東京五輪のBMX「選手が自ら選んだBGM」は? 現地から音楽&ファッション視点でレポート

開催中の第32回オリンピック競技大会(2020/東京)。J-WAVEの取材隊が、スポーツのみならず、音楽やファッション、カルチャーの視点から、競技の魅力や楽しみをお伝えします。今回はBMX編をお届けします。(J-WAVE NEWS編集部)

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「BMX」はどんな競技?

今回は、7月31日と8月1日に行われた、新種目の自転車競技(BMXフリースタイル)の様子をレポート。会場は、スケートボードとの同じくゆりかもめ・有明テニスの森駅から徒歩数分にある「有明アーバンスポーツパーク」。曲面やスロープ、ジャンプ台などが配置された専用のパークで競技がおこなわれました。



まず「BMX」とはBicycle Motocross(バイシクルモトクロス)の略。さらに「フリースタイル 」は20インチの自転車に乗り、曲面やスロープを複雑に組み合わせたコースを自在に使いながら、60秒間にトリック(ジャンプ・空中動作・回転)などを行って競う、自転車競技唯一の採点競技。トリックの難易度や独創性、構成、スタイル、スピード、コントロール、着地などが採点の対象となります。東京2020大会では世界のトップライダー男子9人、女子9人、計18人がメダルを競いました。

【参考資料】https://olympics.com/tokyo-2020/ja/sports/cycling-bmx-freestyle/

BMXフリースタイルの大会を生で見るのは初めだったのですが、とにかくスゴイ迫力! バイクを自由自在に操り、高い身体能力で宙を舞う選手たちのダイナミックなパフォーマンスに圧倒されっぱなしでした。縦に一回転したら次は横にバイクをくるくる回して、さらに体をひねりながら上に高く跳び上がる……選手たちのこまかい動きも見逃せない60秒、瞬きする時間も惜しいとはこのことだと感じました。日本代表の大池水杜選手、中村輪夢選手もお疲れさまでした! 海外の選手にはない身軽さで、早いスピードと高いジャンプで多様なトリックをこなしていく姿、かっこよかったです。「スーパーマン」の瞬間は、間違いなく日本一のヒーローでした!

中村輪夢選手が見せたBMXの技“スーパーマン”の写真

国産ブランドのユニフォーム

ファッションや音楽もBMXフリースタイルを盛り上げる大切なポイント。現地で感じた魅力をご紹介していきます。

BMXの競技服は、ジーンズとTシャツ。今大会でもトップスは各国でノースリーブだったり様々でしたが、基本ボトムスはジーンズでしたね。スケートボードに比べると国ごとに決められたものを着用している印象でした。その中でも自国愛とそのこだわりを感じたユニフォームに注目!

●日本代表ユニフォーム

大池選手、中村選手ともに着用していたのは、日本発の老舗スポーツウェアブランド「DESCENTE」の白いTシャツに、BMX競技専用ジーンズ「J」。これは、国産ジーンズ発祥の地・岡山のメーカー3社と、岡山に拠点を置く全日本フリースタイルBMX連盟が共同で開発した、地元とBMXへの愛が詰まったジーンズ。シンプルだけど細部にまでこだわった、日本のものづくりにリスペクトを感じるユニフォームでした。

・BMX×Okayama Jeans Project公式ページ https://japanbmx.sakura.ne.jp/bmx-jeans-project/

●アメリカ合衆国代表ユニフォーム

アメリカ合衆国も、国を代表するファッションブランド「Champion」のTシャツに「Levi's」のジーンズというルック。80年代~90年代のBMXファッションからインスパイアを受けているみたいです。さらに国旗モチーフのヘルメットが、選手それぞれデザインが異なりソーキュート! 自国愛溢れるユニフォームでした。

・CHAMPION® AND LEVI’S® UNVEIL BMX FREESTYLE U.S. OLYMPIC COMPETITION GEAR
https://usacycling.org/article/champion-and-levis-unveil-bmx-freestyle-u-s-olympic-competition-gear

そしてここからは余談なのですが……アメリカ合衆国代表のTシャツの胸元に施された「USA」ロゴ。こういうデザインを見るとすぐにサンプリングのネタ元が気になってしまうもので、ちょっと調べてみたのですが(最初は「N.W.A.」かと思ったけど違いますね)、1986年に公開された「RAD」というBMX映画を発見!これかと勝手に思い込んでいますが、真相はいかに……。予告編を見るだけでおしゃれで可愛くてワクワクするので、これはこれで見てみようと思います。

映画『RAD』予告編

選手たち自らが選んだ場内BGM

BMXフリースタイル会場で流れていた音楽は、選手たち自身の選曲!これは後で知ったのですが、自分のパフォーマンス時に何を流したいかをリクエストして、会場でDJが流していたということです。ということで決勝大会での音楽を出来る限りすべてチェックしていた私が、選手たちのBMXフリースタイル選曲をご紹介します!

【女子決勝戦】※出場順

●Elizaveta Posadskikh(エリザベタ・ポサトスキフ)
ROC代表 27歳
・My Life My Rules / ЛАУД feat. Boulevard Depo & I61
・Baby / Quality Control, Lil Baby, DaBaby

●Minato Oike(大池水杜)
日本代表 24歳
・飛行機 / KOHH
・やってやんぜ / RAM HEAD

●Macarena Perez Grasset(マカレナ・ペレス グラセト)
チリ代表 24歳
・Letra Masacre En Texas / Liricistas
・Kids (Soulwax Mix) / MGMT

●Lara Lessman(ララ マリー・レスマン)
ドイツ代表 21歳
・Numb/Encore / Jay-Z & Linkin Park
・Bro Hymn / Pennywise

●Natalya Diehm(ナタリア・ディーム)
オーストラリア代表 23歳
・Thunderstruck / AC/DC
・Black Betty / Spiderbait

●Charlotte Worthington(シャーロット・ワーシントン)
英国代表 25歳
・Blue (Flume Remix) / Eiffel 65
・Welcome To The Jungle / Guns N' Roses

●Ducarroz Nikita(ニキタ・デュカロズ)
スイス代表 24歳
・Seek & Destroy / Metallica
・Fuel / Metallica

●Perris Benegas(ペリス・ベネガス)
アメリカ合衆国代表 26歳
・Lookin' Fly / Murs feat. Will.i.am
・Come & Go / Juice WRLD feat. Marshmello

●Hannah Roberts(ハナ・ロバーツ)
アメリカ合衆国代表 26歳
・Yes Indeed / Drake & Lil Baby
・Armed & Dangerous / Juice WRLD

【男子決勝戦】※出場順

●Nick Bruce(ニック・ブルース)
アメリカ合衆国代表 29歳
・Memories That You Call / ODESZA feat. Monsoonsiren
・棄権

●Justin Dowell(ジャスティン・ダウェル)
アメリカ合衆国代表 21歳
・Nas Is Like / Nas
・Clap City / Lil Wayne

●Declan Brooks(デクラン・ブルックス)
英国代表 25歳
・Haiti (Nathan Dawe Remix) / Welshy
・Excuses / MENTIS feat. Kate Wild

●Kenneth Tencio Esquivel(ケネト ファビアン・テンシオ エスキベル)
コスタリカ代表 27歳
・Fire Face / Patterns
・Burning Man / Patterns

●Irek Rizaev(イレク・リザエフ)
ROC代表 23歳
・ДУЛО / MORGENSHTERN
・Broke Bitch / Tiny Meat Gang

●Anthony Jeanjean(アントニー・ジャンジャン)
フランス代表 23歳
・Shabba / A$AP Ferg feat. A$AP Rocky
・El Chapo / The Game & Skrillex

●Daniel Dhers(ダニエル・デルス)
ベネズエラ代表 36歳
・In The End / Linkin Park
・Headlines / Drake

●Rim Nakamura(中村輪夢)
日本代表 19歳
・GO AHEAD / 13ELL feat. SNEEEZE
・‎HIGH AIR / ANARCHY

●Logan Martin(ローガン・マーティン)
オーストラリア代表 27歳
・GO / The Kid LAROI, Juice WRLD
・‎Diva / The Kid LAROI feat. Lil Tecca

(※楽曲は筆者が独自に調べたものです)

こうやって一覧にして見てみると、自国にまつわるミュージシャンの選曲が多いですね。コスタリカ代表のKenneth Tencio Esquivelが選んだPatternは、コスタリカのシンガーMishCatt率いるトロピカルディスコバンド。オーストラリア代表で金メダリストのLogan Martinは同国出身のラッパー、The Kid LAROIを選曲。オートチューンがかかった「ウォーオオゥ!」という歌声にあわせてバックフリップをしたり、まるでダンスをするようにトリックを決めているのも面白かったです。ROC代表が選んだロシア語の曲も新鮮で、聴いてみたら意外と病みつきになりました。また日本代表の中村輪夢選手が最後に選んだのは、ラッパーのANARCHYが彼の応援ソングとして書き下ろした「HIGH AIR」。昨年秋の骨折で辛い日々を送る中、大きな力をもらったであろうこの曲が会場に響いた瞬間は、見ているこちらも思わず目頭が熱くなりました。

■殴り書きの会場BGMメモ



ちなみに以下は予選(全部わからなかった!)。



最後に……アメリカ合衆国代表Nick Bruce選手について書きたいと思います。上記の選曲でも2つめに「棄権」と記載しましたが、実は今回出場したものの直前の怪我でパフォーマンスができませんでした。Instagramを見ると開会式までは元気でいたようなので、ほんの数日前に肩に重い怪我を負ってしまったようです。大会時は力を振り絞って走り出しましたが、ジャンプ台からスロープを滑った僅か数秒でバイクは身体から離れてしまいました。

自身のInstagramでは「思い描いていたオリンピックとは違うけど、使える少しの腕の力で今日できることをやりました。オリンピック史上ベストなゴーストライドができて誇りに思います。BMXが舞台に上がる歴史的瞬間を見れて本当に感動した。どれだけ時間がかかるかわからないけど、復帰できるのを楽しみにしています。そして2024年パリ大会まであと3年、また出場できるように頑張ります」という主旨のコメントを投稿しています。

本当は欠場という選択もあったかもしれないのに、少しでも舞台に立ちたいとの思いでペダルを漕いだ彼の勇姿に、会場は温かな拍手と歓声で包まれていました。3年後、最高のライダーにまた会えるのを楽しみに待ちたいと思います!

長くなりましたがBMXフリースタイルの魅力や楽しさがお伝えできたら嬉しいです。お付き合いありがとうございました。オリンピック取材隊の場内レポート、次回もお楽しみに!

(Writer:Kana Shionoya)

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