ヨルシカのn-buna(Gt/Composer)とsuis(Vo)が、音楽画集『幻燈』について語った。
2人が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『~JK RADIO~TOKYO UNITED』(ナビゲーター:ジョン・カビラ)のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」。オンエアは4月14日(金)。『幻燈』は4月5日にリリースされている。
n-buna:数年前にNFTというデカい市場がアート界隈に生まれたんです。ブロックチェーン技術が発達してからのデータにオリジナルの証明がつけられるようになったという、まずそこから始まりました。ブロックチェーン技術って、そのまま音楽の著作権の未来だと思ったんです。みなさんが流れているのを聴いている、音楽のデータ情報の本質というのが波形です。それにオリジナルの証明がつけられるようになるということなので、いま書面だけで果たされている著作権の完全な代替機能になる、上位互換の機能としてそういう構成が絶対にできあがっていくんです。じゃあ、音楽を作る人間としていまなにをするべきか? いま出せるものってなんだろう? ということを考えたときに「その形式の比喩をとろう」と僕は思いました。サブスクリプションサービスだったりダウンロードだったりで、手軽に簡単に音楽を再生、消費できるという時代にちょっと面倒な手間を踏ませて、画集を買って実物として持っていて、それを絵で読み込んでそこからデータにアクセスする。オリジナルの画集を買った人にしか聴けない仕様にすることで、ブロックチェーンの簡単な比喩を作りました。
ジョン:ブロックチェーンの技術によって、音楽のデータにもオリジナルであることの証明がつけられる日がくる。そんな未来の状況の比喩、たとえとして音楽画集なんですね。つまり、オリジナルの音源であることの証明を、今回の場合ではブロックチェーンの技術ではなく、形として存在する画集が果たすということになります。その比喩が「画集、絵」であるというところが、ポエティックですよね。
n-buna:第1章のほうが音楽が先にあって、それに対して加藤さんに絵を描いてもらう。第2章は逆で、絵を先に「踊る動物」をテーマに描いていただいて、それに僕が音楽をつけていくという構成になっています。第1章は歌ものの音楽を中心にして構成されていて、文学というテーマが根底にあって、その文学というテーマは古典文学、みんなが知っているようなものを中心としてテーマを1つ選び、それを音楽と絵の両面からかいているという構成になっています。
ジョン:興味深いです。曲が先なのか絵が先なのか、それを2つのチャプターにわけています。第1章ですが、それぞれモチーフとした文学作品があるんですね。たとえば『都落ち』という曲のテーマとなっているのは『万葉集』第2巻116番。「秘めた恋をする女性の皇族が、人のうわさがわずらわしいので、人目を避けて早朝の川を渡り、愛する人に会いに行く」という内容の和歌です。
n-buna:『万葉集』のなかでも好きな歌です。何句か好きな歌があるんですが、不思議なパワーを感じる和歌です。学生のころに『万葉集』を見たんですが、そのときから不思議と心のなかに引っかかっている歌なんです。そのなかから別れのニュアンスとか悲恋的な悲しさを抽出し、「相手の頭」を都として、そこから自分がいなくなるという「都落ち」というニュアンスで別れの歌を作りました。
ジョン:誰かの頭のなかを都と見立て、そこから去っていくことを『都落ち』という曲で表現しているんですね。きわめて興味深いです。この『都落ち』、suisさんが咳ばらいをする箇所があります。
suis:これは実際にこの曲のプリプロをやったときに、歌う前に私が気合を入れるために、プリプロだったら録られないからと思って咳払いしたのが、なんか……。
n-buna:よかったという(笑)。
suis:「これなんかよくない? 吟じる感じがある」とn-bunaくんが気に入ってそのまま使われることになりました。
n-buna:都を離れてからのパートって「これから吟じますよ」っていう。曲のなかの流れを変えて「ここから歌いますよ」というパートだから、そのところに意気込みがあってよかったんです。だからそのまま採用しました。
ジョン:ちなみにこのパートを歌うことについて、suisさんはどんなことを感じたのでしょうか。
suis:すごく楽しいです(笑)。普段したことのない歌い方で、これもn-bunaくんが(節を回して)歌ってと。やりすぎないようにとは思いつつ、ちょっと民謡のニュアンスを入れたりして吟じている感じを出しました。
n-buna:書いていないだけで、文脈で言ったらここに「都落ち」という風に続くんです。だからそこをちゃんと意識させるための力強い歌であってほしい、というのはありました。
n-buna:加藤さんと話し合いまして、いろいろ題の候補が出てきたなかで宮沢賢治の『やまなし』の一節からとりました。冒頭の一節に「幻燈」という言葉が出てくるので、そこからですね。そのへんは(作品を)直接見て、どういう意図かを読み取ってくれたらと思います。僕たちがやるべきことって、過去の名作のエネルギーとかを過去の名作をモチーフに、それを現代のポップスとして昇華させる。それによって僕たちの音楽が、僕を形作った文学というか、僕を作ってくれた名作たちへの入り口、初歩的なきっかけになるといいなと思うんです。
ジョン:ヨルシカの新作、音楽画集としてリリースされた『幻燈』、タイトルの由来は宮沢賢治さんの短編『やまなし』の冒頭の文章ということです。新潮文庫の宮沢賢治『新編 風の又三郎』に『やまなし』が収められています。ちなみに新潮文庫とヨルシカがコラボレートして今回のモチーフになった作品が収められた新潮文庫6冊、加藤さんの絵をまとったオリジナルカバーで発売されています。
『~JK RADIO~TOKYO UNITED』のワンコーナー「HIDDEN STORY」では、トップセラーのモノづくりにかける夢を訊く。放送は毎週金曜10時40分ごろから。ヨルシカは次週も出演予定だ。
2人が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『~JK RADIO~TOKYO UNITED』(ナビゲーター:ジョン・カビラ)のワンコーナー「THE HIDDEN STORY」。オンエアは4月14日(金)。『幻燈』は4月5日にリリースされている。
『幻燈』を発表した理由
音楽画集『幻燈』は、スマートフォンやタブレットのカメラを画集の絵にかざすことによって、専用の音楽再生ページへと接続し、絵を観ながら曲を聴くことができる。n-bunaはこのような形で作品を発表した理由を明かした。n-buna:数年前にNFTというデカい市場がアート界隈に生まれたんです。ブロックチェーン技術が発達してからのデータにオリジナルの証明がつけられるようになったという、まずそこから始まりました。ブロックチェーン技術って、そのまま音楽の著作権の未来だと思ったんです。みなさんが流れているのを聴いている、音楽のデータ情報の本質というのが波形です。それにオリジナルの証明がつけられるようになるということなので、いま書面だけで果たされている著作権の完全な代替機能になる、上位互換の機能としてそういう構成が絶対にできあがっていくんです。じゃあ、音楽を作る人間としていまなにをするべきか? いま出せるものってなんだろう? ということを考えたときに「その形式の比喩をとろう」と僕は思いました。サブスクリプションサービスだったりダウンロードだったりで、手軽に簡単に音楽を再生、消費できるという時代にちょっと面倒な手間を踏ませて、画集を買って実物として持っていて、それを絵で読み込んでそこからデータにアクセスする。オリジナルの画集を買った人にしか聴けない仕様にすることで、ブロックチェーンの簡単な比喩を作りました。
ジョン:ブロックチェーンの技術によって、音楽のデータにもオリジナルであることの証明がつけられる日がくる。そんな未来の状況の比喩、たとえとして音楽画集なんですね。つまり、オリジナルの音源であることの証明を、今回の場合ではブロックチェーンの技術ではなく、形として存在する画集が果たすということになります。その比喩が「画集、絵」であるというところが、ポエティックですよね。
章それぞれのテーマ
音楽画集『幻燈』は2つの章に分かれている。第1章は「夏の肖像」、第2章は「踊る動物」というタイトルだ。画集の絵は加藤 隆氏が担当している。n-buna:第1章のほうが音楽が先にあって、それに対して加藤さんに絵を描いてもらう。第2章は逆で、絵を先に「踊る動物」をテーマに描いていただいて、それに僕が音楽をつけていくという構成になっています。第1章は歌ものの音楽を中心にして構成されていて、文学というテーマが根底にあって、その文学というテーマは古典文学、みんなが知っているようなものを中心としてテーマを1つ選び、それを音楽と絵の両面からかいているという構成になっています。
ジョン:興味深いです。曲が先なのか絵が先なのか、それを2つのチャプターにわけています。第1章ですが、それぞれモチーフとした文学作品があるんですね。たとえば『都落ち』という曲のテーマとなっているのは『万葉集』第2巻116番。「秘めた恋をする女性の皇族が、人のうわさがわずらわしいので、人目を避けて早朝の川を渡り、愛する人に会いに行く」という内容の和歌です。
ヨルシカ - 都落ち
ジョン:誰かの頭のなかを都と見立て、そこから去っていくことを『都落ち』という曲で表現しているんですね。きわめて興味深いです。この『都落ち』、suisさんが咳ばらいをする箇所があります。
suis:これは実際にこの曲のプリプロをやったときに、歌う前に私が気合を入れるために、プリプロだったら録られないからと思って咳払いしたのが、なんか……。
n-buna:よかったという(笑)。
suis:「これなんかよくない? 吟じる感じがある」とn-bunaくんが気に入ってそのまま使われることになりました。
n-buna:都を離れてからのパートって「これから吟じますよ」っていう。曲のなかの流れを変えて「ここから歌いますよ」というパートだから、そのところに意気込みがあってよかったんです。だからそのまま採用しました。
ジョン:ちなみにこのパートを歌うことについて、suisさんはどんなことを感じたのでしょうか。
suis:すごく楽しいです(笑)。普段したことのない歌い方で、これもn-bunaくんが(節を回して)歌ってと。やりすぎないようにとは思いつつ、ちょっと民謡のニュアンスを入れたりして吟じている感じを出しました。
n-buna:書いていないだけで、文脈で言ったらここに「都落ち」という風に続くんです。だからそこをちゃんと意識させるための力強い歌であってほしい、というのはありました。
タイトルの理由
最後に音楽画集に『幻燈』というタイトルをつけた経緯、そして文学作品をテーマにする理由について尋ねた。n-buna:加藤さんと話し合いまして、いろいろ題の候補が出てきたなかで宮沢賢治の『やまなし』の一節からとりました。冒頭の一節に「幻燈」という言葉が出てくるので、そこからですね。そのへんは(作品を)直接見て、どういう意図かを読み取ってくれたらと思います。僕たちがやるべきことって、過去の名作のエネルギーとかを過去の名作をモチーフに、それを現代のポップスとして昇華させる。それによって僕たちの音楽が、僕を形作った文学というか、僕を作ってくれた名作たちへの入り口、初歩的なきっかけになるといいなと思うんです。
ジョン:ヨルシカの新作、音楽画集としてリリースされた『幻燈』、タイトルの由来は宮沢賢治さんの短編『やまなし』の冒頭の文章ということです。新潮文庫の宮沢賢治『新編 風の又三郎』に『やまなし』が収められています。ちなみに新潮文庫とヨルシカがコラボレートして今回のモチーフになった作品が収められた新潮文庫6冊、加藤さんの絵をまとったオリジナルカバーで発売されています。
『~JK RADIO~TOKYO UNITED』のワンコーナー「HIDDEN STORY」では、トップセラーのモノづくりにかける夢を訊く。放送は毎週金曜10時40分ごろから。ヨルシカは次週も出演予定だ。
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2023年4月21日28時59分まで
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番組情報
- JK RADIO TOKYO UNITED
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毎週金曜6:00-11:30