地球の未来を守るために今できることを考える、J-WAVEで放送中の番組『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』(ナビゲーター:堀田 茜)。2月12日(金)のオンエアでは、持続可能な開発目標「SDGs」(Sustainable Development Goals)の目標12「つくる責任 つかう責任」について、サステナブルで地球に優しいファッションを展開するhap株式会社の代表取締役社長・鈴木 素さんに話を聞いた。
堀田:「COVEROSS®」はどのようなものなんでしょうか。
鈴木:一言で言うと、人にも地球にも優しい素材の布地や洋服です。もともと「機能性素材」という、いろいろな素材にいろいろな機能を付けようと開発をしていました。洋服ができるまでには、糸から生地にして、裁断をして縫製をして、という段階があります。たとえばオーガニックコットンを原料として使っていても、多くの化学薬品を使って染める製造工程になることもあります。原材料の調達から製品になるまでを一貫して作っていくことが大事なのかなと思い、いまは素材開発だけではなく洋服まで一貫して生産しています。
堀田:確かに1着の洋服を買うときに、消費者の私たちは「この服がどういう工程を踏んで1着の服ができているか」という裏側が見えていません。こういうものがあるとSDGsを頑張ろうとしている人たちも非常に助かると思います。
鈴木さんは、快適多機能性素材「COVEROSS®︎」の優れた点を解説。1枚の服に複数の機能を付けることができるのだという。
鈴木:合成繊維では「すぐ乾く」「シワになりにくい」といったことをよく言われますが、「COVEROSS®」に関しては合成繊維だけではなくて、天然繊維のコットンといったものにもいろいろな機能性を付けられるのが特徴です。特に「COVEROSS®」のなかでも「COVEROSS®WIZZARD(カバロスウィザード)」という魔法の「COVEROSS®」シリーズがあるんですが、1枚のTシャツに10個ぐらいの機能を同時に付けられます。
堀田:そんなことができるんですか?
鈴木:たとえば「白いTシャツなのに透けにくい」という機能です。濡れても透けにくくなったり汗ジミを目立ちにくくしたりといった、一見すると矛盾するような機能を天然繊維なのに付けられるんです。そういう「相反する」という意味を持つ「COVEROSS®」を名前にしています。
堀田:いままでの洋服の概念を覆すような魔法の素材ですね。
ほかにも「COVEROSS®」には温暖化の夏を快適に過ごすためのUVカットや遮熱、コロナ禍においては抗菌や抗ウイルス、消臭といった清潔を保つ機能を組み合わせることが可能。さらには「古着にあとから機能を加える」といった開発にも力を入れているのだとか。
鈴木:いままでは新しく買ったものはどんどんと価値がなくなっていき、破れたり汚れたりして捨ててしまっていました。だから「古着をどうやってアップサイクルして価値を上げていくか」という開発に力を入れています。実際に古着にもいろいろな機能を付けられるんですが、洋服だけではなく、鞄や靴、マスクといったものに新しくいろいろな機能を付けることができます。
堀田:どうしてこういった素材を開発しようと思ったんでしょうか。
鈴木:20年ぐらいアパレル業界で働いていて、300回ほどいろいろな国の生産現場に出張で訪れました。たとえばデニムだと多くの水やいろいろな化学薬品を使って加工をして、その排水をそのまま流して環境汚染になったり、途上国だと小さい子どもが働いていたりする現実があるんです。日本ではなかなか光景としては見ないと思いますが、中国や東南アジアで実際に見てきました。なので少しずつでもなにかを変えていくことができないかと、環境もそうなんですが、「作っている方に適正な給料が払われているのか」という労働管理についても、ひとつひとつの工場を回って責任を持った商品作りに力を入れています。現在はコロナ禍なのでなかなか出張に行けていないのですが、リモートを使うなど社員を含めたみんなでやれることをやっています。
鈴木:本当に2万回とか3万回、いろいろな薬剤の組み合わせなどを考えながら、トライアンドエラーの繰り返しを毎日やってきました。環境に配慮するということにもすごく力を入れているので、たとえば耐久性ですとか着心地の柔らかさ、通気性といったものを損なわないようにしながら、いろいろな機能を付けていく。「完成」ということはたぶん永遠になくて、先ほど10個と言いましたが、いまは最大15個ぐらいの機能を付けることができます。
堀田:すごい!
鈴木:アメリカには一番環境に配慮したコットンを栽培しているCOTTON USA協会があり、そこで日本の会社として初めて「WHAT'S NEW IN COTTON」という革新的な機能性コットンに選んでいただきました。パリのイベント「プルミエール・ヴィジョン」やドイツの展示会などに招待していただいて、お披露目を開始しました。
鈴木:2020年秋から「ナノ・ユニバース」さんと、環境に配慮されている原料メーカー「日本環境設計(BRING)」さんと、たとえば古着を回収して新しい技術で古着から糸を作り、それを布地にしてまた洋服にしていくという取り組みをさせていただいています。ナノ・ユニバースさんで「ミーニングフル コンティーニュイティ」という環境特化型機能性ファッションブランドを展開しています。アパレルの売れなかった商品をすぐに捨ててしまうといったところが見直されていて、環境にも配慮をするんですが、やはり着ていてかっこいい、かわいいといった洋服そのもののファッション性を重要視したブランド開発、コラボ展開に力を入れています。
古着の回収は現在、さまざまな店に「回収ボックス」が置かれ、さらには消費者が自宅から古着を送るといった仕組みが構築されている。しかしそこには服の深刻な廃棄の事情があるそうだ。
鈴木:だいたい年間で洋服関係は37、8億枚輸入をして30億枚ぐらい埋め立てられているという現実があるんです。
堀田:そんなにですか!?
鈴木:それをどうやって減らしていくかが非常に重要になってくると思っています。着れなくなったものをアップサイクルやリサイクルすることが重要です。ブランドだけではなくリサイクル業者さんや消費者の方々、みんなで協力をして地球に少しでも負荷がかからないように、業界全体でやっています。
堀田:私も最近、洋服を「捨てる」ということをまったくしなくなりました。いろいろなブランドさんで古着の回収をたくさん見かけるようになってきたので、それがリサイクルやアップサイクルされていくと、もっともっといいサイクルが生まれていきますね。
『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』は、わたしたちの未来を守るために、いまできることを一緒に考える。放送は毎週金曜日の22時から。
天然繊維のコットンに“機能”がつけられる魔法の素材
鈴木さんは繊維商社で7年勤めたのち、2006年にhap株式会社を創業。2016年からオリジナルの快適多機能性素材「COVEROSS®︎(カバロス)」を開発して、ナノ・ユニバースなど多くのブランドに提供。そのサステナブルな取り組みが多方面から注目を集めている。ナノ・ユニバースは自然環境に配慮した新レーベル“Meaningful Continuity(ミーニングフル コンティーニュイティ)”をスタート。こちらは、COVEROSS®加工をしたオリジナル素材を採用した、同ブランドの「BRING COVEROSS AIRメッシュジャケット」「BRING COVEROSS AIRメッシュパンツ」。(PR TIMESより)
鈴木:一言で言うと、人にも地球にも優しい素材の布地や洋服です。もともと「機能性素材」という、いろいろな素材にいろいろな機能を付けようと開発をしていました。洋服ができるまでには、糸から生地にして、裁断をして縫製をして、という段階があります。たとえばオーガニックコットンを原料として使っていても、多くの化学薬品を使って染める製造工程になることもあります。原材料の調達から製品になるまでを一貫して作っていくことが大事なのかなと思い、いまは素材開発だけではなく洋服まで一貫して生産しています。
堀田:確かに1着の洋服を買うときに、消費者の私たちは「この服がどういう工程を踏んで1着の服ができているか」という裏側が見えていません。こういうものがあるとSDGsを頑張ろうとしている人たちも非常に助かると思います。
鈴木さんは、快適多機能性素材「COVEROSS®︎」の優れた点を解説。1枚の服に複数の機能を付けることができるのだという。
鈴木:合成繊維では「すぐ乾く」「シワになりにくい」といったことをよく言われますが、「COVEROSS®」に関しては合成繊維だけではなくて、天然繊維のコットンといったものにもいろいろな機能性を付けられるのが特徴です。特に「COVEROSS®」のなかでも「COVEROSS®WIZZARD(カバロスウィザード)」という魔法の「COVEROSS®」シリーズがあるんですが、1枚のTシャツに10個ぐらいの機能を同時に付けられます。
堀田:そんなことができるんですか?
鈴木:たとえば「白いTシャツなのに透けにくい」という機能です。濡れても透けにくくなったり汗ジミを目立ちにくくしたりといった、一見すると矛盾するような機能を天然繊維なのに付けられるんです。そういう「相反する」という意味を持つ「COVEROSS®」を名前にしています。
堀田:いままでの洋服の概念を覆すような魔法の素材ですね。
ほかにも「COVEROSS®」には温暖化の夏を快適に過ごすためのUVカットや遮熱、コロナ禍においては抗菌や抗ウイルス、消臭といった清潔を保つ機能を組み合わせることが可能。さらには「古着にあとから機能を加える」といった開発にも力を入れているのだとか。
鈴木:いままでは新しく買ったものはどんどんと価値がなくなっていき、破れたり汚れたりして捨ててしまっていました。だから「古着をどうやってアップサイクルして価値を上げていくか」という開発に力を入れています。実際に古着にもいろいろな機能を付けられるんですが、洋服だけではなく、鞄や靴、マスクといったものに新しくいろいろな機能を付けることができます。
堀田:どうしてこういった素材を開発しようと思ったんでしょうか。
鈴木:20年ぐらいアパレル業界で働いていて、300回ほどいろいろな国の生産現場に出張で訪れました。たとえばデニムだと多くの水やいろいろな化学薬品を使って加工をして、その排水をそのまま流して環境汚染になったり、途上国だと小さい子どもが働いていたりする現実があるんです。日本ではなかなか光景としては見ないと思いますが、中国や東南アジアで実際に見てきました。なので少しずつでもなにかを変えていくことができないかと、環境もそうなんですが、「作っている方に適正な給料が払われているのか」という労働管理についても、ひとつひとつの工場を回って責任を持った商品作りに力を入れています。現在はコロナ禍なのでなかなか出張に行けていないのですが、リモートを使うなど社員を含めたみんなでやれることをやっています。
3万回のトライアンドエラー
魔法の素材「COVEROSS®」は、現在の品質に至るまでに1年半の試行錯誤を経て生まれたのだそう。鈴木:本当に2万回とか3万回、いろいろな薬剤の組み合わせなどを考えながら、トライアンドエラーの繰り返しを毎日やってきました。環境に配慮するということにもすごく力を入れているので、たとえば耐久性ですとか着心地の柔らかさ、通気性といったものを損なわないようにしながら、いろいろな機能を付けていく。「完成」ということはたぶん永遠になくて、先ほど10個と言いましたが、いまは最大15個ぐらいの機能を付けることができます。
堀田:すごい!
鈴木:アメリカには一番環境に配慮したコットンを栽培しているCOTTON USA協会があり、そこで日本の会社として初めて「WHAT'S NEW IN COTTON」という革新的な機能性コットンに選んでいただきました。パリのイベント「プルミエール・ヴィジョン」やドイツの展示会などに招待していただいて、お披露目を開始しました。
年間約30億枚の洋服が埋め立てに
hapでは、「COVEROSS®」を使った、環境に配慮したファッション性も機能性もある新しいブランドを立ち上げる予定だ。鈴木:2020年秋から「ナノ・ユニバース」さんと、環境に配慮されている原料メーカー「日本環境設計(BRING)」さんと、たとえば古着を回収して新しい技術で古着から糸を作り、それを布地にしてまた洋服にしていくという取り組みをさせていただいています。ナノ・ユニバースさんで「ミーニングフル コンティーニュイティ」という環境特化型機能性ファッションブランドを展開しています。アパレルの売れなかった商品をすぐに捨ててしまうといったところが見直されていて、環境にも配慮をするんですが、やはり着ていてかっこいい、かわいいといった洋服そのもののファッション性を重要視したブランド開発、コラボ展開に力を入れています。
古着の回収は現在、さまざまな店に「回収ボックス」が置かれ、さらには消費者が自宅から古着を送るといった仕組みが構築されている。しかしそこには服の深刻な廃棄の事情があるそうだ。
鈴木:だいたい年間で洋服関係は37、8億枚輸入をして30億枚ぐらい埋め立てられているという現実があるんです。
堀田:そんなにですか!?
鈴木:それをどうやって減らしていくかが非常に重要になってくると思っています。着れなくなったものをアップサイクルやリサイクルすることが重要です。ブランドだけではなくリサイクル業者さんや消費者の方々、みんなで協力をして地球に少しでも負荷がかからないように、業界全体でやっています。
堀田:私も最近、洋服を「捨てる」ということをまったくしなくなりました。いろいろなブランドさんで古着の回収をたくさん見かけるようになってきたので、それがリサイクルやアップサイクルされていくと、もっともっといいサイクルが生まれていきますね。
『ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-』は、わたしたちの未来を守るために、いまできることを一緒に考える。放送は毎週金曜日の22時から。
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2021年2月19日28時59分まで
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番組情報
- ENEOS FOR OUR EARTH -ONE BY ONE-
-
毎週金曜22:00-22:30