女王蜂は楽しいまま“最高”を更新する。アヴちゃんがアイナ・ジ・エンドに明かした思い

J-WAVE(81.3FM)×「MUSIC FUN !」連動企画である、深夜の音楽座談プログラム『WOW MUSIC』。“すごい”音楽をつくるクリエイターが“WOW”と思ういい音楽とは? 毎月1人のクリエイターがマンスリープレゼンターとして登場し、ゲストとトークを繰り広げる。

2月のマンスリープレゼンターはBiSHのアイナ・ジ・エンド。2月6日(土)のオンエアでは、4人組バンド・女王蜂のアヴちゃん(Vo.)が登場。ここでは、アヴちゃんのターニングポイントや、“最高”を更新していきたいというアーティストとしての思いを語ったパートをお届けする。

アイナ、物怖じしないアヴちゃんに憧れ

アイナとアヴちゃんが会うのは今回で2回目。初めて会ったのは鹿児島で開催されたロック・フェスティバル「THE GREAT SATSUMANIAN HESTIVAL」のバックヤードだったという。アイナはそのとき、アヴちゃんの「物怖じしない様」に驚いたのだとか。

アイナ:「こんな人いるんだ」ってけっこうビックリしたんです。
アヴちゃん:なんで、なんで?
アイナ:いまもそうなんですけど、私は人見知りというか緊張しいなんですよ。でもアヴちゃんさんはもう5年ぐらいの付き合いみたいな感じ(笑)。
アヴちゃん:「アヴちゃん」で大丈夫ですよ。
アイナ:本当ですか? それをお聞きしたかったんです。
アヴちゃん:じゃあ「アヴちゃん」と「アイナさん」でお話できたらなと。
アイナ:「アイナ」でいいですよ。
アヴちゃん:じゃあ「アイナちゃん」。
アイナ:よろしくお願いします。

「ミュージシャン」にカテゴライズされることへの疑問

アイナは、収録前のアンケートでアヴちゃんが「『ミュージシャン』というカテゴライズに自身を当てはめていない」と書いていたことに興味を抱き、質問を投げかけた。

アイナ:あんまり自分でミュージシャンだって思わないんですか?
アヴちゃん:ないですね。ミュージシャン……。うーん、わからない。ステージには立っているけれども、ミュージカルの舞台に立ったりもしましたし、普段はバンドというところにしっかり基軸を置いてやっているんですけれど、あんまり「ミュージシャンです、自分」という感じはちょっとわからないですね。
アイナ:私も自分のことを歌ったり踊ったりしているけれど、「ダンサーや歌手に当てはまるのかな?」って常に考えていて、そういうことをたとえば人に言っても「へえ」ぐらいだったので、このアンケートを見たときに「あ、同じ考えの人がもしかしたらいるのかも?」と思って、ちょっと勝手に……。
アヴちゃん:親近感を?
アイナ:はい、うれしくなりました。
アヴちゃん:うれしい。「いま私はこのお仕事をしています」っていうことは、すごく確固たるものがあるんだけど、やっぱり音楽だけをやっているわけでもないし、ステージってたぶん音や踊りだけじゃなくて、もっともっと複合的なものだと思っているから、それを「ミュージシャンだよね?」って言われたりすると「音楽を媒介にしているのだが……」みたいな、ちょっと面倒くさい自分が出てきてしまったりしますね。

身を投げるような気持ちだった女王蜂。活動休止が転機に

女王蜂は2013年から約1年間活動を休止して、2014年に再開。アイナも2016年に声帯結節の手術のため1カ月の活動休止を経験している。アイナは同じ経験をしたアヴちゃんに、その期間はどのような想いだったのかと問いかけた。

アイナ:私の場合はそれが喉の手術だったので、精神的なものではなかったんですけど、きっとこれは人生のターニングポイントにもなっているんじゃないかなと思って。
アヴちゃん:アイナさんが自分の喉の手術をなさっているときって、リハビリがすごくつらかったりはあったと思うんですけど、「これを治したらよくなる、もっと歌えるようになる」と、なにかを見越してお休みしている状態だったと思うんです。だけど私たちは、初めて組んだバンドが女王蜂で、10代の暴走みたいな感じで女王蜂を組んでデビューしたんだけど、本当に「メジャーデビューってなに?」とか、ちっちゃいライブハウスでやっているテンションとまったく変わらない状態。それはいいことでもあるんですけど、大きくなっていることがよくわからなくて、やり続けるのは大事だけど技術がないから、毎回、言い方は失礼ですけれども、身を投げるような気持ち、「ボロボロになってもいい」という気持ちで、ボロボロになり続けていたんですね。

極限状態で活動を続けていたことが休止に繋がったと告白するアヴちゃん。「ステージに立てない、生き甲斐がない、でも曲はできちゃう」という状況のなか、獄門島一家(ごくもんとういっか)といったプロジェクトを立ち上げるなどしたものの、胸中には葛藤があったという。

アヴちゃん:なんで先がないのに曲が書けちゃうのか意味がわからなかったし、どういうことなんだろうと思って。でも最終的にこれは業(ごう)なんだなって。誰が見ていようといまいとやってしまう、そういったものが私にはあるんだなっていう確認をするとても必要な時間、ターニングポイントだったなと思った。めでたくまた始めることができたからよかったんですけれど、もし始めることができなかったら絶対ここには立っていないし、もっとサグいというか、激烈な人生があったんじゃないかなと思いますね。
アイナ:なんか、鳥肌が……。
アヴちゃん:なんで(笑)。
アイナ:こうやって目の前にいま、自分より何年もバンドをやっているなかでいろいろな葛藤がある人がいて、その言葉がすごく重いんです。
アヴちゃん:女王蜂は10代のテンションのままできちゃっている部分もあるし、逆にちょっとおばあちゃんみたいな、なんか老成しているというとあれなんですけど、「これはこうだよね」っていう覚悟がはじめから決まっている部分もあったりするんです。同世代のバンドをやっているお友だちとお話すると、やっぱり共有できなかったり。なんて言うのかな。「イケてる、イケてないの話じゃなくて」というところがすごくあるから、“旬”というのがわからない。“最高”を更新しないとステージに立つことがすごくボヤけてきてしまうような気がする。アイナさんもそういうところがあるんじゃないかなって勝手に思っています。

どうやったら「楽しいまま」を続けられるか?

率直な気持ちを語るアヴちゃんに、アイナは「なんでアヴちゃんとお話ができてうれしいっていう気持ちになるのかが今日わかった気がします」とコメントし、自身の音楽活動への想いを打ち明けた。

アイナ:ずっと自分のなかで年齢だけが大人になっていって、ずっと子どもの心みたいなものがあるから、それを一生懸命守るためにお母さんぽく振る舞っている自分もいたりするなって。それが音楽にも出たりするし、逆に小さいころの記憶を呼び覚まして書いたりしているときがあって。やっぱりそれを私小説みたいに出すと、「イケてる、イケてない」で評価されて「いや、本当にそうじゃないな」とか。
アヴちゃん:ふと思うんです。私はカワイイおばあちゃんになりたい。そして女王蜂をやっていたい。でもそのためには素敵なマダムにならないといけないし、素敵なお姉さんをやらないといけない。たとえば喉がどんどん使えなくなっていくこともあるかもしれないし、考えたことなかったけれど、曲が書けないという日が来るかもしれない。でも一生歌っていたいし、ミニスカートやヒールを履いて憧れたPerfumeのように踊りたい。そう思ったときにフッと軽くなったというか。「どうやったら細く長く続けられるんだろう?」ではなく「どうやったらこの『楽しいまま』を続けられるのかしら?」って思ったんです。幼いころの自分だったり、いまの自分を自分で発見して直して、「大丈夫?」って聞いてあげることができるのもまた、音楽や書くことのすばらしさでもあるからね。それを楽曲からもすごく感じました。
アイナ:うわ、ありがとうございます。こんな話をしてくれるなんて思ってなかったので……。全部「秘密です」って言われるかと思ってました(笑)。
アヴちゃん:そっか(笑)。でもわりと自分でもよくわかってないだけなんですよね。「保留です」っていう場合はだいたい自分でも持ち帰りたいときなので。女王蜂自体が謎めいていると思われることもあると思うんですけど、すごく素直なギャルたち。ギャルサーなので。
アイナ:あはは(笑)。

『WOW MUSIC』のオンエアは毎週土曜24時-25時。『MUSIC FUN !』のYouTubeページには、同番組のトーク動画のほか、ミュージシャンやプロデューサーによる音楽の話が数多く配信されている。

・『MUSIC FUN !』のYouTubeページ
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2021年2月13日28時59分まで

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