被災地への思いに寄り添うJ-WAVE『HEART TO HEART』(毎月第3日曜日の22:00から22:54にオンエア)。2024年4月からはアーティストのCANDLE JUNE(キャンドル・ジュン)がナビゲーターを務め、毎月1回、福島や能登の“今”に迫るプログラムを届けている。2001年より平和活動を開始し、2011年の東日本大震災からは被災地支援活動を行い、現在も福島と能登へ定期的に通うCANDLE JUNE。彼はどんな思いで番組および被災地と向き合っているのだろうか?今回、インタビューを通して聞いた。
CANDLE JUNE:実は最初はお断りしたんです。というのも、毎回ゲストを呼び、災害支援をフックアップするという番組の構成的に「自分じゃなくてもいいのでは?」と感じて。自分からすると、災害支援活動をした先に向き合うべき本当の問題点を取り上げるなど、次のフェーズにいかなければいけないという意識があったんです。 そういった提案をさせてもらいそれでもよかったらということで、引き受けさせていただきました。
――CANDLE JUNEさんはかつて、メディア露出を制限されていたそうですね。
CANDLE JUNE:はい。結婚生活をしていた頃は、意図せぬ報じられ方をするリスクを考慮し、被災地域の放送局・新聞社を除き、メディア出演は一律お断りすると決めて約13年間活動してきました。しかし、被災地域の現状など多くの人が知るべき情報の発信をプライベートな理由で制限するのも、もはや違うのではないかと考え始めたタイミングにちょうどお話をいただけたことも、番組出演を決心した理由としては大きかったです。
――これまでの放送で手ごたえを感じたことがあれば聞かせてほしいです。
CANDLE JUNE:2つあります。1つ目は、能登の人たちが聴いてくださっているということです。毎回多くのリアクションが寄せられてうれしく思っています。 2つ目は『HEART TO HEART』はナビゲーターが1年毎に交代することが通例となっていましたが、制作スタッフの皆さんから「ぜひ来年もやって欲しい」とお声がけいただいたことです。 自分の中では1年間でどのように「点」ではなく「線」にしていくか、起承転結を意識して番組を作り、今年の3月11日の放送をもって終了する予定でした。それが継続となったことで、制作サイドの方々がこの番組を僕と同じように「自分事」として捉えてくれているとわかり、手ごたえを感じました。
――では、ナビゲーターとして意識していることなどありますか?
CANDLE JUNE:ナビゲーターに就任してからの1年数か月間、言葉の伝え方に気を付けるようになりました。クレームをもらわないように(笑)。自分の言いたいことをどう表現するべきかを突き詰めていった結果、実際に今のところクレームはもらっていません。 番組ではものすごく突っ込んだ内容を言っているはずなんですよ。ただ、批判だけでなく「もっとこうしたらよくなる」とポジティブな表現にするだけで、伝わり方が全く違うんだなとわかってきました。
CANDLE JUNE:常に変化・進化しています。当初は戦争やテロに対しての活動だったのですが、戦争による悲しみはやがて憎しみに変化し、新たな争いを生じさせます。 この悲しみを憎しみではなく喜びに変えることができれば、負の連鎖を断ち切ることができると考えたことが、今日(こんにち)の被災地支援活動に繋がってきました。 みんな当事者になってみないとわからないんです。でもその当事者が実は近くにいるし、明日は我が身と考えたら、毎日の日常の癖のなかに、社会活動的なアクションを取り込んでみてはどうだろうか?
わたしも今は日々の「癖」といいますか。毎月11日に福島、1日に能登へ足を運んでいます。それら被災地支援活動に対し、「すごいね」「大変だね」と言われるのですが、これが「当たり前のこと」になれたら。きっと世界中の不条理な悲しみに対しても人ごとにして終わりではなく、自分でも考えそして自分なりのアクションができるのではないかと。それぞれにしかできないことでアクションすることが大切だと考えています。
――このほかにも、被災地支援をする中で気づいたことや意識していることはありますか?
CANDLE JUNE:最近「あの人、いい人だよね」と持ち上げられることが恐ろしくて。「あいつ、悪いやつだよね」と言われているほうが落ち着きます。
――それはなぜですか?
CANDLE JUNE:「いい人」だと思われている人がちょっと悪事を働いただけで、「実は悪い人だったんだ……」という烙印を押されてしまうわけじゃないですか。反面、「きっと悪い人だろう」という印象のある人が悪いことしてても変な話、普通というか。それでいて、悪い人がたまに良いことをしたら、すごく評価されるわけで。
――たしかにそうですよね。
CANDLE JUNE:3.11が発生して日本中がパニックになったとき、きっと誰もがスーパースターを求めたと思うんですよ。当時、福島に通っている自分でさえ「誰かなんとかしてくれよ」と思っていましたから。でも、スーパースターは現れなかった。かと言って、自分がそういった存在になれるはずもない。そんな中で、気づいたことがあるんです。被災された方々の中にこそ、瞬間、神様がいるということに。この「瞬間、神様がいる」という感覚が大事だと思っていて。 人間は、ある特定の人物に対し「この人は、24時間どこを切り取っても素晴らしい人格者だ」と全方位的に評価したい生き物です。 でもその考えを捨てれば、避難所にいるおじいちゃんやおばあちゃんが時折、七福神の神様みたいに見えたりするわけですよ。その瞬間に「大切な教え」を受けることができて、その教えをどれだけピュアな状態でキャッチできるかが重要だと気づいたんです。
――これはいつ気づいた真理なのでしょう?
CANDLE JUNE:長く被災地支援・平和活動を続ける中で、だんだんとわかってきました。ロウソクを灯して平和になるかといえば「ならないよ」と言われるんですよ(笑)。 でも言い訳がましいかもしれないけど、ロウソクを灯している瞬間は平和なんです。だからこそ「その場所においでよ」ということなんです。
その場所に来て、実際に平和の作り方を体感すればいいし、平和な時間と場所をもっとみんなが共有すればいいということです。先ほど、「すごいですね」と言われると話しましたが、みなさんも休日に来たらいいだけのことだと思うんです。近くに大変な状況がある中で見て見ぬふりして、自分の日常を過ごしていく居心地の悪さよりは、被災地域で、関わるべくして関わる人たちとの繋がりを紡いだほうが、この時代、この場所に生まれてきた意味を皆それぞれがキャッチし、それぞれの得意なことでつながることができたら、きっと然るべき「大切な教え」を得られるのではないかとも思うんです。
――最後にメッセージをお願いします。
CANDLE JUNE:番組では主に福島と能登の今を取り上げています。東日本大震災から14年が経過した福島、能登半島地震から2年近くが経過した能登で現在どんな取り組みをしているか、また、何が起きているかを紹介しています。 「福島と能登の対比」という他にはない切り口のプログラムとなっているので、ぜひ皆さんにそれぞれの現状を知ってもらえたらうれしいと思います。そしてこの2箇所と繋がることは「今の日本」を知ることにもなります。今の日本を知り、そしてそれぞれがどう動くかで、未来の日本が作られていく。そう考えたらやっぱり被災地域に来てみたほうがいいのではないかとおすすめいたします。
(取材・文=小島浩平)
番組公式サイトはコチラ。
災害支援活動の次のフェーズへ。自分事として取り組むラジオ番組
――まずは、『HEART TO HEART』のオファーを引き受けてくださった理由から教えてください。CANDLE JUNE:実は最初はお断りしたんです。というのも、毎回ゲストを呼び、災害支援をフックアップするという番組の構成的に「自分じゃなくてもいいのでは?」と感じて。自分からすると、災害支援活動をした先に向き合うべき本当の問題点を取り上げるなど、次のフェーズにいかなければいけないという意識があったんです。 そういった提案をさせてもらいそれでもよかったらということで、引き受けさせていただきました。
――CANDLE JUNEさんはかつて、メディア露出を制限されていたそうですね。
CANDLE JUNE:はい。結婚生活をしていた頃は、意図せぬ報じられ方をするリスクを考慮し、被災地域の放送局・新聞社を除き、メディア出演は一律お断りすると決めて約13年間活動してきました。しかし、被災地域の現状など多くの人が知るべき情報の発信をプライベートな理由で制限するのも、もはや違うのではないかと考え始めたタイミングにちょうどお話をいただけたことも、番組出演を決心した理由としては大きかったです。
――これまでの放送で手ごたえを感じたことがあれば聞かせてほしいです。
CANDLE JUNE:2つあります。1つ目は、能登の人たちが聴いてくださっているということです。毎回多くのリアクションが寄せられてうれしく思っています。 2つ目は『HEART TO HEART』はナビゲーターが1年毎に交代することが通例となっていましたが、制作スタッフの皆さんから「ぜひ来年もやって欲しい」とお声がけいただいたことです。 自分の中では1年間でどのように「点」ではなく「線」にしていくか、起承転結を意識して番組を作り、今年の3月11日の放送をもって終了する予定でした。それが継続となったことで、制作サイドの方々がこの番組を僕と同じように「自分事」として捉えてくれているとわかり、手ごたえを感じました。
――では、ナビゲーターとして意識していることなどありますか?
CANDLE JUNE:ナビゲーターに就任してからの1年数か月間、言葉の伝え方に気を付けるようになりました。クレームをもらわないように(笑)。自分の言いたいことをどう表現するべきかを突き詰めていった結果、実際に今のところクレームはもらっていません。 番組ではものすごく突っ込んだ内容を言っているはずなんですよ。ただ、批判だけでなく「もっとこうしたらよくなる」とポジティブな表現にするだけで、伝わり方が全く違うんだなとわかってきました。
「平和」とは何か? 被災地支援や平和活動を続ける中でわかったこと
――CANDLE JUNEさんは、ダライ・ラマ14世の提唱により2001年に開催された地球規模のプロジェクト「世界聖なる音楽祭」の一環として広島・厳島神社で催された音楽祭にて、原爆の残り火とされる「平和の火」を灯してから平和を願う活動を始動させたと聞いています。この四半世紀あまり活動を継続する中で、ご自身の中で「平和」に対する捉え方は変わりましたか?CANDLE JUNE:常に変化・進化しています。当初は戦争やテロに対しての活動だったのですが、戦争による悲しみはやがて憎しみに変化し、新たな争いを生じさせます。 この悲しみを憎しみではなく喜びに変えることができれば、負の連鎖を断ち切ることができると考えたことが、今日(こんにち)の被災地支援活動に繋がってきました。 みんな当事者になってみないとわからないんです。でもその当事者が実は近くにいるし、明日は我が身と考えたら、毎日の日常の癖のなかに、社会活動的なアクションを取り込んでみてはどうだろうか?
わたしも今は日々の「癖」といいますか。毎月11日に福島、1日に能登へ足を運んでいます。それら被災地支援活動に対し、「すごいね」「大変だね」と言われるのですが、これが「当たり前のこと」になれたら。きっと世界中の不条理な悲しみに対しても人ごとにして終わりではなく、自分でも考えそして自分なりのアクションができるのではないかと。それぞれにしかできないことでアクションすることが大切だと考えています。
――このほかにも、被災地支援をする中で気づいたことや意識していることはありますか?
CANDLE JUNE:最近「あの人、いい人だよね」と持ち上げられることが恐ろしくて。「あいつ、悪いやつだよね」と言われているほうが落ち着きます。
――それはなぜですか?
CANDLE JUNE:「いい人」だと思われている人がちょっと悪事を働いただけで、「実は悪い人だったんだ……」という烙印を押されてしまうわけじゃないですか。反面、「きっと悪い人だろう」という印象のある人が悪いことしてても変な話、普通というか。それでいて、悪い人がたまに良いことをしたら、すごく評価されるわけで。
――たしかにそうですよね。
CANDLE JUNE:3.11が発生して日本中がパニックになったとき、きっと誰もがスーパースターを求めたと思うんですよ。当時、福島に通っている自分でさえ「誰かなんとかしてくれよ」と思っていましたから。でも、スーパースターは現れなかった。かと言って、自分がそういった存在になれるはずもない。そんな中で、気づいたことがあるんです。被災された方々の中にこそ、瞬間、神様がいるということに。この「瞬間、神様がいる」という感覚が大事だと思っていて。 人間は、ある特定の人物に対し「この人は、24時間どこを切り取っても素晴らしい人格者だ」と全方位的に評価したい生き物です。 でもその考えを捨てれば、避難所にいるおじいちゃんやおばあちゃんが時折、七福神の神様みたいに見えたりするわけですよ。その瞬間に「大切な教え」を受けることができて、その教えをどれだけピュアな状態でキャッチできるかが重要だと気づいたんです。
――これはいつ気づいた真理なのでしょう?
CANDLE JUNE:長く被災地支援・平和活動を続ける中で、だんだんとわかってきました。ロウソクを灯して平和になるかといえば「ならないよ」と言われるんですよ(笑)。 でも言い訳がましいかもしれないけど、ロウソクを灯している瞬間は平和なんです。だからこそ「その場所においでよ」ということなんです。
その場所に来て、実際に平和の作り方を体感すればいいし、平和な時間と場所をもっとみんなが共有すればいいということです。先ほど、「すごいですね」と言われると話しましたが、みなさんも休日に来たらいいだけのことだと思うんです。近くに大変な状況がある中で見て見ぬふりして、自分の日常を過ごしていく居心地の悪さよりは、被災地域で、関わるべくして関わる人たちとの繋がりを紡いだほうが、この時代、この場所に生まれてきた意味を皆それぞれがキャッチし、それぞれの得意なことでつながることができたら、きっと然るべき「大切な教え」を得られるのではないかとも思うんです。
――最後にメッセージをお願いします。
CANDLE JUNE:番組では主に福島と能登の今を取り上げています。東日本大震災から14年が経過した福島、能登半島地震から2年近くが経過した能登で現在どんな取り組みをしているか、また、何が起きているかを紹介しています。 「福島と能登の対比」という他にはない切り口のプログラムとなっているので、ぜひ皆さんにそれぞれの現状を知ってもらえたらうれしいと思います。そしてこの2箇所と繋がることは「今の日本」を知ることにもなります。今の日本を知り、そしてそれぞれがどう動くかで、未来の日本が作られていく。そう考えたらやっぱり被災地域に来てみたほうがいいのではないかとおすすめいたします。
(取材・文=小島浩平)