「この経験があったからこそ、次に進む自信が生まれた」。俳優・伊藤万理華を奮い立たせた「この経験」とは、8月6日公開の主演映画『サマーフィルムにのって』を指す。時代劇オタクのハダシ(伊藤)が、高校の個性的な友人たちを巻き込み、未来からタイムトラベルして来た青年・凛太郎(金子大地)を主演にした時代劇映画を作ろうとする。“打倒ラブコメ!”というスローガンを掲げて。高校生活最後の夏に訪れた熱中とキラメキを濃縮還元したかのようなセンチメンタルな青春ストーリーで、伊藤は“ハダシ”になったばかりか「素っ裸になった!」と胸を張る。乃木坂46卒業から早4年。伊藤は俳優としての手応えを初めて感じている。
伊藤:私が演じたハダシというキャラクターもそうですが、物語の設定や状況が怖いくらいに現実とリンクしたところも理由に挙げられるかもしれません。せっかく共演者のみんなと仲良くなって絆を深めたと思ったら、コロナの影響で3か月の撮影中断。「いつ撮れるの?」という不安と葛藤が、作品の内容とあまりにも酷似していました。ハダシ同様に私もテンションが下がってしまい、気持ちも本当につらくなりました。それもあって、撮影再開時の熱量には凄まじいものがありました。困難を乗り越えて今があり、完成した作品は国内外の映画祭で続々と上映されています。今この瞬間に取材を受けている状況も信じられない……。もう奇跡としか思えません!
──伊藤さんが演じるハダシがあまりにもナチュラルで、映画を観ながら「仲間に入れて!」と叫びそうになりました。
伊藤:自分の好きなことに打ち込むハダシの姿はまるで私自身のようで、ここまで素の自分をさらけ出したのも初めてです。フィルターを一切通さない自分の顔、表情、動きがあまりにもウソなく出過ぎてしまって、怖いとさえ感じました。でも初号試写後に共演者のみんなが「絶対大丈夫だから!」「すごくいいよ!」と背中を押してくれて……。励まされてなんとかここまで来ました(笑)。
伊藤:いざ金子さんと対面したときは、劇中と同じように「凛太郎いたぞ!」状態になりました。ところが私も金子さんもシャイ同士なので、最初はぎこちない距離感がありました(笑)。でもハダシと凛太郎が秘密基地で時代劇を見たり語ったりするシーンを撮影した途端に意気投合。まるで役柄の気持ちと私たちの気持ちがリンクしたようでした。私はいろいろな趣味を持っていますが、金子さんはザ・役者というようなプロの姿勢の持ち主。仕事をする上での考え方などに刺激を受けました。
──仲良しトリオ(ハダシ、ビート板、ブルーハワイ)の青春モラトリアム感も美しく、本当に親友同士のようでした。再び「仲間に入れて!」と叫びそうになりました。
伊藤:河合優実ちゃん(ビート板)と祷キララちゃん(ブルーハワイ)とは親友役ということもあり、撮影中も対話を重ねました。お互いの作品にかける気持ちを確認したり、3人で「男子メンバーとも喋りたいよね!」と作戦を立てたり、トランプやUNOを現場に持ち込んだりして。自分にできることは何か?と考えたときに思いついたのがチェキでした。写真があると人は寄って来るだろうし、私自身こんなに恵まれた作品に出会うことはもうないだろうという思いもあり、思い出作りだと思ってたくさん写真を撮りました。写真はまとめてアルバムにして、最後にみんなにプレゼントしました。
──伊藤さんのショートヘアが1980年代の角川映画のようなテイストを想起させて、映画により一層いい効果をもたらしています。
伊藤:ハダシのイメージとしてはポニーテールの予定でしたが、松本壮史監督のイマジネーションでショートカットに変更になりました。私は『賭ケグルイ Season2』以降短い髪の毛の役柄を演じる機会が増えましたが、短いほうがいいと言ってくださる方も多いです。物理的に楽ですし、ショート姿が自分の良さに繋がっているのであれば、このまま短くてもいいのかなとも思います。
伊藤:私は自分で望んでグループに所属し、自分で望んで卒業し、今に至ります。元◯◯という肩書きは一生ついてくるものだという認識も持っています。グループ名を出されることで、まだそこに留まっているかのような印象を持たれることもあるかもしれませんが、今の私があるのはグループにいたおかげ。むしろ感謝があります。元◯◯という肩書きをいい意味で利用するという考えも必要だし、俳優業に転身した元アイドルに対する偏見がいつかなくなることを願ってもいます。
──『サマーフィルムにのって』は伊藤さんが女優へと脱皮する瞬間が捉えられているようにも感じます。伊藤さん自身にはどのような感慨がありますか? 個人的には、お世辞抜きに映画賞の新人賞をゲットしそうな予感すらあります。
伊藤:乃木坂時代はかわいいいメンバーも多くて、「私もかわいくならなきゃ!」とメイクを研究したり、自分の容姿に対してコンプレックスを抱いたりしたこともありました。でも『サマーフィルムにのって』を経て、今の自分の強みはそこではないと自信を持って言えるようになりました。ありのままの自分を受け入れることができない時期もありましたが、この映画で自分の素っ裸の状態をさらすことで、世に出ることが恥ずかしくなくなったというか。素の自分を好きでいてくれて、評価してくれて、作品に呼んでいただけるという幸せ。こんな私でも作品のパーツになると思っていただけるのであれば、関わらせていただきたい!と前向きな気持ちを持つことができました。
──本作は海外の映画祭でも続々と上映され、好評を博しています。主演として海外の反響・反応についてはどう思われますか? もう一度言いますが、伊藤さんは新人賞確実だと思いますよ!
伊藤:各所からのありがたい反応には驚きしかなくて、考えが何も追い付いていません! でも確実に言えることは、撮影期間は私にとって特別でかけがえのないもので、撮影中の会話や出来事は宝物として永遠に残るということです。この経験があったからこそ、次に進む自信も生まれた気がします。私もハダシたちのように初期衝動やトキメキを忘れることなく、これからも自分たちの新しい姿を形に残していきたいです。
(文・写真=石井隼人)
8月6日(金)より、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
怖いほどに、ウソのない表情が出た
──お世辞抜きで本年度上半期No.1映画です! すべてのシーン、登場人物が愛おしすぎてキュン死しそうです。このような素晴らしい空気感をまとう作品が生まれた理由は何だと思いますか?伊藤:私が演じたハダシというキャラクターもそうですが、物語の設定や状況が怖いくらいに現実とリンクしたところも理由に挙げられるかもしれません。せっかく共演者のみんなと仲良くなって絆を深めたと思ったら、コロナの影響で3か月の撮影中断。「いつ撮れるの?」という不安と葛藤が、作品の内容とあまりにも酷似していました。ハダシ同様に私もテンションが下がってしまい、気持ちも本当につらくなりました。それもあって、撮影再開時の熱量には凄まじいものがありました。困難を乗り越えて今があり、完成した作品は国内外の映画祭で続々と上映されています。今この瞬間に取材を受けている状況も信じられない……。もう奇跡としか思えません!
──伊藤さんが演じるハダシがあまりにもナチュラルで、映画を観ながら「仲間に入れて!」と叫びそうになりました。
伊藤:自分の好きなことに打ち込むハダシの姿はまるで私自身のようで、ここまで素の自分をさらけ出したのも初めてです。フィルターを一切通さない自分の顔、表情、動きがあまりにもウソなく出過ぎてしまって、怖いとさえ感じました。でも初号試写後に共演者のみんなが「絶対大丈夫だから!」「すごくいいよ!」と背中を押してくれて……。励まされてなんとかここまで来ました(笑)。
トランプを持ち込んで…撮影現場はまさに青春
──甘いマスクの金子大地さんが演じる凛太郎の純朴さにもグッときますね!伊藤:いざ金子さんと対面したときは、劇中と同じように「凛太郎いたぞ!」状態になりました。ところが私も金子さんもシャイ同士なので、最初はぎこちない距離感がありました(笑)。でもハダシと凛太郎が秘密基地で時代劇を見たり語ったりするシーンを撮影した途端に意気投合。まるで役柄の気持ちと私たちの気持ちがリンクしたようでした。私はいろいろな趣味を持っていますが、金子さんはザ・役者というようなプロの姿勢の持ち主。仕事をする上での考え方などに刺激を受けました。
──仲良しトリオ(ハダシ、ビート板、ブルーハワイ)の青春モラトリアム感も美しく、本当に親友同士のようでした。再び「仲間に入れて!」と叫びそうになりました。
伊藤:河合優実ちゃん(ビート板)と祷キララちゃん(ブルーハワイ)とは親友役ということもあり、撮影中も対話を重ねました。お互いの作品にかける気持ちを確認したり、3人で「男子メンバーとも喋りたいよね!」と作戦を立てたり、トランプやUNOを現場に持ち込んだりして。自分にできることは何か?と考えたときに思いついたのがチェキでした。写真があると人は寄って来るだろうし、私自身こんなに恵まれた作品に出会うことはもうないだろうという思いもあり、思い出作りだと思ってたくさん写真を撮りました。写真はまとめてアルバムにして、最後にみんなにプレゼントしました。
──伊藤さんのショートヘアが1980年代の角川映画のようなテイストを想起させて、映画により一層いい効果をもたらしています。
伊藤:ハダシのイメージとしてはポニーテールの予定でしたが、松本壮史監督のイマジネーションでショートカットに変更になりました。私は『賭ケグルイ Season2』以降短い髪の毛の役柄を演じる機会が増えましたが、短いほうがいいと言ってくださる方も多いです。物理的に楽ですし、ショート姿が自分の良さに繋がっているのであれば、このまま短くてもいいのかなとも思います。
アイドル時代に感謝。そして今、俳優として喜びを感じる
──グループ卒業から早4年。しかしご自身が紹介されるときにはいまだ「元乃木坂」「元アイドル」という枕詞が使用されます。「もういいよ!」という気持ちにはなりませんか?伊藤:私は自分で望んでグループに所属し、自分で望んで卒業し、今に至ります。元◯◯という肩書きは一生ついてくるものだという認識も持っています。グループ名を出されることで、まだそこに留まっているかのような印象を持たれることもあるかもしれませんが、今の私があるのはグループにいたおかげ。むしろ感謝があります。元◯◯という肩書きをいい意味で利用するという考えも必要だし、俳優業に転身した元アイドルに対する偏見がいつかなくなることを願ってもいます。
──『サマーフィルムにのって』は伊藤さんが女優へと脱皮する瞬間が捉えられているようにも感じます。伊藤さん自身にはどのような感慨がありますか? 個人的には、お世辞抜きに映画賞の新人賞をゲットしそうな予感すらあります。
伊藤:乃木坂時代はかわいいいメンバーも多くて、「私もかわいくならなきゃ!」とメイクを研究したり、自分の容姿に対してコンプレックスを抱いたりしたこともありました。でも『サマーフィルムにのって』を経て、今の自分の強みはそこではないと自信を持って言えるようになりました。ありのままの自分を受け入れることができない時期もありましたが、この映画で自分の素っ裸の状態をさらすことで、世に出ることが恥ずかしくなくなったというか。素の自分を好きでいてくれて、評価してくれて、作品に呼んでいただけるという幸せ。こんな私でも作品のパーツになると思っていただけるのであれば、関わらせていただきたい!と前向きな気持ちを持つことができました。
──本作は海外の映画祭でも続々と上映され、好評を博しています。主演として海外の反響・反応についてはどう思われますか? もう一度言いますが、伊藤さんは新人賞確実だと思いますよ!
伊藤:各所からのありがたい反応には驚きしかなくて、考えが何も追い付いていません! でも確実に言えることは、撮影期間は私にとって特別でかけがえのないもので、撮影中の会話や出来事は宝物として永遠に残るということです。この経験があったからこそ、次に進む自信も生まれた気がします。私もハダシたちのように初期衝動やトキメキを忘れることなく、これからも自分たちの新しい姿を形に残していきたいです。
(文・写真=石井隼人)
映画『サマーフィルムにのって』作品情報
8月6日(金)公開『サマーフィルムにのって』本予告
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会