milet、狂気の世界観を再現した「地を這いつくばる」サウンド。主題歌の制作で楽しんだ熱量のぶつけ合い

デビューからいままで多くの主題歌を担当し、昨年末には第71回NHK紅白歌合戦に初出場を果たし大躍進を遂げたシンガーソングライター・milet(ミレイ)。そんな彼女の2021年初となるデジタルシングル『checkmate』もまた映画の主題歌として書き下ろされた楽曲だ。

『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』の主題歌となる今作はmiletに抱いていた印象をガラリと変えるアッパーなサウンドに仕上がっており、英詞と日本詞を自由に行き交うソングライティングはいままで以上にグローバルな様相を呈している。(映画は4月29日の公開が延期となり、5月12日(水)に公開が決定した/4月30日追記)

今回は、『賭ケグルイ』作品のファンだったと話すmiletにオファーを受けたときの気持ちや楽曲に込めた想いなどについて話を聞く。『賭ケグルイ』愛が溢れ、ミステリアスな印象だった彼女の知られざる素顔が垣間見られた一部始終を堪能していただきたい。

“狂い方”が桁違い! miletの『賭ケグルイ』推しキャラは?



――miletさんは原作のファンだったということですが、ファンになったキッカケはあるんですか?

milet:初めて観たのは深夜に放送していたアニメだったんです。イラストもかわいいし、「学園モノのアニメをやっているな」となんとなく観ていたんですけど、だんだん様子が変わってきて……(笑)。キャラクターの顔がどんどん狂ってきて、生徒がギャンブルをしてるという……。なんだコレ!と思ったんですけど気づいたらハマっていました。アニメを観たあと、ドラマ、映画の一作目と観ていきました。

――ちなみに、『映画 賭ケグルイ 絶体絶命ロシアンルーレット』はご覧になりました?

milet:はい! すごく面白かったです! ギャンブルをするシーンの見せ方が本当に上手で、観ていてハラハラしました。今作から初めて『賭ケグルイ』を観る方でも、きっと推しキャラが見つかるんじゃないかなって思います。ネタバレになってしまうからあまり詳しく言えませんけど、私は最後のギャンブルのシーンで痺れましたね。みんなの言動がカッコよすぎでした。

――すごく楽しまれたんですね。miletさんの推しキャラは誰なんですか?

milet:生志摩 妄です。今作は活躍どころがたくさんあってすごく嬉しかったです。

――生志摩のどんなところに魅力を感じますか?

milet:生志摩の狂い方って、桁が違うというか。緊張感みたいなものが、いい意味でないんですよ。すべてがどうでもよくなってしまっている狂い方に憧れてしまうんですよね(笑)。でもそこが愛すべきポイントというか。命をかけてギャンブルをする姿は本当にリスペクトします。柳 美稀さんが演じる生志摩の再現度の高さには驚きました。こんなに生志摩にピッタリな人がいるのかって。これはすべてのキャラクターに言えることなんですけど、再現度だけじゃなくオリジナリティも追求していて本当にすごいと思います。

地に這いつくばりながら、うごめく。サウンドも歌詞も挑戦だった



――そんな大ファンの作品の主題歌を担当することになったわけですけど、率直な想いを教えてください。

milet:「ついに!」という感じです。実はアニメから観ているときに、「この作品に合わせて、カッコいい曲が作れそう」と思っていたんです。でもまさか本当に歌わせていただけるとは思ってもいなかったので、率直に嬉しかったです。

――『checkmate』はいままでのmiletさんの印象とは異なるサウンド・メイクが特徴的な楽曲だったと思うんですが、今作でこだわったところなどはありますか?

milet:今作は、『賭ケグルイ』の世界観がいい意味で狂っているので、私も一緒に狂えたらいいなと思いながら制作をしていきました。確かにいままでここまでアッパーな曲はなかったですね。ヒップホップテイストでありつつブラスの音を足してみたり、ビートが効いてベースがローで響いていたりとか、サウンド面では地に這いつくばりながら、うごめいているような音を曲の中に閉じ込めたいなと思っていました。

――なるほど。歌詞についてはいかがですか?

milet:歌詞は自由な感じを表現したいなと思って、英語や日本語、ときどきフランス語を自由に行き交う歌詞に仕上がったと思います。サウンドも歌詞も、いままでにやったことのないことに挑戦させていただきました。



――聴かせていただいて、ギャンブルが強いものが正義という『賭ケグルイ』の世界観にばっちりハマってるのはもちろんなんですけど、miletさんの内にあるソウルの部分が垣間見られる一曲に仕上がったのかなって個人的には思いました。

milet:『checkmate』は、歌い上げるというよりは高笑いして歌う感じにしました。気持ち的にはずっと喋ってる感じでしたね。素の自分を出したというか。私がもし命を落とすかもしれないギャンブルをするんだったら、きっと生志摩タイプなんです(笑)。楽しくて興奮して「終わるなら、終わっちゃえ!」と感じるタイプだと思う。そんな私がこの曲を歌うならこうだろうな、と。

――普段のイメージとは異なりますね。そんなタイプだったとは(笑)。

milet:終わるなら派手にいこうぜタイプですね(笑)。あと、この曲で好きなのは英語が飛び交う中でキーワードとなる日本語の「再演希望」というフレーズ。これは『賭ケグルイ』の「公式戦」という設定からインスピレーションを受けました。公式戦は、最下層の“家畜”たちが、下剋上を目論んでトップの人間たちと命をかけてギャンブルをするというもの。公式戦のシーンを観て、「再演希望」というフレーズが思い浮かんだんです。思い浮かんだとき、本当に自分は『賭ケグルイ』にハマってるなと(笑)。でもすごくいいパンチになったフレーズだと思います。

主題歌は「パッションのぶつけ合い」が楽しい

――miletさんは今作のほかにも多くの主題歌を手掛けられていますが、主題歌以外の楽曲との制作の違いはあったりするんですか?

milet:そうですね。作品があるというのはすごく楽しいんですよね。映画やドラマは作り手側の情熱や願い、熱量を込めているものだと思いますし、その気持ちを理解して私もその作品の一部分になれるというのは本当に嬉しいです。私自身、音楽に込めたい思いがたくさんあるから、パッションのぶつけ合いができるのがすごく楽しいですね。映像作品に携われることは自分にとってもすごく大きいことなので、普段の制作とは違ったやる気が湧きます。



――先ほど、パッションのぶつけ合いとおっしゃいましたが、今作にはどんなパッションを込めましたか?

milet:映画を一作目から観ていて、内から出る人間の生々しさのようなものを感じられる作品だと思ったんです。だから私も自分の泥臭さや血生臭さを出すことを目指しました。あとは、歌っているときの自分はどこか別人格のような感覚があって、そこが『賭ケグルイ』の世界観と近しい部分があると思っていたので、そこを表現しました。

主題歌はエンディングで流していただきますが、どの場面で流れてもカッコいい曲で世界観に合うようにしたいなって。自分で言うのもアレですけど、本当に世界観に合う作品ができたなって思ってます!

――最後になりますが、これから『checkmate』を聴く方へメッセージをお願いします。

milet:『checkmate』は『賭ケグルイ』の狂った世界観と同じくらい狂いながら作らせていただいた作品です。映画の世界観にハマっていること間違いないですし、映画館では5.1chサラウンドシステムで楽しめます。音が飛び交うど迫力なサウンドをぜひ劇場で楽しんでください。最高のギャンブル対決を観たあと、『checkmate』を聴いて余韻に浸っていただければと思います!





(取材・文=笹谷淳介、撮影=竹内洋平、HM:枝村香織、 STY:入江陽子(Tron)、ジャケット、パンツ:KANAKO SAKAI、ネックレス、リング:Charlotte Chesnais)

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