松田美由紀が、子どもたちについて、仕事のひとつであるカメラや“撮る側”に回ってみての意識を語った。聞き手は、クリエイティブディレクターの高崎卓馬。
松田が登場したのは、9月8日(金)に放送されたJ-WAVEの番組『BITS&BOBS TOKYO』(ナビゲーター:高崎卓馬)。松田は前週から続けての出演となった。
【前回の記事】松田優作と、今も一緒にものづくりをしている─松田美由紀が語る深い愛と敬意
高崎:息子さん2人ともめちゃくちゃ松田優作さんに似ているじゃないですか。
松田:そうですか? 容姿が?
高崎:見た目ですかね、ふとした瞬間とかに。
松田:見た目はもちろん。でも優作は龍平と翔太を足して3倍ぐらいにしたみたいな(笑)。
高崎:3倍(笑)。
松田:そういう感じの人だったから。息子たちはまだまだという風に思っているんじゃないかと思います。
高崎:さすがです。「優作さんはこうだったんだよ」みたいなことを息子さんに話されたりするんですか?
松田:話すよりも作品でわかるだろうし。
高崎:そうですね。
松田:あといろいろな映画業界のスタッフの人たちがみんな武勇伝をしゃべりたがるんですよね(笑)。
高崎:わかります(笑)。
松田:だから教育されているというか。逆にうんざりするぐらい聞いているんじゃないでしょうか。
高崎:存在が強いですもんね。同じ世界に入っているし。
松田:でもなんというか、すごくいい人でしたよ。愛情深い人だったし、スタッフを大事にする人だったし、大人だったしね。
高崎:こういう仕事をしていて、ああいう俳優さんがいるといいなって、よく思います。
高崎:普段、自分が生きていて、まったく違う山に登っている人をファインダーで覗いたときのうれしさというか。「自分はそうはなれない」という人を覗けているという興奮があって。
松田:(松田優作は)技術とかお仕事ではなくて、愛を持って演じている方でした。その役に対しての愛みたいなものがたぶん伝わるんじゃないかなと思うんです。だから不思議ですよね。目に見えないものだけど。
高崎:そうですよね。
松田:いまの世の中、目に見えないものって軽んじているじゃないですか。でもエネルギーとか想いって意外と大事なんですよね。
高崎:伝わりますよね。
松田:そうなんですよ。
高崎:人間はすごく“感じる力”があって。
松田:テレパシーとか。
高崎:わかります。
「好き」という感情も、ネガティブな感情も、「思っているだけで伝わっちゃっている」と松田は考えている。
松田:だから、下手に思わないほうがいいんですよね(笑)。
高崎:映画の話や昔の話を読むのが好きでよく読むんです。誰の話だか忘れちゃったんですけど、「カメラは前だけじゃなくて後ろも映している」と書いている人がいて。「撮っている人たちがなにを考えているか、どういう意識でいるかが実は全部映っているんだ。それを人間はたぶん感じているんだ」と書いている人がいて、話を聞いていてそれを急に思い出しました。
松田:いままで俳優として演じる側だったけれど、私はカメラマンをやるようになって撮る側になったときに「見えてるじゃん」と思ったんです。俳優さんって自分がどう映っているか見えていないんですよ。それで「簡単じゃん」と思ったんですよ(笑)。
高崎:簡単?
松田:だって見えているものを選べばいいだけだから。だけど「見え過ぎている」とも思ったんです。「360度、上も下も横も全部見えるじゃん」と。それを選択するってめっちゃ大変だなと思ったんです。だけど、俳優さんはまったく見えていないんです。託しているんです、演出家にすべてを投げ出して。
高崎:出し切っていると。
松田:だから「拾ってあげなきゃ」という責任をすごく感じましたね。「キャッチしてあげなきゃ」っていう。
高崎:せっかく出しているし、さらけ出しているのに、拾わなかったら出したことにならないですもんね。
松田:だから撮る側はどういう角度でも撮れる。だけど演じる側は逆さにはなれないし、急に寝ることはできないじゃないですか。でも撮る側はなんでもできるから、私はその責任をすごく感じました。
松田:私は写真をやっていてなにが楽しいのかなと思ったときに、“撃つ”感じなんです。ピストルで美を撃っているみたい。鹿を撃ったりする感じで、美しい瞬間をバンッてカメラで。
高崎:射貫くというかね。
松田:そうなんです。シャッターを押すときにグンとくるんです。あのときに「ああ、幸せ」みたいな。
高崎:(笑)。
松田:だってさ、そんな感覚ってなかなか生きていて、生活していて「美を捕まえる」ということってないじゃないですか。だからなんてすばらしいことなんだろうと思ったんです。
高崎:カメラってもともとそのための道具かもしれないですよね。
松田:本当にそう思う。フレームをチョイスするじゃないですか。フレームをチョイスするということが、自分のなにかとつながるというか。面白いですよね。
高崎:見ている通りには写らないし、目で見ているものがそのまま写真になるわけじゃない。なにかを切り取る、選ぶという作業だし。役者さんとかもそうですよね。対峙してちゃんと、役者さんが丸くなっているだけじゃなくて、撮るほうも丸くなっているから、そういうゴリゴリとした、「出してやる」「撮ってやる」みたいな、ハイレベルなセッションみたいなのが、もうちょっと多くないといけないのかもしれないです。
松田:私はフィルムで撮っていたものだから、あまり押さないんです。押さないから俳優さんとかから「僕のこと嫌いですか」と言われたこともあります(笑)。
高崎:構えるんだけど、シャッターを切らない?
松田:美しいときがくるまでをずっと待つから。あまり無駄打ちはしないから、「嫌いですか」と言われて(笑)。
高崎:(笑)。でもフィルムってそうですよね、撮っていると枚数があるから。フィルムとデジタルで変わりました?
松田:フィルムをずっとやっていて、やっぱり仕事をするということから考えるとデジタルが多くなってきてしまって。それからちょっとつまらなくなっちゃったんです。なんでも撮れるし、すごくきれいに撮れすぎるし。髪の毛1本1本でもデジタルだときれいに撮れるじゃないですか。そうすると、きれいに撮れすぎることが、いろいろなものを見えなくさせているなと思っちゃって。想像力とかその人の見たいものとか、全部が見えてしまうから、見えなくなっているみたいな感じがしちゃって、写真を撮るのもつまらなくなっちゃったんですね。
松田は9月15日(金)の同番組でも引き続きトークをする。クリエイティブディレクター・高崎卓馬のショートストーリーとトークで綴る『BITS&BOBS TOKYO』の放送は毎週金曜日の25時から。
松田が登場したのは、9月8日(金)に放送されたJ-WAVEの番組『BITS&BOBS TOKYO』(ナビゲーター:高崎卓馬)。松田は前週から続けての出演となった。
再生は2023年9月15日28時ごろ
子どもたちの話題
まずは息子で俳優の松田龍平、松田翔太の話を聞いた。高崎:息子さん2人ともめちゃくちゃ松田優作さんに似ているじゃないですか。
松田:そうですか? 容姿が?
高崎:見た目ですかね、ふとした瞬間とかに。
松田:見た目はもちろん。でも優作は龍平と翔太を足して3倍ぐらいにしたみたいな(笑)。
高崎:3倍(笑)。
松田:そういう感じの人だったから。息子たちはまだまだという風に思っているんじゃないかと思います。
高崎:さすがです。「優作さんはこうだったんだよ」みたいなことを息子さんに話されたりするんですか?
松田:話すよりも作品でわかるだろうし。
高崎:そうですね。
松田:あといろいろな映画業界のスタッフの人たちがみんな武勇伝をしゃべりたがるんですよね(笑)。
高崎:わかります(笑)。
松田:だから教育されているというか。逆にうんざりするぐらい聞いているんじゃないでしょうか。
高崎:存在が強いですもんね。同じ世界に入っているし。
松田:でもなんというか、すごくいい人でしたよ。愛情深い人だったし、スタッフを大事にする人だったし、大人だったしね。
高崎:こういう仕事をしていて、ああいう俳優さんがいるといいなって、よく思います。
演じる側から撮る側になって感じたこと
続いて、カメラマンとその被写体である俳優との関係について語り合った。高崎:普段、自分が生きていて、まったく違う山に登っている人をファインダーで覗いたときのうれしさというか。「自分はそうはなれない」という人を覗けているという興奮があって。
松田:(松田優作は)技術とかお仕事ではなくて、愛を持って演じている方でした。その役に対しての愛みたいなものがたぶん伝わるんじゃないかなと思うんです。だから不思議ですよね。目に見えないものだけど。
高崎:そうですよね。
松田:いまの世の中、目に見えないものって軽んじているじゃないですか。でもエネルギーとか想いって意外と大事なんですよね。
高崎:伝わりますよね。
松田:そうなんですよ。
高崎:人間はすごく“感じる力”があって。
松田:テレパシーとか。
高崎:わかります。
「好き」という感情も、ネガティブな感情も、「思っているだけで伝わっちゃっている」と松田は考えている。
松田:だから、下手に思わないほうがいいんですよね(笑)。
高崎:映画の話や昔の話を読むのが好きでよく読むんです。誰の話だか忘れちゃったんですけど、「カメラは前だけじゃなくて後ろも映している」と書いている人がいて。「撮っている人たちがなにを考えているか、どういう意識でいるかが実は全部映っているんだ。それを人間はたぶん感じているんだ」と書いている人がいて、話を聞いていてそれを急に思い出しました。
松田:いままで俳優として演じる側だったけれど、私はカメラマンをやるようになって撮る側になったときに「見えてるじゃん」と思ったんです。俳優さんって自分がどう映っているか見えていないんですよ。それで「簡単じゃん」と思ったんですよ(笑)。
高崎:簡単?
松田:だって見えているものを選べばいいだけだから。だけど「見え過ぎている」とも思ったんです。「360度、上も下も横も全部見えるじゃん」と。それを選択するってめっちゃ大変だなと思ったんです。だけど、俳優さんはまったく見えていないんです。託しているんです、演出家にすべてを投げ出して。
高崎:出し切っていると。
松田:だから「拾ってあげなきゃ」という責任をすごく感じましたね。「キャッチしてあげなきゃ」っていう。
高崎:せっかく出しているし、さらけ出しているのに、拾わなかったら出したことにならないですもんね。
松田:だから撮る側はどういう角度でも撮れる。だけど演じる側は逆さにはなれないし、急に寝ることはできないじゃないですか。でも撮る側はなんでもできるから、私はその責任をすごく感じました。
“美”を捕まえる
松田はカメラのシャッターを切るときに、特別な感情が沸き起こると明かした。松田:私は写真をやっていてなにが楽しいのかなと思ったときに、“撃つ”感じなんです。ピストルで美を撃っているみたい。鹿を撃ったりする感じで、美しい瞬間をバンッてカメラで。
高崎:射貫くというかね。
松田:そうなんです。シャッターを押すときにグンとくるんです。あのときに「ああ、幸せ」みたいな。
高崎:(笑)。
松田:だってさ、そんな感覚ってなかなか生きていて、生活していて「美を捕まえる」ということってないじゃないですか。だからなんてすばらしいことなんだろうと思ったんです。
高崎:カメラってもともとそのための道具かもしれないですよね。
松田:本当にそう思う。フレームをチョイスするじゃないですか。フレームをチョイスするということが、自分のなにかとつながるというか。面白いですよね。
高崎:見ている通りには写らないし、目で見ているものがそのまま写真になるわけじゃない。なにかを切り取る、選ぶという作業だし。役者さんとかもそうですよね。対峙してちゃんと、役者さんが丸くなっているだけじゃなくて、撮るほうも丸くなっているから、そういうゴリゴリとした、「出してやる」「撮ってやる」みたいな、ハイレベルなセッションみたいなのが、もうちょっと多くないといけないのかもしれないです。
松田:私はフィルムで撮っていたものだから、あまり押さないんです。押さないから俳優さんとかから「僕のこと嫌いですか」と言われたこともあります(笑)。
高崎:構えるんだけど、シャッターを切らない?
松田:美しいときがくるまでをずっと待つから。あまり無駄打ちはしないから、「嫌いですか」と言われて(笑)。
高崎:(笑)。でもフィルムってそうですよね、撮っていると枚数があるから。フィルムとデジタルで変わりました?
松田:フィルムをずっとやっていて、やっぱり仕事をするということから考えるとデジタルが多くなってきてしまって。それからちょっとつまらなくなっちゃったんです。なんでも撮れるし、すごくきれいに撮れすぎるし。髪の毛1本1本でもデジタルだときれいに撮れるじゃないですか。そうすると、きれいに撮れすぎることが、いろいろなものを見えなくさせているなと思っちゃって。想像力とかその人の見たいものとか、全部が見えてしまうから、見えなくなっているみたいな感じがしちゃって、写真を撮るのもつまらなくなっちゃったんですね。
松田は9月15日(金)の同番組でも引き続きトークをする。クリエイティブディレクター・高崎卓馬のショートストーリーとトークで綴る『BITS&BOBS TOKYO』の放送は毎週金曜日の25時から。
オンエアは放送開始後から9月22日28時ごろまで
radikoで聴く
2023年9月15日28時59分まで
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番組情報
- BITS & BOBS TOKYO
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毎週金曜25:00-25:30