J-WAVEで放送中の番組『SONAR MUSIC』(ナビゲーター:あっこゴリラ)。番組では、毎回ゲストを迎え、様々なテーマを掘り下げていく。
2月25日(木)のオンエアでは、社会学者/文筆家の太田省一さんと映画『あの頃。』の原作者、劔樹人さんがゲストに登場。「俺たちのアイドルソング!」をテーマにお届けした。
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あっこゴリラ:太田さん、さっそくアイドルの歴史を教えていただきたいのですが。
太田:1970~80年代のソロアイドル時代から振り返っていきたいと思います。まず紹介したいのが、南沙織さんです。それ以前にもアイドルという言葉はありましたが、僕らが思うアイドルのイメージを教えてくれたのが、この南沙織さんです。
あっこゴリラ:南沙織さんは、どういったアイドルだったんですか?
太田:沖縄出身で、日焼けした肌に長い黒髪といういかにも「アイドル」というビジュアルで、『17才』という曲でデビューしました。この曲は、森高千里さんがカバーしたり、現役のアイドルが歌ったり、今でも歌い継がれているスタンダードナンバーになっていると思います。
あっこゴリラ:そうやってどんどんリミックスされていってるんですね。そこからどう進化していくのでしょうか?
太田:1971年は、アイドルの歴史の中で特別な年だと思います。実は同じ年に、日本テレビでオーディション番組『スター誕生!』が始まります。何が画期的だったかというと、テレビがアイドル歌手を生み出す時代がここから始まったことです。
あっこゴリラ:うんうん。
太田:このオーディション番組をきっかけに、見ている側が“デビュー前の初々しく頑張る姿を応援する”という形が始まるわけです。これは、現在のアイドルとファンの関係の原点だと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:そして、この番組から「花の中3トリオ」(森昌子、桜田淳子、山口百恵)やピンク・レディーなどがデビューして人気アイドル歌手になっています。
【南沙織『17才』聴く】
太田:続いて、1970年代中盤から後半になりますが、先ほど話した「花の中3トリオ」の中でも、特に時代に愛されたのが山口百恵さんです。もうスーパースターですね。
あっこゴリラ:当時はどんな感じだったんですか?
太田:山口百恵さんの歴史の中で一つの分岐点となったのが『横須賀ストーリー』で、ここから本当に大スターになっていったと言えます。山口百恵さんには、いまのアイドル歌手にあまりない大人の雰囲気がありましたが、この曲以降、阿木燿子さんと宇崎竜童さんの楽曲で歌うようになって、より大人の雰囲気になっていきます。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:その後、有名な『プレイバックPart2』で史上最年少の19歳で「紅白」のトリを取ったという記録を残しています。このこと一つ取っても、当時、いかに彼女がスーパースターだったかがわかってもらえると思います。
あっこゴリラ:山口百恵さんと言えば、伝説的な引退がありますよね。
太田:はい。引退のラストコンサートで、マイクをステージ上に置く伝説のパフォーマンスがあります。引退については山口さんに限らず、1970年代までは“アイドル歌手はいつかはやめるもの”という暗黙の了解がありました。山口百恵さんも結婚を機に引退しますが、その潔さも人気の秘密なのかなと思います。
あっこゴリラ:しかも、そこから一回もカムバックされてないんですもんね。
太田:それがさらに山口百恵さんを伝説にしていってるんだと思います。そして、1970年代で言うと、キャンディーズの存在も大きく、すごく人気がありました。キャンディーズは、自分たちのコンサートで突然解散を発表し、山口百恵さんよりセンセーショナルで話題を呼びましたね。すでに『年下の男の子』や『春一番』のヒットでトップアイドルでしたが、この解散宣言でさらに人気に火が付きました。
【山口百恵『横須賀ストーリー』を聴く】
太田:その後、80年代に入るとソロアイドルが全盛期を迎えます。その中で時代を変えたと言えるのが、1980年にデビューした松田聖子さんです。
あっこゴリラ:時代を変えたとは、例えば?
太田:『赤いスイートピー』で女性ファンが増えた点が画期的だったといわれています。
あっこゴリラ:確かに!
太田:1980年にデビューしてからはアイドルソング的なものを歌っていましたが、この『赤いスイートピー』で女性の共感を得て女性ファンを増やしたことは、この時代すごく大きかったと思います。さらに松田聖子さんは、結婚して出産をしてもアイドルを続けていくという選択をします。先ほどの山口百恵さんとは対照的で、“アイドルを職業にした”といってもいいかもしれないですね。
あっこゴリラ:アイドルのあり方を変えたっていうのは革命ですよね。この時代は、松田聖子さん以外にもたくさんのアイドルが出てきますよね。
太田:松田聖子さんは、今で言うインフルエンサーみたいな感じで、当時聖子ちゃんカットが大流行して、女の子はみんなこぞって真似をしていた時代。その後、出てきたアイドルの子は、最初みんな聖子ちゃんカットだったりしました(笑)。
あっこゴリラ:ええ~! それはすごい。
太田:その中ですごく人気となったアイドル歌手が、1982年にデビューした小泉今日子さん、中森明菜さんなど「花の82年組」と呼ばれる方たちです。もちろん松田聖子さんも加えて、ソロアイドル歌手の全盛期が到来します。
あっこゴリラ:おお~!
太田:この時期も『夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン』など音楽番組の影響力が大きくて、アイドル歌手の全盛期を支えたと言えます。さらにこの頃は、世相的にもバブル前夜の華やいだ雰囲気があり、アイドルも“遊び感覚でやっちゃおう”みたいな感じで、アイドルを演じるような時代でした。
あっこゴリラ:80年代でだいぶアイドルのあり方が変わったんですね。
太田:そういう意味で、進化したと言えますね。
あっこゴリラ:80年代は、おニャン子クラブもデビューしますよね。
太田:はい。テレビ番組の『夕やけニャンニャン』からデビューして大ブームを巻き起こします。これが、のちのグループアイドル時代の先駆けにもなったのかなと思います。
【松田聖子『赤いスイートピー 』を聴く】
あっこゴリラ:90年代に入って、アイドル界隈はどうなっていくのでしょうか?
太田:おニャン子クラブが80年代後半に解散し、その後90年代前半に「アイドル冬の時代」と呼ばれる時期がやってきます。人気があったテレビの音楽番組も終わるなど、アイドルがテレビであまり見られなくなり、アイドルは活躍の場をテレビから別の場所に移していく。その流れがここで少しずつ出てきます。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:「アイドル冬の時代」とはいえ、東京パフォーマンスドールなど、のちのライブアイドルの元祖的存在はいました。
あっこゴリラ:現場ですごく盛り上がっていたんですね。
太田:そうですね。ライブ中心っていうのが、ここで少し出てきたと思います。そして、90年代後半に入って、『ASAYAN』というオーディション番組が始まります。
あっこゴリラ:出た!
太田:そのオーディション番組から結成されたアイドルグループが、1997年にデビューしたモーニング娘。です。楽曲の魅力はもちろんですが、やっぱり『ASAYAN』というオーディション番組から出てきたっていうのもテレビの影響力が大きかったと言えますね。
あっこゴリラ:当時私も見てましたけど、『ASAYAN』から出たユニット全部好きで応援してた。あはははは。
太田:モーニング娘。は、オーディションで選ばれなかった人たちからつんく♂さんが選抜してデビューさせたというストーリー性の魅力もあったと思います。
あっこゴリラ:応援したくなっちゃいますよね。
太田:さらに、オーディションによる卒業と加入を繰り返すというスタイルを確立したのは、モーニング娘。が最初だと思います。
最後に、2000年代以降のアイドルの特徴は?
太田:そして、アイドル時代は2000年代のグループアイドル全盛時代に突入します。2000年代以降にメジャーになっていくアイドルグループは、テレビというよりはライブ(現場)に軸足を置きます。その流れで出てきたのが、AKB48です。
あっこゴリラ:なるほど~。確かに、「会いに行けるアイドル」というコンセプトでしたもんね。
太田:専用の劇場が秋葉原にあって、そこで定期的に公演を繰り返していくことによって、すぐに大ブレークしたというよりは少しずつファンを増やしていきました。
あっこゴリラ:それでテレビまで行っちゃうんだからすごいですよね。『ヘビーローテーション』なんかは、どこ行ってもかかってましたよね。
太田:そして、AKBが売れた要因の一つは、やっぱり「AKB選抜総選挙」にあると思います。
あっこゴリラ:うんうん。
太田:2009年が第1回なんですけど、最初の頃はそんなに大々的に行われていませんでした。途中からテレビで生中継するようになって、その頃からAKB48が世に知られるようになりました。さらに、選挙という形でファンが直接参加するスタイルは画期的だったと思います。
あっこゴリラ:確かにセンターをファンが決めるっておもしろいですよね。
太田:その後、乃木坂46などのいわゆる坂道シリーズが2010年代以降台頭してきます。2015年に欅坂46、2019年に日向坂46と、現在は坂道シリーズがすごく目立っている状況です。
あっこゴリラ:太田さんは、アイドルがその時代に愛されるために一番必要な要素は何だと思いますか?
太田:やっぱりファンにとっては、参加しているという気持ちをいかに持てるか、時間や空間を共有できているかが重要な気がします。アイドルというのは、すごく身近な存在で、人生をともに歩むパートナー的存在になっているのかなと思います。
【AKB48『ヘビーローテーション』を聴く】
劔:僕、本当にハロプロしか知らないから全部ハロプロになっちゃうんですけど(笑)。あっこさんに聴いてほしいっていうテーマで選びました。
あっこゴリラ:あはははは。ありがとうございます。まず1曲目は?
劔:Berryz工房の『小遣いUP大作戦』です。
あっこゴリラ:(曲を聴いて)最高ですね! まさかのゴリゴリのレゲエっていうね。あはははは!
劔:僕は、ダブバンドのベースでもあるので、こういう1曲もいいかなと思って選びました。アイドル楽曲の中でもほかに類を見ないルーツレゲエ曲です。
あっこゴリラ:なかなかないですよね。これ、つんく♂さんですよね?
劔:そうです。2004年の曲なんですけど、「小遣いが足りない」という親への抵抗を小学生が歌うことで、レベルミュージックとしてのレゲエの在り方としてとても正しいところがおもしろいなと思います。
あっこゴリラ:続いては?
劔:モーニング娘。'20の『KOKORO&KARADA』です。
【モーニング娘。'20『KOKORO&KARADA』を聴く】
あっこゴリラ:(曲を聴いて)今のモー娘。って、超ハイファイでこんなバキバキなんですね。
劔:2010年代は、モー娘。はEDMをわりといち早く取り入れて、それをつんく♂さんがすごいバランスでEDMと歌謡曲の要素を混ぜるので、どこでも聴いたことないような感じの曲になっています。
あっこゴリラ:確かに若干生音が入ってたり、でもサビで刻まないあたりとか、最新EDMっぽさもありますね。
劔:そうなんです。複雑なリフとクラシカルなピアノ、ストリングスが絡まる異次元レベルのトラックで、これが来たときにはびっくりしましたね。
あっこゴリラ:不思議な曲ですよね。
劔:難しいというか、やっぱりなかなかないことをやってるんですよね。ダンスやパフォーマンスを含め、アイドル表現としてレベル違い、最高峰の楽曲だと思います。
あっこゴリラ:最後の曲は?
劔:ハロプロを卒業したメンバーなんですけど、和田彩花の『ホットラテ』です。
【和田彩花『ホットラテ』を聴く】
あっこゴリラ:(曲を聴いて)なかなかアイドルにはない歌詞ですね。
劔:ちなみにこの曲は、和田さんの自作詩曲になります。
あっこゴリラ:そうなんだ~。それはすごい。
劔:2018年にハロプロを卒業したんですけど、卒業後はフェミニズムから人権、社会問題まで踏み込む活動もしています。それって、なかなかアイドルにはできなかったことだと思います。
あっこゴリラ:そういう意味で、アイドルも多様化してますよね。
劔:“もうアーティストじゃないの? ”って言われても、今もアイドルを名乗りながらやっている。アイドルの内部から変えていく力としてこれからの時代に非常に必要な人だなと思っています。
J-WAVE『SONAR MUSIC』は月~木の22:00-24:00にオンエア。
2月25日(木)のオンエアでは、社会学者/文筆家の太田省一さんと映画『あの頃。』の原作者、劔樹人さんがゲストに登場。「俺たちのアイドルソング!」をテーマにお届けした。
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1970~80年代「ソロアイドルの時代」
番組では、「俺たちのアイドルソング! 」と題して、いつの時代も輝きを放つアイドルソングを特集。 ゲストには、社会学者/文筆家の太田省一さん、そして、アイドルを題材にした映画『あの頃。』の原作者、劔樹人さんが登場。あっこゴリラ:太田さん、さっそくアイドルの歴史を教えていただきたいのですが。
太田:1970~80年代のソロアイドル時代から振り返っていきたいと思います。まず紹介したいのが、南沙織さんです。それ以前にもアイドルという言葉はありましたが、僕らが思うアイドルのイメージを教えてくれたのが、この南沙織さんです。
あっこゴリラ:南沙織さんは、どういったアイドルだったんですか?
太田:沖縄出身で、日焼けした肌に長い黒髪といういかにも「アイドル」というビジュアルで、『17才』という曲でデビューしました。この曲は、森高千里さんがカバーしたり、現役のアイドルが歌ったり、今でも歌い継がれているスタンダードナンバーになっていると思います。
あっこゴリラ:そうやってどんどんリミックスされていってるんですね。そこからどう進化していくのでしょうか?
太田:1971年は、アイドルの歴史の中で特別な年だと思います。実は同じ年に、日本テレビでオーディション番組『スター誕生!』が始まります。何が画期的だったかというと、テレビがアイドル歌手を生み出す時代がここから始まったことです。
あっこゴリラ:うんうん。
太田:このオーディション番組をきっかけに、見ている側が“デビュー前の初々しく頑張る姿を応援する”という形が始まるわけです。これは、現在のアイドルとファンの関係の原点だと思います。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:そして、この番組から「花の中3トリオ」(森昌子、桜田淳子、山口百恵)やピンク・レディーなどがデビューして人気アイドル歌手になっています。
【南沙織『17才』聴く】
太田:続いて、1970年代中盤から後半になりますが、先ほど話した「花の中3トリオ」の中でも、特に時代に愛されたのが山口百恵さんです。もうスーパースターですね。
あっこゴリラ:当時はどんな感じだったんですか?
太田:山口百恵さんの歴史の中で一つの分岐点となったのが『横須賀ストーリー』で、ここから本当に大スターになっていったと言えます。山口百恵さんには、いまのアイドル歌手にあまりない大人の雰囲気がありましたが、この曲以降、阿木燿子さんと宇崎竜童さんの楽曲で歌うようになって、より大人の雰囲気になっていきます。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:その後、有名な『プレイバックPart2』で史上最年少の19歳で「紅白」のトリを取ったという記録を残しています。このこと一つ取っても、当時、いかに彼女がスーパースターだったかがわかってもらえると思います。
あっこゴリラ:山口百恵さんと言えば、伝説的な引退がありますよね。
太田:はい。引退のラストコンサートで、マイクをステージ上に置く伝説のパフォーマンスがあります。引退については山口さんに限らず、1970年代までは“アイドル歌手はいつかはやめるもの”という暗黙の了解がありました。山口百恵さんも結婚を機に引退しますが、その潔さも人気の秘密なのかなと思います。
あっこゴリラ:しかも、そこから一回もカムバックされてないんですもんね。
太田:それがさらに山口百恵さんを伝説にしていってるんだと思います。そして、1970年代で言うと、キャンディーズの存在も大きく、すごく人気がありました。キャンディーズは、自分たちのコンサートで突然解散を発表し、山口百恵さんよりセンセーショナルで話題を呼びましたね。すでに『年下の男の子』や『春一番』のヒットでトップアイドルでしたが、この解散宣言でさらに人気に火が付きました。
【山口百恵『横須賀ストーリー』を聴く】
太田:その後、80年代に入るとソロアイドルが全盛期を迎えます。その中で時代を変えたと言えるのが、1980年にデビューした松田聖子さんです。
あっこゴリラ:時代を変えたとは、例えば?
太田:『赤いスイートピー』で女性ファンが増えた点が画期的だったといわれています。
あっこゴリラ:確かに!
太田:1980年にデビューしてからはアイドルソング的なものを歌っていましたが、この『赤いスイートピー』で女性の共感を得て女性ファンを増やしたことは、この時代すごく大きかったと思います。さらに松田聖子さんは、結婚して出産をしてもアイドルを続けていくという選択をします。先ほどの山口百恵さんとは対照的で、“アイドルを職業にした”といってもいいかもしれないですね。
あっこゴリラ:アイドルのあり方を変えたっていうのは革命ですよね。この時代は、松田聖子さん以外にもたくさんのアイドルが出てきますよね。
太田:松田聖子さんは、今で言うインフルエンサーみたいな感じで、当時聖子ちゃんカットが大流行して、女の子はみんなこぞって真似をしていた時代。その後、出てきたアイドルの子は、最初みんな聖子ちゃんカットだったりしました(笑)。
あっこゴリラ:ええ~! それはすごい。
太田:その中ですごく人気となったアイドル歌手が、1982年にデビューした小泉今日子さん、中森明菜さんなど「花の82年組」と呼ばれる方たちです。もちろん松田聖子さんも加えて、ソロアイドル歌手の全盛期が到来します。
あっこゴリラ:おお~!
太田:この時期も『夜のヒットスタジオ』や『ザ・ベストテン』など音楽番組の影響力が大きくて、アイドル歌手の全盛期を支えたと言えます。さらにこの頃は、世相的にもバブル前夜の華やいだ雰囲気があり、アイドルも“遊び感覚でやっちゃおう”みたいな感じで、アイドルを演じるような時代でした。
あっこゴリラ:80年代でだいぶアイドルのあり方が変わったんですね。
太田:そういう意味で、進化したと言えますね。
あっこゴリラ:80年代は、おニャン子クラブもデビューしますよね。
太田:はい。テレビ番組の『夕やけニャンニャン』からデビューして大ブームを巻き起こします。これが、のちのグループアイドル時代の先駆けにもなったのかなと思います。
【松田聖子『赤いスイートピー 』を聴く】
1990~2000年代「グループアイドルの時代」
続いて、90年代のアイドル時代に突入!あっこゴリラ:90年代に入って、アイドル界隈はどうなっていくのでしょうか?
太田:おニャン子クラブが80年代後半に解散し、その後90年代前半に「アイドル冬の時代」と呼ばれる時期がやってきます。人気があったテレビの音楽番組も終わるなど、アイドルがテレビであまり見られなくなり、アイドルは活躍の場をテレビから別の場所に移していく。その流れがここで少しずつ出てきます。
あっこゴリラ:なるほど~。
太田:「アイドル冬の時代」とはいえ、東京パフォーマンスドールなど、のちのライブアイドルの元祖的存在はいました。
あっこゴリラ:現場ですごく盛り上がっていたんですね。
太田:そうですね。ライブ中心っていうのが、ここで少し出てきたと思います。そして、90年代後半に入って、『ASAYAN』というオーディション番組が始まります。
あっこゴリラ:出た!
太田:そのオーディション番組から結成されたアイドルグループが、1997年にデビューしたモーニング娘。です。楽曲の魅力はもちろんですが、やっぱり『ASAYAN』というオーディション番組から出てきたっていうのもテレビの影響力が大きかったと言えますね。
あっこゴリラ:当時私も見てましたけど、『ASAYAN』から出たユニット全部好きで応援してた。あはははは。
太田:モーニング娘。は、オーディションで選ばれなかった人たちからつんく♂さんが選抜してデビューさせたというストーリー性の魅力もあったと思います。
あっこゴリラ:応援したくなっちゃいますよね。
太田:さらに、オーディションによる卒業と加入を繰り返すというスタイルを確立したのは、モーニング娘。が最初だと思います。
最後に、2000年代以降のアイドルの特徴は?
太田:そして、アイドル時代は2000年代のグループアイドル全盛時代に突入します。2000年代以降にメジャーになっていくアイドルグループは、テレビというよりはライブ(現場)に軸足を置きます。その流れで出てきたのが、AKB48です。
あっこゴリラ:なるほど~。確かに、「会いに行けるアイドル」というコンセプトでしたもんね。
太田:専用の劇場が秋葉原にあって、そこで定期的に公演を繰り返していくことによって、すぐに大ブレークしたというよりは少しずつファンを増やしていきました。
あっこゴリラ:それでテレビまで行っちゃうんだからすごいですよね。『ヘビーローテーション』なんかは、どこ行ってもかかってましたよね。
太田:そして、AKBが売れた要因の一つは、やっぱり「AKB選抜総選挙」にあると思います。
あっこゴリラ:うんうん。
太田:2009年が第1回なんですけど、最初の頃はそんなに大々的に行われていませんでした。途中からテレビで生中継するようになって、その頃からAKB48が世に知られるようになりました。さらに、選挙という形でファンが直接参加するスタイルは画期的だったと思います。
あっこゴリラ:確かにセンターをファンが決めるっておもしろいですよね。
太田:その後、乃木坂46などのいわゆる坂道シリーズが2010年代以降台頭してきます。2015年に欅坂46、2019年に日向坂46と、現在は坂道シリーズがすごく目立っている状況です。
あっこゴリラ:太田さんは、アイドルがその時代に愛されるために一番必要な要素は何だと思いますか?
太田:やっぱりファンにとっては、参加しているという気持ちをいかに持てるか、時間や空間を共有できているかが重要な気がします。アイドルというのは、すごく身近な存在で、人生をともに歩むパートナー的存在になっているのかなと思います。
【AKB48『ヘビーローテーション』を聴く】
アイドルも多様化している
ここからは、映画『あの頃。』原作者の劔樹人さんに「アイドルソングはすごいんだよ!」をテーマに、イケてるアイドルソングを紹介してもらった。劔:僕、本当にハロプロしか知らないから全部ハロプロになっちゃうんですけど(笑)。あっこさんに聴いてほしいっていうテーマで選びました。
あっこゴリラ:あはははは。ありがとうございます。まず1曲目は?
劔:Berryz工房の『小遣いUP大作戦』です。
あっこゴリラ:(曲を聴いて)最高ですね! まさかのゴリゴリのレゲエっていうね。あはははは!
劔:僕は、ダブバンドのベースでもあるので、こういう1曲もいいかなと思って選びました。アイドル楽曲の中でもほかに類を見ないルーツレゲエ曲です。
あっこゴリラ:なかなかないですよね。これ、つんく♂さんですよね?
劔:そうです。2004年の曲なんですけど、「小遣いが足りない」という親への抵抗を小学生が歌うことで、レベルミュージックとしてのレゲエの在り方としてとても正しいところがおもしろいなと思います。
あっこゴリラ:続いては?
劔:モーニング娘。'20の『KOKORO&KARADA』です。
【モーニング娘。'20『KOKORO&KARADA』を聴く】
あっこゴリラ:(曲を聴いて)今のモー娘。って、超ハイファイでこんなバキバキなんですね。
劔:2010年代は、モー娘。はEDMをわりといち早く取り入れて、それをつんく♂さんがすごいバランスでEDMと歌謡曲の要素を混ぜるので、どこでも聴いたことないような感じの曲になっています。
あっこゴリラ:確かに若干生音が入ってたり、でもサビで刻まないあたりとか、最新EDMっぽさもありますね。
劔:そうなんです。複雑なリフとクラシカルなピアノ、ストリングスが絡まる異次元レベルのトラックで、これが来たときにはびっくりしましたね。
あっこゴリラ:不思議な曲ですよね。
劔:難しいというか、やっぱりなかなかないことをやってるんですよね。ダンスやパフォーマンスを含め、アイドル表現としてレベル違い、最高峰の楽曲だと思います。
あっこゴリラ:最後の曲は?
劔:ハロプロを卒業したメンバーなんですけど、和田彩花の『ホットラテ』です。
【和田彩花『ホットラテ』を聴く】
あっこゴリラ:(曲を聴いて)なかなかアイドルにはない歌詞ですね。
劔:ちなみにこの曲は、和田さんの自作詩曲になります。
あっこゴリラ:そうなんだ~。それはすごい。
劔:2018年にハロプロを卒業したんですけど、卒業後はフェミニズムから人権、社会問題まで踏み込む活動もしています。それって、なかなかアイドルにはできなかったことだと思います。
あっこゴリラ:そういう意味で、アイドルも多様化してますよね。
劔:“もうアーティストじゃないの? ”って言われても、今もアイドルを名乗りながらやっている。アイドルの内部から変えていく力としてこれからの時代に非常に必要な人だなと思っています。
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