精神科医、産業医、そしてアスリートのメンタルアドバイザーの木村好珠さんが、藤原しおりと「こころ」をテーマに語り合った。
木村さんが登場したのは、藤原しおりが「チーフ」としてナビゲートする、ラジオを「ラボ」に見立てたJ-WAVEの番組『LOGISTEED TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY』(通称トモラボ)。「私たちの身近にある森羅万象」をテーマ(イシュー)に取り上げてかみ砕き、ラボの仲間としてゲストを「フェロー」として迎え、未来を明るくするヒントを研究している。
ここで紹介するオンエアは5月13日(土)。
木村:精神科医としての「こころ」はやっぱり今、自分がどう思っているかに目を向けることが大事だなと思っています。私は起きたときに「今日って何パーセントくらいの調子かな」って考えるんですよ。
藤原:心も体も含め?
木村:はい。今日は調子がいいなって思ったときは精力的に活動するし、ちょっと調子が悪いなって思ったときは、今日は最低限のことをやろうと思って最低限やって、それでも途中からちょっと調子がよくなってプラスでこれができるようになったらそのときは自分を褒める。自分で自分を褒めることってすごく大切なことだと思っているので、それによって自分の心を整えるようなことをしてると思います。
では、木村さんはどういう基準で「今日の自分は何パーセントだな」「これはいいぞ」と決めているのだろうか。
木村:私は起きやすさとか、頭のクリアな感じとか。なかなか具現化はできないし可視化はできないけど、自分の中でのある程度の基準はあるかなと思います。あとは起きたときではないんですけど、日常生活で絶対人によってメンタルが落ちる前に自分の変化があるはずなんですよ。私の場合は水分が取れなくなるんです。もともと水分を取るほうなのに、全然水分を受け付けないってなると「ちょっと疲れてる」ってなります。
藤原:人によって何かしらサインはあると思うから、まずはサイン探しからし始めてもいいかもしれませんね。
木村:よくあるのは不眠とか睡眠に影響するとか、外に出るのが億劫になるとか、そういうのはわかりやすい例かなと思います。なので、自分の中で「このサインが出てきたら、ちょっと疲れてるんだ」って自分で把握できると、すごくマイナスな方向には行かないで済むので、そのサインは自分で見つけると、かなりメンタルを安定させるいい方法になると思います。
藤原:この本を執筆したきっかけは?
木村:世の中でポジティブ思考という言葉が流行りすぎていると思ったことからですね。よく「ポジティブでいこうよ」って声がけというか、そういうのを耳にすると思うんですよね。自分の長所はポジティブなところとか。本当に根っからのポジティブな人ってそれはそれでいいと思っています。だけれども、その中にはネガティブな自分をよくないなって思って、無理やりポジティブ思考に変えている人ってかなり多いと思います。そうすると結局、自分が本来の心にふたをして、「頑張らなきゃ」「○○しなきゃ」という方向に行くので、「自分の本当の気持ちってどうなんだろう?」っていう部分が鈍感になってきて、それを積み重ねていくうちに気が付いたら心身共に疲労がたまっていって、どーんと落ちちゃうことがあります。
「なかなか人間は自分の心に向き合うこと自体をしてない」と木村さんは続ける。
木村:特に空気を読むという文化がどうしても日本にはあります。空気を読みすぎてしまって、他人の状況を考えながら行動することが多くて。「じゃあ、あなたはどうしたいの?」って訊かれたときに、全然答えられないって人がかなりいるんですよね。なので、まずは自分のメンタルに向き合って、自分がうれしい、楽しいとしっかりと感じてもらうことで、「なんとなく毎日ルーティンで過ごしてます」っていうところから、ちょっと自分の生活にメリハリがつくというか。「自分の生活ってこういう楽しいところがあるんだ」とか、そこに気付けるようになってほしいという思いを込めてこの本を書きました。
藤原:メンタルに携わるお仕事をされていると、世の中がどういう風潮で、どういう風にこころに影響があってって日々感じてるでしょうしね。
木村:考えますね。その中で空気を読むっていう文化が特に日本と海外で違いすぎるなって思っていて。私はスペインのレアル・マドリードっていうサッカーチームのジュニアユースのメンタルの方とお会いしたときにすごく思って。
藤原:どんな違いがありました?
木村:日本ではメンタルというと、たいていは心(心臓あたり)をさすんですよね。でも海外で「メンタルはどこ?」って言うと、小さい子でも頭をさすんですよ。「脳です」って。
藤原:ちょっと違いますね。頭をさすのって、ちょっと違和感。
木村:でも実際に考えてみると、「メンタルが弱い」って言われるときってどういうときか考えると、たとえば試合だったらPKを外したとき、メンタルが弱いって言われるじゃないですか。それって頭の中で思考が定まってない。思考は今の状況を判断して考えて行動することなので、ちゃんとした思考が状況を判断できてなくて、頭がテンパって真っ白になっている状態。そうなるとうまくいかなくなるので、ちゃんと思考を整えるとメンタルが弱いって状態を作りにくいよねっていう意味で、メンタル=思考となっています。
この話を踏まえて、木村さんは「海外ではメンタルの思考は自分の状況を判断して行動しているけど、日本は空気を読むので周りの状況を判断して行動している人が多い」と話す。
木村:たとえば、会社で上司がまだ帰ってないから帰らないほうがいいとか、あの人はちょっとイライラしてるから静かにしておいたほうがいいなとか。判断の軸が自分じゃなくて他人なんですよね。それを重ねていくと「じゃあ、あなたはどうしたいの?」っていう質問に本当に答えられない人が多いんですよ。そうなると、たとえばつらいな、嫌だなっていうものが封印されているだけじゃなくて、楽しいとかうれしいって感情も封印されることになっちゃうので、なんとなく彩りがない世界というか、なんか楽しくないなっていう方が非常に多い。なので、私はメンタルっていう心もそうだし、自分の感情を整えることで心の部分を左右できるので、その感情の思考に気付いてほしいなと思っています。
木村:もともと、私はメンタルが弱い・強いとは定義してないんですね。メンタルは整えられるものだと思っているので。ただ、いわゆる一般的な“メンタル弱い”っていうのは緊張がかかるときに「どうしよう」と思って、なかなか自分のパフォーマンスが発揮できないとか、「こうなったらどうしよう」が強くて自分の行動ができないとか。そういうことが“メンタル弱い”ってことだと思っています。
藤原:負荷とか緊張とか不安とか、そういうものからくるのであって、個人の個性からきているものではないと。
木村:その個性が見せられないことが“メンタル弱い”だと思っています。
木村さんは「メンタルが弱い人って、全然間違いじゃないと思います」と語る。
木村:ある意味、「こうなったらどうしよう」って将来のことを考えられたりとか、周りに目を配れる人もいると思うので、メンタル弱い”って一般的に言われている人が悪いとは全く思っていなくて。それを踏まえた上で、自分がどう考えてどう行動に移すかっていうのが私は重要だなと思っています。
木村さんは『メンタル弱いままたのしく生きてく』の中で「強くすべきなのはメンタル全てではなく回復力」と綴っている。
木村:メンタルが弱くなることって誰にでもあると思ってるんです。つらいなって思うことはたくさんあるじゃないですか。仕事で失敗したり友だちとケンカしたりとか。だからメンタルを弱くしないようにしよう、じゃなくて、変えるべきはメンタルが弱くなったとき、落ち込んだときにどう回復するか。ずっと落ち込んじゃうのか、次の日になればパッと切り替えられるのか。そのメンタルの回復力は自分たちの思考の部分で変えられると思うので、私はメンタルの回復力を身に着けてほしいと思います。
藤原:回復力のスキルってどうやって身に着けられるんですか?
木村:まずは“メンタル弱い”を否定しないこと。“メンタル弱い”を(表に)出せれば、愛嬌だと思ってるので。だからまずは、失敗を怖がらないのはひとつだと思います。あとはそこを改善しようとか、そういうことをちゃんと考えれば、自分が今できることがわかる。メンタルが弱い人って将来のことを考え過ぎるんですよ。「ああなったらどうしよう」「次また失敗したらどうしよう」とか。たとえばサッカーだったら、「シュート失敗しちゃった。次にパスがきたときにまたシュート外したらどうしよう」とか、そういうことをどんどん考えるとその脳になるんですよね。そうすると今日の試合で何もできなかったってときに、試合中でも「外しちゃった」のあとに、もう1人のフォワードにとにかくいいパスを出そうと思ったりとか、そこを一気に考えられるかどうかで回復力って全然変わるので、自分が失敗したときとかそういうときほどそのことを考えるんじゃなくて、今現実にできることに目を向けると回復力が上がります。
藤原:エネルギーを向ける場所が違うんですね。
木村:みなさん失敗すると「次こうなったらどうしよう」とか将来の抽象的なことを考えるんですよね。だけど、不安って未来の抽象的なことで起きるんですよ。ってことは逆を言うと、不安を起こさないようにするには今の現実でできることを考えると不安って起きにくいんですよね。
藤原:現在に注力することが未来につながるってことなのかな。
木村:なので、今自分ができることをしっかり具体的にってことがすごく重要で。じゃあ何をすればいいんだろうって思ったら、自分がやることが頭に浮かぶので、それはひとついいことだと思います。
木村:私は自分が笑顔でいることや機嫌がいいことにすごく価値があると思ってるんですね。たとえば、イライラしながら仕事をしていたらミスも起きやすいだろうし、集中もできないからいいパフォーマンスができない。ごはんがまずくなるとか、いろいろあると思います。ただ、それが一歩笑顔になるだけで、そういうことが全部改善されていくと思うんです。だから、「自分の機嫌がいいときに、どういういいことがあるかな」ってことを、アスリートとかにも15個くらい書いてもらってるんです。そうすると「機嫌がいいほうがいいじゃん」ってなるので、それを何回も繰り返していると、自分で機嫌よくいようって思えるんですよね。そういうスイッチがスッと入るようになるので、私はその練習をけっこうしてもらいます。最後にもうひとつ、自分が好きなものをわかっておくことも大事だと思います。好きなものを自分の周りに固めておく。たとえば、私はサッカーがすごく好きで、マンチェスター・シティーというチームが好きなので、ペンもそのチームカラーの水色なんですよ。
藤原:いいなあ。
木村:携帯のケースも待ち受けも好きな選手なんです。オレンジのかばんを持っているんですけど、それも愛媛FCのチームカラーだからなんです。
藤原:わかりやすい。好きなもので固めることは、だまされたと思ってやってみたほうがいいですよね。
木村:機嫌がよくなれるものをいくつも用意できるのなら、それがいいと思っていてそうしています。大きなことはできないので、まずは自分の身近なもので好きな色のものを持つとか、そういうことだったら変えられるので、そういう小さなことをやっていくと自分のテンションがちょっと上がるきっかけになるので、それはおすすめしたいですね。
J-WAVE『LOGISTEED TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
木村さんが登場したのは、藤原しおりが「チーフ」としてナビゲートする、ラジオを「ラボ」に見立てたJ-WAVEの番組『LOGISTEED TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY』(通称トモラボ)。「私たちの身近にある森羅万象」をテーマ(イシュー)に取り上げてかみ砕き、ラボの仲間としてゲストを「フェロー」として迎え、未来を明るくするヒントを研究している。
ここで紹介するオンエアは5月13日(土)。
こころのケアの第一歩「朝に自分の状態を判断する」
精神科医、産業医、アスリートのメンタルアドバイザーとして活躍する木村さんに、藤原は精神科医として「こころ」はどのようにケアしているかを訊いた。木村:精神科医としての「こころ」はやっぱり今、自分がどう思っているかに目を向けることが大事だなと思っています。私は起きたときに「今日って何パーセントくらいの調子かな」って考えるんですよ。
藤原:心も体も含め?
木村:はい。今日は調子がいいなって思ったときは精力的に活動するし、ちょっと調子が悪いなって思ったときは、今日は最低限のことをやろうと思って最低限やって、それでも途中からちょっと調子がよくなってプラスでこれができるようになったらそのときは自分を褒める。自分で自分を褒めることってすごく大切なことだと思っているので、それによって自分の心を整えるようなことをしてると思います。
では、木村さんはどういう基準で「今日の自分は何パーセントだな」「これはいいぞ」と決めているのだろうか。
木村:私は起きやすさとか、頭のクリアな感じとか。なかなか具現化はできないし可視化はできないけど、自分の中でのある程度の基準はあるかなと思います。あとは起きたときではないんですけど、日常生活で絶対人によってメンタルが落ちる前に自分の変化があるはずなんですよ。私の場合は水分が取れなくなるんです。もともと水分を取るほうなのに、全然水分を受け付けないってなると「ちょっと疲れてる」ってなります。
藤原:人によって何かしらサインはあると思うから、まずはサイン探しからし始めてもいいかもしれませんね。
木村:よくあるのは不眠とか睡眠に影響するとか、外に出るのが億劫になるとか、そういうのはわかりやすい例かなと思います。なので、自分の中で「このサインが出てきたら、ちょっと疲れてるんだ」って自分で把握できると、すごくマイナスな方向には行かないで済むので、そのサインは自分で見つけると、かなりメンタルを安定させるいい方法になると思います。
「空気を読む」ことの弊害
木村さんは2022年『メンタル弱いままたのしく生きてく』(サンマーク出版)を上梓。この本をもとに藤原と「こころ」に迫った。藤原:この本を執筆したきっかけは?
木村:世の中でポジティブ思考という言葉が流行りすぎていると思ったことからですね。よく「ポジティブでいこうよ」って声がけというか、そういうのを耳にすると思うんですよね。自分の長所はポジティブなところとか。本当に根っからのポジティブな人ってそれはそれでいいと思っています。だけれども、その中にはネガティブな自分をよくないなって思って、無理やりポジティブ思考に変えている人ってかなり多いと思います。そうすると結局、自分が本来の心にふたをして、「頑張らなきゃ」「○○しなきゃ」という方向に行くので、「自分の本当の気持ちってどうなんだろう?」っていう部分が鈍感になってきて、それを積み重ねていくうちに気が付いたら心身共に疲労がたまっていって、どーんと落ちちゃうことがあります。
「なかなか人間は自分の心に向き合うこと自体をしてない」と木村さんは続ける。
木村:特に空気を読むという文化がどうしても日本にはあります。空気を読みすぎてしまって、他人の状況を考えながら行動することが多くて。「じゃあ、あなたはどうしたいの?」って訊かれたときに、全然答えられないって人がかなりいるんですよね。なので、まずは自分のメンタルに向き合って、自分がうれしい、楽しいとしっかりと感じてもらうことで、「なんとなく毎日ルーティンで過ごしてます」っていうところから、ちょっと自分の生活にメリハリがつくというか。「自分の生活ってこういう楽しいところがあるんだ」とか、そこに気付けるようになってほしいという思いを込めてこの本を書きました。
藤原:メンタルに携わるお仕事をされていると、世の中がどういう風潮で、どういう風にこころに影響があってって日々感じてるでしょうしね。
木村:考えますね。その中で空気を読むっていう文化が特に日本と海外で違いすぎるなって思っていて。私はスペインのレアル・マドリードっていうサッカーチームのジュニアユースのメンタルの方とお会いしたときにすごく思って。
藤原:どんな違いがありました?
木村:日本ではメンタルというと、たいていは心(心臓あたり)をさすんですよね。でも海外で「メンタルはどこ?」って言うと、小さい子でも頭をさすんですよ。「脳です」って。
藤原:ちょっと違いますね。頭をさすのって、ちょっと違和感。
木村:でも実際に考えてみると、「メンタルが弱い」って言われるときってどういうときか考えると、たとえば試合だったらPKを外したとき、メンタルが弱いって言われるじゃないですか。それって頭の中で思考が定まってない。思考は今の状況を判断して考えて行動することなので、ちゃんとした思考が状況を判断できてなくて、頭がテンパって真っ白になっている状態。そうなるとうまくいかなくなるので、ちゃんと思考を整えるとメンタルが弱いって状態を作りにくいよねっていう意味で、メンタル=思考となっています。
この話を踏まえて、木村さんは「海外ではメンタルの思考は自分の状況を判断して行動しているけど、日本は空気を読むので周りの状況を判断して行動している人が多い」と話す。
木村:たとえば、会社で上司がまだ帰ってないから帰らないほうがいいとか、あの人はちょっとイライラしてるから静かにしておいたほうがいいなとか。判断の軸が自分じゃなくて他人なんですよね。それを重ねていくと「じゃあ、あなたはどうしたいの?」っていう質問に本当に答えられない人が多いんですよ。そうなると、たとえばつらいな、嫌だなっていうものが封印されているだけじゃなくて、楽しいとかうれしいって感情も封印されることになっちゃうので、なんとなく彩りがない世界というか、なんか楽しくないなっていう方が非常に多い。なので、私はメンタルっていう心もそうだし、自分の感情を整えることで心の部分を左右できるので、その感情の思考に気付いてほしいなと思っています。
メンタルの「回復力」に着目してみよう
木村さんの著書のタイトルには“メンタル弱い”とある。「メンタルが強い・弱い」をどう定義づけしているのだろうか。木村:もともと、私はメンタルが弱い・強いとは定義してないんですね。メンタルは整えられるものだと思っているので。ただ、いわゆる一般的な“メンタル弱い”っていうのは緊張がかかるときに「どうしよう」と思って、なかなか自分のパフォーマンスが発揮できないとか、「こうなったらどうしよう」が強くて自分の行動ができないとか。そういうことが“メンタル弱い”ってことだと思っています。
藤原:負荷とか緊張とか不安とか、そういうものからくるのであって、個人の個性からきているものではないと。
木村:その個性が見せられないことが“メンタル弱い”だと思っています。
木村さんは「メンタルが弱い人って、全然間違いじゃないと思います」と語る。
木村:ある意味、「こうなったらどうしよう」って将来のことを考えられたりとか、周りに目を配れる人もいると思うので、メンタル弱い”って一般的に言われている人が悪いとは全く思っていなくて。それを踏まえた上で、自分がどう考えてどう行動に移すかっていうのが私は重要だなと思っています。
木村さんは『メンタル弱いままたのしく生きてく』の中で「強くすべきなのはメンタル全てではなく回復力」と綴っている。
木村:メンタルが弱くなることって誰にでもあると思ってるんです。つらいなって思うことはたくさんあるじゃないですか。仕事で失敗したり友だちとケンカしたりとか。だからメンタルを弱くしないようにしよう、じゃなくて、変えるべきはメンタルが弱くなったとき、落ち込んだときにどう回復するか。ずっと落ち込んじゃうのか、次の日になればパッと切り替えられるのか。そのメンタルの回復力は自分たちの思考の部分で変えられると思うので、私はメンタルの回復力を身に着けてほしいと思います。
藤原:回復力のスキルってどうやって身に着けられるんですか?
木村:まずは“メンタル弱い”を否定しないこと。“メンタル弱い”を(表に)出せれば、愛嬌だと思ってるので。だからまずは、失敗を怖がらないのはひとつだと思います。あとはそこを改善しようとか、そういうことをちゃんと考えれば、自分が今できることがわかる。メンタルが弱い人って将来のことを考え過ぎるんですよ。「ああなったらどうしよう」「次また失敗したらどうしよう」とか。たとえばサッカーだったら、「シュート失敗しちゃった。次にパスがきたときにまたシュート外したらどうしよう」とか、そういうことをどんどん考えるとその脳になるんですよね。そうすると今日の試合で何もできなかったってときに、試合中でも「外しちゃった」のあとに、もう1人のフォワードにとにかくいいパスを出そうと思ったりとか、そこを一気に考えられるかどうかで回復力って全然変わるので、自分が失敗したときとかそういうときほどそのことを考えるんじゃなくて、今現実にできることに目を向けると回復力が上がります。
藤原:エネルギーを向ける場所が違うんですね。
木村:みなさん失敗すると「次こうなったらどうしよう」とか将来の抽象的なことを考えるんですよね。だけど、不安って未来の抽象的なことで起きるんですよ。ってことは逆を言うと、不安を起こさないようにするには今の現実でできることを考えると不安って起きにくいんですよね。
藤原:現在に注力することが未来につながるってことなのかな。
木村:なので、今自分ができることをしっかり具体的にってことがすごく重要で。じゃあ何をすればいいんだろうって思ったら、自分がやることが頭に浮かぶので、それはひとついいことだと思います。
「機嫌がいいときの価値」を知るのも大事
また木村さんは、自分の機嫌がいいときの価値をわかっておくことも大事だと言う。木村:私は自分が笑顔でいることや機嫌がいいことにすごく価値があると思ってるんですね。たとえば、イライラしながら仕事をしていたらミスも起きやすいだろうし、集中もできないからいいパフォーマンスができない。ごはんがまずくなるとか、いろいろあると思います。ただ、それが一歩笑顔になるだけで、そういうことが全部改善されていくと思うんです。だから、「自分の機嫌がいいときに、どういういいことがあるかな」ってことを、アスリートとかにも15個くらい書いてもらってるんです。そうすると「機嫌がいいほうがいいじゃん」ってなるので、それを何回も繰り返していると、自分で機嫌よくいようって思えるんですよね。そういうスイッチがスッと入るようになるので、私はその練習をけっこうしてもらいます。最後にもうひとつ、自分が好きなものをわかっておくことも大事だと思います。好きなものを自分の周りに固めておく。たとえば、私はサッカーがすごく好きで、マンチェスター・シティーというチームが好きなので、ペンもそのチームカラーの水色なんですよ。
藤原:いいなあ。
木村:携帯のケースも待ち受けも好きな選手なんです。オレンジのかばんを持っているんですけど、それも愛媛FCのチームカラーだからなんです。
藤原:わかりやすい。好きなもので固めることは、だまされたと思ってやってみたほうがいいですよね。
木村:機嫌がよくなれるものをいくつも用意できるのなら、それがいいと思っていてそうしています。大きなことはできないので、まずは自分の身近なもので好きな色のものを持つとか、そういうことだったら変えられるので、そういう小さなことをやっていくと自分のテンションがちょっと上がるきっかけになるので、それはおすすめしたいですね。
J-WAVE『LOGISTEED TOMOLAB.〜TOMORROW LABORATORY』は毎週土曜20時から20時54分にオンエア。
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2023年5月20日28時59分まで
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