ボカロPで東京大学教養学部非常勤講師の鮎川ぱてが、10代のアーティストたちの作品の傾向や、10代に投げかけたい思いを語った。
鮎川が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、「10代のアーティストは何を歌うのか!?」をテーマにお届けした、4月14日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
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ゲストには、ボカロPで東京大学教養学部非常勤講師の鮎川ぱてが登場。大学では、「ボーカロイド音楽論」を教えているほか、鮎川自身もボカロPとして活動している。
番組ではあっこゴリラが、鮎川が『現代ビジネス』に寄稿した記事に触れた。 『「うっせぇわ」を聞いた30代以上が犯している、致命的な「勘違い」』というタイトルで、とくに団塊ジュニアから世代から反響があったと鮎川は明かす。
【Ado『うっせえわ』を聴く】
あっこゴリラ:この番組でもよく話に出ますけど、もう日本では若者ってだけでマイノリティですからね。
鮎川:まさにそうなんです! LGBTは8~10%って言われていますけど、いまの日本の10代の割合と変わらない、まさにマイノリティなんですよね。
あっこゴリラ:そう考えるとすごく少ないですよね。
鮎川:いまの日本の平均年齢は47歳なんですが、ちょうど団塊ジュニアと言われる世代は一学年210万人もいてすごいボリュームなんです。
あっこゴリラ:私、1988年生まれなんですけど、私の学年だと一学年100万人くらい?
鮎川:近い! 120万人くらいです。団塊ジュニア世代以降、急速に人口減して、あっこさん世代から少ないんですよ。いまの10歳くらいで105万人とかで、なだらかに減り続けています。
団塊ジュニア世代、Z世代……それぞれどんな考え方を持っているのだろうか。
鮎川:年長者は誰しも10代を経験してきてるわけですが、それゆえ“10代のことをわかっている”と思い過ぎていると思うんです。10代は、年長者がそういう感じで寄ってくるのが嫌なんじゃないかなって気はしますね。
あっこゴリラ:確かにな~。私もわかった気になっちゃってるんだろうな~。
鮎川:でもわかりたいですけどね。『うっせえわ』の記事の趣旨の一つは、“これは本来、上の世代が聞けなかった本音”だということなんです。「うっせえわ、うっせえわ」と言ってるけど、10代が実際にこの言葉をそう思っている相手にぶつけることはないんだってこと。
あっこゴリラ:なるほど~。普段言えないから、ネットや曲の中で爆発するみたいな感じなのかな。
鮎川:まさにそういうことだと思います。
【Ado『ギラギラ』を聴く】
鮎川:ここからは、あっこさん、リスナーのみなさんと、“10代だったら、この2021年の日本ってどんな風に見えるか”っていうのを一緒に考えたいと思います。
あっこゴリラ:はい!
鮎川:例えば、街の風景。10代の子にとって、街の中に自分の世代向けの広告ってどのくらいあるでしょうか。
あっこゴリラ:自分がすごく目立って見えるのは、やっぱり脱毛広告。あと、アーティストとかアイドルとかの広告かな~。
鮎川:確かに、そこは全世代向けの広告かもしれないですね。東京は労働人口が多いので基本的に若者が多いですが、地方になるともっと高齢者よりになります。なので、東京以外のことも想像したいと思います。
あっこゴリラ:うんうん。
鮎川:そうすると、いよいよ若者にとって、自分の方を向いている広告自体がない、街の風景が自分の方を向いてないように感じちゃうんじゃないかなって思うんですよね。
あっこゴリラ:なるほどな~。
鮎川:例えば、廃校の小学校とかが、その後、再利用され介護事業所になったり。もちろん高齢者は大事にしなきゃいけないものの、街が上世代を向いているのをすごく感じるんですよね。
あっこゴリラ:言われてみたら、確かにそうですね。保険とか健康とか、多いですよね。あと、自己啓発。
鮎川:あはははは。それに対して、ネットの良いところがターゲティング広告。10代的なコンテンツ見ていたら、10代に向けた広告が映るから、街の風景よりもインターネットの風景の方が自分の方を見てる感じ、絶対すると思うんです。
あっこゴリラ:絶対する! だから電車の中、みんなスマホ見てるもんね。スマホの中の方がリアリティを得られてるのかもしれない。
鮎川:まさに。スマホの中の方がリアルであってほしいってことなんじゃないのかなって思いますね。
さらに、ジェンダー/LGBTについても掘り下げた。
鮎川:主観的な補助線を引くと、『うっせぇわ』っていう曲で、若者は表ではさわやかに会釈しながら内心「うっせぇわ」と思っている、本音を言わずにやり過ごすという姿勢、それ自体もある意味マジョリティーがLGBTに強いていることなんじゃないかと思うんです。その姿と重なるというか。
あっこゴリラ:うんうん。
鮎川:昔よりマシになったと思うけど、やっぱり社会がLGBT、セクシュアルマイノリティの方に、隠すことを強いてしまっていると思います。
あっこゴリラ:そうですね。本音をさらしてボロボロになるんだったら、見せてあげないよ、見せてたまるかってなるもんな……。
鮎川:まさに、このクリエイターたちは「自分が傷ついてまで他の人に本音を見せなくていい、自分を守っていい」っていうメッセージを訴えていたんじゃないかと思うんです。
あっこゴリラ:そういう視点で考えたことなかったかも。
鮎川:だからこそ、「隠せ」「やりすごせ」というメッセージがすごく多いのかなと思います。
【すりぃ『テレキャスタービーボーイ』を聴く】
あっこゴリラ:このChinozoの『グッバイ宣言』は、どんな曲なんですか?
鮎川:サビ頭がとにかく最高で、「引き籠り 絶対 ジャスティス」っていう(笑)。「絶対正義は引きこもることだ」って言ってます。
あっこゴリラ:あはははは! 最高!
鮎川:だけど、それがなんていうか“しょぼん”みたいなことじゃなくて、「うちに篭って狂い咲く」っていうフレーズなんです。無理やり人と対話しなきゃいけないとか、上世代の言うことを聞きなさいとかじゃなくて、全部シャットダウンして自分と徹底的に対話して、そうしたら何か強いものを発見できるんじゃないかというメッセージだと僕は取りました。
あっこゴリラ:“どうせ”っていう表現じゃなくて、“絶対引きこもる!”みたいな感じですよね(笑)。
鮎川:攻めの引きこもりみたいな。あはははは。いま、YouTubeだけじゃなく、TikTokとかいろんな媒体でバズっています。10代の子みんなにこのメッセージが刺さってるっていうのは、いい意味で現代性があるなって思います。
あっこゴリラ:すごく今っぽいですよね。
鮎川:10代の子たちは、これから20代、30代になっていくわけだけど、そこに対する“まず戦う前に自分を守っていいんだぞ”っていうメッセージですよね。僕個人としても、“まずは自分を守ることを優先していいからね”って、10代のみなさんに投げかけたいです。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
鮎川が登場したのはJ-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。ここでは、「10代のアーティストは何を歌うのか!?」をテーマにお届けした、4月14日(水)のオンエア内容をテキストで紹介する。
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年長者は“10代のことをわかっている”と思い過ぎている
番組では、「10代のアーティストは何を歌うのか!?」をテーマにお届け。いま、10代は何に怒り、何に冷めているのか、どんなことを曲にしているのか、様々な視点から掘り下げた。ゲストには、ボカロPで東京大学教養学部非常勤講師の鮎川ぱてが登場。大学では、「ボーカロイド音楽論」を教えているほか、鮎川自身もボカロPとして活動している。
番組ではあっこゴリラが、鮎川が『現代ビジネス』に寄稿した記事に触れた。 『「うっせぇわ」を聞いた30代以上が犯している、致命的な「勘違い」』というタイトルで、とくに団塊ジュニアから世代から反響があったと鮎川は明かす。
【Ado『うっせえわ』を聴く】
あっこゴリラ:この番組でもよく話に出ますけど、もう日本では若者ってだけでマイノリティですからね。
鮎川:まさにそうなんです! LGBTは8~10%って言われていますけど、いまの日本の10代の割合と変わらない、まさにマイノリティなんですよね。
あっこゴリラ:そう考えるとすごく少ないですよね。
鮎川:いまの日本の平均年齢は47歳なんですが、ちょうど団塊ジュニアと言われる世代は一学年210万人もいてすごいボリュームなんです。
あっこゴリラ:私、1988年生まれなんですけど、私の学年だと一学年100万人くらい?
鮎川:近い! 120万人くらいです。団塊ジュニア世代以降、急速に人口減して、あっこさん世代から少ないんですよ。いまの10歳くらいで105万人とかで、なだらかに減り続けています。
団塊ジュニア世代、Z世代……それぞれどんな考え方を持っているのだろうか。
鮎川:年長者は誰しも10代を経験してきてるわけですが、それゆえ“10代のことをわかっている”と思い過ぎていると思うんです。10代は、年長者がそういう感じで寄ってくるのが嫌なんじゃないかなって気はしますね。
あっこゴリラ:確かにな~。私もわかった気になっちゃってるんだろうな~。
鮎川:でもわかりたいですけどね。『うっせえわ』の記事の趣旨の一つは、“これは本来、上の世代が聞けなかった本音”だということなんです。「うっせえわ、うっせえわ」と言ってるけど、10代が実際にこの言葉をそう思っている相手にぶつけることはないんだってこと。
あっこゴリラ:なるほど~。普段言えないから、ネットや曲の中で爆発するみたいな感じなのかな。
鮎川:まさにそういうことだと思います。
【Ado『ギラギラ』を聴く】
10代の目線で、街の風景を想像してみよう
続いて、「10代のことを想像してみるワークショップ」を行った。鮎川:ここからは、あっこさん、リスナーのみなさんと、“10代だったら、この2021年の日本ってどんな風に見えるか”っていうのを一緒に考えたいと思います。
あっこゴリラ:はい!
鮎川:例えば、街の風景。10代の子にとって、街の中に自分の世代向けの広告ってどのくらいあるでしょうか。
あっこゴリラ:自分がすごく目立って見えるのは、やっぱり脱毛広告。あと、アーティストとかアイドルとかの広告かな~。
鮎川:確かに、そこは全世代向けの広告かもしれないですね。東京は労働人口が多いので基本的に若者が多いですが、地方になるともっと高齢者よりになります。なので、東京以外のことも想像したいと思います。
あっこゴリラ:うんうん。
鮎川:そうすると、いよいよ若者にとって、自分の方を向いている広告自体がない、街の風景が自分の方を向いてないように感じちゃうんじゃないかなって思うんですよね。
あっこゴリラ:なるほどな~。
鮎川:例えば、廃校の小学校とかが、その後、再利用され介護事業所になったり。もちろん高齢者は大事にしなきゃいけないものの、街が上世代を向いているのをすごく感じるんですよね。
あっこゴリラ:言われてみたら、確かにそうですね。保険とか健康とか、多いですよね。あと、自己啓発。
鮎川:あはははは。それに対して、ネットの良いところがターゲティング広告。10代的なコンテンツ見ていたら、10代に向けた広告が映るから、街の風景よりもインターネットの風景の方が自分の方を見てる感じ、絶対すると思うんです。
あっこゴリラ:絶対する! だから電車の中、みんなスマホ見てるもんね。スマホの中の方がリアリティを得られてるのかもしれない。
鮎川:まさに。スマホの中の方がリアルであってほしいってことなんじゃないのかなって思いますね。
さらに、ジェンダー/LGBTについても掘り下げた。
鮎川:主観的な補助線を引くと、『うっせぇわ』っていう曲で、若者は表ではさわやかに会釈しながら内心「うっせぇわ」と思っている、本音を言わずにやり過ごすという姿勢、それ自体もある意味マジョリティーがLGBTに強いていることなんじゃないかと思うんです。その姿と重なるというか。
あっこゴリラ:うんうん。
鮎川:昔よりマシになったと思うけど、やっぱり社会がLGBT、セクシュアルマイノリティの方に、隠すことを強いてしまっていると思います。
あっこゴリラ:そうですね。本音をさらしてボロボロになるんだったら、見せてあげないよ、見せてたまるかってなるもんな……。
鮎川:まさに、このクリエイターたちは「自分が傷ついてまで他の人に本音を見せなくていい、自分を守っていい」っていうメッセージを訴えていたんじゃないかと思うんです。
あっこゴリラ:そういう視点で考えたことなかったかも。
鮎川:だからこそ、「隠せ」「やりすごせ」というメッセージがすごく多いのかなと思います。
【すりぃ『テレキャスタービーボーイ』を聴く】
鮎川が10代に投げかけたいメッセージ
【Chinozo『グッバイ宣言』を聴く】あっこゴリラ:このChinozoの『グッバイ宣言』は、どんな曲なんですか?
鮎川:サビ頭がとにかく最高で、「引き籠り 絶対 ジャスティス」っていう(笑)。「絶対正義は引きこもることだ」って言ってます。
あっこゴリラ:あはははは! 最高!
鮎川:だけど、それがなんていうか“しょぼん”みたいなことじゃなくて、「うちに篭って狂い咲く」っていうフレーズなんです。無理やり人と対話しなきゃいけないとか、上世代の言うことを聞きなさいとかじゃなくて、全部シャットダウンして自分と徹底的に対話して、そうしたら何か強いものを発見できるんじゃないかというメッセージだと僕は取りました。
あっこゴリラ:“どうせ”っていう表現じゃなくて、“絶対引きこもる!”みたいな感じですよね(笑)。
鮎川:攻めの引きこもりみたいな。あはははは。いま、YouTubeだけじゃなく、TikTokとかいろんな媒体でバズっています。10代の子みんなにこのメッセージが刺さってるっていうのは、いい意味で現代性があるなって思います。
あっこゴリラ:すごく今っぽいですよね。
鮎川:10代の子たちは、これから20代、30代になっていくわけだけど、そこに対する“まず戦う前に自分を守っていいんだぞ”っていうメッセージですよね。僕個人としても、“まずは自分を守ることを優先していいからね”って、10代のみなさんに投げかけたいです。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
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