メルカリで知らない子どもの絵を買う…「無駄づくり」藤原麻里菜の行動に、上白石萌歌が心打たれる

無駄づくり発明家の藤原麻里菜と上白石萌歌が対談。発明品への想いや「無駄づくりのルール」、最近ハマっているという「余計なこと」について語った。

藤原が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『#LOVEFAV』(ナビゲーター:上白石萌歌)。音楽やアート、読書が好きな女優・上白石萌歌が、リスナー、ゲスト、そして世の中の人がLOVEなものやFAVORITEなものをお届けしている。ここでは11月13日(土)のオンエアをテキストで紹介する。

無駄づくりは「日常のムカつき」から生まれる

藤原は「オンライン飲み会緊急脱出マシーン」や「Twitterで『バーベキュー』と呟かれると藁人形に五寸釘が打ちつけられるマシーン」、「イヤホンを絡ませるマシーン」など、“無駄なもの”をテーマにした作品を、YouTubeを中心に発表している。

オンライン飲み会緊急脱出マシーン | 無駄づくり

2018年に台湾で開催された個展には2万5000人以上が来場。2021年10月には「Forbes JAPAN」が選ぶ、世界を変える30歳未満の30人「30 UNDER 30 JAPAN」のアート部門を受賞した。

上白石:そもそも私が藤原さんのことを知ったのが『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)です。

藤原:すごく前じゃないですか? 5年くらい前です。胸が大きくなるマシーンですよね(笑)。

上白石:そう、歩くたびに空気が膨らむ(笑)。あれで観たり、松坂桃李さんの顔の……。

藤原:松坂桃李さんの顔に似せたマネキンを作って、壁ドンとかをしてくれるマシーンを作ったりしました。

上白石:もう最高。初めて観たときに衝撃を受けて。私が特に好きなのは、最近だと3Dプリンターで服をびしょびしょにできるスプーンを作ったやつ。あとはコロナ禍ならではなんですけど、マスクにQRコードがついていて、それを読み取ると自分のマスクなしの顔の下半分が画像で出てくるやつ。

3Dプリンターでビチャビチャになるスプーンを作ろう

QRコードマスク作った

藤原:たくさん観てくれてありがとうございます。

上白石:なんでそんな発想が生まれるんだろうって。

藤原:日常に対して、たぶん人よりムカつくことが多いんです。そこから発明品の発想が生まれるかもしれないですね。

上白石:生きづらさとかをすごく考えてくださっていて。器用に生きられない人たちの救世主みたいなものをすごく感じます。

藤原:ありがたい。

上白石:最近って本当に便利なものが多いからこそ「本当の便利ってなんだろう?」とか「本当の無駄ってなんだろう?」みたいなことをいつも作品から受け取っています。

テレビ番組がきっかけ

無駄づくりのきっかけは、『ピタゴラスイッチ』(NHK)に登場する「ピタゴラ装置」に触発され、100円ショップや家にあるもので「ボールを転がしたら、しょうゆが自分の手元に落ちてくるマシーン」を作ろうと試みたことだった。

藤原:自分のなかで大きな構想があって。部屋全体を使ってビー玉を転がして、いろいろな仕掛けがあって、最終的にしょうゆが落ちてくるようにしようとすごく頑張って、3日ぐらいかけて作ったんですけど、出来上がったのが机の上に納まるサイズの、「ピタゴラ装置」とも言えないような仕掛けで。でもせっかくだから名前をつけてあげたいと思ったときに、無駄を作る「無駄づくり」としたら、この「ピタゴラ装置」になりかけのマシーンも救えるかもしれないと思って、そこから「無駄づくり」を始めました。

上白石:それは何歳ぐらいのときですか?

藤原:二十歳とかですね。

「優先順位の低いことをする」にハマる

上白石から「今、何LOVEですか?」と質問された藤原は「優先順位の低い余計なことをあえてする」と回答した。

上白石:私は(SNSなどで)藤原さんの日常を追っているので、まさにいまそういうことをよくされていますよね。「30歳までにやらなくてもいいこと」を消化してらっしゃる。

藤原:あと2年ぐらいで30歳になるんです。30歳って自分のなかで節目な感じがあって。いまパンデミックになって、自分の生活にあまりゆとりがないというか、なんかつまらなく感じちゃって。人と会って雑談することもなくなっちゃったし、飲み会に行くこともなくなって、規則正しく無駄づくりをする生活で(笑)。それはそれで楽しかったんですけど、もうちょっと変なことを生活のなかでもやらなきゃなって思ったんですね。毎朝、今日やることのタスクを書くんです。「今日は無駄づくりでこれを設計する」とか、仕事のやつみたいにタスクを書くんですけど、そこに書けないどうでもいいことをあえてする、ということを最近やっていますね。

上白石:「やらなくてもいいToDoリスト」ということかな。

藤原:そうです、そうです。

藤原が取り組んだのは「フリマアプリの『メルカリ』で知らない子どもの絵を買う」というもの。藤原は犬の絵を購入し、その売り上げは、絵を描いた女の子の「おやつ代」になったそうだ。

藤原:世界の重要なことには全然影響しないけど、世界の端っこのほうで歯車が回っている感じがして、それがすごくいいなと思って。
上白石:ちょっと泣きそう。なんか温かい世界だなって。

藤原:自分のする余計なことみたいなのが、変なふうに回っていく感じが面白いなと思って。

もうひとつの取り組みは「寿司にぎり」。藤原には、生魚を控えている妊娠中の友人がいる。「お寿司が食べたい」という気持ちが高まる友人のため、寿司スクールに通って技術を習得しようとしているのだという。

上白石:それは無駄なことじゃない、すごく良質なことじゃないですか。

藤原:そういう、別にしなくてもいいけどしたほうが楽しいことをタスクにして自分に課すと、けっこう生活が楽しくなったり愉快になったりするというのがありますね。

上白石:毎日やるべきことってみんなそれぞれあると思うんです。でもそれを消化するだけで、無駄を排除し続けると、「無駄ってなんだっけ?」みたいな感じになって、心の余裕がなくなるのはもったいないですよね。

藤原:無駄づくりをやっている理由として「無駄って別に悪いものではないよ」と肯定したい気持ちがあります。無駄なものを捨てたり排除したりして、残ったものが素晴らしいかと言ったらそうじゃないと思う。空き地や公園をちゃんと守っていかないと、なくなっていっちゃうと思うんですよね。そういう自分のなかにある「守りたい無駄」みたいなのを、ちゃんと自分が守ってあげないと、どんどん浸食されちゃう気がするんです。

無駄づくりのルール

藤原の著書『無駄なマシーンを発明しよう! ~独創性を育むはじめてのエンジニアリング』(技術評論社)には「無駄づくりのルール」が記されている。

藤原:みんなにも無駄づくりをしてほしいんですけど、そのときにルールがいくつかあるんです。まず1つは「なんでも作っていい」ということ。「無駄づくり」は「思いついたものを作る」という心のハードルを下げる言葉だと思うんです。なので、作ってみて、それがものすごく便利なものだから失敗というわけではなく、便利なものができたらその人は天才ですし、無駄なものが出来上がったら、それは本当に正解、という感じで、なんでも正解になる「失敗のないものづくり」です。

2つ目は「絶対になにか役割を与えてあげること」だという。

藤原:たとえば、自分でもよくわからないグチャグチャの玉みたいなのを作って、それを「オブジェです」「最先端のアートです」というのは、ちょっと無駄づくりとは違うんです。グチャグチャのものを作っても「これは肩こりを解消するマシーンです」と、無理やりでもいいから意味をつけてあげる、役割をつけてあげることが、無駄づくりとして面白くて、自分の感覚も整理できるのかなと思います。

上白石:私はずっと藤原さんにワークショップを開いてほしいと思っていたんですけど、この本を読んだらワークショップに参加しているようですね。

藤原:そうですね。私は全然プログラミングとかを専門的に学ばずにものづくりをしているんですよ。ものづくりをしながら、いろいろな技術をステップアップしてきて、そのなかでつまずいたところとかを本にまとめたので、みんなにも参考になるかなと思います。

上白石:これから生み出すものも楽しみです。どんなふうに進んでいきそうですか?

藤原:いま、自分の考えを形にすることをいい感じに続けられていて、それが心地いいので「この生活が続けばいいな」と思います。あんまりでっかい野望とかはないんですけど、無駄なものを作り続けられたらいいなと思いますね。

J-WAVEで放送中の『#LOVEFAV』では、SNSやネットを活用しながら、上白石萌歌やリスナー、ゲスト、そして世の中の人がLOVEなものや、これから好きになりそうなものをお届け。放送は毎週土曜日22時から。公式サイトはこちら
radikoで聴く
2021年11月20日28時59分まで

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番組情報
#LOVEFAV
毎週土曜
22:00-22:54

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