ウルフルズ・トータス松本の人生を変えた「同級生」「衝撃のライブ体験」

ウルフルズのトータス松本がJ-WAVEで12月4日（土）、ギターとの出会いや初めて組んだバンド、そしてウルフルズ結成秘話を語った。

トータス松本が登場したのは、J-WAVE発の一大音楽祭「ギタージャンボリー」と連動した番組『TOKYO GUITAR JAMBOREE EXTRA』。毎年、両国国技館にて開催している「ギタージャンボリー」の出演者がマンスリーでナビゲーターを務める番組で、12月はトータス松本が担当する。

ウルフルズは、12月15日（水）にデビュー30周年に向けたセルフカバーアルバム『フル盤』をリリースする。

これまで「周年」を振り返る

2022年でメジャーデビュー30周年を迎えるウルフルズ。トータス松本は節目となったこれまでの周年日を振り返った。10周年を迎えた日はトータス松本の家に関係者を呼び、ベランダでバーベキューを楽しんだという。作家・よしもとばななも犬と一緒に訪れ、盛り上がったそうだ。20周年はウルフルズが活動休止のタイミング。トータス松本は元マネージャーと当時のマネージャーなど少人数で「シブい小料理屋でしっぽり飲んだ」と語った。

月日は流れ、2020年コロナ禍になってすぐのタイミングでメンバーのジョン・B・チョッパーが「30周年は何かやったほうがいい」と提案したが、トータス松本はそんな発想は全くなかったという。

トータス松本：あんまり「周年」「周年」って言うのは恥ずかしいというか。でもそこでジョン・Bが「30周年だし」って珍しく口火を切って「でも何をやったらいいかは思いつかないけど」と言って「思いつかないのかよ！」って（笑）。

それから30周年の企画をあれこれ考えたメンバー。そんなある日、トータス松本は「30曲のセルフカバーはどうだろう」と思いついた。

トータス松本：CDにたっぷり30曲入ってたら「何これ？」ってならないかなってメンバーに投げたら「それはすごいね」ってなって。でもメーカーの人が「30曲も入ったCDじゃなくて、10曲ずつ分けて出しましょう」ってなって、「それは名案だ。思いつかなかった」ってなって、それぞれにコンセプトを与えて制作することになりました。

ウルフルズは8月にコンセプト「ウルっとくる ウルフルズ感動の名曲選」のセルフカバーアルバム『ウル盤』をリリース。そして12月15日（水）にはコンセプト「フルえるような ウルフルズ興奮の名曲選」でセレクトされたセルフカバーアルバム『フル盤』をリリースする。

トータス松本：30曲は道のり遠いなって思いながらやってるんですけど、もう終わりですね。やってみたらものすごく面白かったですね。自分たちの曲を振り返って、なんでこうなってるのかを分析して。最初に、セルフカバーっていってもスローテンポにしてみたとかストリングアレンジで壮大な感じにしたとかは一切やめようって決めて、とにかく再演をやろうと。再現じゃなく、今の持てる力で再演してやろうって。やり終えてみると「もう10曲増やそう」って気持ちですね（笑）。それくらいの楽しさでしたね。

人生を変えた同級生との出会い

番組後半はトータス松本がギターとの出会いや、初めて組んだバンドなど音楽活動の始まりを語った。

幼少期のトータス松本はどちらかというとインドアな子どもで、家で絵を描いたり、父が趣味で集めたレコードを延々と聴いたりしていたという。一方「学校ではわりとチョケてて活発な子どもだった」と振り返った。

トータス松本：当時、家におじさんのガットギターがあって。でも弾いたことがなくて。コードを知らないから左手がわからないのよね。テレビでギターを弾いている人とか見て、それこそダウン・タウン・ブギウギ・バンドの宇崎竜童さんとかカッコいいなと思って、ダンボールを切り抜いてエレキギターを作って、毛糸とかで弦を張ってうそギターを持ってポーズを構えてマネとかはしてましたけど、とにかく弾き方がわからなかった。

その後、中学生になったトータス松本は、入部したバレーボール部で人生を変える人物と出会う。

トータス松本：同級生にオオサキっていうやつがいて、そいつが音楽に詳しくて、聞いたこともないようなバンドの名前とか言ったりするから、「家に遊びに行くわ」って入学してすぐくらいにオオサキの家に遊びに行ったんです。そしたら家の中にドラムセットがあって、ギターもいっぱいあって「何これ！」って。エレキギターが2本くらいあったかな。

目の前に広がる光景に驚くトータス松本をよそに、同級生のオオサキさんはディープ・パープルの『ハイウェイ・スター』を流し、それに合わせてドラムを叩き出したという。

トータス松本：僕、ビックリしてね。すごいなって。「俺はオオサキになりたい」と思って（笑）。それくらい洗礼を受けて「こいつについていこう」と思いましたね。

トータス松本はオオサキさんの助言で、親に頼み込んで生まれて初めてエレキギターを購入。14歳の頃だった。その後、オオサキさんが集めたメンバーでバンドを組み、文化祭などで演奏を披露し始めた。

ライブで忌野清志郎を見て衝撃

高校へ入学したトータス松本は、中学時代のオオサキさんのように音楽に詳しい存在として、まわりに音楽を広める立場になっていた。その頃には、オオサキさんたちと組んだバンドは空中分解していたが、新しい友人たちを巻き込んでバンド活動を続けたという。

トータス松本：ずっと好きだったのはRCサクセション。忌野清志郎さんのことをずっと追いかけていました。あの感じがすごく好きだった。音楽もカッコいいし情けない感じの歌詞とか、思春期のモヤモヤしたような気持ちをくすぐってくる歌を聴いて家でしんみりしたりとか、アッパーな曲では元気が出たりとか、そういう感じ。あとファッションも好きだったし、ユーモアのセンスも。なんせRCサクセションが大好きでした。

高校2年生のとき、トータス松本は悲願だったRCサクセションのライブを大阪まで観に行った。

トータス松本：ライブで1曲目が流れたとき、シンプルな言い方だけど、ビリビリビリって感じになったんですよね。音圧もすごいし。そんな爆音で音楽を聴いたこともなかったから。ステージの上にはCHABOさん（仲井戸麗市）とかメンバーが演奏していて、イントロに合わせて清志郎さんが下手からブワーって走って出てきて。化粧してる顔に照明が当たって、歌う前にステージで右往左往してたんですけど、カッコいいなっていう言葉じゃなく、衝撃的ですごい体験だったんです。それで、ものすごく厚かましいことに、その瞬間に「俺はああなる」っていうものすごく大きい決意じゃなくて、勘違いをしたんです。アホですよね。でも、その感じはそのときだけなんだよね。

ライブ終了後、一緒にステージを観た友だちとその興奮を語り合ったが、自分とまわりの温度は違っていたそうで、トータス松本は「カッコいいとかではなくて、自分はそれに向かおうとしてしまっていた」と話す。

トータス松本：意識がそっちにいってしまったから、それから地元に帰って一緒にやってたコピーバンドではザ・ローリング・ストーンズの曲とかやってたんだけど、みんなヘラヘラやってるのにすごくイライラして「なんでおまえら本気にならないんだ」って感じで自分だけがグイグイ行ってしまって。「俺は高校卒業したら大阪に行くから一緒に行かないか？」と言っても地元のバンドメンバーはキョトンとしていて。今思えばわかるけど、一回コンサートを観たくらいで本気になるやつなんていないんだから（笑）。

ウルフルズの結成…最初はバイト仲間だった

高校卒業後、トータス松本は大阪に行く足がかりとして、大阪にあるファッション専門学校に入学。ファッション、音楽好きな人とつながれると思っていたが、バンド仲間はできないまま2年の学校生活を終えた。

トータス松本：バンドは組めてないけど、なんとかバンドマンになりたいなと思っていたときに「カンテグランデ」って喫茶店にバイトに行くんですよ。そこは大阪のサブカル好きが集まるような店で、当時そこで出すチャイなんて飲み物はまだ珍しかったし、喫茶店なのにタブラの音楽が流れていて入りづらいんですよ。そこに飛び込んでみたら、ウルフルズのメンバーになったジョン・Bとかウルフルケイスケとかが働いていて、そこで出会うんです。偶然だけど、そこでウルフルズが組めたのは大きかったですね。

ウルフルズ結成後、バンドは関西で精力的に活動を続け、対バンではなくワンマンでもライブを成功させる。関西で知名度が上がり、関東進出を果たしたウルフルズはシングル『やぶれかぶれ』でデビュー。今から29年前、1992年のことだった。

『TOKYO GUITAR JAMBOREE EXTRA』はさまざまなゲストを迎えて、お互いの音楽人生の系譜を辿りながら、時には生演奏を交えつつ展開する貴重なトーク＆ライブセッションを放送。ラジオの中の追加公演＝エクストラを発信していく。放送はJ-WAVEで土曜16時から。