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成田 凌「弱さを見せることで繋がれる」 ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』撮影で感じたこと

成田 凌「弱さを見せることで繋がれる」 ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』撮影で感じたこと

俳優の成田 凌が、小説家の燃え殻とともに、ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』について語り合った。

成田が登場したのは5月24日(火)に放送されたJ-WAVEの番組『BEFORE DAWN』(ナビゲーター:燃え殻)だ。

成田 凌の、声の演技に助けられた

燃え殻の書き下ろしによるHuluオリジナルドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』。成田が主演を務めている。

<あらすじ>
あの時、17歳だった僕らは27歳の大人を冷めた目で見ていた。17歳は、どんな夢も叶うと信じていた無敵で最強の時期だったけれど、時間は誰にでも平等に流れている。僕らはあの時の大人と同じ27歳になった。役者になる夢を諦めきれずにもがく荻野智史(成田凌)、アイドルになりかった前田ゆか(伊藤沙莉)、小説家志望の片桐晃(藤原季節)、売れないバンド⼈生に区切りをつけラーメン屋を継ぐ中澤悠斗(上杉柊平)、⼈気アイドルのモノマネに活路を見出した島田まさみ(前田敦子)、そして17歳だった彼らに27歳という年齢を刻んだ元英語教師の望月かおり(田中麗奈)。27歳だった先⽣と27歳になった生徒たちの運命が10年の歳月を経て再び交わろうとしていた。

(Huluオリジナル「あなたに聴かせたい歌があるんだ」公式サイトより)

燃え殻:成田さんとは、もう去年になるんですけど『湯布院奇行(ゆふいんきこう)』という、僕が人生で初めて書いた朗読劇でご一緒して。「朗読劇、これでいいのかなあ?」というようなものを成田さんに渡して。

成田:(笑)。

燃え殻:成田さんに新国立劇場でやっていただくという。本当にこんなに成田さんにお世話になる人生だとは思いませんでした(笑)。

成田:ご縁ですね、うれしいです。同じ原作者の方と立て続けにご一緒することなんてないですから。

燃え殻:成田さんは役によって全然違うじゃないですか。『湯布院奇行』と、今回の『あなたに聴かせたい歌があるんだ』、僕のなかでは、ファンのみなさんがどう思っているかわからないですけど「この成田 凌を見たかった」というものを僕が引き出したのではないかと。

成田:今回の『あなたに聴かせたい歌があるんだ』の荻野という役は、ちょっと言い方が合っているかわからないですけど「得意ゾーン」と言いますか(笑)。やりやすいというか。

燃え殻:(成田さんは)背が高くて「日常では出会わないな」というシュッとした感じなのに、画面に映ったときに荻野はそうですけど、ちゃんと「あ、これ俺の知ってるやつだな」という、「知ってるダメなやつだ」っていう感じと、ときどき「でもこの行動はとれない、この顔はできない。やっぱり俺の知らないやつかもしれない」。それでドラマの最後になると「いやでもこいつは、俺の友だちだ」ぐらいの、あの感じが出せるのが。ある種、声の演技に助けられたなというのを今日お伝えしたくて。

成田:うれしいですね。声でいうと、子どものころからものすごくコンプレックスだったんです。朗読劇をやるとか、声優の仕事をやる、ナレーションとかの仕事が増えてきて、自分のなかではちょっとよくわかってなくて。やっぱりガサガサだし。

燃え殻:ガサガサだけど(笑)。

成田:(笑)。

燃え殻:いや、味がありますよ。たぶん、伊藤沙莉さんも思ってますよね。
成田:伊藤沙莉の声も本当にすてきですね。

台詞ではなく姿で“人間”を語るシーン

『あなたに聴かせたい歌があるんだ』の出来に満足しているという2人だが、配信元からも高い評価を受けているのだとか。

燃え殻:Huluのプロデューサーさんとかが「私はこの会社に入って初めて社長に褒められました」って。

成田:えー! すごい。

燃え殻:このドラマを“上の方々”でみんな観たらしいんです。上映会が終わったあとに初めて褒められたって。「これはすばらしい」って。もうそれがうれしくて。でもそれはもう、僕としては素材を提供して、それを成田さんたちが色をつけて育てて、(監督の)萩原さんたちと一緒にひとつの作品に仕上げてくれたというところがあるんですけど。まあそれに関われたことがまず本当にうれしくて。

成田:長編を撮るのが初めてというカメラマンの光岡兵庫も同い年なんですよね。なんか同世代の人間が同世代を撮るという、それもない経験で。

燃え殻:あのカメラは落ち着いた本当に映画的な、ひとつの人生を映しているというような。

成田:すごく美しいけど悲劇を撮っているような、ホラーを撮っているような。

燃え殻:そうそう。回によってはホラーみたいな。ただホラーでもあるけれども、ああいう人とのピリピリとした関係と、そこから少しほどけていく感じが泣けて。自分で書いてて泣いてて(笑)。

成田:(笑)。

燃え殻:あれがデータで送られてきて夜中にずーっと全部観て、泣きましたね。いや、どの回も。

成田:脚本を読んだときに、最初「セリフが少なすぎる」と思ったんです。

燃え殻:ごめんなさい(笑)。

成田:いやいや(笑)。でも情景が伝わってきて。だからたぶん撮る側もすごく面白かった、楽しかっただろうなというか。決して余白じゃないというか、みんな「物語が背中から入っていく」じゃないですか。

燃え殻:なるほど。

成田:その背中で人間の状況がわかるっていうのをすごく感じて。自分だったらサラリーマンの「疲れたのかな?」という感じだったりとか、伊藤沙莉だったら電車がきて、それに3、4秒乗らないで丸まった背中で。それで「よっこいしょ」って乗っていく姿。あれでもう人間がわかるみたいな。

燃え殻:わかる。成田さんがティッシュをボーンととって、息を吸って『エイリアンズ』を歌う瞬間、あの教室に戻るみたいな。ああいう編集も含めて、また成田さんの冴えない感じから覚悟を決めるあの一瞬? 俺はあそこでもう泣きましたもん。「これは俺だ」という、俺じゃないんですけど、たぶんみんな思うんじゃないかな。

「弱さを見せる」ことで繋がれる

燃え殻は作品を通じて、日常生活でつねに感じている2、3個はあるだろう感情をさらに増やしたかったのだと告白。同作については「みなさんの人生がフィルムに焼き付いている感じがする」と表現した。

燃え殻:それはすごくパーソナルなことなんだけど、とってもみんなにとって共有性があるような「俺、この気持ちになったことがある」みたいな。職業が違えど「あ、こうやってあきらめたことあるわ」みたいなことだったり「こうやって人を信じられたことある」みたいな。弱くてたまたまなんだけど、この人を抱きしめたことある、みたいな。成田さんと伊藤さんの同棲のところとか。

成田:一番あそこ気に入ってます。2話ですね。

燃え殻:人から見てなんと言われるかわからないけど、この東京で生きてきてお互いが「傷のなめ合い」と言ったら簡単な言葉になっちゃうけど、傷を隠し合いながら現実を少しずつそらせながら、ちょっと励ます。それは恋愛なのか遊びなのか、たまたまなのか知らないけど、いまは必要だった……という瞬間、生きててありません?

成田:いま……刺さりすぎてしゃべれなくなっちゃった(笑)。

燃え殻:あのとき2人は必要だったんだなっていう。その夜は必要だったみたいな感じがあって、あれ好きなんですよね。

成田:いやあ、なんか。最近自分も思っていて。そうやって自分がどうにもならない、どうしようもないときに、外に逃げていたなというのがあったんです。たとえば人と会う、酒を飲んでワーッとする、おいしいものを食べる、お笑いを観る、ラジオを聴く、に逃げていたなというか。常に音を入れていたなみたいな感覚があって。あの2人の場合は、たまたまあの瞬間になっただけで。自分のなかで自分としっかり会話をできている人、すごく格好いいなと最近思うんです。ちょっと現実から逃げてあげるみたいなことは、ものすごく大切なんだなというのは最近すごく思います。

燃え殻:お互いの弱い部分を「今夜だけ一緒にいようよ」みたいな。「俺は今日は弱っているんだ」みたいな、そういうのってとても人間ぽいって思うんです。

成田:自分の弱さを、たとえば年下とか、これから仕事をしますみたいな人に出せている人って、すごい人気者が多いですよね。自分の好きな先輩とかも。最初に弱さを出してくれる人もいれば、徐々に弱さを見せてくれる。「もしかしたら認めてくれたかもしれない」みたいな。

燃え殻:腹を見せてくれるみたいな。

成田:本当に。弱さを見せるみたいなことで、お互いが繋がれるんですよね。それはすごい思って。でもだからといって、弱さを出すのがうまくいかなかったりして、出ちゃうみたいなことが人間らしくていいのかなって。それをキャッチしてくれる人とまたうまくいけるのかもしれない。

燃え殻:沙莉さんが田舎に戻っていって、残っていた女の子と一緒に踊るシーンとかも最低限のことしか言わないけど、そのいなかった時間すべてが一瞬で埋まるみたいな。

成田:さっき台詞が少ないといったけど、少ないからわかってもらえるみたいなことがすごくあるのかな? だからよかったのかな。

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