“町中華”ってどういう定義? 今後ブームになりそうな“町◯◯”はある? フードビジネスの専門家に聞く

町中華など「町〇〇」について、フードビジネス専門コンサルタント会社・ブグラーマネージメント代表の“永田ラッパ”こと永田雅乙さんが語った。

永田さんが登場したのは、5月7日(水)放送のJ-WAVE『STEP ONE』(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)のコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」だ。

町〇〇になりやすい食事とは?

この日は町中華をはじめ、ここ数年、注目を集める飲食業界の「町○○ビジネス」について、永田さんに話を訊いた。

サッシャ:そもそも「町○○」という言葉自体が昔はなかったと思います。いつ、どのようなかたちで登場したのでしょうか。

永田:僕の記憶だと2012年ぐらいに「町中華」というのを雑誌で見たので、それだと思います。

サッシャ:“町”というのはなんでしょう?

永田:チェーン店がどんどん大きくなっていく過程で減っていった個人店が、町中華と言われていきました。

ノイハウス:そのほかの定義はありますか?

永田:ノスタルジーに振り返ることができる地元の味ですね。

サッシャ:子どものころによく食べたとかね。厳密に「この店は町中華」という定義はないんですね。

永田:定義がないから、町中華イコール街中にあって、チェーン店にないようなラインナップ。中華なのにオムライスがあるみたいな、そういうお店が愛されます。ハムエッグがあって角煮丼があったりと、中華の定義がはずれて食堂なんです。

ノイハウス:町中華というと「量が多い」といったイメージもあります。

永田:量が多い、ニンニクが強いなど、なにかが強いうえに、ちょっとコスパがいいと多くの方に感じられていると思います。高いお店は町中華と言われないじゃないですか。

サッシャ:高級中華ですね。

永田:僕たちの業界には「実用食」と「嗜好食」という言葉があります。おそばとかパスタといった、我々が毎日食べても大丈夫なのが実用食。高級な中華であれば嗜好食ですよね。実用食というのは価格も含めてなんですが、そういうものが町〇〇になりやすいんです。

永田さんは町中華が愛される理由について解説した。

永田:長く愛されているのは、失われていくからなんです。なくなっていくお店が愛おしく思われていて、愛されていくという。

サッシャ:では、町中華がいっぱいあったら、そんなに珍しくないから大切にされないと。

永田:ブームにならなかったはずです。失われていくものだから愛おしい。同意語で「昭和レトロな喫茶」があるじゃないですか。あれも減りゆくものだったわけですよ。

サッシャ:カフェに取って代わられているけどと。

永田:そういうのも町〇〇に近いじゃないですか。ちょっと“とがり”があって、万人受けしていないほうが愛されていると思います。「ドカ盛り」みたいなものも同じで、大食いの人のハートはキャッチできますが、量を見ただけでお腹いっぱいになっちゃう人には嫌われてしまいます。「好き嫌いが分かれる」というのは、大切だと思います。

ノイハウス:チェーン店はどちらかと言うと、全員にアピールしないといけないところがありますよね。

永田:「チェーン店にないなにか」を求めている。たとえば、中華もチェーン店が生まれたから個人店が減っていった。減っていくなかで生き延びるために、個性豊かになっていった。あとは、お客さんとしても自分が育った味を失いたくない、みたいなことがいまのブームにつながっていると。喫茶店も一緒ですよね。

徐々に減りゆく「町〇〇」

永田さんは「町〇〇」が現在も存在している理由や、厳しい現状について解説した。

永田:おいしいか、ファンがいるかも重要ですが、たいていの場合はビジネス的に見て個人、家族経営のお店だったりします。あとは店舗の上にご自宅があって家賃がゼロ。

サッシャ:なんなら賃貸収入があると。

永田:そうすると家賃、人件費がかからないから継続できます。苦しい時期もあったけれども、生き残っているとお客様が思い出してくれたり、「レトロだね」と急に解釈が変わってまた流行り出すと。

サッシャ:「古い」から「レトロ」になるんだ。

永田:いろいろな波があって乗り越えてこられている方々がね。

ノイハウス:そういう意味では町〇〇というトレンドができたからこそ、もうひと頑張りできるみたいなお店もあるということでしょうか。

永田:あるけれども、飲食業界の多くのオーナーさんたちが団塊の世代です。コロナ禍が苦しくて、コロナが明けたあとは活況になりましたが、全員ではありません。外食自体が減ってしまって、いろいろなデリバリーが便利になって。そうすると置いていかれてしまう人がいて、気持ちが折れて引退しちゃうんです。

サッシャ:団塊の世代だから引退かどうか悩む時期で「これを機に」となってしまうと。

永田:お金がどうのというよりは「もうそろそろいいかな」と思ってしまう人たちが多くて、いま廃業ラッシュなんです。

ノイハウス:トレンドには乗っていたけど、ちょっとタイミング的に。継ぐ人もいないと。

サッシャ:町〇〇を救わないといけないですね。

永田:いま自治体がそういう事業承継のサポートの助成金を出しています。飲食店というのは普通の人が起業するとたいていは潰れてしまいます。

サッシャ:飲食店で3年もつところは何パーセントという話がありますよね。

永田:3年どころか1年もつ人が半分の世界です。であれば、名だたる町〇〇を事業承継して独立せよと、僕はYouTubeで発信しています。そうしたらブランドも残せて、その人の廃業確率も下がる。そういうことをいま進めたいんです。

廃れゆくものに対する「キュンとくる感じ」

永田さんは町中華以外の「町〇〇」についても解説していった。

ノイハウス:町中華以外にも、町そば、町寿司といろいろな言葉が作れると思います。この先きそうなものはありますか?

永田:そばとかは典型的なものですよね。言葉として「町そば」というのはハマりませんが、昔、出前してくれて商店街にあってというそば屋も、いま閉店ラッシュ中です。

サッシャ:店屋物と言われていた時代のものですよね。

永田:寿司と焼肉は、ここから「町焼肉」「町寿司」というのはちょっとブームになると思います。煙がモクモクしている焼肉屋さんや、カウンターがきゅうきゅうでデカネタのお寿司屋さんとか。町に残って安いだけではなくて特徴のある焼き肉屋さん、お寿司屋さんみたいなものが増えてくるのかなと。

サッシャ:なかなか町〇〇になれなさそうなのが、もんじゃですね。

永田:ちょっとレジャー感ありませんか? 非日常感。

サッシャ:自分で焼いてとかね。

永田:僕は東京生まれ東京育ちですが、僕の世代はもうもんじゃ屋さんにお好み焼きがありました。江戸っ子でありながらも、もんじゃというのがお好み焼き以上でもない。だから、もんじゃはレジャーです。

サッシャ:土手を作ったりを楽しんで、子どもが作りたがったりして「やけどしないように気を付けて」みたいなのが。

永田:体験型飲食という、いまの時代にもマッチしていて“町”っぽくないんですよ。

ノイハウス:「ひとりもんじゃ」もなかなかないですよね。

サッシャ:“町”ブームは続きますか?

永田:というよりは、個人店で廃れゆくものに対する「キュンとくる感じ」に引っかかる人たちがカギだと思います。たとえば、マンションでもいま古いヴィンテージマンションがブームになっています。洋服屋さんもいろいろなチェーン店が出てきたなかで、昔当たり前にあった商店街の婦人服屋さんとか。スポーツ用品店とか、あとはドラッグストアではなくて薬局っぽいのあるじゃないですか。

サッシャ:あれも町薬局ですね。

永田:ゲームセンターだって大手じゃなくて、昔のゲーム機があって意外と人気だとか。そういう廃れゆく、大手チェーン店に取って代わられたけど、粘り強く残っているものは町〇〇という大雑把な定義になります。

J-WAVE『STEP ONE』のコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」では、ニューノーマル時代のエッジにフォーカス。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。
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2025年5月14日28時59分まで

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番組情報
STEP ONE
月・火・水・木曜
9:00-13:00

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