
俳優、ダンサーとして活躍する坂口涼太郎が、初エッセイ『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』に込めた想いや、自身の“当たり前”がひっくり返ったエピソードを語った。
坂口が登場したのは、8月5日(火)放送のJ-WAVE『PEOPLE'S ROASTERY』(ナビゲーター:長井優希乃)の「VIBES JINRUIGAKU」。長井がゲストとともに「人と世界」について考えるコーナーだ。
長井:発売、おめでとう!
坂口:ありがとうございます! 本当にうれしいです。4日に工場から出荷したばかりで、明日6日発売なのでまだ売っていないのですが、なんとAmazonのふたつのカテゴリで1位になっています。
長井:すごくない……!?
坂口:朝から「みんな、ありがとう!」ってオイオイ泣きました。
長井:1位、やばいですね。装丁も素敵です。
坂口:鈴木千佳子さんという素晴らしい装丁家の方に、私の好きなものすべてを詰め込んで描いていただきました。
長井:本当にかわいくて素敵で、色もエメラルドグリーンの“お涼さんカラー”という。
坂口:そうなんです。その色の服を着て装丁家さんのところに行って「この色にしてください、私が色見本です!」と言って、してもらいました(笑)。
長井:ひと足早く読ませていただいたのですが、めっちゃおもしろかったです! そして、読んでからあらためて表紙を見ると、文中に出てきたいろいろな登場人物が描かれているのもわかりますね。
坂口:そこまで読んでくださって、ありがとうございます。
長井:内容は小説やルポみたいな感じで、短歌も多く書かれています。
坂口:そうなんです。ある意味、歌集でもあるんです。
長井:入院されているときのエピソードにけっこう載っていますが、「入院中に読めずにいる、画面の中の通知が全部愛だとわかる」ということを詠んだ短歌がすごく好きでした。ご病気をされて入院して、お稽古やお仕事を休んで「どうしよう」となっているなかでたくさん通知がくるという情景が浮かびます。
坂口:そうですね。でも、愛情に満ちあふれた言葉たちが送られてきているということが、開かなくてもわかるんですよね。その感じを、入院中に窓の外の空を見ながら歌にしてみました。
長井:愛されているんだなというのが、この一首ですごく伝わります。
坂口:本当にありがたいことですね。
坂口:この本は「1幕」「2幕」とプロローグから始まって、最後がカーテンコールというお芝居じみた章の順番になっています。いろいろな仕掛けも入れながら、坂口涼太郎が誰なのかわからなくても、「坂口涼太郎というひとりの登場人物の、すったもんだの人生」みたいなものが、読めば読むほど紐解かれていくものになったらいいなと思って、順番にはこだわりましたね。
長井:なるほどね。プロローグから始まって、カーテンコールで終わるという作品、みなさんにぜひ体感していただきたいですね。「読む」というよりも「体感」という言葉が似合うと思います。
坂口:そうですね。読書は体感だと思います。
長井:『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』というタイトルのとおり、文章が踊っていて、自分もその踊りや祭りに巻き込まれていく感じがして面白かったです。
坂口:うれしいです。一緒に踊ってくださってありがとうございます! 私も書いていて、踊っているの。家のちゃぶ台の前で泣いたり笑ったりしながら「ちょっと聞いてもらっていいですか!」と、どんどこ書いているので、それが響いているんだと思います。
俳優として芝居で表現する機会の多い坂口だが、エッセイの執筆を通して「文章で表現することは自己認識だとわかった」と語る。
坂口:「あのことがあったから、自分はいまこう思っているんだ」ということは、考えたりするよりも文字に起こしたほうがどんどんわかって、事件を解決しているみたいな感じなんですよ。だから、(文章の表現を通じて)生活や人生を解決していく感覚がありましたね。
長井:私たちは、その解決を垣間見させていただいているという感じなのですね。文章を書くときに、読み手を想像して大切にしていることは何かありますか?
坂口:この本を読んでいるときだけは、ちょっと温泉や足湯に浸かっているような気持ちになってもらえればいいなと思って、連載のときから書いていました。みなさん、お仕事や生活のなかで心も体も忙しいですが、満員電車のなかでもこの本を読んでいたら「満員なことがちょっと嫌じゃなくなったな」「ちょっと気持ちが楽になったな」と思ってもらえたらという祈りを込めています。
長井:本当にそう、この本は足湯です!
坂口:「足湯と効能は一緒です」って、帯を付け足してみます(笑)?
坂口:この本にも書きましたが、「あきらめる」という言葉や行為には、後ろめたさや罪悪感のようなイメージがあるかもしれません。しかし、「あきらめる(明らめる)」という言葉は本来、「物事の心理を明らかにする」という意味なんです。だから、あきらめる決断をするときは、心や体で「何か違うな」とか、「いま、これをやらないほうがいいな」「自分はこれをやったら、何か嫌なことになるな」ということが、細胞レベルでわかっていると思うんですよね。私はそこで自分の真実を無視して、「あきらめずに」「後悔しないように」と行動して、「何か違った」「盲目的だった」と思うこともあったから、あきらめるのは英断だと思うようになりました。自分のことや、「それをやらない」という理由が明らかになったから、「次はこっちに行こう」「違うことをしてみよう」と、自分に合う居場所に辿り着いていくことが「あきらめることだったんだな」と、学ばせていただきましたね。
長井:何かをあきらめるときに、罪悪感は持たなくてもいいんだよということですよね。
坂口:そうですね。(人は)よく「あきらめないで」って言うけど、どんどん紐解いて自己認識をして、向いていることと向いていないことを明らかにしていって歩んでいくという、「あきらめて」という意味もある。「明らかにすることをあきらめないで」ということだから、「あきらめる」と「あきらめないで」は同居していると思うんですよね。
長井:まさに、坂口さんが前半に言っていた「自分を認識すること」と、すごくつながっている哲学という感じがします。エッセイにはこの「あきらめる活動」、略して「らめ活」についても書かれていますね。
坂口:あきらめて明らかにしていって自分を知ることで、生活が光り出すというか、「いま、自分のいる場所ややっていること、目の前にいる人たちって、よく見たら面白いじゃん!」と思ったりするんですよね。そこを明らかにしていくと、生活がラメのように光り出すから「らめ活」です。
前向きな物事の捉え方でいまを生きる坂口は、終戦記念日である8月15日(金)に誕生日を迎える。この日は多くの人が、平和についてあらためて考えるタイミングともなるが、坂口も毎年「生まれてきて、いま生きていることにありがとうと思う」と言う。
坂口:私、エッセイを「当たり前」という言葉を入れた短歌で締めさせていただいているのですが、この「VIBES JINRUIGAKU」のテーマである「当たり前って何だろう?」という観点でいうと、本当は当たり前なんてないんですよね。いま、みんなが生きていて存在していることをはじめ、当然だと思っていることもまったく当たり前ではなくて、10秒後には何があるかわからないし、明日があるかもわからない。だから、いつ、何が起こるかわからないんだったら、目の前の人に「素敵だよ」とか「大好きだよ」「あなたのここが素晴らしいよ」ということを、ちゃんと伝えておくことが大切だと思うんですよね。
長井:伝えたい! いま聴いてくださっているみなさんが、一歩踏み出して伝えてくれたらいいですね。
坂口:ずーっと一緒にいる人とかには、恥ずかしかったりもすると思うんですよね、人生で後悔しないことなんてなくて、どんなに気をつけていても必ず後悔はするんですけど。でも、触れるときに触って、抱きしめられるときに抱きしめて、「ありがとう」って言えるときに言っておかないと。
『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』には、ほかにも坂口のさまざまな想いが詰まっている。また、出版を記念したトークショーやフェアも開催予定だ。詳細は公式ホームページまで。
J-WAVE『PEOPLE'S ROASTERY』のコーナー「VIBES JINRUIGAKU」では、“声でつながるフィールドワーク”と題し、自分の当たり前を問い直しながら人と世界について考えていく。放送は月曜~木曜の14時5分ごろから。
坂口が登場したのは、8月5日(火)放送のJ-WAVE『PEOPLE'S ROASTERY』(ナビゲーター:長井優希乃)の「VIBES JINRUIGAKU」。長井がゲストとともに「人と世界」について考えるコーナーだ。
ウェブマガジン連載のエッセイが1冊の本に
俳優やダンサーなど、幅広い活動が注目される坂口は、ウェブマガジン『mi-mollet』(ミモレ)でエッセイを連載中だ。その内容を加筆・修正した初エッセイ集『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』(講談社)が8月6日(水)に発売となった。長井:発売、おめでとう!
坂口:ありがとうございます! 本当にうれしいです。4日に工場から出荷したばかりで、明日6日発売なのでまだ売っていないのですが、なんとAmazonのふたつのカテゴリで1位になっています。
長井:すごくない……!?
坂口:朝から「みんな、ありがとう!」ってオイオイ泣きました。
長井:1位、やばいですね。装丁も素敵です。
坂口:鈴木千佳子さんという素晴らしい装丁家の方に、私の好きなものすべてを詰め込んで描いていただきました。
長井:本当にかわいくて素敵で、色もエメラルドグリーンの“お涼さんカラー”という。
坂口:そうなんです。その色の服を着て装丁家さんのところに行って「この色にしてください、私が色見本です!」と言って、してもらいました(笑)。
長井:ひと足早く読ませていただいたのですが、めっちゃおもしろかったです! そして、読んでからあらためて表紙を見ると、文中に出てきたいろいろな登場人物が描かれているのもわかりますね。
坂口:そこまで読んでくださって、ありがとうございます。
長井:内容は小説やルポみたいな感じで、短歌も多く書かれています。
坂口:そうなんです。ある意味、歌集でもあるんです。
長井:入院されているときのエピソードにけっこう載っていますが、「入院中に読めずにいる、画面の中の通知が全部愛だとわかる」ということを詠んだ短歌がすごく好きでした。ご病気をされて入院して、お稽古やお仕事を休んで「どうしよう」となっているなかでたくさん通知がくるという情景が浮かびます。
坂口:そうですね。でも、愛情に満ちあふれた言葉たちが送られてきているということが、開かなくてもわかるんですよね。その感じを、入院中に窓の外の空を見ながら歌にしてみました。
長井:愛されているんだなというのが、この一首ですごく伝わります。
坂口:本当にありがたいことですね。
読む人の心が楽になる“温泉”のような文章
続いて、長井は「ウェブマガジンでの連載を1冊の本という形にするにあたり、こだわった部分」について坂口に訊いた。坂口:この本は「1幕」「2幕」とプロローグから始まって、最後がカーテンコールというお芝居じみた章の順番になっています。いろいろな仕掛けも入れながら、坂口涼太郎が誰なのかわからなくても、「坂口涼太郎というひとりの登場人物の、すったもんだの人生」みたいなものが、読めば読むほど紐解かれていくものになったらいいなと思って、順番にはこだわりましたね。
長井:なるほどね。プロローグから始まって、カーテンコールで終わるという作品、みなさんにぜひ体感していただきたいですね。「読む」というよりも「体感」という言葉が似合うと思います。
坂口:そうですね。読書は体感だと思います。
長井:『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』というタイトルのとおり、文章が踊っていて、自分もその踊りや祭りに巻き込まれていく感じがして面白かったです。
坂口:うれしいです。一緒に踊ってくださってありがとうございます! 私も書いていて、踊っているの。家のちゃぶ台の前で泣いたり笑ったりしながら「ちょっと聞いてもらっていいですか!」と、どんどこ書いているので、それが響いているんだと思います。
俳優として芝居で表現する機会の多い坂口だが、エッセイの執筆を通して「文章で表現することは自己認識だとわかった」と語る。
坂口:「あのことがあったから、自分はいまこう思っているんだ」ということは、考えたりするよりも文字に起こしたほうがどんどんわかって、事件を解決しているみたいな感じなんですよ。だから、(文章の表現を通じて)生活や人生を解決していく感覚がありましたね。
長井:私たちは、その解決を垣間見させていただいているという感じなのですね。文章を書くときに、読み手を想像して大切にしていることは何かありますか?
坂口:この本を読んでいるときだけは、ちょっと温泉や足湯に浸かっているような気持ちになってもらえればいいなと思って、連載のときから書いていました。みなさん、お仕事や生活のなかで心も体も忙しいですが、満員電車のなかでもこの本を読んでいたら「満員なことがちょっと嫌じゃなくなったな」「ちょっと気持ちが楽になったな」と思ってもらえたらという祈りを込めています。
長井:本当にそう、この本は足湯です!
坂口:「足湯と効能は一緒です」って、帯を付け足してみます(笑)?
生活がラメのように光り出す「らめ活」
俳優、ダンサー、執筆活動など、これまでさまざまな表現をしてきた坂口に、“当たり前”がひっくり返った瞬間や出来事を教えてもらった。坂口:この本にも書きましたが、「あきらめる」という言葉や行為には、後ろめたさや罪悪感のようなイメージがあるかもしれません。しかし、「あきらめる(明らめる)」という言葉は本来、「物事の心理を明らかにする」という意味なんです。だから、あきらめる決断をするときは、心や体で「何か違うな」とか、「いま、これをやらないほうがいいな」「自分はこれをやったら、何か嫌なことになるな」ということが、細胞レベルでわかっていると思うんですよね。私はそこで自分の真実を無視して、「あきらめずに」「後悔しないように」と行動して、「何か違った」「盲目的だった」と思うこともあったから、あきらめるのは英断だと思うようになりました。自分のことや、「それをやらない」という理由が明らかになったから、「次はこっちに行こう」「違うことをしてみよう」と、自分に合う居場所に辿り着いていくことが「あきらめることだったんだな」と、学ばせていただきましたね。
長井:何かをあきらめるときに、罪悪感は持たなくてもいいんだよということですよね。
坂口:そうですね。(人は)よく「あきらめないで」って言うけど、どんどん紐解いて自己認識をして、向いていることと向いていないことを明らかにしていって歩んでいくという、「あきらめて」という意味もある。「明らかにすることをあきらめないで」ということだから、「あきらめる」と「あきらめないで」は同居していると思うんですよね。
長井:まさに、坂口さんが前半に言っていた「自分を認識すること」と、すごくつながっている哲学という感じがします。エッセイにはこの「あきらめる活動」、略して「らめ活」についても書かれていますね。
坂口:あきらめて明らかにしていって自分を知ることで、生活が光り出すというか、「いま、自分のいる場所ややっていること、目の前にいる人たちって、よく見たら面白いじゃん!」と思ったりするんですよね。そこを明らかにしていくと、生活がラメのように光り出すから「らめ活」です。
前向きな物事の捉え方でいまを生きる坂口は、終戦記念日である8月15日(金)に誕生日を迎える。この日は多くの人が、平和についてあらためて考えるタイミングともなるが、坂口も毎年「生まれてきて、いま生きていることにありがとうと思う」と言う。
坂口:私、エッセイを「当たり前」という言葉を入れた短歌で締めさせていただいているのですが、この「VIBES JINRUIGAKU」のテーマである「当たり前って何だろう?」という観点でいうと、本当は当たり前なんてないんですよね。いま、みんなが生きていて存在していることをはじめ、当然だと思っていることもまったく当たり前ではなくて、10秒後には何があるかわからないし、明日があるかもわからない。だから、いつ、何が起こるかわからないんだったら、目の前の人に「素敵だよ」とか「大好きだよ」「あなたのここが素晴らしいよ」ということを、ちゃんと伝えておくことが大切だと思うんですよね。
長井:伝えたい! いま聴いてくださっているみなさんが、一歩踏み出して伝えてくれたらいいですね。
坂口:ずーっと一緒にいる人とかには、恥ずかしかったりもすると思うんですよね、人生で後悔しないことなんてなくて、どんなに気をつけていても必ず後悔はするんですけど。でも、触れるときに触って、抱きしめられるときに抱きしめて、「ありがとう」って言えるときに言っておかないと。
『今日も、ちゃ舞台の上でおどる』には、ほかにも坂口のさまざまな想いが詰まっている。また、出版を記念したトークショーやフェアも開催予定だ。詳細は公式ホームページまで。
J-WAVE『PEOPLE'S ROASTERY』のコーナー「VIBES JINRUIGAKU」では、“声でつながるフィールドワーク”と題し、自分の当たり前を問い直しながら人と世界について考えていく。放送は月曜~木曜の14時5分ごろから。
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