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「エアコンのサブスク」で肉屋も衛生的に…その理由とは?【SDGsを解説】

電気、ガス、水道……私たちの生活に溶け込むインフラは、世界的に見ると決して当たり前に整っているものではない。「世界では3人に1人が電気に不自由している」「世界人口の1割が水を使えない」と話すのは、長岡技術科学大学の木村哲也准教授だ。

インフラを整えると、人々の健康が守られるだけでなく、新たな産業も生まれる。その流れや、具体的な取り組みを、木村准教授が解説した。

木村准教授が話をしたのは、J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。オンエアは1月22日(金)。この番組は持続可能な開発目標「SDGs」について解説する番組で、この日のテーマは目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」だった。

世界に誇れるロボット技術が評価され受賞

木村准教授は、レスキューロボットを中心に、次世代ロボットに対する国際安全規格制定まで視野に入れた産業化に繋がる研究開発を行っている。2020年9月には、防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞した。多くの仲間たちと行ってきた「ロボットをいかに効率的に作って世の中に広めるか」という活動が評価されたと思っていると、木村准教授は話す。

堀田:どういったロボットを作られたんでしょうか。
木村:いわゆるレスキューロボットですね。災害現場に入って困っている人を見つけます。中越地震を契機に、長岡市内の企業と一緒に「作ろうか」となったんですが、現場に持っていけるロボットはすぐにはできないので、レスキューを題材にした「ロボカップレスキュー」というロボット競技会に出ることを目指してロボットを作ってきました。「ロボカップ」の日本大会で何回か優勝したり、世界大会で3位になったりしたこともあります。「長岡という小さな街の企業と大学が協力することでできる」と示したことが、ひとつ成果として表彰されたのかなと思っています。
堀田:日本が世界に誇れる技術ですよね。

インフラが整うと、社会はどう変わる?

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、強靭なインフラを構築し、包摂的かつ持続可能な産業化の促進、およびイノベーションの推進をはかる……というものだ。人々の生活にどのような影響を与えるのか?

木村:普段の生活には、電気、水道、ガス、ちゃんと走ることができる道路、インターネットがある。これらがないと我々は普段の生活ができないですよね。こういったものが「インフラ」で、実は世界中のどこにでもあるのかと言ったら、そうではないんですね。世界人口は77億人で、そのうち電気が使えるかどうかわからない、電気に困っている方が26億人いるそうです。世界では3人に1人が電気に不自由している。あとは世界人口の1割が水を使えない、まさにインフラが足りないんです。たとえば、長岡は除雪体制や融雪設備といった雪に対するインフラが非常に整っています。でも東京で雪が10cm降ったらどうなります?
堀田:大混乱ですよね。
木村:それは雪に対するインフラがないからです。除雪機や融雪設備は東京にはないので、すぐに通常の状態には戻らないですよね。

インフラは人々の安全な生活を守るだけではなく、産業の創出にもつながる。

木村:世界中でインフラを整備して、いろいろな商売をしてもらう。そこで新たな製品が出てくると、おもしろいことが起こります。いま、中国の深センは、ITのハードウェア、たとえばスマホなどの中心になっています。
堀田:そうなんですか?
木村:たとえばSIMカードが3枚入るスマホですね。日本だったら2枚入るものでもなかなか売ってないですよね? あとはドローンですね。そういうものが深センを中心にどんどんと出てきています。
堀田:知らなかったです。
木村:そういうおもしろい技術が日本でも役に立つ。そういうことが世界中で起こるといいな、というのがSDGsの目標9の目指すところです。
堀田:難しそうと思ったけれど、私たちの生活にすごく密接にかかわってくるものなんですね。
木村:これが機能すると世界中のみんながハッピーになる。それを目指すのが目標9です。

長岡技術科学大学は、東アジア唯一のSDGsハブ大学

木村准教授がいる長岡技術科学大学。「科学技術」ではなく「技術科学」の並びになっているのがポイントだ。

木村:「技術」が先にくるのは長岡技術科学大学と、姉妹校の豊橋技術科学大学のふたつしかないんです。これは実は40年前に当時の新構想大学と言われた技術を軸にした、まずは技術をしっかりと考えて、それから科学するというものです。それまでの大学はある意味、理論から積み上げる、つまり科学が先にきていたんです。でも我々は技術が先にあるということで、産学連携とか当時から発展途上国に大学を作るお手伝いを、いろいろとやってきました。もともとSDGsの目標9をある意味やっていたような大学なんです。現在では、これまで我が大学が培ってきたSDGsの考え方を教育プログラムのなかに入れ込み、SDGsのコースというのを作りました。
堀田: SDGsのコースがあるんですか。
木村:こちらで勉強してもらうとSDGsの考え方を理解して、その考えに則った技術開発ができる技術者になれます。
堀田:進んでますね。初めて聞きました。
木村:こんなことをやっているのは、たぶん世界でもうちぐらいじゃないですかね。非常に特徴的なSDGsの実践をして、目標9の世界のハブ大学を長岡技術科学大学は担っています。
堀田:ハブというのは中心とかそういう意味ですか?
木村:そうです。SDGsでは各目標に対してひとつの大学を割り当てて、世界中で17のハブ大学があります。東アジアでハブ大学になっているのはうちだけです。
堀田:すごい! 世界のハブ大学が長岡にあるんですね。

「エアコンのサブスク」が肉屋の衛生を守る。その理由は?

目標9に対する具体的な取り組みとして紹介されたのはエアコン。発展途上国でも増加しているという。初期費用を抑えて導入できる「エアコンのサブスクリプション」も導入した。

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木村:エアコンはちょっと高いですよね? なので「使った分だけお金を払ってください」と、長期的に見ればお金を全部払ってこともらうことになるんですが、「最初は少なくてもいいですよ」というエアコンのサブスクリプションのビジネスをすでにアフリカで始めている日本の企業があります。
堀田:そのシステムはすごくいいですね。日本でもやってほしいぐらい。
木村:引っ越しの多い方とかひとり暮らしの方にもいいと思います。実はエアコンがあることで肉屋さんがドアを閉め切ることができて、砂ぼこりを防げて衛生的にお肉が売れるわけです。
堀田:新鮮なお肉が売れるんですね。
木村:そうすると今度はみんなが健康になります。エアコンがあって、エアコンの技術があってサブスクというビジネスモデルがあって、それが現地で広がると、みんなが涼しくなるだけではなくて、健康にもよくて、肉屋さんのビジネスもどんどん広がっていく。いいとこづくめなんです。
堀田:いいサイクルになるんですね。
木村:ただし、そうすると電気代が問題になります。発展途上国はただでさえ電気が足りないのに、みんなが電気を使うと非常に困るわけです。ここで出てくるのが本学の技術です。本学の電気系の先生方が一生懸命考えて、モーターの効率を上げた省エネエアコンに寄与されて、まさに省エネエアコンを通じたSDGsの目標9の推進ということに協力をされています。
堀田:誇れる技術ですね。
木村:あとおもしろいのは水です。うちに「専門はなんですか?」と聞かれると「水商売です」っていう先生がいらっしゃるんです(笑)。夜の商売ではなく、水をキレイにする研究をされている先生がいらっしゃいます。汚れた水をキレイにするというのは、すべてのインフラの基本中の基本です。長岡技術大学の先生はこれを非常に高性能かつ信頼性の高い、まさにレジリエンス(強靭性)な水処理技術を開発されて、これも実際にいろいろな発展途上国ですでに利用されています。

「相互の助け合い」で目標の達成を目指す

目標9に対して長岡技術科学大学以外ではどのような取り組みがなされているのか。木村准教授は自身が開発に関わったロボットのルーツを解説し、持続可能な目標を達成するために必要な「互恵」の理念について語った。

木村:ENEOSさんと三菱重工さんでは、化学プラントで使えるロボットを共同開発しています。火花が散ったら、石油を使うような化学プラントは爆発しちゃうわけですよね。
堀田:危ないですね。
木村:これまでは、そんなところにロボットを入れるのは「何をバカなことを言っているんだ、そんなことができるわけがない」と言われていたのが、三菱重工さんの技術で「化学プラントに入れても爆発しません」というロボットができました。そしてENEOSさんが、プラントを動き回って点検する防爆のロボット、EX ROVR(エクスローバー)をいま開発しているそうです。このロボットは千葉工業大学の櫻弐號(サクラニゴウ)というロボットがもとになっています。
堀田:かっこいい名前ですね。
木村:ただ、この櫻弐號もいきなりできたのではなく、千葉工業大学のQuince(クインス)というロボットがさらにそのもとになっています。このQuinceは実は福島第一原子力発電所の事故対応で、国産ロボットで初めて現場に入ったロボットでもあります。ただし、このQuinceもすぐにできたわけではなくて、QuinceのさらにもととなるKenaf(ケナフ)というロボットがあり、そのロボットが実は私もちょっとお手伝いした「ロボカップレスキュー」でいろいろな技術交流をして作り上げたものです。
堀田:つながりますね。
木村:そうです。そういうのがずっとつながっていて、しかもこの「ロボカップレスキュー」は日本やドイツのチームが出てます。ほかにも強豪国としてタイやイランも非常にいいロボットを出しています。発展途上国も含めて世界中の研究者が集まって、いろいろなアイデアのロボットを作ってくるんです。それがロボット競技会で発展途上国を含めて交流することで、どんどん効率的に加速しておこなわれています。

木村准教授によれば、こういった「相互に助け合うこと」がSDGsの目指すところだという。

木村:いままでの技術支援の考え方は「先進国から発展途上国を支援しましょう」といった一方通行の考え方が主流でした。しかしSDGsの目指すところは、まさにサステナブル(持続可能)に発展するために、発展途上国から先進国への情報、モノ、人、知識の流れも重要なんです。ロボット競技会を通じて、SDGsの先進国と発展途上国の互恵という、お互いに助け合うということがもうおこなわれていると私は考えています。
堀田: SDGsにすべてがつながってくる。協力し合うということですよね。

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』は、わたしたちの未来を守るために、いまできることを一緒に考える。放送は毎週金曜日の22時から。

『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』ナビゲーターの堀田茜

radikoで聴く
2021年1月29日28時59分まで

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番組情報
ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
毎週金曜
22:00-22:30

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