デザイナーでアーティストの岡崎龍之祐さんが、ものづくりの原体験や独創的な作品の背景にある思い、今後のビジョンなどについて語った。
岡崎さんは1995年広島県生まれの29歳。縄文土器から着想を得たドレスや彫刻作品で国内外から注目を集めている。
岡崎さんが登場したのは、俳優の小澤征悦がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組『BMW FREUDE FOR LIFE』(毎週土曜 11:00-11:30)。同番組は、新しい時代を切り開き駆け抜けていく人物を毎回ゲストに招き、BMWでの車中インタビューを通して、これまでの軌跡や今後の展望に迫るプログラムだ。
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岡崎さんは1995年広島県生まれの29歳。縄文土器から着想を得たドレスや彫刻作品で国内外から注目を集めている。
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縄文時代の精神性を宿すドレス「JOMONJOMON」
岡崎さんを乗せた「BMW M135xDrive」は六本木ヒルズを出発。はじめに、代表作の一つである縄文時代の人々の暮らしに着想を得たドレス「JOMONJOMON」について語り始めた。岡崎:「JOMONJOMON」は、縄文人の呪術的な精神性や土器への装飾からインスピレーションを得ています。また「ドレス」と銘打っていますが、どちらかというと彫刻を手掛けている感覚に近くて。服作りの概念を全く無視し、よりプリミティブに身体へどう布を当て、どう重力と向き合うかというテーマで制作しています。そういった、物質と空間と人体がかかわったドレス、もとい彫刻が「JOMONJOMON」だと考えています。
「JOMONJOMON」は、縄文土器を想起させる波のような曲線と力強い装飾を伸縮性のある布で表現し、ドレスを着たモデルがランウェイを歩くと上下にバウンドするような軽さを備えている。力強さと浮遊感を共存させる独自のアイテムはどのように作られているのか。
岡崎:「JOMONJOMON」を制作する際、重力がある中で布という柔らかい素材を用い、どのように形を作っていくかに多くの時間を割いています。というのも、そこが一番難しく、一番大切なことだからです。僕は頭に思い浮かんだ作品を、そのまま形にしているわけではありません。素材を繋ぎ合わせながら、その場その場である種、即興的に作っています。
ちなみに、僕が縄文時代を深堀し始めたのは、ちょうどコロナ禍の頃でした。東日本大震災のときも同じことを思いましたが、あの時期、人は自然の脅威には逆らえないし、人は自然の中に確かに存在しているのだと痛感させられました。縄文時代は約1万年も続いたとされています。長い歴史の中で自然と向き合って生きてきた当時の人々に思いを巡らすと、私たちも自然の中にいる一生物なのだと気付くことができ、同時に様々なことを考えるきっかけになるのではないかと思ったんですよね。
「平和への祈り」をアート作品に昇華
岡崎さんの制作物は「JOMONJOMON」だけではない。かつては、広島で生まれ育った自身のバックボーンから、「平和への祈り」を題材にしたドレス作りに注力していたという。岡崎:以前は広島への、「平和への祈り」を主なテーマに掲げていました。たとえば、広島には毎年、世界中から10数トンもの折り鶴が送られてきます。僕は、その折り鶴からできた再生紙に絵を描いた上で糸状に細かく裁断し、その糸で織った布からドレスを制作するということをしていました。世界中から送られてくる平和への祈りから作られたそのドレスは、被爆建物の一つとして知られる旧日本銀行広島支店で展示されるなどしました。
「BMW M135xDrive」は東京藝術大学の上野キャンパスに到着。2021年に同大学大学院美術研究科デザイン専攻を首席で卒業した岡崎さんは、最近も卒業制作展を見に母校へ訪れたという。「若い才能のある後輩たちが手掛けた作品にすごく感銘を受けました」と語るとともに、学生時代に印象的だった課題について振り返った。
幼稚園時代には厳島神社の大鳥居をダンボールで再現
縄文土器に見られるあの独特の模様は、祭祀や呪術的儀式を意識して付けられたとの説もある。こうした神秘的なものへの興味をクリエイティブに転換する感性を、岡崎さんは幼稚園時代から既に発揮していたようだ。岡崎:僕は、広島の宮島口という海と山に囲まれた自然豊かな環境で育ちました。子どもの頃の思い出として特に印象的なのが、幼稚園年中時に、宮島・厳島神社の大鳥居を模した巨大なダンボールのオブジェを作ったことです。おそらく当時の僕は、大鳥居の荘厳さや宮島の神秘性に惹かれたのだと思います。僕は覚えていませんが、幼稚園の先生の話では、周りの生徒さんを指揮しながら作っていたらしいです。そのことに驚いた幼稚園の先生が驚いて家に電話をしたら、母親は何事かと思って幼稚園まで駆け付けて。そしたらただただ大きな鳥居があった…ということがありましたね。
海外の人々に作品が受け入れられている理由
岡崎さんは大学院を修了した2021年の9月に、東京コレクションでランウェイデビューを果たす。その後、ファッションデザイナーの登竜門として知られる「LVMHプライズ2022」のファイナリスト8人の1人に選出され、「Forbes 30UNDER30 JAPAN」の一人にも挙げられた。快進撃はとどまることを知らず、現在、岡崎さんが生み出すドレスや彫刻作品は海外でも高く評価されている。縄文土器の造形美にインスパイアされたその作品群は、日本以外の国からどんなリアクションをもって受け入れられているのか。
岡崎:縄文土器や日本古来の祈りの文化を、海外の方々は面白がるんですよ。興味深く捉えられている理由は、縄文土器の造形的な物珍しさもあるかと思いますが、宗教観の違いが大きく関係しているように感じます。日本人が神をどう捉えているのか、興味を持たれる外国の方が多い印象です。このように、海外で作品を発表すると改めて自国の特異性に気付きますし、外から自分たちを見ることは大事だと思いますね。
「人と自然の調和」や「祈り」に重きを置き、唯一無二の作品を作り続ける岡崎さん。彼にとって「未来への挑戦=FORWARDISM」とは何かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
岡崎:作品作りは毎日気づきの連続です。感動や発見に反応したもの、自然と身体から出てくるものとして僕の作品は生み出されます。その作品が僕を新しい場所に連れて行ってくれて、作家として人生を作っていくのだと思うので、その変化を柔軟に楽しみつつ、今後も創作活動に励んでいきたいと考えています。
(構成=小島浩平)