J-WAVEで放送中の番組『ROPPONGI PASSION PIT』(ナビゲーター:DEAN FUJIOKA/三原勇希)。各界で活躍する情熱を持ったゲストを迎えて、「好き」や「情熱」をテーマにトークを展開。
1月9日(土)のオンエアでは、ジャッキー・チェンやドニー・イェンなど香港スターに認められたアクション監督の谷垣健治が登場。谷垣が監督を務めた映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』が1月1日より公開中だ。
谷垣は今年に最終章の公開が予定されている映画『るろうに剣心』シリーズのアクション監督も務めている。
三原:アクション監督とはどういうお仕事なんですか?
谷垣:アクションシーンの責任者と思ってもらったらいいと思います。アクション監督にもいろいろいますけど、僕の場合は俳優とのトレーニングから始まり、ロケハンやいろいろな部署との打ち合わせ、そのあとに簡単なショットリストを作って、それをもとに撮影します。それがOKだったか映画監督とモニターを見ながら一緒に判断して、編集してポストプロダクションで効果音の確認までをワンパッケージとしてアクション監督としています。それが普通かどうかは分からないけど、僕が付いてきた香港のアクション監督はみんなそんな感じでやっていたので、僕はそれがアクション監督だと思ってやっています。
これまでに様々なアクションシーンを経験しているDEANが、日本と中華圏のアクションスタイルの違いについて質問を投げかける。
谷垣:日本はちゃんと準備をする時間があるけど、撮影時間は少ない。撮影時間は香港が長くて、次に日本、それからアメリカっていう感じですね。例えば撮影が10日間ある場合、香港映画は8日間でアクションを撮って、2日間でドラマを撮るけど、アメリカ映画は2日間がアクションで8日間はドラマを撮る、そんな印象があります。香港の人はその8日間を使って現場でアクションを考えている時間が多いけど、日本は練習とかリハーサルとかでいろいろやって、現場での時間はできるだけ短くする感じですね。
DEAN:確かに、そうですね。
谷垣:だから、トライアンドエラーはリハーサルでやりましょうって感じです。
DEAN:本当にそうですね。僕の俳優デビューは香港で、もちろん脚本はあるんですけど、常にその場で状況を見てどんどん変わっていきましたからね。
谷垣:脚本があるけど、ないに等しいですからね。
DEAN:脚本は準備のためにあるけど、現場に入ったら現場の判断が優先になるから。
ドニー・イェンの作品には、作品の枠組みを作る脚本家と、現場で都度シチュエーションに合わせてセリフを調整するセリフ用の脚本家がいるという。
谷垣:現場では、シチュエーションが変わるときの役者同士のセッションもあるから、よく言うといいものに対して貪欲に変わっていく部分があると思います。
DEAN:そうですよね。
谷垣:日本でやっていると「このシーン埋まりました」って終わりに向けてどんどん引き算をしていくけど、香港映画の特にドニー・イェンの現場は、終わりに向かっていく気がしないんですよね。すごく寄り道して一周まわってもとに戻っているんだけど、それが編集段階になると豊かな寄り道だったとあとから分かるというか。アクションで言うと、たくさん撮ってたくさん捨てていくのが一番いいのかなと思っています。だから、僕の現場は日本でもどこでも、使えるかどうか分からないけど撮って、撮って、撮りまくる。そこで迷ったらおもしろいほうにいきますね。
谷垣:仕事と思うほうが当然ではあるんですけど、そことはちょっと違う考えを持ってやっている人が特にアクション部には多いので、現場であの手この手を使ってリードすることがありますね。そういうときに俳優が「一緒に行こうぜ!」って言ってくれると(ありがたいですよね)。
DEAN:おっしゃる通りですよね。僕は昨年、初めて自分が原案・企画した映画を作ったんです、アクションで。最初からストップをかけられないために、「この座組しかない」と思って作ったんですよね。例えば原作ものだと、とにかくいいものを作ろうと思っても原作者側で「それは意図と違う」と言われてしまうこともある。もちろんそれは大事なことで、小説や漫画など最初に作られたプラットフォームで映えるコンテンツを全力で作っているから、それはそれで守るべきものがある。だけど、映画というプラットフォームになったときに一番いい表現方法とか判断を下すのは、現場がやったほうがよくて。脚本を監督が全部作る場合もあるし、脚本家とタッグを組んでオリジナルコンテンツを作ることもできるけど、なかなか日本はそれだと予算が付かないんです。全力であの手この手を使って、とにかく完全燃焼できるフォーマットを作るにはどうしたらいいかと思って実験的にやりました。
大きな作品になればなるほど多くの人が関わるため、様々な事情が生まれてくる。その事情を「そうだよね」と受け入れることと、「正論だけど、それはなし」と言えるかどうかがすごく重要だと谷垣は語った。
【あらすじ】
熱血刑事フクロン(ドニー・イェン)は、ある事件をきっかけに現場から証拠管理の部署へ異動。さらに事件を追うあまり大切な約束をすっぽかし、婚約者に見放されてしまう。外回りがなくなったことと暴飲暴食がたたり、半年後、フクロンはポッチャリ刑事“デブゴン”になっていた…!!しかし、その外見とは裏腹に並外れた身体能力と正義に燃える心は消えていなかった。容疑者を護送するため日本に降り立ち、日本の遠藤警部(竹中直人)と協力し、新宿歌舞伎町、築地市場、そして東京タワーなどを舞台に巨大な陰謀に立ち向かう!!
(映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』公式サイトより)
谷垣:もともとこの映画は1980年代のアクション・コメディーを目指した作品です。今、アクション・コメディーは香港でも見られなくなってきてるんですよね。作り手も演者もいなくなってしまって。ブルース・リーやジャッキー・チェンへのリスペクトも入れつつ、ちゃんとしたアクション・コメディーをちゃんとした予算でやりたいなと思い作りました。昔の香港映画って旅行映画って感じもあるので、そういう意味では香港人が分かりやすい日本を舞台にして、築地市場とか東京タワーのシーンを入れたりしました。
DEAN:東京タワーのシーンってどうやって撮ったんですか?
谷垣:歌舞伎町と東京タワーは中国にセットを組んで撮りました。すごいセットでしたね。ちなみにDEANさんはドニー(イェン)と会ったことはあるんですか?
DEAN:まだお会いしたことがないんですよ。でも、めっちゃ好きで、超リスペクトしてます。アジア人のコミュニティの中で、例えばマニー・パッキャオ、ジェット・リー、ドニーとかは憧れですね。
谷垣は、ドニー・イェンは映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などにも出演し、その役柄から厳格な人のように感じられるが、実際は難しい人ではないと明かす。
谷垣:基本的にはアメリカの兄ちゃんって感じで、すごく気さくな人ですね。ドニーもブルース・リーがすごく好きなんだけど、ブルース・リーの映画が好きなだけではなくて、彼のアメリカでの「俺はこうだ!」っていうへつらわない姿勢というか、自我があるあの感じが、1970年代にボストンに住んでいたドニーにとってはすごくクールに見えたんです。それがアジアをレプリゼント(代表)するって意味ではドニーのやりたいようにはなっているのかなと思います。
この番組では毎回ゲストに、自分が思う「情熱」とはなにかを訊く。谷垣は「好きなことに対して正直になり、貪欲になり、突き詰めること」と答えた。
番組では他にも、谷垣が香港に渡った理由や、ドニー・イェンとの出会いについて語る場面もあった。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱"が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
1月9日(土)のオンエアでは、ジャッキー・チェンやドニー・イェンなど香港スターに認められたアクション監督の谷垣健治が登場。谷垣が監督を務めた映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』が1月1日より公開中だ。
香港映画、脚本はあるけどないに等しい
谷垣は1993年に単身で香港に渡り、香港アクションの巨匠ドニー・イェンのもとで多くの作品に携わる。香港映画界の中でアクション指導をするようになり、ジャッキー・チェンが会長を務める、香港スタントマン・アソシエーション唯一の日本人会員でもある。現在は国内外を問わず、映画監督やアクション監督、スタントコーディネーターとして活動している。谷垣は今年に最終章の公開が予定されている映画『るろうに剣心』シリーズのアクション監督も務めている。
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』【特報2】2021年4月23日(金)/6月4日(金)2部作連続公開
谷垣:アクションシーンの責任者と思ってもらったらいいと思います。アクション監督にもいろいろいますけど、僕の場合は俳優とのトレーニングから始まり、ロケハンやいろいろな部署との打ち合わせ、そのあとに簡単なショットリストを作って、それをもとに撮影します。それがOKだったか映画監督とモニターを見ながら一緒に判断して、編集してポストプロダクションで効果音の確認までをワンパッケージとしてアクション監督としています。それが普通かどうかは分からないけど、僕が付いてきた香港のアクション監督はみんなそんな感じでやっていたので、僕はそれがアクション監督だと思ってやっています。
これまでに様々なアクションシーンを経験しているDEANが、日本と中華圏のアクションスタイルの違いについて質問を投げかける。
谷垣:日本はちゃんと準備をする時間があるけど、撮影時間は少ない。撮影時間は香港が長くて、次に日本、それからアメリカっていう感じですね。例えば撮影が10日間ある場合、香港映画は8日間でアクションを撮って、2日間でドラマを撮るけど、アメリカ映画は2日間がアクションで8日間はドラマを撮る、そんな印象があります。香港の人はその8日間を使って現場でアクションを考えている時間が多いけど、日本は練習とかリハーサルとかでいろいろやって、現場での時間はできるだけ短くする感じですね。
DEAN:確かに、そうですね。
谷垣:だから、トライアンドエラーはリハーサルでやりましょうって感じです。
DEAN:本当にそうですね。僕の俳優デビューは香港で、もちろん脚本はあるんですけど、常にその場で状況を見てどんどん変わっていきましたからね。
谷垣:脚本があるけど、ないに等しいですからね。
DEAN:脚本は準備のためにあるけど、現場に入ったら現場の判断が優先になるから。
ドニー・イェンの作品には、作品の枠組みを作る脚本家と、現場で都度シチュエーションに合わせてセリフを調整するセリフ用の脚本家がいるという。
谷垣:現場では、シチュエーションが変わるときの役者同士のセッションもあるから、よく言うといいものに対して貪欲に変わっていく部分があると思います。
DEAN:そうですよね。
谷垣:日本でやっていると「このシーン埋まりました」って終わりに向けてどんどん引き算をしていくけど、香港映画の特にドニー・イェンの現場は、終わりに向かっていく気がしないんですよね。すごく寄り道して一周まわってもとに戻っているんだけど、それが編集段階になると豊かな寄り道だったとあとから分かるというか。アクションで言うと、たくさん撮ってたくさん捨てていくのが一番いいのかなと思っています。だから、僕の現場は日本でもどこでも、使えるかどうか分からないけど撮って、撮って、撮りまくる。そこで迷ったらおもしろいほうにいきますね。
使命か仕事か、その意識で現場のありようが違ってくる
谷垣が映画を作ることが使命と思う人か、仕事と思う人かで現場のありようが違ってくると話すと、DEANもこれに同意する。谷垣:仕事と思うほうが当然ではあるんですけど、そことはちょっと違う考えを持ってやっている人が特にアクション部には多いので、現場であの手この手を使ってリードすることがありますね。そういうときに俳優が「一緒に行こうぜ!」って言ってくれると(ありがたいですよね)。
DEAN:おっしゃる通りですよね。僕は昨年、初めて自分が原案・企画した映画を作ったんです、アクションで。最初からストップをかけられないために、「この座組しかない」と思って作ったんですよね。例えば原作ものだと、とにかくいいものを作ろうと思っても原作者側で「それは意図と違う」と言われてしまうこともある。もちろんそれは大事なことで、小説や漫画など最初に作られたプラットフォームで映えるコンテンツを全力で作っているから、それはそれで守るべきものがある。だけど、映画というプラットフォームになったときに一番いい表現方法とか判断を下すのは、現場がやったほうがよくて。脚本を監督が全部作る場合もあるし、脚本家とタッグを組んでオリジナルコンテンツを作ることもできるけど、なかなか日本はそれだと予算が付かないんです。全力であの手この手を使って、とにかく完全燃焼できるフォーマットを作るにはどうしたらいいかと思って実験的にやりました。
大きな作品になればなるほど多くの人が関わるため、様々な事情が生まれてくる。その事情を「そうだよね」と受け入れることと、「正論だけど、それはなし」と言えるかどうかがすごく重要だと谷垣は語った。
ちゃんとしたアクション・コメディーをやりたかった
谷垣が監督を務める、ドニー・イェン主演の映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』が1月1日より公開中だ。『燃えよデブゴン/TOKYO MISSION』本予告
熱血刑事フクロン(ドニー・イェン)は、ある事件をきっかけに現場から証拠管理の部署へ異動。さらに事件を追うあまり大切な約束をすっぽかし、婚約者に見放されてしまう。外回りがなくなったことと暴飲暴食がたたり、半年後、フクロンはポッチャリ刑事“デブゴン”になっていた…!!しかし、その外見とは裏腹に並外れた身体能力と正義に燃える心は消えていなかった。容疑者を護送するため日本に降り立ち、日本の遠藤警部(竹中直人)と協力し、新宿歌舞伎町、築地市場、そして東京タワーなどを舞台に巨大な陰謀に立ち向かう!!
(映画『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』公式サイトより)
谷垣:もともとこの映画は1980年代のアクション・コメディーを目指した作品です。今、アクション・コメディーは香港でも見られなくなってきてるんですよね。作り手も演者もいなくなってしまって。ブルース・リーやジャッキー・チェンへのリスペクトも入れつつ、ちゃんとしたアクション・コメディーをちゃんとした予算でやりたいなと思い作りました。昔の香港映画って旅行映画って感じもあるので、そういう意味では香港人が分かりやすい日本を舞台にして、築地市場とか東京タワーのシーンを入れたりしました。
DEAN:東京タワーのシーンってどうやって撮ったんですか?
谷垣:歌舞伎町と東京タワーは中国にセットを組んで撮りました。すごいセットでしたね。ちなみにDEANさんはドニー(イェン)と会ったことはあるんですか?
DEAN:まだお会いしたことがないんですよ。でも、めっちゃ好きで、超リスペクトしてます。アジア人のコミュニティの中で、例えばマニー・パッキャオ、ジェット・リー、ドニーとかは憧れですね。
谷垣は、ドニー・イェンは映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などにも出演し、その役柄から厳格な人のように感じられるが、実際は難しい人ではないと明かす。
谷垣:基本的にはアメリカの兄ちゃんって感じで、すごく気さくな人ですね。ドニーもブルース・リーがすごく好きなんだけど、ブルース・リーの映画が好きなだけではなくて、彼のアメリカでの「俺はこうだ!」っていうへつらわない姿勢というか、自我があるあの感じが、1970年代にボストンに住んでいたドニーにとってはすごくクールに見えたんです。それがアジアをレプリゼント(代表)するって意味ではドニーのやりたいようにはなっているのかなと思います。
この番組では毎回ゲストに、自分が思う「情熱」とはなにかを訊く。谷垣は「好きなことに対して正直になり、貪欲になり、突き詰めること」と答えた。
番組では他にも、谷垣が香港に渡った理由や、ドニー・イェンとの出会いについて語る場面もあった。
『ROPPONGI PASSION PIT』は、東京・六本木に出現した、いろいろな人の“情熱"が集まり、重なり合い、さらに熱を増して燃え上がる秘密基地として、みんなの熱い思いを電波に乗せて発信。放送は毎週土曜の23時から。
番組情報
- ROPPONGI PASSION PIT
-
毎週土曜23:00-23:54