亀田:「あ、この言葉聞きたかった」みたいな言葉が出てきますからね。

染五郎:サカナクションは昔から好きだったのですが、『怪獣』でまた他の曲もあらためて聴いたりとかして、すごく背中を押していただいている曲ですね。『怪獣』に限らず、サカナクションの曲ってすごく絵画的というか。絵画を観ているような、芸術作品を観ているような癒やしや安らぎ、心に訴えかけてくるような美しさを感じています。

亀田:一聴して「サカナクションだ」ってわかるサウンド感もありますよね。

染五郎:それも本当に好きなところで、個性というか唯一無二なところですね。

役者精神にも通じる1曲

続いて、染五郎が2曲目に選んだのはクイーンの『Innuendo』だった。

Queen - Innuendo (Official Video)

染五郎:クイーン自体は子どものときから好きで、小学生とか下手したら幼稚園生ぐらいのときから聴いていたとおもうのですが、この曲はわりと、もう少し大きくなってから知った曲で。さっきサカナクションの曲が絵画的っていうお話をしましたが、この曲もすごく絵画的だなと思って。

亀田:たしかに。

染五郎:構成も途中でロック調から急にフラメンコ調になったりとかして、演劇を観ている感覚に近いような、ドラマがある曲だなと。フレディ・マーキュリーが亡くなる前に最後に出したアルバムの曲なので、フレディの人生と重ね合わせたところもあるのか、最後の最後まで諦めずに自分を貫いていくというような歌詞なので、そういうところも舞台をやっている役者の精神にも通じるのかなと思います。クイーンの曲って、本当に音楽的に引き出しがないと作れない曲ばかりなんだろうなと感じます。それは役者も大事なことなので、引き出しをたくさん持っているって。

亀田:引き出しを持つために自分で心がけていることってあるんですか?

染五郎:なるべく他の方のお芝居を観たりとか、お芝居だけじゃなくて音楽だったりとか、そういうものも関係ないようで根本的には通じる部分があると思いますし、自分の感性を磨くようなことはなるべくしたいなと思っています。いろんなジャンルに触れるというのは意識しているかもしれないですね。

亀田:人生の一部として役者が、種から双葉、双葉から幹みたいになって真ん中にあるんですね。

染五郎:気づいたら役者をやっていた感じだったので(笑)。

亀田:ですよね。それはそれですごいギフトですからね。

染五郎:そうですね。自分自身が好きでやれているっていうのは幸せなことだなと思います。

苦しんでいた時期に勇気を与えてくれた1曲

続いて染五郎に「不可能かもしれない」と思ったことに挑んで実現したとき、背中を押してくれた1曲を訊くと、マイケル・ジャクソンの『Beat It』と答えた。

Michael Jackson - Beat It (Official 4K Video)

染五郎:マイケル・ジャクソンは9歳、10歳ぐらいのときから好きです。市川染五郎を襲名したのが12歳ぐらいのときで。その何年か前から襲名というものは決まっていて、それに向けて準備が始まって。襲名の公演自体も当時12歳で演じるような役ではない、自分自身初めて子どもの役ではない役を勤めさせていただきました。だから、声の出し方とか歩き方ひとつでも全然違う、今までの自分が積み上げてきたものだけでは到底できないようなお役をさせていただきました。もちろん、襲名というイベント自体も大きなものですし、自分の人生にとっても大きなもので、そのなかで今の自分のレベル、技術では到底できないなっていうことですごく苦しんでいた時期で。そのときだけではないのですが、マイケル・ジャクソンの曲はとても自分に勇気を与えてくれるものです。特に『Beat It』は歌詞というよりは、曲を聴くと元気になるというか。最近でも舞台へ向かう車のなかでよくかけたり、気分を上げたいときにかける曲ですね。

亀田:ちなみに、日本舞踊はベースにあるとして、ヒップホップダンスとかマイケルから始まったような西欧のダンスっていうのは踊ったりするんですか?

染五郎:踊ったりはしないですけど、父親(十代目松本幸四郎)がラスベガスで歌舞伎をやったとき、舞踊のなかにマイケルの振りをちょっと入れたことがあって。父が「ムーンウォークをやりたい」と言って、ムーンウォークの練習をずっと家でしていました(笑)。

亀田:すごい!

染五郎:(自分は)その横で妹とふたりで一緒に練習して。そのときはしょっちゅうムーンウォークやっていました。

クイーンのファンとしても特別な1曲

染五郎が最後に紹介したのは、2曲目に続き、クイーンの『The Show Must Go On』だった。

Queen - The Show Must Go On (Official Video)

染五郎:先ほどの『Innuendo』と被りますけど、舞台をやっている身として何があっても絶対に最後、幕が下りるまでショーを続けなければいけないという精神でやっているので、そこは舞台役者としてとても共感するところで。自分のある種、テーマ曲のように掲げて役者をやっていきたいなと思うような曲ですね。

亀田:ヘッドホンでクイーンを聴くと、空間をフルに使ってる感じですよね。すごく広くて奥行きがあって。当時の技術で考えてもスタジオでこだわってると感じるんですけど、それって舞台のこだわりとかでも同じですか?

染五郎:そうですね。劇場によっても音の伝わり方って違いますし、劇場によって同じ作品でもいろいろ工夫をしたりとかもあります。自分が舞台の人間だからなのかもしれないですけど、音楽を聴くときもライブ音源で聴くことが多くて。生感というか、その場で生まれるものが好きで。この『The Show Must Go On』はフレディが亡くなる直前の曲で、生で演奏されたことがない曲なので、そういう意味でもクイーンのファンとしても特別な曲ですね。

いずれは通らなきゃいけない道だと思っていた

「人生に寄り添ってきた音楽」を紹介してきた染五郎。続いて、話題は最近の活動へ。市川は2025年に初となる現代劇ドラマ『人間標本』(Prime Video)に出演した。

『人間標本』 OFFICIAL 本予告|プライムビデオ

染五郎:歌舞伎に出ていると、なかなか同世代と共演することが少ないのですが、『人間標本』では同世代の方々と共演させていただいて新鮮でしたし、みなさん本当に才能があってすごいなって思いました。

亀田:初の現代劇ドラマでしたよね。

染五郎:そうですね。もちろん、映像作品と舞台とでは違いはありますが、歌舞伎でも現代劇でも役を演じることは一緒です。それこそ、いろんな引き出しを作るではないですけど、そのためにもいろんなジャンルはやりたいなと思っています。

また、5月から始まる舞台『ハムレット』では主演のハムレット役を演じる。5月9日(土)から5月30日(土)に東京・日生劇場で、6月5日(金)から6月14日(日)に大阪・SkyシアターMBSで上演される。

染五郎:『ハムレット』は祖父と父もやっていますので、3代でやらせていただいています。いずれは通らなきゃいけない道なのかなとは思ってはいました。

亀田:「来たか」みたいな。

染五郎:そういう感覚が大きいです。他のシェイクスピア劇も取り組んでいきたいですし、その第一歩を踏み出せるのがとてもうれしいですね。

市川染五郎の最新情報は松本幸四郎の公式サイト松竹エンタテインメントの公式サイトまで。

『DEFENDER BLAZE A TRAIL』では、音楽を愛するゲストを迎え、人生に寄り添ってきた音楽、困難を乗り越えるときに出会った音楽について語り合う。オンエアは毎週日曜21時から。
番組情報
DEFENDER BLAZE A TRAIL
毎週日曜
21:00-21:54

関連記事