2022年9月18日、J-WAVEが共同プロデュースするオンラインマガジン「守破離-SHUHARI-」がローンチした。
“守破離”とは剣道や茶道などの修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。(※1)そんな“守破離”と“音”を切り口に人物のスタイルをリアルに掘り下げ、オリジナルインタビューをInstagramとJ-WAVE NEWSで配信していく。
(※1)引用:デジタル大辞泉「守破離」より
SKY-HIが2020年に立ち上げた、「才能を殺さないために」を掲げたマネジメント/レーベル会社「BMSG」の設立は「守破離 –SHUHARI-」と同じ9月18日。2周年を記念して開催した野外フェス『BMSG FES’22』を山梨県・富士急ハイランドで大盛況に終え、東京に直行したSKY-HIにこれまでのこと、これからのことについて熱冷めやらぬ思いを聞いた。
中学生のとき一緒にバンドをやっていた友達の家で、RHYMESTERのミュージックビデオが流れてきて。その前からラップもヒップホップも音楽としては好きだったんですけど、中学生でRHYMESTERを初めて見たとき、「あ、これ俺たちもやるやつだね」ってなったんです。それで、とりあえず何かリリック書いてみようみたいなのがスタートでした。
──RHYMESTERがきっかけだったんですね。影響を受けたものや、今も大切にしているものはありますか?
ヒップホップの精神性に影響を受けているのは間違いないと思います。それは、その人物がわかりやすくラッパーのときもあれば、そうでないときも。自分で会社作ってやろうって思ったのは、やっぱりラッセル・シモンズ(※2)の本を読んでからだし、ゼロからヒップホップのカルチャーを作って、育てていった方々の言葉が ベースにはなってて。音楽としてのヒップホップももちろん好きだけど、 リリックに限らず、精神性としてのヒップホップに育ててもらってると感じます。
(※2)ラッセル・シモンズ/Russell Wendell Simmons
アメリカの起業家。Def Jam Recordings創設者。「ラッセル・シモンズの成功哲学―ヒップホップ精神で成功を引き寄せる12の法則」(フィルムアート社)
それこそ 2000年代前半から中頃のヒップホップ界はファレル・ウィリアムスやカニエ・ウエスト、ティンバランドのようなスタープロデューサーの時代(※2)で、音楽はもちろんそのアンチマッチョも含めたスタイルやファッションも素敵でずっと憧れていて。僕が自分でビートや曲を作るようになったはじめの頃は、彼らみたいになりたい!みたいな気持ちがあって、でも一方で「何かになりたい」と思う気持ちに違和感や疑問がどこかにありました。そんな中でキャリアが進むにつれて、自分を慕って相談してくれる後輩たちと話しているうちに、自分が1番やるべきこと、つくるべきものは、本当にかっこいいダンス&ボーカルなんだろうなと気付いたんです。間違いなく自分もやりたかったことだし、作りたかったものだったので、その答えに出会ったときは「ああ、これだ」と心の底から思いました。
(※3)2000年代はインターネットの急速な成長が音楽シーンに多大な影響を与え、人々の音楽の聴き方も一変。特にヒップホップとR&Bのジャンルが商業的ピークを迎えた同時代、TimbalandやThe Neptunes(Pharrell Williams)、Kanye Westなどのスタープロデューサー達が活躍し、音楽業界を牽引した。
──自分のやるべきことを見つけた瞬間、ハッとしたんですね。
まさにそうですね。前にQiezi MaboのプロデュースをしてるGiorgio Givvnと、生きてるうちに何か”One Thing”=自分がやるべきなんだっていうものを見つけられることが一番尊いよね、と話をしたことがあったんです。そのOne Thingを見つけられない人は多いと思うけど、本当は誰しもやるべきことが小さかれ大きかれ絶対あって、死ぬまでに見つけたいよねって。自分にとってそれが、本当にかっこいいダンス&ボーカルをプロデュースすること、そして自分の経験したネガティブなところを経験しないで済む場所を作ることなんだって思った瞬間、腑に落ち具合がすごくて。ラップスターになりたい。グラミー賞をとりたい。武道館に立ちたい。とか無数に夢はあったんですけど、目標を決めて気合をいれる今までとは明らかに感覚が違くて。しかもそう気付いたのが人生で1番辛かった瞬間の直後で…辛い思いにやられて腐っていくのではなく、 辛い中で腐らないためにどうすればいいか悩むのはきっといいことなんだろうなと考え続けていました。ピンチの原因を改善しようとすることって、たぶんチャンスの種なんですよね。ピンチはチャンスの種だし、失敗は成功の種だし。
おかげさまでBMSGは良いスタートが切れていると思います。始まりが良いのはすごく大事だし、運や縁が複雑に絡まって生まれていることなので、次はそれを運やタイミングに左右されないものにしていかなきゃいけない段階。会社も3年目、所属アーティストも2年目になるので、音楽的説得力を持つことがたぶん今のフェーズで大事なことだと思います。具体的に言うと、まだシングルしか出していないアーティストはアルバムを出したり、曲数が増えてきたアーティストは自分のバンドをもってツアーを回ったり。勢いがいいときに語られる内容って、わかりやすい数字のことになると思うんですよね。すごくありがたいし、大事で必要なことだけど、会社が3期目を終えて4年目に入ろうとしている来年の今頃には、音楽的説得力、音楽的評価をいただけている状態にならないといけないと思ってますね。
──音楽的説得力って良い言葉ですね。
売れてる、売れてないに関係なく、音楽的説得力ってあるじゃないですか。 芸能事務所でその説得力を持てたところは日本にはなくて。でもアメリカはもちろん韓国には存在している。特に僕は世代柄、ロッカフェラ・レコード(※4)やストーンズ・スロウ・レコーズ(※5)にずっと憧れてきたから、BMSGもクルー感みたいなのを大事にしていきたいんです。クルーとして打ち出す音楽に説得力が生まれてくると、たぶん来年の今頃には「こういうものがBMSGっぽいよね」と言ってもらえるようになってくると思うので。今のところ僕がぼやっと「こういうのがBMSGっぽい」と思っているサウンドやリリックの方向性は、このまま想像通りいけばすごくいい感じになんじゃないかなと思います。
(※4)ロッカフェラ・レコード/Roc-A-Fella Records
ジェイ・Zとデイモン・ダッシュ、カリーム・バークによって、1995年にニューヨークで設立されたアメリカのヒップホップ・R&B・レゲエ・レゲトン系レーベル。
(※5)ストーンズ・スロウ・レコーズ/Stones Throw Records
カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするアメリカの独立系レコードレーベル。 創設者のPeanut Butter Wolfの指導のもと、ヒップホップから実験的なサイケデリックロックまでの音楽をリリースしている。
ラップミュージックが中心になりますが、特にジャンルは区切らず幅広く聴いています。最近ではC.O.S.A.「POP KILLERS feat. ralph」をよく聴いてます。
(Interview:Gaku Jungnickel・Edit/Text:Kana Shionoya)
圧倒的なRAPスキルのみならず、卓越したボーカル&ダンス&トラックメイキングスキルを武器にエンターテインメント性溢れるコンテンツをセルフプロデュースで創り上げる傍ら、マネジメント/レーベル「BMSG」でのCEO業、アーティストプロデュースを手掛ける等、八面六臂の活躍をする日本の音楽シーンの新たな可能性を示すアーティスト。
2005年AAAのメンバーとしてデビューし、同時期からソロ名義「SKY-HI」として都内クラブ等でマイクを握り活動を始めHIP HOPシーンでのプロップスを得る。
2013年にメジャーデビューし、これまでに5枚のオリジナルアルバムをリリースし、その高い作品性がHIP HOPシーンのみならずジャンルの垣根を超えて高い評価を得ている。 2020年には、マネジメント/レーベル「BMSG」を立ち上げ代表取締役CEOに就任。同年ボーイズグループオーディション「THE FIRST」を主催し、翌年には自身がプロデュースを手掛けるボーイズグループBE:FIRSTを輩出。
BMSG/Official Website/Instagram/Twitter
「守破離 –SHUHARI-」
ー師から学び、型を破り、確立するー "守破離"を切り口に「人」のスタイルをリアルに掘り下げるオンラインマガジン
https://www.instagram.com/shuhari_official/
“守破離”とは剣道や茶道などの修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。(※1)そんな“守破離”と“音”を切り口に人物のスタイルをリアルに掘り下げ、オリジナルインタビューをInstagramとJ-WAVE NEWSで配信していく。
(※1)引用:デジタル大辞泉「守破離」より
インタビュー第一弾はSKY-HI
「守破離 –SHUHARI-」のインタビュー第一弾に迎えたのは、J-WAVEナビゲーターでありプロデューサー、ラッパー、そして社長の顔を持つSKY-HI。東京・国立代々木競技場で開催された『J-WAVE presents INSPIRE TOKYO ~Best Music & Market』にて、いとうせいこう is the poetのステージに出演したSKY-HIに、会場でインタビューを行った。SKY-HIが2020年に立ち上げた、「才能を殺さないために」を掲げたマネジメント/レーベル会社「BMSG」の設立は「守破離 –SHUHARI-」と同じ9月18日。2周年を記念して開催した野外フェス『BMSG FES’22』を山梨県・富士急ハイランドで大盛況に終え、東京に直行したSKY-HIにこれまでのこと、これからのことについて熱冷めやらぬ思いを聞いた。
Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
「守」:大切にしているヒップホップの精神性
──長い音楽キャリアの中、ラッパー「SKY-HI」としてメジャーデビューしてから10年目。SKY-HIさんがラップを始めたきっかけは何だったんですか?中学生のとき一緒にバンドをやっていた友達の家で、RHYMESTERのミュージックビデオが流れてきて。その前からラップもヒップホップも音楽としては好きだったんですけど、中学生でRHYMESTERを初めて見たとき、「あ、これ俺たちもやるやつだね」ってなったんです。それで、とりあえず何かリリック書いてみようみたいなのがスタートでした。
──RHYMESTERがきっかけだったんですね。影響を受けたものや、今も大切にしているものはありますか?
ヒップホップの精神性に影響を受けているのは間違いないと思います。それは、その人物がわかりやすくラッパーのときもあれば、そうでないときも。自分で会社作ってやろうって思ったのは、やっぱりラッセル・シモンズ(※2)の本を読んでからだし、ゼロからヒップホップのカルチャーを作って、育てていった方々の言葉が ベースにはなってて。音楽としてのヒップホップももちろん好きだけど、 リリックに限らず、精神性としてのヒップホップに育ててもらってると感じます。
(※2)ラッセル・シモンズ/Russell Wendell Simmons
アメリカの起業家。Def Jam Recordings創設者。「ラッセル・シモンズの成功哲学―ヒップホップ精神で成功を引き寄せる12の法則」(フィルムアート社)
「破」:ラッパーの枠を越えてプロデューサーへ
──2020年にレーベル/会社を立ち上げ、表現者の枠を越えプロデューサーという立場も担う事に。なぜプロデューサーになろうと思ったのですか?それこそ 2000年代前半から中頃のヒップホップ界はファレル・ウィリアムスやカニエ・ウエスト、ティンバランドのようなスタープロデューサーの時代(※2)で、音楽はもちろんそのアンチマッチョも含めたスタイルやファッションも素敵でずっと憧れていて。僕が自分でビートや曲を作るようになったはじめの頃は、彼らみたいになりたい!みたいな気持ちがあって、でも一方で「何かになりたい」と思う気持ちに違和感や疑問がどこかにありました。そんな中でキャリアが進むにつれて、自分を慕って相談してくれる後輩たちと話しているうちに、自分が1番やるべきこと、つくるべきものは、本当にかっこいいダンス&ボーカルなんだろうなと気付いたんです。間違いなく自分もやりたかったことだし、作りたかったものだったので、その答えに出会ったときは「ああ、これだ」と心の底から思いました。
(※3)2000年代はインターネットの急速な成長が音楽シーンに多大な影響を与え、人々の音楽の聴き方も一変。特にヒップホップとR&Bのジャンルが商業的ピークを迎えた同時代、TimbalandやThe Neptunes(Pharrell Williams)、Kanye Westなどのスタープロデューサー達が活躍し、音楽業界を牽引した。
──自分のやるべきことを見つけた瞬間、ハッとしたんですね。
まさにそうですね。前にQiezi MaboのプロデュースをしてるGiorgio Givvnと、生きてるうちに何か”One Thing”=自分がやるべきなんだっていうものを見つけられることが一番尊いよね、と話をしたことがあったんです。そのOne Thingを見つけられない人は多いと思うけど、本当は誰しもやるべきことが小さかれ大きかれ絶対あって、死ぬまでに見つけたいよねって。自分にとってそれが、本当にかっこいいダンス&ボーカルをプロデュースすること、そして自分の経験したネガティブなところを経験しないで済む場所を作ることなんだって思った瞬間、腑に落ち具合がすごくて。ラップスターになりたい。グラミー賞をとりたい。武道館に立ちたい。とか無数に夢はあったんですけど、目標を決めて気合をいれる今までとは明らかに感覚が違くて。しかもそう気付いたのが人生で1番辛かった瞬間の直後で…辛い思いにやられて腐っていくのではなく、 辛い中で腐らないためにどうすればいいか悩むのはきっといいことなんだろうなと考え続けていました。ピンチの原因を改善しようとすることって、たぶんチャンスの種なんですよね。ピンチはチャンスの種だし、失敗は成功の種だし。
「離」:これから求められるのは音楽的説得力
──今後はどんなことをしていきたいですか?おかげさまでBMSGは良いスタートが切れていると思います。始まりが良いのはすごく大事だし、運や縁が複雑に絡まって生まれていることなので、次はそれを運やタイミングに左右されないものにしていかなきゃいけない段階。会社も3年目、所属アーティストも2年目になるので、音楽的説得力を持つことがたぶん今のフェーズで大事なことだと思います。具体的に言うと、まだシングルしか出していないアーティストはアルバムを出したり、曲数が増えてきたアーティストは自分のバンドをもってツアーを回ったり。勢いがいいときに語られる内容って、わかりやすい数字のことになると思うんですよね。すごくありがたいし、大事で必要なことだけど、会社が3期目を終えて4年目に入ろうとしている来年の今頃には、音楽的説得力、音楽的評価をいただけている状態にならないといけないと思ってますね。
──音楽的説得力って良い言葉ですね。
売れてる、売れてないに関係なく、音楽的説得力ってあるじゃないですか。 芸能事務所でその説得力を持てたところは日本にはなくて。でもアメリカはもちろん韓国には存在している。特に僕は世代柄、ロッカフェラ・レコード(※4)やストーンズ・スロウ・レコーズ(※5)にずっと憧れてきたから、BMSGもクルー感みたいなのを大事にしていきたいんです。クルーとして打ち出す音楽に説得力が生まれてくると、たぶん来年の今頃には「こういうものがBMSGっぽいよね」と言ってもらえるようになってくると思うので。今のところ僕がぼやっと「こういうのがBMSGっぽい」と思っているサウンドやリリックの方向性は、このまま想像通りいけばすごくいい感じになんじゃないかなと思います。
(※4)ロッカフェラ・レコード/Roc-A-Fella Records
ジェイ・Zとデイモン・ダッシュ、カリーム・バークによって、1995年にニューヨークで設立されたアメリカのヒップホップ・R&B・レゲエ・レゲトン系レーベル。
(※5)ストーンズ・スロウ・レコーズ/Stones Throw Records
カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするアメリカの独立系レコードレーベル。 創設者のPeanut Butter Wolfの指導のもと、ヒップホップから実験的なサイケデリックロックまでの音楽をリリースしている。
Photo by Tetsuya Yamakawa (Showcase)
「音」
●SKY-HIさんは最近、どんな音楽を聴いていますか?ラップミュージックが中心になりますが、特にジャンルは区切らず幅広く聴いています。最近ではC.O.S.A.「POP KILLERS feat. ralph」をよく聴いてます。
(Interview:Gaku Jungnickel・Edit/Text:Kana Shionoya)
SKY-HI PROFILE
2013年にメジャーデビューし、これまでに5枚のオリジナルアルバムをリリースし、その高い作品性がHIP HOPシーンのみならずジャンルの垣根を超えて高い評価を得ている。 2020年には、マネジメント/レーベル「BMSG」を立ち上げ代表取締役CEOに就任。同年ボーイズグループオーディション「THE FIRST」を主催し、翌年には自身がプロデュースを手掛けるボーイズグループBE:FIRSTを輩出。
BMSG/Official Website/Instagram/Twitter
「守破離 –SHUHARI-」
ー師から学び、型を破り、確立するー "守破離"を切り口に「人」のスタイルをリアルに掘り下げるオンラインマガジン
https://www.instagram.com/shuhari_official/
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