
AAAのメンバーで、ソロアーティストとしても活躍する與 真司郎(あたえ しんじろう)とSHELLYがJ-WAVEで対談。與が自身のセクシュアリティについてカミングアウトした経緯や当時の感情、これからを語った。
ふたりがトークを繰り広げたのは、“私たちの生活、未来のために、明日からすぐ行動できる身近なアクションのきっかけを作る”をコンセプトにお届けする『J-WAVE SELECTION ITOCHU DEAR LIFE, DEAR FUTURE』。オンエアは毎月第4日曜。ここでは、番組の最終回となった3月23日(水)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
同番組は、SDGsに関する活動を後押しする情報発信・体験の場である、青山のITOCHU SDGs STUDIOから発信。オンエアだけでなくポッドキャストでも配信しており、SpotifyやApple Podcastsでも楽しめる。
SHELLYは與のカミングアウトに心を動かされ、メッセージを送ったことがきっかけで親交が始まったという。
SHELLY:そもそも、なぜあのときに自身のセクシュアリティを公表しようと思ったんですか?
與:LA(ロサンゼルス)に住み始める前(日本にいた頃)は、自分に自信がなくて。自分がゲイであるっていうことが悪いことだって自分に言い聞かせていて。アメリカに住み始めてカルチャーとかもわからず、英語もそのときはうまくなかったけど頑張って。友だちがいないなかでもアメリカ人の友だちも作って、まわりにストレートの友だちもゲイの友だちもできてきて、みんなが普通に接してくれる。自分って悪くないんだっていうのに気付いて。それって、僕が日本にいて芸能界にいたらそこに気付くのがなかなか難しかったと思うんです。
SHELLY:なるほどね。
與:だから、アメリカに行かないとやっていけない、日本では生きていけないって思ったんです。それでアメリカに住んで、カルチャーを含めていろんな人に「悪くないよ」「あなたは普通に生きていいんだよ」って教えてもらいました。そんなことを教えてくれる人ってなかなかいない。
與は「当時、アメリカでもゲイだとバレたくなかったから日本の友だちを作らなかった」と明かす。
與:できるだけアメリカ人の友だちをたくさん作って、信頼できる人にカミングアウトをしてっていうことを徐々にしていったんです。自分がこれだけ自信が持てたんだから、日本でカミングアウトをしようと。日本人とか国から追放されても、最悪アメリカで人生をやっていけるっていうくらいまで、アメリカで土台を作っていたんです。家族に伝えたのも公にする1年前くらいでした。家族にも一生言わないつもりだったけど、自分がここまで変わったから、絶対に同じ悩みを抱えている人はたくさんいるし、もちろん自分のためでもあるけど、人を助けられたらいいなと思ってカミングアウトをしました。
SHELLY:本当にすごい。
與:だいぶ緊張しましたよ。ドキュメンタリー(の撮影)も入ってるし、『ニューヨーク・タイムズ』(への掲載)も決まってたし。これで後戻りができないな、やるしかないっていう気持ちでした。
與:カミングアウトする前に、スマホのSNSアプリを全部消したんですよ。反響を見ないようにしようと思って。ニュースサイトとかも絶対に見ないって決めて、スタッフさんとかに「いい反響だけ教えて」って言っていました。それで3日後くらいにLAにいたらスタッフさんから「けっこう、いい反応ですよ」って、友だちからも「Instagramのコメントとか見ても大丈夫だよ」って言われて、見たらすごく温かい言葉がたくさんあったんです。世界中からのDMとかも本当にすごくて、やってよかったなって。こうやってラジオにも呼んでいただいたりとか、いろんなところで仕事がいまだにできたりしているのが本当にありがたかった。仕事なんてゼロになると思っていたから。
與の母は、與のカミングアウト後の様子を見て、ずっと何かを考えているようだったと、あとになって言われたという。
與:(直後は)カミングアウトをしなかったらよかったかもな、とかも思っていて。いまだに応援してくれるファンの方もたくさんいるんですけど、いなくなったファンの方もたくさんいて。僕がゲイであるっていうことを受け入れられないとか、「キモっ」とか想像していたようなコメントがあったりもしたんです。でも、ファンの方も、日本でこういうことをする人がいないから、それもしょうがないかなと思いました。
SHELLY:免疫がなくてね。
與:そう。だから、なかなか受け入れられづらいっていうのも、もちろんわかる。自分がカミングアウトをしなかったら、彼ら・彼女らはもっと幸せに生きていけたのかな、とかも考えて、それで軽いうつ状態になっちゃって。ロールモデルがいないから、どう考えたらいいのかが本当にわからなくて、結局、全部自分で考えるしかないから、そこでけっこう時間がかかりました。意外とカミングアウトしたあとがいちばんつらかったんですよ。
SHELLY:そうなんだ。
與:「いい反応だったじゃん」とか言われるんだけど、自分の中では「こうしなければよかった」「こうしたらよかった」っていうのがどんどん増えて、「自分の人生がこうじゃなかったらこうだったのに」とか変なことをいろいろ考えちゃって。でも、友だちが本当に助けてくれて、一緒に旅行に行ったり、いろんな人と話す機会を作ってくれたり。日本でもインタビューが当時多かったので、それで徐々に大丈夫なんだって確信しながらちょっとずつ(回復していった)って感じですね。
與のカミングアウトを受けて、日本でも「少しでも生きやすい世の中にするために行動を起こしたい」と考える人は、何に気をつけるべきだろうか。
SHELLY:意外とこういう言葉に傷つくんだよ、とかってありますか? よく言うのは、恋愛話をするときに相手のことをよくわからない状態で「彼女いるの?」とか、相手の性別を決めつける言い方をするのはやめて、「好きな人はいるの?」っていう言い方にするとか。ちょっと気を付けたら当事者の人を不安にさせない方法ってあります?
與:たとえば、「最近、LGBTQの映画を観てめっちゃよかったんだよね」とか、逆にそっちの方向とか(のほうがうれしいです)。
SHELLY:なるほどね。
與:僕はそういうほうがいいですね。「この人はアライかな」とか思って、この人だったら言いやすいかもってなるかもしれない。
SHELLY:そっか。そういう話題をポジティブに言うのがいいと。
與:反対に「この前、LGBTQの映画を観て、めっちゃ気持ち悪かったんだよね」とか言われたら、もちろんその人にセクシュアリティを言いたくないし。「この前、友だちがカミングアウトしてきて、めっちゃハッピーそうでいいよね」くらいのテンション感でいてくれるとうれしい。
與:自分らしく生きることを見せるって、すごく大事だと思っていて。僕はアクティビストになりたいわけでもないし、ヒーローになりたいわけでもないし。
SHELLY:なる責任もないしね。
與:ただ、自分の人生をカミングアウトしても仲間ができるよとか、仕事もできるよとか、海外に行って英語がしゃべれるようになったらこうやって友だちができるんだよとか、自分の人生を楽しみながら、自分らしく生きながら何か伝えられるものがあればいいなと思っていて、それが今、自分ができることなのかなって思います。
SHELLY:今、自分らしく伸び伸び生きていること自体がロールモデルですからね。
與:カミングアウトっていいものなんだよっていうのを少しでも伝えられたらいいなと思ってます。
SHELLY:絶対に伝わってる。
最後に、SHELLYは「10年後はどんな自分になっていたいか。また10年後はどんな社会になっていてほしいか」と與に質問した。
與:10年後の自分は、このまま自分らしく、いいおじさんになっていきたいなって。今年37歳になるので、10年後は47歳でしょ。家族もいたらいいなとか思いますし、堂々と(していたい)。芸能界にいるだけで隠していかないといけないとか、芸能人だからそんなプライベートを出さないでよっていう感覚がすごく嫌で。僕は自分らしく生きるし、それをシェアしていきたいし、それが自分のやり方だと思っている。だから10年後も、もっと自分らしく生きていきたいなと思います。
SHELLY:すばらしい。
與:どんな社会になってほしいかっていうのは、今、いろんな問題が世界で起こっていて、LGBTQ+だけじゃなくて、貧困問題ももちろんそう。本当に生きづらい社会だと思います。SNSも発達しちゃって、いいところもあるけど悪いところもすごく見えちゃうし、精神的にやられている人もまわりには多いなって感じるので、10年後は「人生楽しいじゃん」「こうやって自分らしく生きていいんだ」っていう人がひとりでも多く増えてくれたらいいなと思っています。
4月4日(金)にリリースされる、エルトン・ジョンとブランディ・カーライルによるコラボレーション・スタジオ・アルバム『天使はどこに』(原題:Who Believes In Angels?)の先行配信シングル『天使はどこに』のミュージックビデオ和訳版にて、與が歌詞の日本語対訳を担当している。
また、4月16日(水)には、與がこれまでの人生を丁寧に振り返り、カミングアウトまでの道のりと、その後に感じていることをノンフィクションのエッセイとして赤裸々に明かした『與真司郎フォトエッセイ 人生そんなもん』が講談社より発売。
與 真司郎の最新情報は、公式サイトまで。
ふたりがトークを繰り広げたのは、“私たちの生活、未来のために、明日からすぐ行動できる身近なアクションのきっかけを作る”をコンセプトにお届けする『J-WAVE SELECTION ITOCHU DEAR LIFE, DEAR FUTURE』。オンエアは毎月第4日曜。ここでは、番組の最終回となった3月23日(水)にオンエアした内容をテキストで紹介する。
同番組は、SDGsに関する活動を後押しする情報発信・体験の場である、青山のITOCHU SDGs STUDIOから発信。オンエアだけでなくポッドキャストでも配信しており、SpotifyやApple Podcastsでも楽しめる。
アメリカで「普通に生きていい」と教わった
與は2005年、AAAのメンバーとしてデビュー。2023年7月、都内のファンミーティングで自身のセクシュアリティについてカミングアウト。『ニューヨーク・タイムズ』が「2023年 世界に影響を与えた人々」に選ぶなど、世界中の反響を集めた。SHELLYは與のカミングアウトに心を動かされ、メッセージを送ったことがきっかけで親交が始まったという。
SHELLY:そもそも、なぜあのときに自身のセクシュアリティを公表しようと思ったんですか?
與:LA(ロサンゼルス)に住み始める前(日本にいた頃)は、自分に自信がなくて。自分がゲイであるっていうことが悪いことだって自分に言い聞かせていて。アメリカに住み始めてカルチャーとかもわからず、英語もそのときはうまくなかったけど頑張って。友だちがいないなかでもアメリカ人の友だちも作って、まわりにストレートの友だちもゲイの友だちもできてきて、みんなが普通に接してくれる。自分って悪くないんだっていうのに気付いて。それって、僕が日本にいて芸能界にいたらそこに気付くのがなかなか難しかったと思うんです。
SHELLY:なるほどね。
與:だから、アメリカに行かないとやっていけない、日本では生きていけないって思ったんです。それでアメリカに住んで、カルチャーを含めていろんな人に「悪くないよ」「あなたは普通に生きていいんだよ」って教えてもらいました。そんなことを教えてくれる人ってなかなかいない。
與は「当時、アメリカでもゲイだとバレたくなかったから日本の友だちを作らなかった」と明かす。
與:できるだけアメリカ人の友だちをたくさん作って、信頼できる人にカミングアウトをしてっていうことを徐々にしていったんです。自分がこれだけ自信が持てたんだから、日本でカミングアウトをしようと。日本人とか国から追放されても、最悪アメリカで人生をやっていけるっていうくらいまで、アメリカで土台を作っていたんです。家族に伝えたのも公にする1年前くらいでした。家族にも一生言わないつもりだったけど、自分がここまで変わったから、絶対に同じ悩みを抱えている人はたくさんいるし、もちろん自分のためでもあるけど、人を助けられたらいいなと思ってカミングアウトをしました。
SHELLY:本当にすごい。
與:だいぶ緊張しましたよ。ドキュメンタリー(の撮影)も入ってるし、『ニューヨーク・タイムズ』(への掲載)も決まってたし。これで後戻りができないな、やるしかないっていう気持ちでした。
カミングアウト後に思っていたこと
與はカミングアウト後、国内外で予想以上の反響があったと当時を振り返る。與:カミングアウトする前に、スマホのSNSアプリを全部消したんですよ。反響を見ないようにしようと思って。ニュースサイトとかも絶対に見ないって決めて、スタッフさんとかに「いい反響だけ教えて」って言っていました。それで3日後くらいにLAにいたらスタッフさんから「けっこう、いい反応ですよ」って、友だちからも「Instagramのコメントとか見ても大丈夫だよ」って言われて、見たらすごく温かい言葉がたくさんあったんです。世界中からのDMとかも本当にすごくて、やってよかったなって。こうやってラジオにも呼んでいただいたりとか、いろんなところで仕事がいまだにできたりしているのが本当にありがたかった。仕事なんてゼロになると思っていたから。
與の母は、與のカミングアウト後の様子を見て、ずっと何かを考えているようだったと、あとになって言われたという。
與:(直後は)カミングアウトをしなかったらよかったかもな、とかも思っていて。いまだに応援してくれるファンの方もたくさんいるんですけど、いなくなったファンの方もたくさんいて。僕がゲイであるっていうことを受け入れられないとか、「キモっ」とか想像していたようなコメントがあったりもしたんです。でも、ファンの方も、日本でこういうことをする人がいないから、それもしょうがないかなと思いました。
SHELLY:免疫がなくてね。
與:そう。だから、なかなか受け入れられづらいっていうのも、もちろんわかる。自分がカミングアウトをしなかったら、彼ら・彼女らはもっと幸せに生きていけたのかな、とかも考えて、それで軽いうつ状態になっちゃって。ロールモデルがいないから、どう考えたらいいのかが本当にわからなくて、結局、全部自分で考えるしかないから、そこでけっこう時間がかかりました。意外とカミングアウトしたあとがいちばんつらかったんですよ。
SHELLY:そうなんだ。
與:「いい反応だったじゃん」とか言われるんだけど、自分の中では「こうしなければよかった」「こうしたらよかった」っていうのがどんどん増えて、「自分の人生がこうじゃなかったらこうだったのに」とか変なことをいろいろ考えちゃって。でも、友だちが本当に助けてくれて、一緒に旅行に行ったり、いろんな人と話す機会を作ってくれたり。日本でもインタビューが当時多かったので、それで徐々に大丈夫なんだって確信しながらちょっとずつ(回復していった)って感じですね。
当事者を不安にさせない方法は?

SHELLY:意外とこういう言葉に傷つくんだよ、とかってありますか? よく言うのは、恋愛話をするときに相手のことをよくわからない状態で「彼女いるの?」とか、相手の性別を決めつける言い方をするのはやめて、「好きな人はいるの?」っていう言い方にするとか。ちょっと気を付けたら当事者の人を不安にさせない方法ってあります?
與:たとえば、「最近、LGBTQの映画を観てめっちゃよかったんだよね」とか、逆にそっちの方向とか(のほうがうれしいです)。
SHELLY:なるほどね。
與:僕はそういうほうがいいですね。「この人はアライかな」とか思って、この人だったら言いやすいかもってなるかもしれない。
SHELLY:そっか。そういう話題をポジティブに言うのがいいと。
與:反対に「この前、LGBTQの映画を観て、めっちゃ気持ち悪かったんだよね」とか言われたら、もちろんその人にセクシュアリティを言いたくないし。「この前、友だちがカミングアウトしてきて、めっちゃハッピーそうでいいよね」くらいのテンション感でいてくれるとうれしい。
「自分らしく生きることを」を見せていきたい
SHELLYは與に、「誰もが笑顔で暮らせる社会のために、今後取り組みたいことは?」と問いかけた。與:自分らしく生きることを見せるって、すごく大事だと思っていて。僕はアクティビストになりたいわけでもないし、ヒーローになりたいわけでもないし。
SHELLY:なる責任もないしね。
與:ただ、自分の人生をカミングアウトしても仲間ができるよとか、仕事もできるよとか、海外に行って英語がしゃべれるようになったらこうやって友だちができるんだよとか、自分の人生を楽しみながら、自分らしく生きながら何か伝えられるものがあればいいなと思っていて、それが今、自分ができることなのかなって思います。
SHELLY:今、自分らしく伸び伸び生きていること自体がロールモデルですからね。
與:カミングアウトっていいものなんだよっていうのを少しでも伝えられたらいいなと思ってます。
SHELLY:絶対に伝わってる。
最後に、SHELLYは「10年後はどんな自分になっていたいか。また10年後はどんな社会になっていてほしいか」と與に質問した。
與:10年後の自分は、このまま自分らしく、いいおじさんになっていきたいなって。今年37歳になるので、10年後は47歳でしょ。家族もいたらいいなとか思いますし、堂々と(していたい)。芸能界にいるだけで隠していかないといけないとか、芸能人だからそんなプライベートを出さないでよっていう感覚がすごく嫌で。僕は自分らしく生きるし、それをシェアしていきたいし、それが自分のやり方だと思っている。だから10年後も、もっと自分らしく生きていきたいなと思います。
SHELLY:すばらしい。
與:どんな社会になってほしいかっていうのは、今、いろんな問題が世界で起こっていて、LGBTQ+だけじゃなくて、貧困問題ももちろんそう。本当に生きづらい社会だと思います。SNSも発達しちゃって、いいところもあるけど悪いところもすごく見えちゃうし、精神的にやられている人もまわりには多いなって感じるので、10年後は「人生楽しいじゃん」「こうやって自分らしく生きていいんだ」っていう人がひとりでも多く増えてくれたらいいなと思っています。
4月4日(金)にリリースされる、エルトン・ジョンとブランディ・カーライルによるコラボレーション・スタジオ・アルバム『天使はどこに』(原題:Who Believes In Angels?)の先行配信シングル『天使はどこに』のミュージックビデオ和訳版にて、與が歌詞の日本語対訳を担当している。
【AAA與真司郎対訳】Elton John, Brandi Carlile - Who Believes In Angels? / エルトン・ジョン&ブランディ・カーライル - 天使はどこに
與 真司郎の最新情報は、公式サイトまで。
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