セカオワ・Saori 、Fukaseの“言葉の表現”に感心「ねじねじ悩んでるよね」

SEKAI NO OWARIのSaoriとしても活動する作家・藤崎彩織が、最新エッセイ『ねじねじ録』(水鈴社)にまつわるエピソードと息子との暮らしについて語った。

藤崎が登場したのは、J-WAVEで放送中の番組『START LINE』(ナビゲーター:長谷川ミラ)のワンコーナー「CITROËN AWESOME COLORS」。ここでは、9月24日(金)のオンエアをテキストで紹介する。

Fukaseの言葉を書籍のタイトルに起用

藤崎は4人組バンドSEKAI NO OWARIのSaoriとして活動しており、ピアノ演奏、ライブ演出、作詞、作曲などを担当している。作家としては8月3日に最新著書『ねじねじ録』(水鈴社)を発売した。音楽家として、母として、妻として悩み、落ち込みながらも前に進む藤崎の日々や思いを丁寧に綴ったエッセイ集だ。

長谷川:タイトルにつけられた「ねじねじ」には、どんな思いを込められたのでしょうか?
藤崎:SEKAI NO OWARIのボーカルのFukaseくんと会話をしているときに、「Saoriちゃんってねじねじ悩んでるよね」と言われたことがあって。「ねじねじって面白い響きだな」と思ったんですよね。「うじうじ」だと暗すぎるし、「ねちねち」だと嫌なやつの雰囲気がするなか、ねじねじは「一生懸命考えるけど空回りをする」みたいな愛らしさを感じたんです。言われたのは何年も前の話なんですけど、当時はすかさずメモしました。言った本人は忘れてしまうと思ったので、(ねじねじは)いつかの機会に使おうと思って、あたためていた言葉です。
長谷川:Fukaseさんはそのときの会話を覚えてないんですかね?
藤崎:それが覚えてたみたいで。私の前で「これ、あれ?」って言いながら、お金のジェスチャーをしてました(笑)。
長谷川:面白い方ですね(笑)。Fukaseさんは普段から新しい言葉の使い方を生み出されるんですか?
藤崎:そうですね。普段の会話のなかで新しい言葉を作ったり、すごく変な比喩をしたりします。
長谷川:へえ! たとえばどんな?
藤崎:みんなで目標を立てないまま「どうしよう」と話し合っていると、「俺だって目隠ししたまま何メートルも歩けないんだよ」みたいなことを急に言い出して。「えっ!?」って(笑)。目標を立てようよって意味なんですけど、会話をしているとパッとそういう言葉が出てくるんですよ。つい最近のことなんですけど。「すごく面白いことを言うなあ」っていつも思います。
長谷川:それをすかさずメモに取られるんですね。
藤崎:はい。本人は自分の言葉を作品にしようという気持ちは特にないので、全部私がもらっていこうと思います(笑)。

「思ったより自分のことを知らないんだな」と気づいた

『ねじねじ録』は、「文藝春秋digital」で3月から連載されていたエッセイを書籍化したものだ。

長谷川:スマートフォンのメモに書き綴っていた日記を連載されていたそうですね。エッセイを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
藤崎:日記は中学生の頃からつけていました。感じたことを日記にして書いていたんですけど、読み返してみると「思ったより自分のことを知らないんだな」って思って。これまでたくさんメモを書いてきたなかで、エッセイになりそうなものをピックアップして連載をスタートしました。
長谷川:「自分のことを知らないな」って感覚を中学生の頃から持っていたんですね。
藤崎:そうですね。中学生の頃、自分の性格がすごく悪いんじゃないかと感じていて。自分の性格をよくするにはどうすればいいんだろうと思ったんです。怒るようなことがあったとき、「この考えってちょっと変かもな」みたいに俯瞰して考えたりしていました。
長谷川:性格が悪いというのは、誰かに言われたわけではなく、ご自身で思われたんですか?
藤崎:10代の頃は自分のことを冷静な目で見るのがすごく難しかったんです。なので、怒っていることは怒っていないときに考えたほうがいいんじゃないかと思ったんですね。
長谷川:なるほど。今も日々のことを書く習慣はありますか?
藤崎:そうですね。自分の感じたことは常にスマホに書いてるんですけど、最近は「同じことばかり書いているな」って気づきました(笑)。
長谷川:たとえばどんな?
藤崎:自分の性格の悩みについて、中学生から「どうして私はこうなんだ」って書いてるんですけど、変わらないんですよね。
長谷川:なんとなくわかります。悩みや性格って昔から「変えたい」と思っていてもなかなか難しいですよね。
藤崎:日記を通して「自分は全然変わってない」ってことが段々とわかってきました(笑)。
長谷川:改めてエッセイにしてみて心境に変化はありましたか?
藤崎:やっぱり、自分のために書く日記と人に伝えるための文章は全然違いますね。誰にでも通じるよう丁寧に言葉を選ばないといけないので、「自分に近い言葉はどれかな」と探していく作業がありました。より自分に近い言葉で書けたかなと思います。
長谷川:エッセイでは子育てのお話、解散の危機、ご夫婦のお話などが書かれていますけども、収録されている41のエッセイを通じて伝えたいことは何でしょうか?
藤崎:このエッセイは、母、娘、妻、バンドメンバー、ピアニスト、物書きなど、いろんな立場で書いたものです。どれかに共感をしてもらいたいですし、「こういう考え方もあるんだ」と思っていただけたらいいなと思ってます。

エッセイでは自由にいろいろなことを書ける

長谷川は「Saoriとして書くときと意識の違いはありますか?」と藤崎に問いかけた。

藤崎:最近は「どれも違ってどれも難しい」とすごく思います。何かがうまくいったからといって、どれもよい方向に進むとは限らないです。ただ、歌詞のほうが題材にできるものが限られているなとは感じますね。
長谷川:そうなんですか?
藤崎:いろんな人がイメージできる言葉を使わないといけない場面が多いんですよ。小説やエッセイだとディテールを書けるんですけど、作詞の場合は細かく書きすぎると“個人の歌”になっちゃうんですよね。
長谷川:たしかに、1曲3分ぐらいしかないですし、フレーズによっては聴いてる側の捉え方が変わるときもありますよね。書籍の帯には「文章でしか出せなかった本音とエピソードを綴った、鋭く優しくユーモアに満ちたエッセイ集」と書かれています。
藤崎:そうですね。たとえばバンドが解散しそうな雰囲気って小説やエッセイだと表現できると思うんですよ。作詞の場合だと「友情の物語」だったり「別れの物語」だったり、大きなテーマを作らないといけないんです。
長谷川:なるほど。ではエッセイでは伸び伸びと書けましたか?
藤崎:エッセイが一番自由にいろんなことが書けますね。

虫に抱いた「同じ母親だ」という気持ち

最後に、藤崎に休みの日の過ごし方を訊いた。

藤崎:休みの日はだいたい子どもと一緒に出かけています。子どもは最近昆虫が大好きなので、虫取り網と虫かごを持ってバッタやコオロギを2人で捕まえて、虫かごに虫を入れて一通り観察したら、かごから出して帰ります。
長谷川:一緒に虫取りをしてるんですね。もともと虫は平気なほうですか?
藤崎:そんなに好きではなかったんですけど。息子が図鑑を見ながら「この虫は何を食べるの?」「この虫は何をしてるの?」って毎日質問するので、説明していくうちに生態系のピラミッドを思い出して。自分の卵を守る虫が多いんですよね。そういうのを見ていると「気持ち悪いって言っちゃいけないな。同じ母親だ」って気持ちになったりして、すごく面白いです。
長谷川:微笑ましいです。エッセイのなかでも息子さんとの日々を綴られていますよね。息子さんを介してたくさんの発見がありますか?
藤崎:すごくありますね。
長谷川:『ねじねじ録』には、ほっこりしたエピソードもたくさん収録されています。みなさんもぜひ読んでください。

『START LINE』のワンコーナー「CITROËN AWESOME COLORS」では、自分らしく輝くあの人のストーリーをお届け。放送は毎週金曜日の18時10分から。
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2021年10月1日28時59分まで

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番組情報
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毎週金曜
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