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藤井 風ライブの「無音で止まる」演出、ギタリストTAIKINGへの指示とは? 映像作家の山田健人と対談

藤井 風ライブの「無音で止まる」演出、ギタリストTAIKINGへの指示とは? 映像作家の山田健人と対談

SuchmosのTAIKING(Gt.)が、映像作家の山田健人とJ-WAVEで対談。TAIKINGのニューEP『Shuffle』やライブ中のエピソードなどについて語った。

このトークが繰り広げられたのは、5月9日(金)放送のJ-WAVE『THE PLAYBACK』(ナビゲーター:山田健人)。

ふたりの出会い

山田とTAIKINGの出会いは、Suchmosのインディーズ時代にさかのぼるという。

山田:タイキ(TAIKING)もSuchmosのメンバーじゃないころ、というのがあって。ただ、もともとメンバーと交流関係があるから、俺の記憶があいまいな部分もあるけど、神奈川のほうの町で夜によくSuchmosと遊んでいたんですよね。そのときに会いました。

TAIKING:いたね。

山田:友だちの友だちぐらいの緩さだったじゃない。「タイキさんってギターやっている人だよ」と誰かに紹介されて「こんにちは」みたいな。当時、スタジオとかでなにかやってた?

TAIKING:それこそSuchmosに入る前に、三軒茶屋のHEAVEN'S DOORでSuchmosの謎のパーカッションとしてライブをしたことあるよ。

山田:俺もいたんじゃない?

TAIKING:いたと思う。Naoちゃんもステージに上がっていて。

山田:Nao Kawamuraさんという女性のシンガーの方もコーラスで参加されていた時代があったね。

TAIKING:ダッチ(山田の愛称)は、最初に『Miree』という曲があって、現在、音源になっている『Miree』じゃない、イントロの前にイントロがついていた『Miree』があるんです。それの手作りミュージックビデオみたいな、レコーディングスタジオでダッチがとあるクルーとしてやっていた映像。あれって、映像の本当に初期だよね。

山田:Suchmosの1stアルバム収録曲の『Miree』のインディーズ時代版。4人編成時代バージョンのミュージックビデオとかをやっていた。あれがたぶん世に出たひとつめの音源であり映像だと思う。気づいたらSuchmosのメンバーになっていて、メンバーにもしょっちゅう会っていましたが、そのあとのほうが(TAIKINGと)意外と濃く会っているかもしれない。

TAIKING:本当にそうなの。

山田:タイキがSuchmos以外に、ソロとかもだし、サポートミュージシャンとしていろいろな現場でギターを弾くようになって。最初はそれで言うとRADWIMPSだよね。まだRADWIMPSで弾いていたときもツアーでずっと国内、アリーナとかいろいろ回っていて。

TAIKING:風くん(藤井 風)のツアー中に、ラッド(RADWIMPS)のリハしていたのを覚えてる。地方に行って。そのときもいたじゃん? だから、ダッチと話していて風くんのツアー回って「そういえばラッドやるんでしょ?」みたいな感じになって。

山田:当時ね。

TAIKING:「もうあと2カ月一緒にいるんだ」みたいな(笑)。

山田:「そっちの現場でも?」みたいなことが起きていました。この1、2年ぐらいは藤井さんの現場がコンスタントにあったりしています。

山田健人のステージ演出家としての印象

続いて、ステージ演出家としての山田の印象に関する話題に。藤井 風のライブに関するエピソードも飛び出した。

山田:SuchmosやRADWIMPS、藤井さんのライブの演出家としての自分も間近で見てもらえていると思います。僕がどういう印象というのはありますか?

TAIKING:ダッチは客観的にお客さんのほうに座っていて全体を見てる。映像も含めて流れをつかさどる感じでいるよね。意外とステージにいる人間って、(全体が)どうなっているのか基本はわからない。だいたい、ライブとかの現地ゲネというのがあって、ツアーが始まる1日前に会場でリハーサルをするんです。

山田:実際のセットとか照明の感じとかでね。

TAIKING:定点とかいろいろなカメラで追いかけてもらって、それをデータでもらってやっと腑に落ちるんですよ。そこまではけっこうわからないから。

山田:たしかにね。大きいライブであればあるほど、特に演者というか、ステージに立っている側は「外からどう見えているか」というのは想像しづらいよね。

TAIKING:いちばんわからなかったのが、風くんの日産(スタジアムでのライブ)。

山田:2024年の8月ですね。

TAIKING:「ここ、絶対動かないで」とか(笑)。

山田:『花』が始まる前に、『Feelin' Go(o)d』が終わって、風さんも「バン」と決めたようなポーズで終わった無音の時間というかね。ただ、風を感じる時間ですよ。

TAIKING:(笑)。

山田:春だからいい発言が出ますね(笑)。風さんがビタッと止まっているなか、ステージ上にたくさんいるサポートミュージシャンのみんながモジモジしていたらまずいじゃん?

TAIKING:「鼻がかゆくても絶対に止まっていろ」というのはけっこう(笑)。

山田:たしかにタイキとの会話で、毎回と言っていいほどあるのは「動け」というよりも「動くな」だね。すぐにノリノリになっちゃうから(笑)。

TAIKING:気を付けます。

山田:逆にいい意味で、いちばん話しやすいですしね。タイキって、ライブ中にお客さんのクラップをあおるような動きとか、乗せていくような動きもとても上手だなと思っていて。プレイ以外の部分で言うと。そういう部分が確実に風さんのライブとかだと、いい作用をもたらしているなと思う。いいバイブスをね。

TAIKING:うれしい。

山田:だからそこまでできる人はあまりいないと思っていて。むずいよね、もちろん演奏があってというのもあるけど「余裕があるよね」と。バンドをやってきたから、ということなのかな? と個人的には思ってる。サポートミュージシャンのなかでもバンドの匂いがちゃんとするな。

TAIKING:うれしい! でもすぐ動いちゃうからね。ノリノリになっちゃうから止めてね。

楽曲ごとに“角度”を変えて制作したEP

TAIKINGがリリースしたニューEP『Shuffle』の話題に。同作ではさまざまなアーティストと楽曲制作をしている。

山田:TAIKINGさんはSuchmosのギタリストのみならず、ソロでも歌とギターということになるのかな? 諸々なのか。

TAIKING:いろいろやっています。

山田:そのへんの話も訊いていきます。ソロ活動をされていまして4月23日……これ僕の誕生日です。

TAIKING:だって俺「おめでとう」って送ったもの。そうしたら「ラジオよろ」ってきた(笑)。

山田:奇しくもそんな日に、ニューEP『Shuffle』をリリースされたばかりです。2024年にリリースされた荒谷翔大さん、YONCE、iriちゃんとのコラボ楽曲と、Official髭男dismの藤原 聡さんを新たに迎えた新曲『Everyday(feat. 藤原聡)』が収録された、4曲入りのEPです。

TAIKING:これはフィーチャリングで4曲あるけど、みんな作り方も角度違いでいろいろ参加してもらっていて。『Step By Step (feat. 荒谷翔大)』とかは一緒に作ってというか、土台は俺が作って「自分が歌うところは自分でメロと歌詞書いて」というスタイル。YONCEは、逆にYONCEに全部詞を書いてもらって俺が歌った、みたいな。そういう、いろいろなパスがあって、iriちゃんは本当にキャッチボールみたいにしていって、iriちゃんが作ったパートを俺が歌ったり、俺が作ったパートをiriちゃんが歌ってみたいな。藤原くんは「俺が書いたこととかやったことを全部やってください」という、クリエイティブな部分で「逆にタイキさんがやりたいこと全部やりますよ」という関わり方だった。だから、曲によって関わり方が違っていて。

山田:プロデューサー的視点が強いものもあれば、共同作業もあって。

TAIKING:だからすごくおもしろかった。

山田:たしかにおもしろそう。藤原くんは接点が唯一、想像しづらいというか、どこで関わったんですか?

TAIKING:なぜか俺のライブのチケットを買ってきてくれて。俺からというより彼からアクションがあって「そんなことあるの?」と。そういう経緯があって「TAIKINGワールドに思い切り引きずりこんじゃおう」というスタートでした。

山田:なぜ、こういう感じの曲にしたんですか?

TAIKING:それこそ一緒にやるから「ヒゲダンっぽくしようかな」とかいろいろあったんです。でも「なんでこのオファーを受けてくれたんだろう?」と考えたときに、それこそライブに来てくれているということもあって、純粋に俺が作る音楽のことが好きなのかもと。だったら逆に藤原くんだろうが、とにかく自分のエゴイズムに立ち返るというか。自分としてやるものに対して、思い切り参加してもらうという着地がいちばんいいのかなと思って、こういう曲にしました。

山田:いいですね。ミュージックビデオも観ました。

TAIKING:あれはお台場です。

山田:レインボーブリッジなんだ。

TAIKING:そうそう、船の上でむちゃ寒かった。

山田:俺も船の上で撮ったことは何度かあります。

TAIKING:あれ、大変でしょ?

山田:僕は演奏シーンをしたことはなくて「よくやったな」と思って。

TAIKING:危なかった。デカい船が横を通ると船がこうなる(傾く)から機材とか、シンバルが倒れそうになって。

山田:そうだよね。あれ、すごいなと思ったけどね。

TAIKING:けっこう必死だった。しかもちょっと雨が降ってきて「うわあ」と。

山田:いい意味で快晴じゃない、味のある雲という感じがしたね。大変そうだなとは思いました。藤原さんは歌っているときは声を出してる?

TAIKING:ちょっと歌ってる。

山田:それが観てわかったので。

TAIKING:そういうのって、わかるものなの?

山田:俺的にはわかります。自分的なこだわりとして特に近年は、たとえばギターにシールドが刺さっていないとかはけっこう嫌というか。

TAIKING:リアルというか。

山田:ああいう演奏するミュージックビデオというのは、“当て振り”という部分はありますけど細部にこだわりたいというね。ボーカルというか歌も普段撮るとき、曲にもよるんですが、ブレスとか吸うタイミングみたいなのが曲のなかにあるやつは、映像を観たら「吸っている感がない」みたいな。気になっちゃうんだよね。

TAIKING:なるほどね。

山田:あのビデオは観て一発で藤原さんの首元に力が入っている感が出ていて「これはたぶん本当に声を出しているな」と思った。だから、いいビデオです。

番組では『Everyday(feat. 藤原聡)』をオンエアした。

TAIKING 「Everyday (feat. 藤原聡)」 Music Video

TAIKINGの最新情報は、公式サイトまで。

映像作家でミュージシャンの山田健人が、様々な“見る”を言語化するプログラム『THE PLAYBACK』の放送は毎週金曜の26時から。radikoでは5月23日(金)28時ごろまで、Lorde・AURORA・Benson Booneの最新映像作品を言語化した回が再生可能だ。
5月23日の放送では、The Chemical BrothersのMUSIC VIDEOを言語化する。

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番組情報
THE PLAYBACK
毎週金曜
26:00-26:30