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MONDO GROSSO・大沢伸一にChaki Zuluが悩み相談「自分が出したい音とかまったくない」

MONDO GROSSO・大沢伸一にChaki Zuluが悩み相談「自分が出したい音とかまったくない」

音楽プロデューサーのChaki ZuluとMONDO GROSSOの大沢伸一が2月12日(土)、J-WAVEで対談。Chaki Zuluの音楽遍歴や今の悩みを語り合った。

ふたりが対談したのは、J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。2月のマンスリープレゼンターはMONDO GROSSOの大沢伸一が担当。

「音楽的多重人格者」の表現に込められた意味

静岡県の沼津で育ったChaki Zulu。アーティスト名は、高校で始めたロカビリーバンドで弾いていたウッドベースのメーカーが「Chaki」だったことに由来しているそうだ。幼少期はテレビから流れるJ-POPを聴き、中学生になってからバンドに興味を持つようになったという。

Chaki Zulu:静岡ってちょうど(日本の)真ん中なので、お菓子とか新しい製品を作ったらまず静岡で売ってみて、静岡で売れたら日本中で売れるみたいなジンクスがあるんです。音楽もパンクからサイコビリー、レゲエ、ヒップホップ、ハウステクノみたいな、ひとつのパーティで1時間ごとに曲のジャンルが変わることがすごく多くて、「オールジャンル」って僕らは呼んでいました。だから雑食になってしまう。
大沢:それはChakiくんの楽曲制作に影響があるかもしれないですね。
Chaki Zulu:大きいかもしれないです。
大沢:いわゆるヒップホップの文化だけに入って、陶酔して、純粋培養でやっていることとはちょっと違いますよね。
Chaki Zulu:全然。自分がヒップホップの人間だとは思っていません。大沢さんも「僕は音楽的多重人格者だ」とおっしゃっていたと思うんですが、いまだに「そうなんだよなあ」と共感します。それで得することもあるし、悩むこともある。
大沢:そうね。「この人はこれの人だから」みたいにわかりやすくカテゴライズされたほうが、僕たちにお仕事を頼んだりするときもわかりやすいじゃないですか。でも実際は音楽を好きであればあるほど、多重人格になってしまうのは当たり前で。だって音楽自体が好きなわけでだから、行く先々で違う音楽を好きになって当たり前でしょ? だから音楽的多重人格は、「みんなそんなひとつに決められるんだ」みたいにむしろ皮肉の意味でも言っています(笑)。

楽曲づくりの違い

続いて楽曲作りの話題に。高校時代ラジカセ2台を駆使して曲を作っていたChaki は、その経験がのちに生きていると話す。

Chaki Zulu:そういう感触って大人になったときに「あのときやっておいてよかったな」と思うんですよね。20歳すぎに東京へ出てきて機材を触ったときに、そのときの感覚が生きている気がしました。
大沢:わかります。
Chaki Zulu:そういうふうにして20代前半は手探りで自宅レコーディングしつつ、徐々にパソコンでの曲作りにシフトしていきました。
大沢:そのあたりからプロデュースするほうにシフトしていったの?
Chaki Zulu:そうですね。ご存知だと思うんですけど、僕はものすごく楽器が下手で(笑)。
大沢:全然そんなことないと思うけど。
Chaki Zulu:大沢さん、「Chakiはギターが下手だけど、いいメロディーを出す」って言ってましたよ(笑)。
大沢:ありましたね(笑)。
Chaki Zulu:だからプレイヤーよりまとめるほうが人よりちょっと得意なのかもと思っています。

Chaki Zuluは、大沢の曲作りを「ギャンブルみたいだ」と表現。地図を見ないで船に乗ってハワイに行くゲームをしているようだと話す。

Chaki Zulu:そういう意味では僕は大沢さんと真逆。こういう音を出したいから何をどうすればそのの音に近づくかを考えます。
大沢:目標があって、そこに対してどの道を通ってどう行けばたどり着くかを考えているもんね。
Chaki Zulu:大沢さんは「どこに着いたら面白いだろう」みたいな感じですよね。
大沢:最終的に面白いことを選ぶ、みたいなね。
Chaki Zulu:あれは見ていて「面白い!」と思います。

表現者としての悩み

Chaki Zulu は2014年頃、裏方に専念すると宣言。大沢はそれを「有言実行の男」と評価しつつも、「そろそろ自分の音楽をやりたい時期なんじゃない?」と問いかけた。

Chaki Zulu:僕は自分が出したい音とかがまったくないんです。「この人にはこれが合う」と探すのが楽しいのであって、自分に合う音とかがまったくわからないし、探そうともしてないんです。それって音楽家としていいのかなと悩んだりしています。
大沢:まあ音楽家が含んでいるもののなかに当然プロデューサーもいますから。プロデューサーはChakiくんが言ったように探す能力に長けている人のことを言うから、間違ってないですよ。ただアーティスト、アートを作ること、自分のなかにあるものを表現する欲求があるかどうかはまた別のものなので。
Chaki Zulu:そこは正直に言っちゃうとほぼないのかもしれないです。洋服を持ってきてモデルにあてるスタイリストが近いような気がします。大沢さんみたいに自分のプロジェクトを持って「日本だけじゃねえぞ、世界に行くぞ」みたいな姿勢が曲やミュージックビデオからずっと感じられるのって、なかなかいなくなってきていますよね。大沢伸一ってすごいなと思いました。
大沢:ちょっと屈折したアドバイスですけど、それも時期によって変わりますよ。僕が今のChakiの心情に一番近かったとき、実はDJが一番忙しかったときです。

大沢は2008年~2011年頃のDJ業が多忙だった時期に「なんで自分の曲を作って自分のアイデンティティを世の中に示す必要がある?こうしてDJとして人の曲を使いながら自分のスタイルを表現できたら、これはこれでいいんじゃないのか」と思っていたと告白した。

大沢:でもやっぱりそうじゃない時期がくるんです。それはそれぞれの人生のフェーズとか、いろいろなステージやタイミングがあるので、たぶんChakiもくると思うよ。実際問題、MONDO GROSSOにしたって別に僕が発動して自分のなかにあるものを出さなきゃと思ってやっているわけでもないですし。
Chaki Zulu:じゃあ誰が発動しているんですか?
大沢:MONDO GROSSOをやってほしいみんなが発動しているんですよ。別に僕が嫌なことをやっているわけじゃなくて、MONDO GROSSOの成り立ち自体がちょっと特殊でもあるから。レーベルの人とかに「やりましょう」って言われれば、やりたいことも出てくる。自分自身のなかで一番そのときにやりたいことともちょっと違うんですよ。なので、今後出てきますよ。

Chaki Zuluは「MONDO GROSSOを再開するときに『よっこらしょ』と勢いが必要だったのか」と大沢に尋ねる。

大沢:めちゃくちゃ必要だったね。だって14年間やってなかったのよ? やってないことの理由が本当に子どもじみていて「移籍して何年」「結成して何年」とか記念みたいなものが大っ嫌いだから。周りからいろいろ言われつつも「なんだかなあ」ってずっと思っていて。これだけ空いて、しかもいろいろな歴史が詰まったものをまた紐解いて、しかも僕は1回やったことはやりたくないひねくれたところがあるでしょ? それをやっていくと、やれることも少ないし、どうやっていいかわからないから「無理」と言ってたんだけど、僕のマネージャーとかが「みんなで頑張りましょうよ」っていうから、「OK、『みんなで』って言った限りは、お前らもちゃんと頭使ってアイデア出してな」という話のもとにスタートしたんです。
Chaki Zulu:なるほど。
大沢:だからそういう意味ではバンドみたいに「心の責任分担」も彼らとやっていますよ。彼らは音楽を作らないけど、音楽を作らないバンドメンバーみたいなものです。
Chaki Zulu:それを聞いて安心したかもしれません。
大沢:そういう人がChakiの周りにいるんだったら、まだ全然できますよ。俺がその役をやってあげてもいいし。
Chaki Zulu:確かに。おだてられると僕は木に登るタイプかもしれないです。
大沢:ミュージシャンはみんなそうですから。
Chaki Zulu:楽しみにしています。
大沢:絶対にそういうフェーズがくると思います。

『WOW MUSIC』はJ-WAVEで土曜24時-25時。また、『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
https://www.youtube.com/c/musicfun_jp

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