WONKの江﨑文武(Key)とKing Gnuの新井和輝(Ba)が出会った当初を振り返り、音楽談議に花を咲かせた。
江﨑が登場したのは、6月27日(火)に放送されたJ-WAVEの番組『SPARK』。注目のアーティストが曜日ごとにナビゲーターを務める番組で、火曜ナビゲーターは新井が担当している。
江﨑は5月31日に、ファーストアルバム『はじまりの夜』をリリースした。
江﨑:俺ら世代の周辺は、ジャムセッションに出入りしまくっていたから。それこそモノンクルの2人が(ゲストで)来ていたときも「洗足でセッションしていた」みたいな話をしていて「そのとき俺も行っていたんだよなあ」と思って。
新井:そっか。
江﨑:そこで佐瀬(悠輔)くんとか、モノンクルのチームだったり、藤井 風くんのベースやっている勝矢 匠とか、あの辺みんなその現場で出会ったから、だからたぶん和輝ともそういうジャムのシーンなんじゃないかな? と思っているんだけど。
新井:ジャムセッションにいろいろお互い行っていた時期はかぶっているんだけど、たぶん同じセッションをしたことはなくて。
江﨑:一緒にやったことはない。
新井:意外と学生が終わるか終わらないかのときに、それこそmillennium paradeの前身のときのレコーディングで初めて音を出したのかな。
江﨑:爆速『チェロキー』をやったとき。たぶん一緒に音を出したのはそれくらいだよね。
新井:文武は藝大(出身)じゃん。周りの藝大の人の中で、特に常田(大希)と石若(駿)とは、俺がそこに合流したときには3人はすでに知り合いだったみたいなイメージがあって。同い年というのはあるけど、学部はみんな違うじゃん。学生時代の3人はどういうつながりだったの?
江﨑:「藝祭」という藝大の学園祭があるんだけど、そこで駿から「バンドやるから一緒にやろうよ」と言われて。当時藝大をやめていた大希がギターで俺が鍵盤で、トランペットはパトリック・ムーディーと何人かいて。当日までなんの曲をやるのか、たしかわからなくて「この曲やります」みたいな感じで言われて、せーのドンでジャムセッションみたいなので、はじめましてだったんだよね。
新井:そこだったんだ。
江﨑:大希はチェロで自分は映像やアニメの音楽とか作るところだったから、本当にかかわりがなくて。でも入学して1年半経ってからかな? 20歳になったぐらいのときに出会って。そこから大希がソロプロジェクトをやっているというので、渋谷にエイジアというクラブがあったんだけど、そこで大希と駿と俺で、いまのミレパの曲の前身になった曲みたいなのを深夜クラブセットでやって。
新井:それは(山田)遼志さんとかはいなかったの?
江﨑:まったくいなかった。遼志さんも俺と同じ藝大で映像とかアニメの音楽を作る専攻にいて、遼志さんと一緒に仕事をしたやつは、すごくかわいいアニメーションを描いていたんだよね。だけどご飯に行ったときに「いや、もっと毒々しいやつがやりたいんです」と言っていて。それで「そういえば、大希のサウンドと合いそうだな」と思って。「一緒にやったらどうですか?」って。スーパーデラックスという六本木に箱があったんだけど、そこでの企画に「VJと音楽とかどうですか?」と2人を誘ったら、すごく仲よくなってみたいな。
新井:遼志さんは『PrayerX』のMVだったり『Stardom』のジャケットとか描いてくれている人で。
江﨑:ミレパの『Philip』もそうだしね。
【関連記事】King Gnu・井口と常田がバンドを始めた流れは? 連絡先も知らなかったけど…
新井:まずピアノの音だよね。これはもういろいろあるんだろうなと思っているんだけど、録り方はどう録っているの?
江﨑:これは2年間の研究を経て、やっと完成されたアップライトピアノの録り方というのがあって。アップライトピアノが基本で、ただ曲によってはグランドピアノも使っていて。1曲1曲、曲に合わせてピアノの音色を変えていく、録り方を変えていくというのをやっていて。特にアップライトピアノの収録に関しては、ピアノの裏側にマイクを立てたり、表側にマイクを立てたり、あとは蓋を全部取って音を録ることで、あえて鍵盤がカタカタ鳴る音とか、あとは衣擦れの音とか。そういったものが自然に入るように、人の気配を感じる収録の仕方というのをやっていて。最近プラグインという、パソコンのなかで打ち込みでピアノの音源を作るというのも曲の作り方としては一般的だけど、それだともう、完璧にきれいな音がする。
新井:それこそKing Gnuでもピアノの音は、パソコンのなかのピアノの音で完結しちゃうときも全然あるしね。
江﨑:あるよね。それだとそれでよくなっちゃうから、あえてノイジーなものを録ることに価値があるなと思って。
新井:明らかにピアノの音というところにプライオリティがあるというか、そこに相当意思を感じるというか。そういう風に思ったな。その手の音楽的には素人なんだけど、ギターみたいな音がするというか。
江﨑:たしかに。
新井:鍵盤楽器というよりは、限りなく弦楽器としての。もちろんピアノも弦を叩いているわけだから弦が鳴っている。その弦の音がすごくするというか。文武の弾き方もちょっと相まって、ギターのストロークみたいに聴こえるんだよね。それもすごく面白いなというか。
新井:文武の今回のソロとしてのワークは基本的にジャズを感じない。というか、コード進行にツー・ファイブ進行という、いわゆるジャズっぽい進行がなかったり、すごくインのコード進行で、アウトしていないコード進行で構築されている。多少はあるけど、基本はそれに重きを置いているというのが文武っぽいし面白いなと思って。いわゆるフレーズとしてのジャズっぽいのというのがほとんどなかった。ソロっぽいセクションは多少あって、もちろんそこにちょっとは感じるんだけど、ものとしてはそういう風に作っていないというか。それって意図しているの?
江﨑:メチャメチャ意図している。わりとジャズ的な要素はいま関わっているほかのプロジェクトというか、WONKもそうだしmillennium paradeもそうだしKing Gnuもそうだし。いろいろなところでアウトプットしているなとは思っていて。だから自分のソロではもうちょっとクラシックや映画音楽的な、自分のルーツのところをまず全面に出していきたいなと思っていて。実は次のアルバムはそういうジャズ的な要素モリモリのものにしようと、もう思っているんだよね。
新井:次はこのアルバムが1回区切りになって、そういうモードでちゃんと作ると。そういう面もあるにはあるんだ。てっきりこの感じでいくのかなって思っていたんだけど、ある一面の考え方なんだね。
江﨑:すごく遅れて自分のルーツを辿っていっているみたいな感じ。最初はクラシックから入ったから、そこを一旦おさらいした。次はジャズだったから3、4年後ぐらいにジャズを基調としたアルバムを出しつつ、でも全部映像と一緒にワークするみたいな音楽になればいいなと思っているから。あとは舞台芸術とか。
新井:ピアニストって鍵盤奏者で、そこまできれいに「今回はここの面です」って。しかもクラシックとジャズってよく取りざたされる二面性じゃない? それをここまでバッツリ分けて、しかも1人のアーティストが表現できるというのは、なかなかいないというか、ないというか。
江﨑:自分の「広く浅く」みたいなところが出ているというか、やっぱりみんな「自分はジャズピアニストです」「自分はクラシックのピアニストです」という、強い芯を持っている方が多いなと思う。だけど自分はわりと周りの友だちに支えられていて「これを一緒にやらない?」と誘ってもらって、いろいろなジャンルを吸収してきたタイプだから。自分のいろいろな面を少しずつ見せていくみたいなほうが、考えやすいのかもしれない。
江崎は多岐にわたるジャンルで活躍する新井に「自分のアイデンティティはどこ?」といった考えになることはないのかと質問を投げかけた。
新井:外現場があることで保たれているというか。プレイヤーとしての欲求は意外と満たされていて。いまKing Gnuでガッツリやっていくモードでは引き続きあるから、そこでバランスは意外と取れている。だけど、プレイヤーなのかアーティストなのかというのは、いまも自問自答している。俺も文武と同じくらいいろいろな音楽が好きだから、俺がなにか作品を発表するときに「それはなんなんだろう?」というのはたまに考えるかな。それがジャズなのかR&Bなのかビートものなのか、みたいなのはたまに思う。まだそれは俺のなかでは決まりきってないかも。
江﨑:決まりきってなくても、人々はロックベーシストの新井さんに期待する部分があったりとか、WONKの江崎さんに期待するものがあったりとか。ひとつのジャンル、ひとつのバンドのなかのその人というイメージがどんどん定着してくるからさ。自分はもっといろいろなものが好きで、もっとカオスな存在なんだというのを理解してもらえたらうれしいな、と思う瞬間がすごくある。
新井:そういう意味でもこのアルバムは、江﨑文武というものを象徴しているような気がするけどね。
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江﨑の最新情報は、公式サイトまで。
新井が火曜にナビゲーターを担当する『SPARK』はJ-WAVEで24時-25時オンエア。公式サイトはこちら。
江﨑が登場したのは、6月27日(火)に放送されたJ-WAVEの番組『SPARK』。注目のアーティストが曜日ごとにナビゲーターを務める番組で、火曜ナビゲーターは新井が担当している。
江﨑は5月31日に、ファーストアルバム『はじまりの夜』をリリースした。
それぞれの出会い
2人はお互いの出会いについて「あまり覚えてない」と明かして、当時について振り返った。江﨑:俺ら世代の周辺は、ジャムセッションに出入りしまくっていたから。それこそモノンクルの2人が(ゲストで)来ていたときも「洗足でセッションしていた」みたいな話をしていて「そのとき俺も行っていたんだよなあ」と思って。
新井:そっか。
江﨑:そこで佐瀬(悠輔)くんとか、モノンクルのチームだったり、藤井 風くんのベースやっている勝矢 匠とか、あの辺みんなその現場で出会ったから、だからたぶん和輝ともそういうジャムのシーンなんじゃないかな? と思っているんだけど。
新井:ジャムセッションにいろいろお互い行っていた時期はかぶっているんだけど、たぶん同じセッションをしたことはなくて。
江﨑:一緒にやったことはない。
新井:意外と学生が終わるか終わらないかのときに、それこそmillennium paradeの前身のときのレコーディングで初めて音を出したのかな。
江﨑:爆速『チェロキー』をやったとき。たぶん一緒に音を出したのはそれくらいだよね。
新井:文武は藝大(出身)じゃん。周りの藝大の人の中で、特に常田(大希)と石若(駿)とは、俺がそこに合流したときには3人はすでに知り合いだったみたいなイメージがあって。同い年というのはあるけど、学部はみんな違うじゃん。学生時代の3人はどういうつながりだったの?
江﨑:「藝祭」という藝大の学園祭があるんだけど、そこで駿から「バンドやるから一緒にやろうよ」と言われて。当時藝大をやめていた大希がギターで俺が鍵盤で、トランペットはパトリック・ムーディーと何人かいて。当日までなんの曲をやるのか、たしかわからなくて「この曲やります」みたいな感じで言われて、せーのドンでジャムセッションみたいなので、はじめましてだったんだよね。
新井:そこだったんだ。
江﨑:大希はチェロで自分は映像やアニメの音楽とか作るところだったから、本当にかかわりがなくて。でも入学して1年半経ってからかな? 20歳になったぐらいのときに出会って。そこから大希がソロプロジェクトをやっているというので、渋谷にエイジアというクラブがあったんだけど、そこで大希と駿と俺で、いまのミレパの曲の前身になった曲みたいなのを深夜クラブセットでやって。
新井:それは(山田)遼志さんとかはいなかったの?
江﨑:まったくいなかった。遼志さんも俺と同じ藝大で映像とかアニメの音楽を作る専攻にいて、遼志さんと一緒に仕事をしたやつは、すごくかわいいアニメーションを描いていたんだよね。だけどご飯に行ったときに「いや、もっと毒々しいやつがやりたいんです」と言っていて。それで「そういえば、大希のサウンドと合いそうだな」と思って。「一緒にやったらどうですか?」って。スーパーデラックスという六本木に箱があったんだけど、そこでの企画に「VJと音楽とかどうですか?」と2人を誘ったら、すごく仲よくなってみたいな。
新井:遼志さんは『PrayerX』のMVだったり『Stardom』のジャケットとか描いてくれている人で。
江﨑:ミレパの『Philip』もそうだしね。
【関連記事】King Gnu・井口と常田がバンドを始めた流れは? 連絡先も知らなかったけど…
生音へのこだわり
新井は江崎の『はじまりの夜』の内容について深掘りをしていくことに。今作に対する江崎のこだわりが明らかになった。新井:まずピアノの音だよね。これはもういろいろあるんだろうなと思っているんだけど、録り方はどう録っているの?
江﨑:これは2年間の研究を経て、やっと完成されたアップライトピアノの録り方というのがあって。アップライトピアノが基本で、ただ曲によってはグランドピアノも使っていて。1曲1曲、曲に合わせてピアノの音色を変えていく、録り方を変えていくというのをやっていて。特にアップライトピアノの収録に関しては、ピアノの裏側にマイクを立てたり、表側にマイクを立てたり、あとは蓋を全部取って音を録ることで、あえて鍵盤がカタカタ鳴る音とか、あとは衣擦れの音とか。そういったものが自然に入るように、人の気配を感じる収録の仕方というのをやっていて。最近プラグインという、パソコンのなかで打ち込みでピアノの音源を作るというのも曲の作り方としては一般的だけど、それだともう、完璧にきれいな音がする。
新井:それこそKing Gnuでもピアノの音は、パソコンのなかのピアノの音で完結しちゃうときも全然あるしね。
江﨑:あるよね。それだとそれでよくなっちゃうから、あえてノイジーなものを録ることに価値があるなと思って。
新井:明らかにピアノの音というところにプライオリティがあるというか、そこに相当意思を感じるというか。そういう風に思ったな。その手の音楽的には素人なんだけど、ギターみたいな音がするというか。
江﨑:たしかに。
新井:鍵盤楽器というよりは、限りなく弦楽器としての。もちろんピアノも弦を叩いているわけだから弦が鳴っている。その弦の音がすごくするというか。文武の弾き方もちょっと相まって、ギターのストロークみたいに聴こえるんだよね。それもすごく面白いなというか。
ルーツを押し出した1枚
江崎によれば、今回のアルバムは自身のルーツへのこだわりもあるのだという。新井:文武の今回のソロとしてのワークは基本的にジャズを感じない。というか、コード進行にツー・ファイブ進行という、いわゆるジャズっぽい進行がなかったり、すごくインのコード進行で、アウトしていないコード進行で構築されている。多少はあるけど、基本はそれに重きを置いているというのが文武っぽいし面白いなと思って。いわゆるフレーズとしてのジャズっぽいのというのがほとんどなかった。ソロっぽいセクションは多少あって、もちろんそこにちょっとは感じるんだけど、ものとしてはそういう風に作っていないというか。それって意図しているの?
江﨑:メチャメチャ意図している。わりとジャズ的な要素はいま関わっているほかのプロジェクトというか、WONKもそうだしmillennium paradeもそうだしKing Gnuもそうだし。いろいろなところでアウトプットしているなとは思っていて。だから自分のソロではもうちょっとクラシックや映画音楽的な、自分のルーツのところをまず全面に出していきたいなと思っていて。実は次のアルバムはそういうジャズ的な要素モリモリのものにしようと、もう思っているんだよね。
新井:次はこのアルバムが1回区切りになって、そういうモードでちゃんと作ると。そういう面もあるにはあるんだ。てっきりこの感じでいくのかなって思っていたんだけど、ある一面の考え方なんだね。
江﨑:すごく遅れて自分のルーツを辿っていっているみたいな感じ。最初はクラシックから入ったから、そこを一旦おさらいした。次はジャズだったから3、4年後ぐらいにジャズを基調としたアルバムを出しつつ、でも全部映像と一緒にワークするみたいな音楽になればいいなと思っているから。あとは舞台芸術とか。
新井:ピアニストって鍵盤奏者で、そこまできれいに「今回はここの面です」って。しかもクラシックとジャズってよく取りざたされる二面性じゃない? それをここまでバッツリ分けて、しかも1人のアーティストが表現できるというのは、なかなかいないというか、ないというか。
江﨑:自分の「広く浅く」みたいなところが出ているというか、やっぱりみんな「自分はジャズピアニストです」「自分はクラシックのピアニストです」という、強い芯を持っている方が多いなと思う。だけど自分はわりと周りの友だちに支えられていて「これを一緒にやらない?」と誘ってもらって、いろいろなジャンルを吸収してきたタイプだから。自分のいろいろな面を少しずつ見せていくみたいなほうが、考えやすいのかもしれない。
江崎は多岐にわたるジャンルで活躍する新井に「自分のアイデンティティはどこ?」といった考えになることはないのかと質問を投げかけた。
新井:外現場があることで保たれているというか。プレイヤーとしての欲求は意外と満たされていて。いまKing Gnuでガッツリやっていくモードでは引き続きあるから、そこでバランスは意外と取れている。だけど、プレイヤーなのかアーティストなのかというのは、いまも自問自答している。俺も文武と同じくらいいろいろな音楽が好きだから、俺がなにか作品を発表するときに「それはなんなんだろう?」というのはたまに考えるかな。それがジャズなのかR&Bなのかビートものなのか、みたいなのはたまに思う。まだそれは俺のなかでは決まりきってないかも。
江﨑:決まりきってなくても、人々はロックベーシストの新井さんに期待する部分があったりとか、WONKの江崎さんに期待するものがあったりとか。ひとつのジャンル、ひとつのバンドのなかのその人というイメージがどんどん定着してくるからさ。自分はもっといろいろなものが好きで、もっとカオスな存在なんだというのを理解してもらえたらうれしいな、と思う瞬間がすごくある。
新井:そういう意味でもこのアルバムは、江﨑文武というものを象徴しているような気がするけどね。
【関連記事】WONKでも活躍の江﨑文武、人生の転機は「荒田 洸との出会い」
江﨑の最新情報は、公式サイトまで。
新井が火曜にナビゲーターを担当する『SPARK』はJ-WAVEで24時-25時オンエア。公式サイトはこちら。
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2023年7月4日28時59分まで
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