国土交通省も後押しする自然環境を活用した「グリーンインフラ」とは? 一般社団法人グリーンインフラ総研の木田幸男さんが解説した。
木田さんが登場したのは『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)。ここでは1月19日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
木田:インフラというのは道路とか社会インフラのような価値をくくったもので、グリーンとは緑を中心とした環境。いま、都市のなかでは災害が非常に多いですけど、自然環境をうまく利用して災害を防止していこうということで、注目をされはじめています。
サッシャ:我々が日頃、街なかで目にしているもので、グリーンインフラの具体例はありますか?
木田:日本では既に6年ほど前から実績ができていまして、横浜のグランモール公園なんかに行くとよくわかるんじゃないかなと思います。
サッシャ:グランモール公園というと、みなとみらいの?
木田:みなとみらいの駅を降りてすぐなんですけど、横浜市美術館の目の前にある700メートルくらいの公園です。そこでは工事をして、降った雨が公園のケヤキの下に全部入るようにしています。それが浸透していってまたそれが沁みあがって、地域を冷やしていくんです。そうすると災害が起こりにくく、実際にその場所に行くと表面温度が5度くらい下がっていますので、夏場などはすごく冷えていて実感するんですね。
ノイハウス:そうなんですね。そんな仕組みが……。
木田:あそこにいくと冷やっとして居心地がいいなと思われるんですけど、そういう仕掛けがされていて、そこで水の循環が起こっているという、自然の生態系を再現したような公園です。
サッシャ:災害が減るっていうのは、水が地下に入るので浸水とかを防止できるという意味ですか?
木田:浸水防止も1つですが、さまざまな効果があります。
木田:埼玉県のある市では集中豪雨があると、いつも内水氾濫といって、道路に水が浮いてくるんですね。そこで歩道の下に構造を作って、全部そこに流し込んでしまおうと。実際にやってみたら他は冠水しているんですけど、そこだけはなんともなかったというような効果があります。
サッシャ:道路の下に水を流すシステムを作った、これがグリーンインフラの実例ということですね。
ノイハウス:国土交通省も後押しをしているということで、すごく理にかなっているインフラの形だと思うんですけど、なんでいま注目を集めているんですか?
木田:都市ではいま、ヒートアイランドとか内水氾濫などの災害が多いですけど、いままでの生態系は山があって、雨が降ると里に流れて川から海に流れるという循環があったわけです。そこにいきなり都市ができ、都市に建物が建つとそこに太陽が当たってヒートアイランド現象が起こったり、道路がたくさんできると雨がたくさん降ったときに全部下水に流れ込んでしまったりとか、都市は自然にとって異物です。そこで都市のなかを野原のような状態に変えないと持続性が失われてしまうというようなことから、自然をうまく使いたいという国の政策の1つなんですね。
ノイハウス:そうすると、グリーンインフラは自然を活用するという面と、あと自然をまねるという両方ということですか?
木田:そうですね。
ニューヨークではヒートアイランド現象や都市型洪水の被害が大きいが、新たな取り組みで対策をしているのだと木田さんは話す。
木田:ニューヨークは都市全体の面積の20%くらいが道路なんですけど、道路に降る雨が地下にしみこまないと下水からあふれてしまうので、地下にしみ込ませるために、車道と歩道との間に長さ5メートル、幅1.5メートルくらいのレインガーデンと呼ばれるものができています。
ノイハウス:へ~。すてき。
木田:見た目は非常にきれいなんですけど、道路からの水が全部そこに入ってしまうんです。私が4,5年前にニューヨークに行ったときには3000から4000くらいあったんですけど、今は11000くらいのレインガーデンができていて、至る所にあるということです。そうしないと都市型洪水にはもう対応できないという、そんな時代がきていると思います。
木田:既存のところを変えるとすると、たとえば空気を浄化するとか、水を地下にしみこませるとか。そういうのは1つの機能としていいんですけど、グリーンインフラのもう1つの機能がありまして、これはウェルビーイングに資する効果というのがいま注目されているんですね。
ノイハウス:ウェルビーイングというと、幸福?
木田:幸福とか、健康とか。たとえば健康を守るためには、毎朝きちんと起きて運動してということをしている人が多いですね。これを一次予防といい重要ですけど、たとえば豊かな緑のなかで鳥の声を聞きながらゆっくりと散歩するだけでも、知らず知らずに予防していることになります。いま、それをゼロ次予防といっています。そういう環境を作ること自体が、グリーンインフラの目的でもあります。
ノイハウス:グリーンインフラを全部に当てはめればいいんじゃないかなと思うんですけど、できない理由や残る課題にはどのようなものがあるんですか。
木田:都市のなかは非常に狭いので、そういうのを実現できる場所が必要ですよね。海外では非常に大きな道路とか歩道がありますけど、日本でやると狭い場所ばかりですから、場所が必要。あとは意識とか文化が必要ですよね。
サッシャ:そこで環境教育なんていう、子どもたちに対しての意識の変化っていうのも見据えているんですか?
木田:多分そうだと思います。いまはSDGsについて小学生が習っているような時代ですし、これからの持続可能な都市づくりというのは誰もが必要だと思いますけど、そういうものを都市のなかに作っていく教育は重要だと思います。
サッシャ:そういうことが当たり前になった人材が、ゆくゆく都市計画を担ったり。そうすると発想が変わってきますもんね。
木田:全然違うと思いますよ。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」では、毎回ニューノーマル時代のさまざまなエッジにフォーカスする。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。
木田さんが登場したのは『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」(ナビゲーター:サッシャ、ノイハウス萌菜)。ここでは1月19日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
自然環境を利用した災害防止する「グリーンインフラ」
2022年の環境キーワードともいわれる「グリーンインフラ」。グリーンとインフラを組み合わせた新しい言葉だ。木田:インフラというのは道路とか社会インフラのような価値をくくったもので、グリーンとは緑を中心とした環境。いま、都市のなかでは災害が非常に多いですけど、自然環境をうまく利用して災害を防止していこうということで、注目をされはじめています。
サッシャ:我々が日頃、街なかで目にしているもので、グリーンインフラの具体例はありますか?
木田:日本では既に6年ほど前から実績ができていまして、横浜のグランモール公園なんかに行くとよくわかるんじゃないかなと思います。
サッシャ:グランモール公園というと、みなとみらいの?
木田:みなとみらいの駅を降りてすぐなんですけど、横浜市美術館の目の前にある700メートルくらいの公園です。そこでは工事をして、降った雨が公園のケヤキの下に全部入るようにしています。それが浸透していってまたそれが沁みあがって、地域を冷やしていくんです。そうすると災害が起こりにくく、実際にその場所に行くと表面温度が5度くらい下がっていますので、夏場などはすごく冷えていて実感するんですね。
ノイハウス:そうなんですね。そんな仕組みが……。
木田:あそこにいくと冷やっとして居心地がいいなと思われるんですけど、そういう仕掛けがされていて、そこで水の循環が起こっているという、自然の生態系を再現したような公園です。
サッシャ:災害が減るっていうのは、水が地下に入るので浸水とかを防止できるという意味ですか?
木田:浸水防止も1つですが、さまざまな効果があります。
豪雨でも道路に水が浮かない仕組み
横浜での取り組み以外にも、グリーンインフラの取り組みは国内の各地で見られている。木田:埼玉県のある市では集中豪雨があると、いつも内水氾濫といって、道路に水が浮いてくるんですね。そこで歩道の下に構造を作って、全部そこに流し込んでしまおうと。実際にやってみたら他は冠水しているんですけど、そこだけはなんともなかったというような効果があります。
サッシャ:道路の下に水を流すシステムを作った、これがグリーンインフラの実例ということですね。
ノイハウス:国土交通省も後押しをしているということで、すごく理にかなっているインフラの形だと思うんですけど、なんでいま注目を集めているんですか?
木田:都市ではいま、ヒートアイランドとか内水氾濫などの災害が多いですけど、いままでの生態系は山があって、雨が降ると里に流れて川から海に流れるという循環があったわけです。そこにいきなり都市ができ、都市に建物が建つとそこに太陽が当たってヒートアイランド現象が起こったり、道路がたくさんできると雨がたくさん降ったときに全部下水に流れ込んでしまったりとか、都市は自然にとって異物です。そこで都市のなかを野原のような状態に変えないと持続性が失われてしまうというようなことから、自然をうまく使いたいという国の政策の1つなんですね。
ノイハウス:そうすると、グリーンインフラは自然を活用するという面と、あと自然をまねるという両方ということですか?
木田:そうですね。
ニューヨークの「レインガーデン」とは?
グリーンインフラの考え方は、海外では30年ほど前から起こったという。アメリカオレゴン州ポートランドでは、30年前に川が汚れて環境が悪くなってしまった際、自然生態系を利用して水を浄化する取り組みが行われ、グリーンインフラの成功例として注目されるようになった。ニューヨークではヒートアイランド現象や都市型洪水の被害が大きいが、新たな取り組みで対策をしているのだと木田さんは話す。
木田:ニューヨークは都市全体の面積の20%くらいが道路なんですけど、道路に降る雨が地下にしみこまないと下水からあふれてしまうので、地下にしみ込ませるために、車道と歩道との間に長さ5メートル、幅1.5メートルくらいのレインガーデンと呼ばれるものができています。
ノイハウス:へ~。すてき。
木田:見た目は非常にきれいなんですけど、道路からの水が全部そこに入ってしまうんです。私が4,5年前にニューヨークに行ったときには3000から4000くらいあったんですけど、今は11000くらいのレインガーデンができていて、至る所にあるということです。そうしないと都市型洪水にはもう対応できないという、そんな時代がきていると思います。
暮らすだけで健康を守る「ゼロ次予防」にも
ノイハウスはさらに、「いまから新しく作るビルなどにグリーンインフラを導入することは想像できるが、新しいところだけ変えるのか、既存のところもかえなければいけないのか」という疑問を投げかかる。木田:既存のところを変えるとすると、たとえば空気を浄化するとか、水を地下にしみこませるとか。そういうのは1つの機能としていいんですけど、グリーンインフラのもう1つの機能がありまして、これはウェルビーイングに資する効果というのがいま注目されているんですね。
ノイハウス:ウェルビーイングというと、幸福?
木田:幸福とか、健康とか。たとえば健康を守るためには、毎朝きちんと起きて運動してということをしている人が多いですね。これを一次予防といい重要ですけど、たとえば豊かな緑のなかで鳥の声を聞きながらゆっくりと散歩するだけでも、知らず知らずに予防していることになります。いま、それをゼロ次予防といっています。そういう環境を作ること自体が、グリーンインフラの目的でもあります。
ノイハウス:グリーンインフラを全部に当てはめればいいんじゃないかなと思うんですけど、できない理由や残る課題にはどのようなものがあるんですか。
木田:都市のなかは非常に狭いので、そういうのを実現できる場所が必要ですよね。海外では非常に大きな道路とか歩道がありますけど、日本でやると狭い場所ばかりですから、場所が必要。あとは意識とか文化が必要ですよね。
サッシャ:そこで環境教育なんていう、子どもたちに対しての意識の変化っていうのも見据えているんですか?
木田:多分そうだと思います。いまはSDGsについて小学生が習っているような時代ですし、これからの持続可能な都市づくりというのは誰もが必要だと思いますけど、そういうものを都市のなかに作っていく教育は重要だと思います。
サッシャ:そういうことが当たり前になった人材が、ゆくゆく都市計画を担ったり。そうすると発想が変わってきますもんね。
木田:全然違うと思いますよ。
J-WAVE『STEP ONE』のワンコーナー「SAISON CARD ON THE EDGE」では、毎回ニューノーマル時代のさまざまなエッジにフォーカスする。放送は月曜~木曜の10時10分ごろから。
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2022年1月26日28時59分まで
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番組情報
- STEP ONE
-
月・火・水・木曜9:00-13:00