金子大地が振り返る、くすぶっていた時期。東京は「やっと最近、嫌ではなくなりました」

金子大地と石川瑠華がW主演を務める映画『猿楽町で会いましょう』が現在、劇場で公開されている。都会に生きる男女のリアルな性愛を描き出す作品だ。

東京で暮らす駆け出しのカメラマン・小山田修司と、読者モデルの田中ユカは、プロフィール写真の撮影をきっかけに出会って恋仲となる。しかし、ユカの言動には不可解な点があり──「その嘘は本当ですか?」というキャッチコピーの通り、小山田は翻弄されていく。

映画『猿楽町で会いましょう』/(C)2019オフィスクレッシェンド)

同作は、この世に存在しない映画の予告編を募集するコンテスト「第2回 未完成映画予告編大賞 MI-CAN」のグランプリ獲得を機に制作された。2019年に撮影、2020年4月に公開予定だったが延期に。そして2021年6月、ついに公開にこぎつけた。

今回は小山田を演じた金子に、役柄のことや、映画の舞台となった東京への思いをインタビュー。また、プライベートな一面にも迫った。

金子大地が共感した、「何者でもない若者」

──金子さんは、ミステリアスな青年から一癖あるキャラクターまで、さまざまな役を演じています。これまでの役のなかで、小山田は最も実在しそうな若者だと感じました。脚本を読んだときに、自分と重なる部分はありましたか。

金子:撮影当時はまだ22歳で、自分の未完成さを痛感することがすごくあったんです。そこは共感できたなというか……まだ何者でもないカメラマンの小山田の状況と、何者でもない僕というのは、リンクする部分がありました。指針のなさ、余裕のなさは、自分がくすぶっていた時期を思い出しながら演じていましたね。

――小山田が恋をする読者モデルのユカも同じように、何者でもない女性です。つかみどころがないけれど、よくいる“謎めいたヒロイン”とはまた違う、透明な人物でしたね。小山田からはどう見えていたのでしょう。ともに夢を追う人なのか、もう少しまぶしい存在なのか。

金子:なんて言うんでしょうね。小山田はある意味、誰でもよかったんだと思うんです。たまたまユカだった、というのが一番しっくりきます。まだ何者でもなくて、暇で、孤独で。そういうときに、ちょっといいなと思う子に出会ったら、依存してしまうと思うんです。自分の生活の穴埋めになると思うので。小山田はべつに恋愛がしたいと思って生活していたわけではないと思うんですけど、どこか孤独を感じていたんじゃないかなって。自分に自信がないから彼女しか目が行かないけど、彼女は何を考えているかわからない。そうなると、よりいっそう余裕がなくなるだろうなと。僕も18歳で北海道から上京して働き始めたので、暇や孤独を感じる小山田の心境はわかる気がします。

──金子さんは俳優として順風満帆にキャリアを積んでいるようにも見えますが、駆け出し時代はやはりつらかった?

金子:そうですね。3、4年ぐらいはくすぶっていて、すごく長く感じました。ホームシックでしたし、「もうやめようかな」と思ったこともあります。今はやっと、少しずつお仕事をいただけるようになったので、頑張らなきゃ!という気持ちがありますね。

第二の青春をすごした東京への思いは?

――東京という街への印象は変わりましたか。

金子:うーん……。狭い世界だなと思います、東京って。あとは……東京に来たときの新鮮な印象というのは、今も変わらずあります。「たくさん人がいる」ということもそうですし、仕事がなかったときの思い出も残っているので、リアルな街だなと感じます。東京で出会った人たちはすごく好きだし、第二の青春だと感じる場所ではあるというか。やっと最近、嫌ではなくなりましたね。

――『猿楽町で会いましょう』は2019年という新型コロナ以前の東京が映し出されていますね。公開が延期になったことで、作品に新しい意味合いが生まれたように思います。

金子:生活のすべてが当たり前ではなくなりましたよね。僕、(2020年から2021年の間に)舞台に3作品出演させてもらっているんですが、そのうちの2本は途中で中止になってしまって。それは他の人も平等なので、なんとも言えないんですが……今こうやって誰もがマスクをしているように、2年でこんなにも変わるんだっていうのは実感しましたね。 でも、だからこそ、2年越しの公開でよかったんじゃないかとも思います。2019年は当たり前だと思っていた世界が、東京が、映像には残っているので。

――出演された舞台といえば、『ザ・空気 ver.3』ではコメディパートをすごく担っていらっしゃいましたね。『おっさんずラブ』のマロと『チート〜詐欺師の皆さん、ご注意ください〜』の加茂ちゃんを足して2で割ったような、独特な若者キャラでした。来年は大河ドラマにご出演ということで、また演じる役柄が広がりそうです。

金子:たしかにちょっと似てるかもしれないですね。ああいうキャラクターの役が多いんです(笑)。僕はほんとに不器用なので、一個一個、努力するしかないなと思っています。一つひとつの役に全力で向き合って、たくさん経験していきたいですね。この仕事をやっていると、どんどん自分のやりたいことが明確になって、幸せだなと感じるんです。苦手意識をどんどんなくして、いろんなことに挑戦していきたいなと思います。

年下への俳優やミュージシャンに「すごさ」を痛感

――金子さんは音楽がお好きだそうですね。以前、J-WAVEでも好きな音楽をご紹介いただきました。聴き始めたきっかけは?

金子:よく聴くようになったのは、東京に来てからですね。親友がすごく聴くので、僕も影響を受けて。最近よく聴くのは、Vaundyさんとか。いいなあと思いますね。なかでも『不可幸力』がかっこいい。僕よりぜんぜん年下で……年下の才能のある人が多すぎて、すごいなあと。

──金子さんは今、おいくつでしたっけ。

金子:24歳です。……僕も若いと思うんですけど(笑)。でもやっぱり映画を観たりしたときに、「この人すごい」と思ったら年下の人だったっていうことも多くて。そのたび「やっぱりすごい人はたくさんいるな」と痛感しますね。

――最近、「この人すごい」と思った方はいますか?

金子:たくさんいます。例えばこの前、久々に、僕も出演した映画『14の夜』を観返したんです。主演の犬飼(直紀)くんも、仲のいいメンバーで出ている人たちもみんな、今ちょうど二十歳になったくらいかな。みんなすごいですし、同じ事務所にもすごい方がたくさんいらっしゃいますし、リスペクトしています。すごいなあ、うらやましいなあと……。

――けっこうネガティブなほうですか?

金子:ネガテイブではないです(笑)! そういうことが刺激になって、頑張ろうと思えるんです。

衣装:ジャケット¥59,000、パンツ¥46,000(共にkenichi.) シューズ¥43,000(APOCRYPHA./共にSakas△PR TEL 03-6447-2762>

(取材・文=西田友紀/撮影:竹内洋平/ヘアメイク:Taro Yoshida(W)/スタイリスト:千葉潤也)

【作品情報】
映画『猿楽町で会いましょう』
公式サイト: http://sarugakuchode.com/

■出演
金子大地 石川瑠華
栁 俊太郎
小西桜子 長友郁真 大窪人衛 呉城久美 岩瀬 亮 / 前野健太

監督:児山 隆
主題歌:春ねむり『セブンス・ヘブン』

配給:ラビットハウス、エレファントハウス
(C)2019オフィスクレッシェンド

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